Top40 New Entries Oct.2000-Nov.2000

The Way You Love Me / Faith Hill ()

2000年、彼女は夫とともに夫婦漫才ならぬライブツアー「Soul 2 Soul Tour 2000」を敢行した。なるほど現在の彼女は飛ぶ鳥を落とす勢いだし、好景気に湧くアメリカ大陸をこれまたドル箱スター夫ティム・マックグロウと共に縦断すればさらなる成功は約束されたも同然である。案の定、スター夫婦の話題性も手伝って目算通りツアーは大いに盛り上がった。まさにそうした勢い中「The Way You Love Me」は第2弾シングルとしてカットされたのである。しかし何故かツアーの勢いを体現するほど当初この曲はエアープレイ回数を稼げなかった。その事実に直面したとき、彼女を中心としたスタッフにはひとつの迷いがあったに違いない。ほぼ平行してカットされた夫とのデュエット曲「Let's Make Love」の処遇である。夫婦ツアーの趣旨からすれば「The Way You Love Me」が悲しくも中ヒットで終わった時点で「Let's Make Love」を全面的にプロモーションするのが筋というものである。が、そうしなかった。おそらくスタッフは今一度考えたのだろう。大衆が彼女「Faith Hill」に求めるものは何であるのか、と。先ほどVH1の投票で彼女が映えあるSEXXXIEST VIDEOなる賞を授与したことから推測できるように彼女のファン達は多分に彼女に一人の女としての美しさ、もっと言ってセクシーさを求めている。そうしたときに彼女が夫持ちという事はファンは是非とも認めたくない事実なのだ。夫とのデュエット曲を全面的に推すのはファイス・ヒル、ティム・マグロウ双方のファンに否応無く避けがたい事実を突き付けるに等しい。そこで賢明にもスタッフが判断したのは「The Way You Love Me」のヴァージョン・アップ、新た叩き直しRemixすることであったのは想像するに難くない。この回避作戦は曲のチャート再浮上を見るに至って一応成功したといえよう。しかしこの夫婦ツアー、表向きは夫婦を祝福しているようでいて内実ファンはただそれぞれファイス・ヒル、ティム・マグロウ目的に見にいっているだけであり、この夫婦の結婚を快く思っておらず、果ては嫉妬しているのかと思うとカントリーに戦慄を覚える今日この頃である。(笑)(田鍋)

This I Promise You / 'N Sync ()

掟破りの242万枚というセールスで発売1週目を迎えたアルバム「No Strings Attached」 は、シングル「Bye Bye Bye」(4位)、「It's Gonna Be Me」(1位)の好調なヒットにも支えられついに983万枚(SoundScanによる、2000年年末最終週集計前での数字) という売上で年間アルバムセールス1位を記録した。1999年の年間ベストセラーアルバムはバックストリートボーイズ(以下バックス)の「Millenium」ということで、2年連続ボーイズアイドルグループがトップを飾ってしまったのである。

ところで。

ボーイズグループの多くはUKを中心とした欧州での活動歴を経ての全米大陸上陸組である。(例にもれずこのイン・シンク も初デビューはドイツである。)しかし、そのすべてが全米で受け入れられたワケではない。実質勝ち組といえるのは、インシンクとバックスの2組ぐらいである。負け組は具体的に名前を挙げるとウエストライフ、ファイブ、ボーイゾーンなどである。(98ディグリーズ は列挙したグループとはバックグラウンドが違うためここには入れていない) 負け組でも全米で全くもってヒットがなかったというわけではない。しかし、年々市場での売上総枚数が減少しているシングルではなく、アルバムがどれだけ売れたかが全米でのヒットを見る上での指標になりつつある昨今、そういう意味では前述した3組は明らかに負け組だ。

島国であるUKを含めたある意味狭いエリアである欧州とは違い、全米でブレイクするには相当のパワー及び巧みな戦略が必要になる。それにはテレビ、ゲーム、雑誌、音楽、さらには 玩具などの様々なメディアへのクロスオーバーが特に重要であることを意味する。またそれだけではなく、 メンバー個々のキャラクター、さらにはメディア及びファンを惹き付けるためのゴシップなども重要なポイントとなる。これらにおいて全て高い偏差値を叩きだしてこその大ブレイクである。そしてその次に位置するのが音楽性であると、私は考える。 ボーイズグループの音楽性はその曲を作プロデュース する裏方さんに左右されることが多いため、楽曲という意味でのオリジナリティは本人らの意思がなければ(あるいはあったとしても)裏方に決められてしまう。 実際アルバム 「No Strings Attached」からのサードシングルである本曲「This I Promise You」を聴いても、 感想を抱くのが「リチャード・マークス節未だ健在」ってことぐらいだ(本曲の 作プロデュースはリチャード・マークス)。問題はその裏方の戦略が世間の需要に合っているかどうかである。そういう意味でバックスはアダルト層を狙ったミディアム曲を前面に押し出し、インシンクはあくまでクドいアップ系を出しながらも隙間隙間でこういう曲を 入れてリスナーを退屈させないという作戦が効いているということだろう。

