Weekly Column
2000/3/14


●Billboard アルバム・チャート ニューエントリー全作品紹介

No.2 New Entry: BTNHResurrection / Bone Thugs-N-Harmony
「E-1999 Eternal」「The Art Of War」と2作連続でNo.1に送り込み、今回もNo.1が有望視されていたボーン・サグスン・ハーモニーの4作目(ファースト「Creepin On Ah Come Up」はEPなのでフルアルバムとしては3作目)。初登場週28万枚のセールスだったので普段ならまず問題なく1位になれた筈なんだけど、グラミー制覇直後のサンタナとぶつかってしまうという運の悪いリリースタイミングのお陰で、2位に甘んじました。もっとも、前作は2枚組にも関らず初登場週に40万セット近く売れてるので、その頃(97年夏)に比べれば人気が落ちてるのは確かなようですが。今更ですが「The Art Of War」って何で邦題を「兵法」にしなかったんだろう。アーティスト名「孫子」も可(←で、ボンサグとルビをふるとか)。実際には中国兵法って孫子のだけじゃなくて武経七書とかってメジャーなのだけで七つあるらしいですが。

今回はジャケ、裏ジャケともに海賊盤みたいなチープな雰囲気だし、今まで彼らのサウンドを支えてきたプロデューサー、DJユニークもほとんど(全然?)絡んでないみたいだし、何よりアルバム発売時点でシングルがヒットしてないので、前作から2年半のインターバルで期待感が高まっていたにせよ、スタートダッシュが弱いのも仕方ないところでしょう。
内容的には前半は「あれ?意外とつまらんぞ」と思わせといて後半で持ち直すような感じ。前作から2年半のブランクの間にクレイジー・ボーン、ビジー・ボーンがソロアルバムを出してましたが、別にそこから学んだ新機軸なんてものは全くなくて、今まで通りの早口・メロウ・半分歌・半分ラップが堪能できます。

No.3 New Entry: Machina - The Machines Of God / The Smashing Pumpkins
ほらー。だから言ったじゃん。前作はマスターPに圧倒的大差をつけられて惨敗して2位、今回はグラミー直後でセールスの絶頂にあるサンタナに加え、ボンサグにも負けて3位。リリースのタイミング悪すぎます。米Virginの担当者は真面目に仕事してるんでしょうか。確かに16.5万というセールスはやや頼りないですが、それでもタイミングによって1位は可能なはずでした。そりゃあチャートで1位になるかどうかなんて、リスナーにとっては全然重要な問題ではないですが、レコード会社にとっては「全米No.1アルバム!」と宣伝できるかどうかは結構大きなポイントだと思うんですが。Billboard誌の広告を見てても「世界何カ国で1位!」とかズラズラ書き連ねてるのがよくあるし。
特にスマパンの場合、質・量・評価・セールスのどれをとっても彼らのピークである95年の「Mellon Collie And The Infinite Sadness」に続く98年の「Adore」が、地味だわ売れないわ1位取れないわヒット曲出ないわの四重苦に悩んだ後だったので、今回ぱーっと売れれば「スマパン復活!うおー!」と盛上げることができたはずなんですよ。これが、バンドにとってもレコード会社にとってもいい結果に結びつくはずなんですが、どうもVirginの担当者と私とは考え方が違うみたいですねえ。まさか何も考えてないんじゃないでしょうねえ(←うわーイヤミ)。

内容的には今回はファンの間でいちばん人気の高い93年の出世作「Siamese Dream」に近い雰囲気だと思います。このところストリングスを使ったり、妙にアコースティックだったりポップだったりと音の表現の幅を広げてきていたスマパンでしたが、今回は原点回帰的にギターばりばりのサウンドがメイン。ビリー・コーガンの(ルックスの)不気味ぶりも磨きがかかってるし。

No.5 New Entry: The Truth / Beanie Sigel
この強敵ばかりの週にデビュー作が初登場5位ってかなり凄いかも。昨年(99年)メンフィス・ブリークってのがデビューして、これもデビュー作をトップ10に入れてましたが、こいつと同じ。つまりジェイZの子分として今まで散々色んなところにゲスト出演させてもらって、アンダーグラウンドではシングルを次々に出して支持を固めて、満を持してRoc-A-Fellaレーベルからデビュー。
ジェイZよりやや元気がある、というか若さを感じさせるスタイルですが、トラックの作りは基本的にジェイZに通じるものがあります。しかし80年代前半に大ブームになったTVゲーム、パックマンの音を全編にサンプリングしまくったダサダサの曲には参った。当人はどちらかといえばハードコア路線というか、StreetとかFuck a hoeとかBitchどもに用はねえぜとか俺が一番凄いぜとかいうことばっかりライムしてて、悪っぽいキャラで売ろうとはしてるようなんですが、この可愛らしいサウンドとのギャップは聴いてて相当居心地が悪いです。

