Weekly Column
2001/10/27




2001/11/3付け

No.1 of the Week: God Bless America / VA (New Entry)
何と言うか、なんとも今のアメリカらしいチャートとなりました。
例のテロ事件以降、アメリカ人の愛国心は燃え上がるように昂揚し、時にそれは 「怖さ」を感じさせるほどですが、誠に不謹慎ながら、あまりにも絵に描いたよ うなので、斜に構えて見ればちょっと笑えたりもします。
今週初登場1位の「God Bless America」ははっきり言ってこの機に乗じた便乗 商品以外の何物でもないでしょう。このアルバム用に新録された曲もいくつかあり ますが、基本的には既存音源の寄せ集め。シングルチャートでもヒット中の リー・グリーンウッド「God Bless The USA」とか、エンリケの「Hero」とセット でオンエアされることが多く、最近とみにエアプレイ需要が高まっているという マライアの「Hero」なんていう直接的なものから、サイモン&ガーファンクル 「明日にかける橋」、グロリア・エステファン「Coming Out Of The Dark」、 ビル・ウィザース「Lean On Me」、ボブ・ディラン「Blowin' In The Wind」 など、直接は関係ないけど歌のコンセプトに通じるものがある(と解釈できなく もない)曲まで15曲。
私は「Blowin' In The Wind」って反戦歌であると解釈していて、米軍の行動 とは矛盾するものがあると思うし、おそらくはこのアルバムの目玉である新録音 「God Bless America」を、なんでわざわざカナダ人のセリーヌ・ディオンに 歌わせるんだとか、色々茶々を入れたくなりますが...
あれから1ヶ月半、混乱の中でこのアルバムを企画し、発売に到ったのには 苦労があったんでしょうし、こういう作品はその「作品としての質」云々よりも いくら寄付金を稼ぎ出せるかのほうに主眼を置くべきでしょうから、あーだこーだ 言うべきものではないんでしょう。
しかしこれ、うまい具合に復興支援アイテムの定番の 地位をゲットしましたね。アメリカで売れただけでなく、日本のお店でも大量陳列 されてるのはちょっと意外です。
余談。「もしも」を言出したらキリがないんですが、もしここ1ヶ月半の一連の事件が 起きてなければ、今になってエンヤがこんなに売れることはなかったでしょうし、 「God Bless America」なんてそもそも発売されてなかったでしょう。ってこと はジャ・ルールが3週目の1位になっていた、と。 で、来週はDMXの新作が初登場1位なので、2ヶ月近くに渡ってジェイZ〜ジャ・ ルール〜DMXというDef Jam御三家によるNo.1リレーが実現するところでした。 ま、実現しなくてホッとしてる人も多いでしょうけど。
No.4 New Entry: Down To Earth / Ozzy Osbourne
オジー・オズボーンは60年代末にブラック・サバスのボーカリストとしてシーンに登場。黒魔術とか悪魔崇拝とかオカルト的なキャラを売りにして本国UKだけでなくアメリカでもヒットし、 レッド・ツェッペリンやディープ・パープルと共に一時代を築いた。
70年代後半にバンドを追われたのがドラッグ漬けでボロボロの廃人にだった最悪の時期で、80年代に入ると自らのバンド、ブリザード・オブ・オズを率いてヘヴィ・メタルの黄金時代に、その頂点に君臨した。80年代のアメリカでアルバムをヒットさせた無数のヘヴィメタル・バンドの中でも、オジーほどコンスタントに作品を出し、毎作品を確実に大ヒットさせた例はない。
96年には後のヘヴィロック系パッケージツアーのお手本となるOzzfestをスタートさせ、近年はアルバムは寡作ながらも、ライヴ活動はコンスタントに続けていた。99年にはブラック・サバス再結成というイベントもあったし、オリジナルアルバムとしては本作が95年の「Ozzmosis」以来となるが、特に彼の活動に目立った空白期間があったような気はしない。
ここ数年の若手バンドとの交流から多少は影響を受けて、今っぽい音作りを取入れるかと思ったが、ここにあるのは紛れもない「ヘヴィメタ」。今のヘヴィロック系バンドは決してやらないヘヴィメタバンド風バラードもあったりして、これもある意味、AC/DCがあれしかできないのと同じ「ベテランの職人芸」なのだろう。
No.15 New Entry: Cuttin' Heads / John Mellencamp
ブルース・スプリングスティーンがどんどん寡作になって、半分現役を引退したような存在になり、ボブ・シーガーやジャクソン・ブラウンも、気がついたらそんな存在になっていたし、90年代半ばまでは現役感の強かったトム・ペティやニール・ヤングも、ある時期からパタッと新作が出なくなり、すっかり「懐かしい人」になってしまいました。70年代から80年代に活躍したアメリカのロック系シンガーソングライター達。日本でも非常に人気が高い彼らですが、残念ながらもう彼らの時代ではないようです。
そんな中、一人、黙々と新作をリリースし続けるのがジョン・メレンキャンプ。99年のアルバムは契約消化のための過去音源集だったし、今回は98年の「John Mellencamp」以来3年ぶりとなるので久しぶりには違いないのですが、これが、非常に現役感の強い作品なのです。
インディア・アリーをハーモニー・ボーカルに迎えた「Perfect World」。「アメリカには未だに人種差別がある/俺は自分の子供にはそんな風に育って欲しくない/俺は牧師なんかじゃない、単なるシンガーだけどさ/もっとやるべきことがあるんじゃないか、って思うぜ/言葉じゃなくてもっと行動が必要だ/未来をつくっていこうって気がないんなら、そこをどけよ」なんていう、相変らず青臭い正義感。でもこれが温かくピースフルなメロディに乗って、ジョンのあの人なつっこいボーカルで歌われると、グッと来ちゃうんですよねえ、80年代に「天使か悪魔か」「Scarecrow」「The Lonesome Jubilee」に夢中になった世代としては。
名作とかいうタイプの作品ではないけど、とってもいい作品です。
No.36 New Entry: On The Line / Soundtrack
インシンクのランスは何気に音楽ビジネスに手を出しており、自分のレーベルを立ち上げてカントリーシンガーをデビューさせたりしてますが、これはランスとジョーイが出演する映画。となると、そのサントラにはやっぱりインシンクやブリトニーを筆頭とするアイドルポップが満載。
特に、この時点ではまだアルバムが出てなかったので「新曲」扱いとなるブリトニーの曲や、インシンクの「Celebrity」のアメリカ盤には入ってない曲など、アメリカのティーンにとっては見逃せない作品のはずなんですが、売れませんでした。
1曲、他のメンバーから完全に浮いてアル・グリーンが収録されてますが、アル・グリーン本人が映画にちょい役で出てるそうで、この曲「Let's Stay Together」もそれに合わせて再録されたバージョンのようです。この曲がアルバム中唯一まともな曲だと評するレビューもあったりします (^^;
No.37 New Entry: Atomic / Lit
パワーポップ系のバンドは本国よりもむしろ日本でウケがいいことが多いのですが、このリットもそういうバンドでしょう。これが2作目となる彼ら、デビュー作からは「My Own Worst Enemy」がモダンロックチャートでヒットし、アルバムも最高位は31位ながら1年以上チャートイン。「My Own〜」も、続くシングル「Zip-Lock」も非常にキャッチーないい曲で、こいつらは化けるかと期待させたのですが、売れませんでした。まあ、日本ではブレイクしましたが。やっぱアメリカではヘヴィじゃないロックバンドが売れ続けるのは難しいですねえ。




