Weekly Column
2000/5/2


●Billboard アルバム・チャート ニューエントリー全作品紹介

No.2 New Entry: My Name Is Joe / Joe
最近、礼儀正しいミュージシャンが増えている。エミネムはメジャーデビュー曲「My Name Is」で、キッド・ロックはブレイク作となったアルバム「Devil Without A Cause」の1曲め冒頭で、そしてこのジョーはタイトル及びアルバムのイントロで、きちんと自己紹介している。
私はジョーを93年のデビュー当時から気に入って、ずっと気にしてきているので、今まで何曲かヒットの実績もあって、デビューから8年を迎えた奴が今更アルバム冒頭で「僕の名前はジョ〜」などと歌い出すのはギャグかと思った。その意を汲んで邦題「ぼくジョーだじょー」を授けたのだが、何やら本人に真面目なコメントを出されてしまいました。曰く、
「ラジオで僕の曲はよくかかるけど、それがジョーの曲なんだって、みんなわかってないんだ。だから今回は、これがジョーなんだってはっきり言ったんだ」との弁。うーん。決して個性的とは言えない音を作ってきた彼にこう言われると返す言葉がない。
ちなみに98年のイギリス映画に同名の作品がありますが、これとの関連は不明。たぶんないでしょうけど。

これはR&Bシンガー、ジョーの3作目。R.ケリーとあまりデビュー時期が変らない、と言えばいかにこの人が寡作かがわかるでしょう。デビュー当初はボーイズIIメンやジョデシがデビュー作を大ヒットさせて、90年代型R&Bが盛り上がり始めていた時期だったのでジョーにも多いに期待がかかっていました。彼の場合は特に「歌って、作曲もできて、プロデュースもできる」マルチアーティストとしてR.ケリーに続く存在と目されていたのですが、なにしろ寡作だし、今ひとつ大ヒットも出せないということで中途半端な存在感のままズルズルと今に至っています。その間ブライアン・マクナイトなどの後輩が彼のキャラを奪う形で次々にブレイクし、ますます肩身の狭くなっていたジョー。もともとは昨年のサントラ「The Wood」からのカットで、結果的にこのアルバムからのリードシングルともなって、現在シングルチャートでヒット中の「I Wanna Know」も、凄くいい曲なんだけど、曲調はありふれてるので「ジョーらしさ」が感じられるとは言い難く、まさかアルバムがこんな大ヒットになるとは思ってませんでした。
内容的には、ちょっと傑作とは言い難いですが、ブライアン・マクナイトが好きな人ならまずOKでしょう。クリーンなイメージの今どきのR&B。

No.9 New Entry: Emotional / Carl Thomas
パフ・ダディのBad Boyレーベル所属のR&Bシンガー。このレーベルの作品ではバックシンガーとして客演を重ねてきましたが、ソロとしてはこれがデビュー作。Bad Boyと聞くとどうしてもヘナチョコな印象がありますが、実はこの人はすごく正統派のシンガーです。ジャケのイメージそのまんまの内容と言っていいかも。
とりあえずシングルチャートでヒット中の「I Wish」は非常によく出来た曲です。特にイントロから、歌が入って来る辺りまでは素晴らしい出来栄え。スティービー・ワンダーから影響を受けているのは明らかですが、この曲は全盛期のスティービーのアルバムの中でも「地味だけどいい曲」を彷彿とさせます。 なお「I Wish」はスティービー・ワンダーの曲とは同名異曲です。 流石にアルバム全体でこのレベルはキープできていませんが、最近のR&B系のデビュー作としてはかなりレベルの高い仕上り。今後が楽しみなシンガーです。

No.19 New Entry: Is There Anybody Out There ? - The Wall Live 1980-1981 / Pink Floyd
大ベストセラーアルバム「The Wall」の発売20周年ということで出てきたライヴ盤。「The Wall」発売当時のライヴ(80〜81年)で、曲目、曲順など「The Wall」をほぼそのまま再現した内容(オリジナルの「The Wall」全曲+2曲)。アレンジなどもほとんど元のアルバムと同じなので「お約束通りの展開」なんだけど、このスケールのデカい音にはやっぱり盛り上がります。
ピンク・フロイドは82年の「The Final Cut」を最後に解散したかと思いきや、中心人物のロジャー・ウォータース抜きで活動を再開するという荒業に出はじめ、これがしっかり大ヒットしちゃったもんだからいい気になって「ピンク・フロイドっぽい新作」をいくつか出していました。ライヴ盤もCDケースの背がぴこぴこ光る「Pulse」などを出してますが、やっぱりロジャー・ウォータース抜きのピンク・フロイドなんてPen & Pixelが手がけていないNo Limitのアルバムジャケみたいなもんで(←分かりにくすぎ)、「本家」のこちらを聴くべきでしょう。
タイトルは、オリジナルの「The Wall」にも入っていた収録曲のひとつから。

No.39 New Entry: Let's Make Sure We Kiss Goodbye / Vince Gill
70年代末にピュア・プレーリー・リーグの一員としてデビューしたカントリーシンガー。80年代半ばからはソロ活動を始め、カントリーチャートではこれまでに50曲近いヒットを放っている大物。とってもいい声で、歌の巧い人。94年にエイミー・グラントとデュエットして「House Of Love」をヒットさせた頃はまだ前の奥さんと結婚してたんだけど、97年に別れて、実はつい最近そのエイミー・グラントと再婚したばかり。ということで幸せいっぱいに「The Luckiest Guy In The World」とか歌っちゃってます。

