Weekly Column
2001/4/14


Until The End Of Time / 2Pac

レーベルのオーナーであるシュグ・ナイトと車に乗っているところを襲撃され、衝撃的な死を遂げてからはや5年。しかし死後もあまりにもコンスタントに、しかも大量に「新作」がリリースされ続けるものだから、「実は生きてる説」が後を絶ちません。 25歳という若さで亡くなったことや、「反逆児」的なキャラクターを確立していたこと、死後もいっこうに人気が衰えないことなどから、今や彼はジェームス・ディーンになぞらえられるまでになっています。
彼が生前残したアルバムは4枚。プラス、彼が中心となってサグ・ライフというグループとして1枚アルバムを出しているので、まあ、全部で5枚。で、亡くなってからは、まず、製作途中だったというマキャヴェリ名義の作品、2枚組ベスト盤、未発表音源集「R U Still Down ?」(2枚組)、アウトローズと組んだアルバム、そしてかなり変則的ですが、昨年末に出た、彼の書いた詩をいろんなアーティストがパフォームした「The Rose That Grew From Concrete」。本作を入れれば6作目。まあ、「The Rose〜」はちょっと別物とカウントすれば、これで生前の作品数と死後の作品数が並びました。でも死後は2枚組が3セットですから、曲数で数えれば死後のほうが多そう。
これらはあくまでもオリジナルアルバムの数であり、この他にも、随時各種コンピレーションやサントラに彼の「新曲」は出てきているので、まあ「実は生きてるんじゃないか」と本気で疑う人が出てくるのもしょうがないでしょう。ばりばりに元気に生きてても、これだけコンスタントに新曲を出し続ける人は少ないですから。
さてこのアルバム。未発表曲集、2枚組29曲。母親のアフェニ・シャクール公認作ということで、「R U Still Down ?」の続編と思えばいいでしょう。時期的にはマキャヴェリ名義だった、あの頃の作品のようです。
しかし、これはねえ。普通に考えて、あんなに短い活動期間に、これだけたくさんの未発表音源を残したのって、やっぱり不自然ですよね?ただ、これは逆に言うと、本人は全然世に出すつもりのなかった、どうしようもないクズ音源まで勝手に発掘されて、本人の意思に反して世に出されてしまってるわけです。そういう位置づけの作品だと思いながら聴けば、「その割には悪くないな」と思えるのですが、やっぱりひとつの作品として鑑賞するには堪えない作品です。当たり前なんですけど。29曲入りとは言っても、実際には同じ曲がバージョン違いで収録されてて曲数を稼いでたりします。
ファンとしては、自分の知らなかったトゥパックの曲がどんどん出てきてくれるのは有り難い、とは思いつつも、無理矢理引っ張り出してきた出来の悪い曲をあまり世に出してしまうのは、単に彼の評判を落とすだけなのではないかと思ってしまいます。 母親公認とは言え、やってるのはあの血も涙もないデス・ロウですから、骨の髄までしゃぶりつくすまで、こういう「未発表曲集」はリリースされ続けるんでしょう。
まあ、とりあえず、こういう「マニア向け」以外の何物でもない作品が、40万枚超というぶっちぎりのセールスで初登場1位になってしまうという、恐るべきトゥパック人気が確認できただけで、私は満足しておきます。
Popstars/Hear'Say

最近英米でやたら流行ってる「テレビで公開オーディション」系の番組&そこから誕生したグループ。アメリカでのハシリは男の子5人組のO-タウンで、既にシングル・アルバム共にトップ10に送り込んでいます。更に、最近になってエデンズ・クラッシュという女の子5人組が登場。これも別の番組だけど同じような経緯から誕生したグループで、とりあえずデビューシングルがトップ10ヒット(アルバムはまだ)。
と、おそらくは日本発のこの商法がアメリカでもしっかり通用してますが、何と言ってもアイドルといえばイギリス。「いつの時代にもアイドルがいる」ことに慣れているイギリスでは、売り出す側も何をやるべきかわかってるし、リスナー側もアイドルに何を期待すべきかわかってます。
で、そのイギリス国民が久々に熱狂的に迎えたのが、この男女混合5人組、ヒアセイ。Sクラブ7やステップスの成功例に倣ったのでしょうか、男女混合グループは男の子ファン、女の子ファンの両方を取り込めるので、支持層の拡大という意味では非常に有利ですが、アメリカではこの編成のグループはまだ出てきませんね。
さて、デビューシングルは最速売り上げ記録を達成し、初登場から3週間、UKシングルチャートの首位を守りました。続いて登場したこのアルバムも当然のように初登場No.1。彼らが誕生したテレビ番組が見られないので、まだイギリス以外では「誰それ?」って感じでしょうが、新し物好きは、注目してましょう。しかしどういうわけか、日本ではステップスもSクラブ7も、1stはそこそこ力を入れてプロモーションしてたのに、2nd以降ぱたっと売る気を無くしたような売り方をしているので、前例から、このグループも日本ではぱっとしないまま終わるような気もします。