メンバーのJCによると5月にはインシンク3枚目のアルバムのリリースが予定されており、 そこには今までとはいくらか違う実験的な音作りの曲があり、メンバー全員がプロデュース、または作曲で 参加したアルバムになるという。こうして将来インシンクにプロデュースされる アーティストなんかが出てくるのかも、と考えると妙に楽しかったりする。(はまべ)

Between Me And You / Ja Rule feat. Christina Milian ()

昨年デビューしたばかりだというのに2月には自身の率いるマーダラーズのデビューアルバムをドロップ、そして10月にはセカンドアルバムである「Rule 3:36」をま たしても初登場1位に送り込むというハイペースの快進撃を続けている2000年のジャ 。DMXやJay-Zらの大物と対等につるみ、デフ・ジャムのA&Rアーヴ・ゴッティに最も 信頼を置かれ、2人の子どもの父親でもある22歳は手を休める暇もない。今回のア ルバムタイトルの「3:36」の数字は聖書の章にある数字を習ってつけたそうで、「アルバム収録曲1曲あたりの平均時間(分)」という一説も。さてアルバムのリード トラックである今回のシングルは東洋風の音使いのループが耳を引くお気楽パーテ ィー・チューン。ビデオでも例によってビキニのギャルがたくさん登場。当初のジャ・ルールの希望「沖縄でビデオ・シューティングして日本人の女の子たちをたく さん登場させたい」という願いは叶えられなかったようだが…。フィーチャリング ・ゲストとして登場するのは映画にも出演しているというクリスティーナ・ミューラン嬢。「アナタとワタシのひ・み・つ」という不倫ソングのフックを歌うコケティッシュな声がドスの効いたジャ・ルールの声と好対照。そういえば昨年コラプトが彼の元婚約者であるフォクシー・ブラウンとジャ・ルールの仲を疑って「Callin' Out Names」でディスしていたが、真相はいかに?(中村)

She Bangs / Ricky Martin ()

今や洋楽なんて聴いてなくても、彼を知らない人はいないほどお茶の間人気を確立したリッキー・マーティン。ニューアルバム『Sound Loaded』からの最初のシングルは、来日公演でさっそく披露されたこの曲。ちょっと聴いた限りでは今までのヒット曲と同じに感じられるけど、実はこんなに進化しています。

【その1 ソングライティングの強化】 ここ数年のヒット曲をがっちりサポートしてきた、メヌード時代からの盟友ロビー・ロサと "大合唱誘発請負人" デズモンド・チャイルド。今回は彼らに加えコロンビアお抱えソングライター、ウォルター・アフナシェフも参加。今までのヒット曲に比べてヴァースとコーラスのつながりの不自然さが改善されている。それによって使う音域が大幅に狭まった。これは歌う側(=リッキー)にとってかなり楽になり、その分ダンスやアクションなどのファンサービスに向けるゆとりが増えることになる。「Livin' La Vida Loca」ではコーラスで声が出なくなるようなカッコ悪さも見受けられたが、この曲ではまず大丈夫だろう。

【その2 バックバンドの充実】 まずギターには前作では出番の少なかった元マクサスのマイケル・ランドウを奮発して起用、相変わらずの切れ味鋭いプレイを聴かせてくれる。また「Livin' La...」では2本(トランペットとフリューゲルホーン、残りは実はキーボード)だったブラスは今回何と14本(サックス3種4本・トロンボーン2種5本・トランペット4本)。サウンドの厚みは今までの比ではなく、もはやフォロワーが安直にマネしようにも予算が追いつかないレベルに到達した。

【その3 ルックスの改善】 生え際がマイケル・ボルトン化してるだとか、「Shake Your Bon-Bon」のクリップでは画像を加工してデブをごまかしてるとか、どうもブレイク後ルックスの衰えが目立ったリッキー。しかし今回は懸命のダイエットでまずは腹周りのシェイプアップに成功。問題の髪型も、前髪を下ろすことでなんとかうまく処理した模様。しかしアゴ割れ度だけは上昇しているが、まあこれは「チャームポイント」らしいのでいいのだろう、たぶん。

確かにシンガーとしてのリッキーは決して一流ではない。アルバムを聴いていても、バックトラックがラテンっぽくなればなるほどヴォーカルの貧弱さが気になってしまう。それでも自分を支持するファンのため、少しでも精進して良い音楽を追究しようとする姿勢はもう少し評価してあげても良いのではないだろうか。(松本)

Gotta Tell You / Samantha Mumba ()