No.57 New Entry: The Piece Maker / Tony Touch
トニー・タッチはニューヨークのヒップホップDJ。ファンクマスター・フレックスやDJクルーのアルバムと同じように、超豪華ラッパーをずらっと並べて彼の影響力の大きさを誇示するような作り。モブ・ディープのプロディジー、ギャング・スター、ウータン・クラン、モス・デフなど、どちらかと言うと通受けするラッパーが多くフィーチャーされている。ビッグ・ダディ・ケイン+KRS-ワン+クールGラップというオールドスクールの雄の競演なんてのはこういう企画モノでしか聴けないでしょう。

No.70 New Entry: God Is Working - Live / The Brooklyn Tabernacle Choir
70年代から活動していると思われるニューヨークのゴスペルグループ。ここ数年こういうゴスペル物が、下位のほうながら、チャートによく入ってくるようになりました。昨年オリジナルアルバムを出し、今年はこのライヴ盤の他にベスト盤を出して非常に活発に活動してるグループのようですが、やっぱりこういうのは日本では全然情報が伝わって来ませんねえ。
第二次大戦後アメリカの統治を受けたフィリピンや韓国でキリスト教が民衆レベルで完全に根付いたのに対し、日本ではクリスマスとか「教会で結婚式」とか、ごく表面的な部分しか普及しなかったのは、やっぱり日本の土着信仰とキリスト教の考え方が相容れず、受入れられなかった結果ではないかという話を最近読みました。ゴスペルという音楽は非常に精神的なものなので、やっぱり非キリスト教徒が聴いて本当にその魅力が伝わるものではないんでしょうね。

No.116 -> No.91: Shades Of Purple / M2M
ノルウェー出身の10代の女の子2人組。マリットとマリオンという2人の名前からつけたグループ名みたい。「Pokemon」サントラからカットされた「Don't Say You Love Me」のヒットを経てのアルバムデビューで、現在第2弾シングル「Mirror Mirror」がヒットしそうになってるところ。爽やかなアコースティック・ポップで、売り方次第では日本でもかなりヒットするでしょう。
なんかamazon.comのレビューでは「ブリトニーとアギレラを足しても、M2Mの才能には敵うまい」等という非常に過激な論調で褒めまくられてます。

No.114 -> No.92: Radio Disney Jams Vol.2 / Various Artists
めちゃめちゃ謎のコンピレーション。そのタイトル通りディズニーが制作してるんでしょうけど、この選曲はいったい...。まず、ディズニー用に替え歌にしたらしいルー・ベガの「Disney Mambo #5」。これは、まあ良し。続いてバックス、ブリトニー、アギレラ、ウィル・スミスといったところが並ぶ(みんな既発表曲)。子供向けのアルバムということで、アイドルを起用するのは当然の流れ。で、アル・ヤンコヴィックが登場するあたりから流れが怪しくなる。いきなり25年タイムスリップしてKC&ザ・サンシャイン・バンドが登場すると、後はクイーンの「We Are The Champions」だのヴィレッジ・ピープルの「Y.M.C.A.」、シスター・スレッジの「We Are Family」などディスコ時代の曲が続々登場。で、これに混じって98ディグリーズ、ステップス、アーロン・カーターなんていう今のアイドルも引続き登場する。「これは70年代の大ヒット曲だ」とか、変な予備知識をなーんにも持ってない子供が聴けば違和感を感じないのかもしれないけど、我々にはかなりキツそうなコンピです。

No.95 New Entry: Monster Madness / Various Artists
出た。昨年「Monster Ballads」を大穴ヒットさせたRazor&Tieレーベルから、「Monsters Of Rock」「Monster Ballads」に続くシリーズ第3弾。このシリーズは80年代のハードロック系の懐かしい面々を揃えたコンピレーションで、きっと今20代後半〜30代ぐらいの人が懐かしがって買ってるんでしょう。今回は「Monster Madness」という今ひとつコンセプトのわかりにくいタイトルですが、収録曲はこんな感じ。

Dr. Feelgood - Motley Crue
I Remember You - Skid Row
Silent Lucidity - Queensryche
Epic - Faith No More
Hole Hearted - Extreme
Easy Come Easy Go - Winger
Wait - White Lion
I Wanna Rock - Twisted Sister
In My Dreams - Dokken
Kiss Me Deadly - Lita Ford
Up All Night - Slaughter
I Saw Red - Warrant
Bang Your Head (Metal Health) - Quiet Riot
Unskinny Bop - Poison
Don't Treat Me Bad - Firehouse
I'll See You In My Dreams - Giant

うーん。何がMadnessなんだろう...。
相変らず「ヒット曲」にこだわる選曲は微笑ましいです。ホワイト・ライオン、ジャイアントの収録がポイント高いかな。ヒット曲集なのに敢えて最高位41位の曲、というウインガーの選曲は渋いです。そのバンドの最大のヒット曲が巧みに避けて選ばれているのは、シリーズ第1弾、第2弾との重複をなくす関係であって、別に選曲した奴がひねくれてるわけではないと思います。

No.99 New Entry: Figure 8 / Elliott Smith
一部の人の間では97年作「Either/Or」ぐらいから静かに話題になっていたシンガーソングライター、エリオット・スミス。かなり地味な作風なのでヒット曲とかが望めるようなタイプではなく、今後もバカ売れすることはないでしょうが、この手の人で100位以内に入ってくるのはなかなかの健闘です。



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