と、ボロボロに馬鹿にしてたんですが、SOURCE誌では大絶賛モードで、スヌープやナスのデビューを引合いに出しながら、マイク4.5本つけちゃってます。そんなにいいか?もっかい聴き直さなきゃ。全然気が進まないけど。

No.7 New Entry: Two Against Nature / Steely Dan
20年ぶりという笑っちゃうようなインターバルを置いて出てきたスティーリー・ダンの新作。80年代にはその寡作ぶりが際立っていたドナルド・フェイゲンも90年代になると少〜しだけペースを上げて、今回ようやくウォルター・ベッカーとのコンビが復活しました。と、これが80年の「Gaucho」以来20年ぶりのニューアルバム。しかし。変らない...
なんか本人も「敢えて変えなかった」みたいなことを言ってるし、買う側もみんなこの音を期待してるんでしょうから、これでみんな満足なんでしょう。 ただ、CDショップの店内で延々と流れてるのを聴いただけなので偉そうなことは言えないのですが (^^; 「Aja」の頃の緊張感がなくて、「スティーリー・ダン風のAOR」を聴いてるような気分でした。

No.8 New Entry: Stiff Upper Lip / AC/DC
やったー!無事に大ヒット!ベテランハードロックバンドと言えばエアロスミスの一人勝ち状態ですが、AC/DCを忘れちゃいけません。エアロは80年代前半とかボロボロになって、やってるんだか解散してるんだかわかんない状態でしたが、AC/DCはずーっとマイペースな活動を続けてきました。とは言っても流石にこのところは寡作で、これは5年ぶりの新作になります。タイトルのStiff Upper Lipとは、強情を張り通すとか、意地を貫くといった意味で、まさにこれは彼らの「ワンパターンの帝王宣言」だと言えます。
そう、彼らの恐るべきところはワンパターンの美学があまりにも徹底されているところで、今回も20年前と何にも変らないです。つまり、凄くいいです。1曲目の出だしでブライアン・ジョンソンの「人間凶器」と呼ばれる金切声ボーカルがちょっと弱々しいので、うわー流石のAC/DCもこれで終りか、やっぱ年には勝てねえなあ、と一瞬暗い気持になるのですが、だんだん曲の盛り上がりと共にボーカルも調子を取戻してくれるので一安心。
グランジやらインダストリアルやら、「ハードロック」の流行は色々と移り変ってきてますが、あくまでも基本の姿勢にこだわり続ける彼らの姿勢にはRespectです。まあ、それしかできないという話もありますが。
なお、このアルバムを聴いて良かった!他にもAC/DCが聴きたい!という方は迷わず20年前の「Back In Black」を聴きましょう。おんなじです。じゃなくって、これはマジで名盤です。

No.19 New Entry: Hooray For Boobies / Bloodhound Gang
謎のバンド登場。いかにも近頃のバンドっぽいハードなギターロックをやってたかと思えばいきなりピコピコのエレ・ポップになったり、ラップをやってみたり、相当雑多な音楽性。10年ぐらい前にレッチリとかフィッシュボーンとか、既成の概念に囚われずにジャンルの垣根を越えた音楽をやってたバンドが「ミクスチャー・ロック」などとかっこ悪い呼ばれ方をされてましたが、まあ、こいつらはミクスチャー・ロックとは違って、それぞれの曲は既存のタイプなんだけど、全然バラバラなタイプの曲を、同じバンドがやってしまう、と。ある意味フランク・ザッパ的な意表の突き方を狙ってきてます。
あと歌詞がすっとぼけてて、やっぱり半分お笑いバンドとしてウケてるんでしょう。「あの素晴らしいラッパーにこの曲を捧げるぜ」「おー、ノトーリアスBIGか?」「違う、あの最高のThugだ」「あ、トゥパックか」「ちっげーよバカ、ファルコだ」などという掛合いから始まり、何故かその曲のサビに使われるのはフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドの「Relax」、などという謎の曲もあります。というか、ほとんどの曲が謎なんですが (^^;
こういうバンドがこれだけ売れるのは立派なものです。たぶん確信犯同士ということでキッド・ロックあたりと一部ファン層が重なってるんだろうなー。でもキッド・ロックは映像で見るとかなり惹かれますが、音だけ聴いてる分には私はこいつらのほうがずっと好きです。

と、書いていたんですが、聴くにつれキッド・ロックとの比較は正しくないなあ、と。下品にしたケイクという感じですね。とにかく下ネタ&馬鹿ネタ満載で、結構笑えます。「Teenage witch, Sabrina」のところはマジで笑いました(←聴いた人だけわかる)。

No.24 New Entry: Standing On The Shoulder Of Giants / Oasis
今週は上位に派手にドカドカと入ってきてたんですっかり霞んでますねえ。大丈夫でしょうか。日英では当然のように大ヒットのオアシスも、やっぱりアメリカでは苦戦。もっとどんどんシングルをプッシュして一般レベルで知名度を浸透させないとダメでしょう。激しいアクションとか全然なくて、突っ立って歌うだけのライヴのスタイルもアメリカ人にはウケないだろうし。
まあこれについては、私がくどくどと説明する必要はないでしょうから省略。