世の中アイドルだらけである。しかし特に女性の場合、そのほとんどが白人でブロンド。グループの場合ブラックやプエルトリカンのメンバーがいたりするが、ソロの場合のカラード率はかなり少ない。「私はブラックで、しかもアイルランド出身だから」現在17歳のサマンサ・マンバはこう語る。「確かに主流派じゃないけれど、その分何か主張があるように受け止めてもらえるわ。」彼女は3歳から15歳までビリー・バリー演劇学校に通っていた。あのウェストライフのブライアンも卒業生というこの学校、さながらアイルランドの堀越学園といったところか。98年にはオペラの主役を務め、アイルランドのTV番組にも多数出演。そうして知名度を上げていったサマンサは昨年ポリドールと契約、ヨーロッパ中をプロモーションしながらアルバムを完成させた。アルバムからの最初のシングルがタイトル・トラックの「Gotta Tell You」で、アルトな声が粘っこいベースラインに乗ったダンス・ナンバー。スタント使いまくりでビルから飛び降りたり飛行機に飛び乗ったりというビデオリップも、アイドルとしてはやや異色か。ちなみに次のシングル「Body To Body」はデヴィッド・ボウイ「Ashes To Ashes」を大胆にも全編サンプリング。ボウイ本人もお気に入りというこのナンバーは、彼女のWEBサイト上のオンライン・ゲームのタイトルにもなっており、もちろんゲームをしながら聴くことができる。(松本)

Independent Woman Part1 / Destiny's Child ()

デスティニーズ・チャイルド、略してデスチャ。いかにも三流アイドル風のいかがわ しいグループ名であるが、意外に侮れない。デビュー曲は「No,No,No」、セカンドア ルバムからのファーストシングルは「Bills,Bills,Bills」。いずれも大ヒットを記 録したが、キワモノ臭さは隠せず、これら2つのネタ振り曲だけを残して消えていく ものかと思われた。しかし以降に出てくる曲がいずれも侮れない。そして今度は話題 の映画「チャーリーズ・エンジェル」の主題歌でありつつ、サントラからのファース トシングルに選ばれたこの曲だ。悔しいが、これがまたしてもいい出来なのである。 恐るべし。
まずイントロから延々と続くベース音が耳に残る。それに乗せて、歌い出しの語りっ ぽい部分から、効果的なバックグラウンドヴォーカルを挟みつつ徐々に盛り上げてい く。何時の間にかこっちも「I've bought it !」なんて一緒に叫んでしまっていたり する。そのまま十分にテンションの上がった状態でサビに突入。ここのコーラスなん かは非常にあざといのだけど、何故か格好よくきこえてしまう。どんどん盛り上げて 最高潮の状態で一気に走り抜けていく展開に、こっちもいい具合に翻弄されてしまう のだろう。おそるべし。
来年には最新作も出し、なおかつメンバー3人のソロ作が同時発売されるとの噂もあ る。度重なるメンバー交代などのゴタゴタなんかものともせず、今一番勢いのあるグ ループだ。オソルベシ。
ちなみに "Independent Women Part 2"のシングルも発売されているが、こっちは恐 るるに足らないのでご安心を。(小川ボ)

Pinch Me / Barenaked Ladies ()

90年代後半頃から、HOT100のエアプレイ・ポイントにモダン・ロック局のエアプレイが加算されるようになった。人気の割に全くチャートに登場しないロック勢への救済措置という意味もあったあろうが、生きのいいモダン・ロックを取り込むことでチャートを活性化しようという意図もあったと思われる(ラジオ局の数で上回るメインストリーム・ロック局のポイントが反映されないのはそういう意味だろう)。が、結果としてHOT100のロック色が強くなったかというとあまりそう思えない。むしろモダン・ロックのヒット曲が "HOT100予備軍" 化し、アダルト・オルタナティヴとの境界線が不明瞭になっただけである(そのせいか今年後半にはやや軌道修正が見られた)。モダン・ロックのラジオ局は、新しいバンドを拾ってきては、一般大衆受けする曲を選んでCHR局(=HOT100エアプレイの基幹となるラジオ局のフォーマット)に売り込み、自分の局の評価を上げることを狙っているように見受けられる。まるで弱小サッカーのクラブがトップ・チームに選手を高額で売り込むように。だから一度HOT100でブレイクしたアーティストは、もうモダン・ロック局のリストには載らない。マッチボックス・トゥエンティもグー・グー・ドールズもウォールフラワーズも今ではモダン・ロック・トラックスのTOP20にすら入らない。そしてベアネイキッド・レイディーズも。98年のヒット「One Week」は、未だにモダン・ロックとHOT100両方で1位になった唯一の曲であるが、新作からの最初のシングルである「Pinch Me」は、モダン・ロック局では全くといっていいほど反応がなかった。しかし彼らの人気には翳りなし。アルバム『Maroon』は初登場5位、シングルも順調にTOP20入りとなっている。もともと素朴ながらウィットに富んだ音楽性が身上の彼ら、モダン・ロックなんてカテゴリーは邪魔なだけである。確かに前作『Stunt』でのトム・ロード・アルジの音づくりは当時は "モダン" であったし、「One Week」の強烈なインパクトが彼らの人気を一躍世界的にしたのは事実。が、必要以上に化粧を濃くしたようなサウンドは、元々彼らを支持すべきリスナーを遠ざけてしまった感もある。その反省か今回プロデュースを手がけたのはドン・ウォズ。派手すぎず地味すぎず暖かみがある中でも芯の通ったサウンドは、バンドのキャラクターにも合っている。特にのんびりとした導入部から得意の早口調になり、バックに柔らかなタッチのコーラスがからむ部分の処理は、プロデューサー変更の効果ありというところか。(松本)