No.10 New Entry (USA) : Acoustic Soul / India.Arie
インディア・アリーというちょっと変わった名前。ジャケは、どこかエリカ・バドゥに通じる雰囲気を感じさせる。「アコースティック・ソウル」という、そのスジの人々を思わずときめかせてしまうタイトル。リリス・フェアに出たところをスカウトされ、Motownが大プッシュ、という経歴。作詞・作曲・プロデュースから楽器演奏まで、すべて自分でこなすという才人。これだけの要素が揃えば、まだシングルヒットさえ出してない新人のデビューアルバムがいきなりヒットしても、それほど不思議ではありません。 と、ここまで書けばお分かりの通り、エリカ・バドゥやシャーデーとキャラがダブります。ただ、バドゥやシャーデーが、女としてのしなやかさだけでなく、「母」としての精神的なたくましさのようなものを感じさせる、ナマっぽさがあるのに対し、インディアさんはクリーンというか淡白というか、いい子ちゃんな印象が残ります。 このタイプのシンガーは「実力勝負」と思われがちだけど、実はルックスってかなり重要な要素。シャーデーはあれだけ綺麗だからこそあのキャラが活きるし、バドゥはあの容姿だからこそあの独特の雰囲気が生まれるし、男でも、ディアンジェロを筆頭にルックスは大事な要素。で、残念ながらこの人はルックスがよくないんだなー。ただ、それは本人も充分自覚していて、今ヒット中のシングル「Video」のサビで「私は、スーパーモデルとかビデオに出てくるような、キレイな女の子じゃないわ。でも、いつでもインディア・アリーであることに誇りをもってきた」と歌ってます。関係ないですが歌の一部で自分の名前を言うのって、ラップでは珍しくないですが(「Snoop Dogg」とか)、歌物では珍しいですよね。 アルバムの内容は、タイトル通り。アコギなどのアコースティックな音を丁寧に織り込んだ、柔らかいサウンド。曲の出来も、なかなか。ただ、ちょっと全体の雰囲気が似過ぎていて、全体を通して何度も聴くにはつらいかな。1曲だけふっとラジオで流れたりすると、かなりいい感じかも。本人も曲の中で触れてますが、スティービー・ワンダー、ダニー・ハサウェイあたりが目指すところのようです。 全く関係なくて恐縮ですがダニー・ハサウェイ→娘のレイラ・ハサウェイで思い出しました。マーヴィン・ゲイの娘、ノナ・ゲイが5年ぐらい前にデビューして話題になった...けどその後何の音沙汰もなかったんですが、実は今映画の撮影中で、ウィル・スミスの奥さん役なんだそうです。



No.98 New Entry (USA) : Seattle, Washington - November 6, 2000 / Pearl Jam
「海賊版対策」としてリリースされはじめたパール・ジャムのライヴ盤。ツアーの全公演分を発売するという無茶なことを本当にやってしまったところは、流石彼らですね。最初にヨーロッパ公演20数セットが発売され、2週間前にアメリカ公演が20数セット、今週さらに20数セット出ました。全部で72セット。たぶん、72種類の公式ライヴ盤を出したというのは歴代最多記録でしょうし、1年間にこれだけ多種類のアルバムをリリースしたってのも最多記録なんでしょうね。
で、今回、その中で初めて、100位以内に入る作品が誕生しました。昨年11月6日のシアトル公演。全米ツアーの最終日、というだけでなく、彼らの地元でのライヴということになります。そういう特別な公演なので、他はみんな2枚組なんですが、これだけ3枚組で、収録曲も30曲を越えます。値段も他よりは若干高いんですが、もともとの値段設定が安いので3枚組とは言ってもそんなに抵抗のない値段です(日本での店頭価格で2500円弱?インターネット通販で2000円弱から)。
この一連のライヴ盤は、一般的なパール・ジャムのファンとしては「どれか1枚ぐらいは聴いてみたいけど、全部揃える気は全然ない」という人が大半だと思います。じゃあ、その「1枚」をどう選ぶか。ヨーロッパやアメリカの人なら、自分の地元(に近い)公演分を買うという選び方ができるんでしょうが、日本に住む我々にとってはどれも同じ。ってことで、この地元公演かつツアー最終公演は、「どれか1枚」を選ぶ上では非常にポイントが高いです。まあ、みんなそう思ったから、これがいちばん売れたんでしょうね。
何も編集されてない、ライヴの模様そのまんまなので、エディのおしゃべりとか、観客とのやりとりとかも編集されずにそのまま収録されています。そういう場面を音だけ聴いてるとダレがちなのも事実ですが、ライヴの生の記録という意味では、変にいじくり回していない、こういうライヴ盤は貴重ですね。
(以上・しんかい kaz@meantime-jp.com



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