Weekly Column
2000/3/14


●Billboard アルバム・チャート ニューエントリー全作品紹介

No.73 New Entry: Let's Get Free / Dead Prez
デッド・プレズのデビュー作。"Prez"って"Presidents"を省略してるんでしょうか?よく、金のことを「Dead President」と表現しますが(アメリカの紙幣には昔の(既に亡くなっている)大統領の肖像が描かれていることから)。
ただ、彼らはそういう拝金主義的なサグ系ラッパーとは違い、パブリック・エナミーの流れに位置付けられるべきコントラバーシャルな存在です。アパルトヘイト時代の南ア・ソウェトでの民衆武装蜂起を撮った写真を使ったジャケが、その姿勢を表しています。そして、銃を掲げる姿をジャケに使うなんてとんでもない、と圧力をかけられ、ケースの外に別の包装を被せて、ジャケに関する警告文を表示するよう迫られた、ってのも、アメリカの二面性を非常によく表すエピソードです。全米ライフル協会が政治的に絶大な力を持つので、政治家は強く銃規制が言出せない反面、銃の写真にさえヒステリックなまでの反応を示す市民がいる、という。

こういう人たちなので当然のようにインタビュー記事とか紹介記事でも、他のラッパーとの比較ではなく、ヒューイ・ニュートン(ブラック・パンサー党)なんかを引合いに出されてたりします。パブリック・エナミー以外でこのタイプのラッパーが商業的に成功したことはなく、彼らもヒットシングルでも出ない限り、このぐらいの順位が限界でしょう。

No.86 New Entry: From The Bottom To The Top / Sammie
何故かR&Bの世界では時々ぽっと出てくるお子様。サミー君もいかにも垢抜けない12歳のガキで、もうこのジャケを見ただけで中身の想像がつきますな。と甘く見られがちなんでしょうが、実はこいつのバックについてるのが、モニカ、ボーイズIIメンなどのティーンエイジャーを大スターに仕立て上げてきたダラス・オースティン。実はナメてると、そのうち大化けしたりして。
しかし歌詞の題材がキャンディとかショッピングモールとか電話とかディスニーランドだというから当分は大丈夫でしょう(←何がだ)。

No.90 New Entry: Engines Of Creation / Joe Satriani
テクニカルなギタリストの最高峰として、日本でも特定の人々の間では神と崇められているジョー・サトリアーニの新作。技術が優れてるだけでなく、実験精神にも富んだかなりの意欲作のようです。

No.131 -> No.96: Water From The Well / The Chieftains
めちゃめちゃコンスタントに新作を出してくれるアイリッシュ・トラッド・バンドの何十枚目か。60〜70年代はアイリッシュ・トラッドという世界の中だけで評価されていた感じですが、80年代後半からは著名ロック・スターとの豪華共演作を次々にリリースし続け、それがすっかり2年に一度ぐらいの恒例行事になった感がありました。一部にはこの「豪華スターとの共演」をセルアウトだと批判する声もありますが、日頃アイリッシュ・トラッドなんて聴かない人にこの音楽の魅力を紹介するという意味では絶大な貢献をしており、彼らを批判するなんて全く的外れなことなので無視しましょう。
で、今回はその「豪華共演盤」ではありません。アイリッシュ・ミュージックのルーツを探求した、めちゃ地味な作品。リヴァーダンスとタイタニック以来、いわゆるアイリッシュ・トラッドが日本でも注目されるようになりましたが、ああいうダンス的な楽しい要素が少ないので、かなり地味に感じます。まあ、原点回帰というか、彼らが決して「セルアウトした」存在ではないという証のようなものでしょう。
にしても。彼らはいつも「そこそこ良い」物を出してくれるんですが、「傑作」が少ないんですよねえ。「Long Black Veil」はかなりいい線行ってましたが、やっぱりヴァン・モリスンとの共演盤「Irish Heartbeat」を越えるものはなかなか出せないようで。ちょっとチーフテンズに興味があって、聴いてみようという方には、いきなりこの「Water From The Well」から入らずに、この2枚から入ることをお勧めしておきます。
なお、日本では「チーフタンズ」と表記されることが多いですが、本人たちは「チーフテンズ」と発音してるようなので、ここでは後者で表記してます。



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