Shape Of My Heart / Backstreet Boys ()

おめでとう。貴方は、2000年〜2001年を確かに生きたという歴史の証人となった。バックストリート・ボーイズ。好むと好まざるとに関わらず、20世紀末の音楽を語 る上では欠かせない存在である。ここ数年のアイドルブームの先駆者であり、実際に膨大な数のCDを売ってきた。97年作「Backstreet Boys」はアメリカで1300万枚。 99年作「Millennium」は1200万枚の出荷。最新作「Black & Blue」は、あれだけアイドル離れした地味なジャケにも関わらず、発売週にアメリカだけで約160万枚、全世界で500万枚を売ったという。多くのアーティストが一生かけても達成できないセールスを、彼らは一週間で達成してしまうのだ。そんな、ポップ・ミュージック史に確実に名を残すグループの代表作となる曲を、あなたはリアルタイムで体験したのだ。先人たちはエルヴィスを初めて聴いたときの衝撃を、ビートルズを初めて聴いた時の感動を後の世代に伝えている。同じように、あなたはこの曲を初めて聴いた時の爽やかな感動を、後世に伝える義務がある。

いつものようにマックス・マーティンを中心とするスウェーデン人脈による作・プ ロデュース。手堅い。目新しさは何もない。しかしこの、隙のない完成度の高さはどうだ。確かに、これは評論家にウケる種類の音楽ではない。ここにはソウルがな いし、アーティスティックな志も感じられない。しかし、それは当然なのだ。これはパール・ジャムやレディオヘッドとは全く別種の音楽なのだ。大量消費時代の、商品としてのポップ・ミュージックの完成形。

マクドナルドのハンバーガー。本格派じゃないし、体にも全然良くない。でも子供 達は大好きだし、我々もたまには妙に食べたくなる。誰がどんな文句をつけようと 、彼らは紛れもなく「勝ち組」であり、負け組が何を言おうがそれは悔し紛れの遠吠えでしかない。

JIVEは音楽業界のマクドナルドとなりつつある。さしずめバックスは、ビッグマックのバリューセットだ。彼らに文句をつけるのは自由だが、大衆はそんなことは、 気にしちゃいない。 (しんかい)

Dance With Me / Deberah Morgan ()

USポップチャートでついに初のTOP10ヒットを放ったデブラ・モーガン(略してでぶ もー)。実はここ日本では違いのわかるR&Bファンにはおなじみ。5オクターブの声 域を操り、15歳でアリゾナ大学のゴスペル・クワイアを教えていたという実力派のでぶもー、本作で漸くUSでの評価との温度差が縮まったとも言えそう。まず94年にはアトランティックからデビューアルバム「debelah」をリリース。日本では本作収録のデニース・ウィリアムズのカバー「Free」は今でも人気が高いクラブクラシック(シャンテ・ムーア版も並んで人気)。一方USではファーストシングル「Take It Easy」がR&Bチャート56位、セカンドカットの「Free」は同チャート96位にとど まるに終わる。98年にはレーベル移籍、モータウン40周年の記念すべき第一弾アーティストとしてアルバム「It's Not Over」を発表し、当時の新社長ジョージ・ジャ クソンが入魂プロモを遂行。新婚だったジャクソン氏の奥様の故郷でもあるここ日本ではキュート&ラヴリィな「I Love You」をリード・トラックとしてラジオ・オンエアも絶好調。来日したでぶもーの可憐なショーケースライヴも効を奏してアルバムは5万枚以上のセールスを記録。セカンドシングル「Ain't No Mountain」(ダイアナ・ロス&ザ・シュプリームスのカバー)もきちんと日本盤で入手可。USでは ダークに歌い込む「Yesterday」がファーストシングルとしてリリースされたもののR&Bチャート28位、ポップス・チャートでは56位と今一歩の結果に。そのうえ「モータウン発掘の新人」強調戦略のためアトランティックでの前作は封印されてしまう 。ジャクソン社長の結婚式でスティービー・ワンダーとデュエットを披露するなど大事にされてきたが、社長がキダー・マッゼンバーグに代わるとともにモータウンを離れ古巣アトランティックに出戻り。ところがでぶもーの才能はこの移籍劇に埋もれてしまうことなく、3枚目のアルバム「Dance With Me」を全曲兄と本人の2人で完成させた。さてここからの第一弾カットとなるこのシングル、下敷きにしてい るのは52年のミュージカル楽曲「Hernando's Hideaway」。一聴して印象に残るタン ゴのリズムをアグレッシヴに歌いこなし、新生でぶもー好スタート。ぴこぴこ度+ 重低音度アップのsoul central mixもくせになる聴感。かつてミス・ブラック・テ ィーンエイジ・ワールド・コンペティション優勝も果たしたでぶもーが優美に踊るビデオも是非御鑑賞を。(中村)

I Wish / R.Kelly ()