2001/10/21付け

No.1 of the Week: Gold - The Greatest Hits / Steps (New Entry)
ステップスというのは実にベスト盤向きのグループです。ってよくわかりませんが、いかにもヒット曲然とした、実際に大ヒットした曲が、整然とずらっと収められると、このグループはこのアルバムを出すために今まで活動してたんだ、と思えてきます。逆にこの手の人たちはベスト盤の後オリジナルを1枚だして、それを最後に消えることが多いので要注意ですね。
ABBA直系のポップなメロディ、キャッチーな楽曲、親しみやすいキャラ、メディアへの露出の多さで、この2年ぐらいのUK音楽シーンには欠かせない存在になったステップス。他のアイドルたちと明らかな年齢差があるし、決してルックスを売りにできるような存在ではないのに、UKアイドル雑誌には毎回必ず登場するというその特殊な存在感。こういうグループは、裏方が曲を作って、「操り人形」がそれを歌うという、「オモテ」と「ウラ」の構図が見えてしまうんですが、ステップスはオモテの活躍ぶりで「ウラ」の存在を意識させないという点、たまたまなのかもしれないけど、非常に巧いと思います。
No.3 New Entry: Cieli Di Toscana / Andrea Bocelli
イタリアのクラシック系シンガー。96年の「Romanza」で世界的に知られるようになり、以降、アメリカやイギリスでもこの世界では最大級の大物として扱われています。まあ、大物といえば三大テノールとか色々いる世界ですから、商業的な意味でですけど。
本当に素晴しい声の持ち主で、日頃クラシックを聴かない人間にもそのすごさがわかるのが、この人の大物たる所以でしょう。物凄い努力家で、盲目なのに弁護士の資格まで持ってる、とかいうドラマチックな要素もあるのかもしれませんが。
No.6 New Entry: There You'll Be / Faith Hill
日本でも既に大々的にショップに並んでいるフェイス・ヒルのベスト盤。ベスト盤と言いつつ実質2枚のアルバムからかく集めてるところが凄いです。まあ日本では98年の「Faith」→その新装盤として99年の「Love Will Always Win」、99年の「Breathe」→その新装盤として2000年の「Breathe 〜Millennium Edition」という具合にこまめにアルバムが出し直されているので、その都度オリジナルアルバム未収録曲が生まれてて、ネタは充分にあったわけですね。
しかし1st、2ndの存在を無視し、カントリー色を完全に排してるあたり、非常に作為的なものを感じて、どうも好きになれませんねえ。このアルバムにカントリー時代の曲が入ってば、ここで初めてカントリーに触れた若い子が「なんだ、カントリーっていいじゃん」と思うかもしれないのに。まあ逆に「うわーフェイスって昔はこんなのやってたんだー。ダサーい」と思われてしまうことと天秤にかけた結果、リスクを避ける道を選んだ、ってことなんでしょうね。


以上・しんかい (kaz@meantime-jp.com)



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