No.71 New Entry: My Soul My Life / J-Shin
来ました。いかにもB級という顔つきの南部R&Bシンガー。で、これがエロネタ専門だそうで、笑わせてくれます。とりあえず元エクスケイプのラトーシャをフィーチャーした曲がヒットしてるので、彼女の知名度に助けられて多少は認知度があるということですか。マイナーヒットを1曲出しただけの無名R&Bシンガーのデビューアルバムを、100位以内に初登場させるのは案外大変なことです。
で、こいつの所属レーベルが、先ごろ新作を出したばかりのトリック・ダディが所属するマイアミのインディ、Slip-N-Slide。ついこないだまで聞いたこともない名前だったのに、最近はSOURCE誌に広告出したりしてるし、実はこれからブレイクするかも。ちょっとだけ注目しておきましょう。ホームページがかなりショボくて笑えるので、グレードアップしてしまう前に見ておきましょう。http://www.slipnslide.com/

No.75 New Entry: En La Madrugada Se Fue / Los Temerarios
ラテンアルバムチャートではシャキーラ(ライヴ盤だけど)やセレーナ(ベスト盤だけど)を抑えて1位になっている人たち。ですが、詳細がわかりません。ご存知の方、どんな人たちで、どんな音なのかおしえて下さい。

No.77 New Entry: Lay It Down / Jennifer Knapp
コンテンポラリー・クリスチャン系の女性シンガー。デビュー作「Kansas」があっちの世界ではめちゃめちゃウケて、Dove賞を受けたりして、これがそれに続くアルバム。で、今回はロック色が強くなって、シェリル・クロウとかメリサ・エスリッジっぽくなったそうです。このジャケ見るとキレイな人っぽいですが、前作のジャケはめちゃめちゃイケてないです。

No.103 -> No.85: Hear My Cry / Sonique
現在シングルチャートで「It Feels So Good」をヒットさせてる人。いかにもシングルが売れてる割にアルバムは売れなくて、かつ、今ヒット中のシングル一発で消えていきそう(でもイギリスでは生き残る)な人ではあります。
「It Feels So Good」は歌ってるのもビデオに出てるのも女性ですが、あれは「ソニック」ではなくて、「ソニック」はその裏方のプロデューサー/コンポーザー。まあイギリスには非常にありがちなパターンですね。

No.102 -> No.90: The Better Life / 3 Doors Down
昨年大ブレイクしたクリードみたいなタイプのメインストリーム・ダウナー・ロック・バンド。で、実際に今クリードと一緒に全米ツアーをしてるそうです(クリード+セヴンダスト+3ドアーズ・ダウン)。シングルチャートに唐突にクリードの「Higher」がリエントリーしてきたのも、映画「Scream 3」のサントラ効果に加えて、このツアーが始った効果があるのではないか、とはmeantime会員・けいさんの読みです。
関係ないですがクリードのボーカルって物凄く垢抜けなくて、ダサくない?なんか、いかにもイモにいちゃんって感じ。

No.95 New Entry: The Greatest Hits Volume 1: 20 Good Vibrations / The Beach Boys
99年に新装発売されたビーチ・ボーイズのベストが何故か今ごろ初登場...謎だ...
アメリカ人の季節感の無さは昔からですが、どうせ再発するなら夏に合わせる、とかいう発想はないんですかね、彼らには。ビーチボーイズなら何でも揃えるというマニアはいつ発売されても買うでしょうが、たまたまぶらっと立寄った店で、たまたま新譜コーナーに並んでるのを見つけて、何となくその場の気分で買っていくという、ごく普通の一般人というのが、アメリカではCD購買層の大半でしょう、これはベスト盤なんだし。彼らにマーケティングの照準を合わせるべきだと思うんですが...まあ、アメリカ人の季節感の無さは昔からですが(冒頭に戻る)。

No.106 -> No.98: Spit / Kitty
カナダ・オンタリオ出身の女の子4人組。と聴いて食指が動く人の好きなタイプではないと見た。ベイブス・イン・トイランドやホールが引合いに出されるパンク/グランジ的なサウンドだそうで、90年代初頭に「Riot Girrrls」とか呼ばれた、あの手みたい。曲名も「Spit」「Suck」「Do You Think I'm A Whore?」「Get Off (You Can Eat A Dick)」など、いかにもな感じ。今やあの頃のバンドはみんなどこ行っちゃったんだろう、という感じだし、ホールはもう別のバンドになってしまった感があるので、ニッチ市場ではあります。

と、世間の評判だけでこう書いていたんですが、これ、いいです。女版KoRn。当然あんなに凄くないし巧くないけど、かなりヘヴィで迫力ある音だし、ボーカルも叫びまくるし、相当いい感じです。



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