最近のR・ケリーの曲を聴くと、どうもエロエロネッチリ感が薄くなり漂白された印象が強い。まあ戦略としてより広い層にアピールするべく彼はクロスオーバー化を図り、ねちっこさを排除しているのだろうけど....。しかし名盤「12Play」で見せた ネッチリ感を出す彼ほどのR&Bシンガーを他に見い出せない今となっては、私は昨今 の軌道修正にはとても口惜しい思いをしていた。しかし今回発売されたアルバム 「TP-2.Com」の”TP”は『12Play(Twelve Play)』の頭文字を取ったとの売り文句で はないか。当然「12Play」の続編を期待して「お、黒光りエロ坊主復活か??」つぶやきつつ聞いてみるが、やはり漂白化が定着しつつあるのを確認するだけであっ た....。ほぼ全曲が女性との愛に対するものでエロな歌を確かに歌ってはいるが 「12Play」で見せたMax絶倫に達していないのだ。いや萎びた自身をユンケルなどの 滋養強壮剤で人工的にMaxに持っていき、装おうとしているフシがある。そうした状況下での「TP-2.Com」からの第一弾シングル「I Wish」だが、いわゆるギャングスタHomie物の流れを汲みながらもR・ケリーR&B風に仕上げているのはさす がといったところだろうか。ソウルとヒップホップのミクスチャー的バランス感覚は 一時のサントラ漬けから抜け出していい感じに戻ってきている気がする。で、この曲 今は亡き母親へのレクイエムで切ない心情と変わらぬ愛を痛切に歌い上げているのだ が、性愛ものを持ってこず、こういう曲を第一弾シングルに持ってくるのがやっぱり 今の彼なんだろう。ところで実際R・ケリーの母親って亡くなっているのでしょうか?歌詞にも出てくるけど4年前からずっと涙に暮れているって丁度彼が軌道修正した 時期と一致するのだが.....。母親の死をきっかけにして性愛路線をやめ、いくらか祈りめいた歌を歌うようになったのか?どうやら戦略だけでネッチリを止めた訳ではな いみたい。うーむ。(田鍋)

Best Of Intentions / Travis Tritt ()

90年代前半のカントリー界を代表するアーティストの一人、トラヴィス・トリッ トが久々にヒットチャートの最前線に復活。1989年デビューの彼は、同世代のアーティストたちが推進した“ニュートラディショナル運動”から距離をおき、カウボーイ・ハットを被らず、長髪でサザン・ロックスタイルのカントリーを演奏 し、ヒットチャートで成功した“アウトロー”。デビュー以降の数年間に、数多 くのヒットと数百万枚のアルバムセールスを記録し一時代を築いた彼だったが、 HOT100チャートは彼を完全に無視(当時サザンロックは時代遅れの極致だった)、96年にコメディアンのビル・エングヴァルがヒット(43位)させた 「Here's Your Sign (Get The Picture)」にフィーチャーされたのを除いて、チャートに登場することはなかった。しかしそのブルージーな音楽性はミュージシャンの間では評判が高く、これまでにバディ・ガイやデヴィッド・リー・ロスな どジャンルの異なるアーティストのアルバムにも顔を出しているし、98年の映画 「ブルース・ブラザーズ2000」にはオールスターバンド、ルイジアナ・ゲイター・ボーイズの一員として、エリック・クラプトンやスティーヴ・ウィンウッドらと共に出演もしている。2000年に入って古巣ワーナー・ブラザーズを離れ、ディクシー・チックスの成功で盛り上がっているソニーに移籍した彼はアルバム 「Down The Road I Go」を発表、そこからカットされたこの曲が彼にとって6年ぶりのカントリーナンバー1ヒットとなった。ベテランアーティストの復活、これは今後のトレンドになるのか?(八亀)

Who Let The Dogs Out / Baha Men (S-Curve/Sheridan Square)

バハ・メンといえば、日本でここ数年ちょこちょことアルバムを出してて、一昨年は 元アメリカン・トップ40の大高英慈氏のプロデュースであの70年代のポップ・ヒット 「Becah Baby」というベタな選曲のカバーを出した、というのでミーンタイマーの間でもちょっと話題になったりした(なってない?)グループ。そんな関係で「日本で しか売れてないポップス・グループ」(失礼)というイメージがあっただけに、この 曲が去年の初夏にチャートに入ってきた時はおや、という感じがしたが、曲もえらく能天気な感じだったし小ヒットで終わるだろう、くらいにしか思ってなかったという のが正直なところ。ところが人生何が幸いするかわからんモンで、「ウ!ウ!ウ!ウ !」という威勢のいいかけ声とアップビートなイメージがスポーツ・イベントにぴっ たり、ということで大リーグのシアトル・マリナーズ(そう、昨年佐々木が所属して 新人王獲得、今年はイチローが入団したあのチーム)の試合で応援用に使われたのを きっかけにいろんな野球やフットボールの試合で大受け。マリナーズなんか試合にバハ・メン呼んで生で歌わせたくらいの盛り上がりようで(誰が歌ってるかは知らなく ても)今や全米のスポーツファンにすっかりお馴染みの一曲になってしまった。こうなると勢いというのは恐ろしいものでこの曲収録の彼らのアメリカでの4枚目にあたる同名アルバムもぐんぐんチャートを上がり、とうとう全米5位の大ヒットアルバムに。昨年あんまりアメリカで売れないんでリード・ボーカルがレニー・クラヴィッツ のバックボーカルにとらばーゆしてしまった、という寂しい状況をはね返しての大ヒットだけにメンバーの喜びは察するにあまりあるが、どうもこれ一曲で消えてしまう くさいなあ。今年の夏の野球シーズンには細々とイチローの応援でこの曲を歌ってるような気がしてならない。(阿多)

The Little Girl / John Michael Montgomery ()

フェイス・ヒルがとうとうHOT100年間チャートのトップを獲得!華やかな話題に事欠かない昨今のカントリー界だが、一方で着実に支持を得続けているベテラン男性アーティストたちの活躍も見落としてはならない。中でもずば抜けた安定感 をもってヒットチャートに登場しているのがジョン・マイケル・モンゴメリー。 彼のニューアルバム「Brand New Me」からのファーストカットは、曲調こそ穏やかだが、歌われている内容は非常に重い。信仰を忘れ、酒やドラッグに溺れる両親、その生活を見続ける少女。酒に酔い、娘にまで暴力を振るう父親は、荒れ果てた生活の末妻を銃殺、自らも命を絶ってしまう。独り残され里親に引き取られた少女は、その先で初めて親の愛情を知り、神への信仰も知る。初めて日曜日の礼拝に出かけた日、キリストの絵を示された少女はこう言った。「私、この人の名前は知らない。でも、この人はいつも私の傍にいて、私の命を守ってくれたの。」曲の前半は徹底して絶望的な生活を描写し、最後の1コーラスで神による救済を歌い上げる(女声ハーモニーはケニー・ロジャースの「Buy Me A Rose」 に続いてポップチャート登場のアリソン・クラウス)。日本人からすればあまりに美談臭くて鼻につく感じがあるが、アメリカ人にはたまらない物語なのだろう。この曲はカントリーチャートでナンバー1、ポップでもTOP40入りを果たす大ヒットとなった。(八亀)

E.I. / Nelly ()

「だうんだうんべいべ〜」と緩くバウンスするデビュー曲「(Hot S**t) Country Grammar」が2000年を代表するラップ・チューンとなり、一躍時の人となったネリー 。このヒットで地元セントルイスをレペゼンしているが、実はセントルイス出身で成功を収めたラッパーはネリーが初めてではない。「Ghetto Jam」や「Sweet Poteto Pie」のヒットを持つドミノがその人。しかし当時は南部ラップなんて見向きもされなかった時代。あたかもロングビーチ出身であるかのようなリリックはセントルイス市民には不評だったらしい。地方のラップ事情が成熟してきた今日、地元の言葉で全米を相手に勝利していくラッパーが増えていく光景は何とも頼もしい。先日のMTV授賞式でネリーは地元仲間のセント・ルナティックスとの息の合った絡みやアンダーウェアを覗かせる一場面などなかなか見せ場のあるステージを披露。 しかし一部の地元の人々からは「あいつケツなんか見せやがって(実際にはアンダーウェアだけ!パンツをおろしていたのはベルトのバックルが壊れてしまっただけだとか)」と批判する声が。またセントルイス市長も「Parental Advisoryのステッカーのついたラッパーを地元の代表するアーティストだと思われたくない」とネリ ーの成功を受けてのインタビュー依頼を拒否。それでも「どこにでもねたみ深いニガーはいる。そういう奴らにいかに対処していくかが大事だっていつもばあちゃんが言ってた」とクールに対応しているネリー。若くしての突然の成功にもかかわらず地についた発言は小さい頃に両親が離婚してから双方に引き取ってもらえず、親戚の家を転々としながら育っていく中で身につけた処世術かも。さて、この曲はロングランヒット中のデビューアルバム「Country Grammar」からのセカンドシングル。マイケル・ジャクソンの「Liberian Girl」を思わせるマリンバ音のシンプルなトラックが印象的。フック部分で繰り返されるタイトル「いーぁい」は「Yes」の意味で、スポーツ観戦時のかけ声として使われているとのことなので「イェーイ」に相当する語句のよう。ところでネリーはかつてはプロ入りを目指したほどの野球少年 。地元のチームでMVPを獲得した後にスカウトが殺到し、97年にはアトランタ・ブレーブスとピッツバーグ・パイレーツのキャンプに参加している。結局野球ではチャ ンスをつかめず、それを当時は相当悔やんだそうだが「その時の自分があってこそ今がある」と前向きに語っているのがまたまたよろしい。(中村)

Go On / George Strait ()

祝デビュー20周年!1982年以来毎年カントリーチャートでナンバー1ヒットを出 し続ける男、ジョージ・ストレイト。彼が大成功を収めた20世紀に別れを告げ、 来たる新世紀への一歩を踏み出したニューアルバムは、その名も「George Strait」。そこからのファーストカットであるこの曲は、長い間連れ添った恋人との別れの歌。ちょっと展開が粗いかな?と思われるAメロに続いてビージーズの「傷心の日々(How Can You Mend A Broken Heart)」を思わせるブリッジ部に突入、そしてサビで歌の主人公が恋人に投げかける言葉は「自分の人生を歩め (Go On)」。これまではいろいろと苦言も呈してきたけど、別れるとなったら君へのメッセージはただその一言。勿論自分も我が道を行くさ・・と。これはもしかしたら、これまで20年間蜜月状態にあったモダン・カントリー界へ、彼なり の“時代の一区切り”宣言なのかもしれない。シーンを背負って立つ大黒柱的なスタンスから一歩引き(深読みかもしれないが)我が道を行こうとするストレイ トの行く末は如何に?ライフ・ゴーズ・オン・・。(八亀)

If You're Gone / matchbox twenty (Lava)

昨年はボーカルのロブ君がサンタナおじさんの盛り上がりにうまく引っ張られた格好でアルバム『Mad Season』からの第一弾シングル「Bent」も見事No.1と、アーティス トとしての巡り合わせがえらくいい感じだったマッチボックス・トウェンティ。プライベートでも結婚をキメるなど上げ潮状態のロブ君率いる彼らが続いてカットしてきたシングルがこの曲。前の「Bent」が何となくマイナー調歌謡曲的なイメージでちょっと違う感じが個人的にしてたのに対し、今回はもうこれぞ中西部のハイウェイぶっ飛ばしてるときに流れてくると最高に気持ちいいぞ的な、いい意味で典型的な王道ハートランド・ロック。但しそんなに重たくならずに、リリカルで哀愁漂うところもちゃんと残すあたりはまさにマッチボックス流儀という感じで、ファーストのイメージ に戻った「ヌケ」みたいなものが気持ちいい一曲です。最近こういうストレートかつ 気負わない作風で、かつこういう「ラジオ映えする」シングルを上位に持ってこれるアーティストが少ないだけに、彼らの存在はある意味貴重。いい意味での70年代的な味わいを持つアーティストとして今後も支持していってあげたいと思うことしきりで した。(阿多)

What's Your Fantasy / Ludacris feat. Shawna ()
西海岸ラップが盛り上がった時、東はそれに徹底して対抗した。お互いにライバル視してスキルを磨き合ったのは良かったが、子供の喧嘩レベルの下らない抗争が、 人の命をも奪う結果となってしまった。
南部ラップが盛り上がってくると、意識的にか、無意識にか、東はそれを受け入れた。例えばDMXやジェイZを手懸けるプロデューサー、スウィズ・ビーツの音作りは 、南部サウンドの影響なくしては成立しない。99年後半以降に組まれたヒップホッ プ系コンピレーションアルバムには、サントラも含め、ほとんどのアルバムに1曲は 南部のアーティストがとってつけたように収録されている。ネリーやスカーフェイ スやアウトキャストといった南部のアーティストがヒップホップ雑誌の表紙を次々に飾り、アルバムチャートの上位に居座っている。地方のアーティストの味方であ る「Murder Dog」誌は以前からニューヨーク偏重の「Source」誌にライバル意識をむき出しにしているが、その「Source」が最近南部アーティストを無視できなくなっている。
CA$H MONEY勢やネリーなどは、もともと地元だけでウケていたものが、メジャーレーベルと提携して全国配給+本格的なプロモーションを得たらあれだけ大ヒットしてしまったものだ。大手レーベルは、次なる金の卵を南部に探している。アトランタでラジオ番組を持ち、自分で立ち上げたDisturbing The Peaceというレーベルか らシングル「What's Your Fantasy ?」をヒットさせ、アルバム「Incognegro」を何万枚も売っているリュダクリスという男に、大手レーベルが注目するまでに時間はかからなかった。そして争奪戦の末彼をゲットしたのはDef Jam South。ニューヨークを代表する老舗ヒップホップ・レーベルが、南部ラップに本格的に進出すべく、 スカーフェイスを社長に据えて設立した新レーベルだ。
と、そういう超追い風の中登場してきたので、やや時代の徒花的なものを感じさせるリュダクリス。おとぼけ系のルックスの通り、ちょっとコミカルな感じが売りの人みたい。アルバム「Back For The First Time」もトップ10内に初登場し、このタイプのラップとしては超例外的に日本盤も速攻でリリースされた。
この曲は典型的な下ネタ・パーティーソング。男女の掛け合いで、男(リュダ)が ひたすらヤろうぜと迫りまくる内容。しかし実はショウナに加えてフォクシー・ブ ラウン、トリーナをゲストに迎えた超強力な4Pバージョンが存在し、こっちは女性 3人が順番にリュダに迫る(というか半分脅してる)。あまりにも強烈なのでエロを通り越してギャグになってるところがリュダのキャラであり、この曲の持ち味だ。 (しんかい)
He Loves U Not / Dream ()

最近では裏方での仕事が中心になり、カール・トーマスら有望な新人を送り出しているショーン"パフィ"コムス。彼がCEOを務めるバッド・ボーイ・レーベルがカリフォルニア中から数百人の女の子をオーディションで集った。選ばれたのはオレンジ・カウンティ系ロックの好きなダイアナ(ブルネットでストレート)、ゴッホの絵が好きなホリー(ブルネットでカーリー)、オーディション会場で「My Heart Will Go On」を熱唱したメリッサ(ブロンドでロング)、VibeやTHE SOURCEを愛読しピカソの好きなアシュレイ(ブロンドでショート、以上2000年12月時点)の4人。彼女たちの夢を託すグループ名は、その名の通りドリーム。バッド・ボーイ実質初の白人アーティスト(ファズバブルというロック・バンドもいるが、アルバムデビューはまだ)に、パフィCEOも気合い十分。まずアルバムに先駆けて発売されたシングル「He Loves U Not」は、スティーヴ・キプナーと元システムのデヴィッド・フランクという、クリスティーナ・アギレラの「Ginnie In A Bottle」を手がけたコンビ。 ありがちなアイドル系バウンシー・チューンながら「彼が好きなのはこの私、アナタじゃないの」と強気な歌詞が印象的で、後発ながらアイドル戦線へ参入する意気込みを感じさせる。年明けにはDVDシングルもリリース、お茶の間へのヴィジュアル定着も狙う。その後リリースされるデビュー・アルバム『It Was All A dream』にはニュー・エディション「Mr. Telephone Man」のカバーも収録され、これがかなり良い出来。より多くのファンを獲得するため、イン・シンクのツアーでオープニングを務めたばかり。果たして4人は夢をつかむことができるのか、それとも夢は夢で終わるのか。(松本)

I Just Wanna Love U (Give It 2 Me) / Jay-Z ()

ジェイZ。本名ショーン・カーター。 1970年12月4日ニュー・ヨークはブルックリンで生まれ育つ。 リスペクトされているかどうかは別として、90年代後半のラップシーンを語る上で無視することはできないラッパーの1人である。

ジェイZは働き者である。
アルバムはほぼ1年に1枚のハイペースリリース。しかも出すアルバムはきちんとシングルヒットも産み出し、いずれもプラチナムヒットになる。 自身5枚目となる2000年末に発売されたアルバム「The Dynasty Roc La Familia (2000 - )」 も例にもれず、リンプビズキットを1位から蹴落とし、さらにアウトキャストの超注目盤、U2 の大復活作などの強力リリースを押しのけ初動56万枚を売上げ1位を記録した。もちろん数週でプラチナムレコードである。なお、アルバムは当初 メンフィス・ブリーク、ビニー・シーガルとのユニットであるダイナスティの アルバムとして製作されたが、なぜかソロ名義になってしまった。 (しかし内容はほぼロッカフェラレーベルのコンピ的)

ジェイZは金持ちであり、人気者である。
英国のアイドルから米国のあの歌姫まで、はたまた同業者である他ラッパーからの ゲストラッパーとしての依頼はこと欠かない。その度にお金が入る。 アルバムが売れるからやっぱりお金が入る。お金が入るから売れ筋のプロデューサーに高い金を払っていいトラックをつくらせることが出来る。だからやっぱり大ヒットシングルが 生まれる。ジェイZは1回旬の時期を過ぎてしまった賞味期限切れプロデューサーは あまり使わない。例えそれが前回アルバムを大ヒットに導いてくれたプロデューサーであっても。そういうプロデューサー起用精神もあってか、ジェイZのトラックはそれが世に出た瞬間では世間が一番飛びつきたがる音になりうる。「The Dynasty〜」からのファーストシングルであるこの曲は、ネプチューンズのプロデュース。バスドラによりメリハリついたタイトなリズムに、小粋なファンキーリフ乗せられて、サビなんかでちょっと 「パン・パン・ポーン」なんて音入れられたら、大衆に受けないはずがない。 サビを歌う女性ボーカルがいきなり途中でガナりだすのもポイントが高い。

実はジェイZとは初顔合わせとなるネプチューンズ。
ノリエガの「Superthug」、 ケリス「Caught Out There」はたまたODB「Got Your Money」で聴かせた低音がビシバシ効いた超メリハリトラックはここでも健在であった。 しかし、今この曲のレビューを書いていて思うのだが、これがジェイZの曲 である意義は何だろう。ミュージカル「アニー」のフレーズをサンプリングした、20世紀Wackest Track Best10に入りそうな「Hard Knock Life」、 またそれと同罪な「Anything」、バカンス気取りな「Big Pimpin'」、 ヒップホップがなんか別のものと有機反応を起こして出来たかのような複雑かつ難解な「Can I Get A...」、超脱力な御気楽無気力トラック「Jigga My Nigga」、そしてこの曲...。いずれもポップスファンの耳に届くほどの大ヒットになったことは確かだが、なんかここまでくると1人でいくつものキャラクターを演じるコント命なお笑い芸人を見ているだけのような気がしてならない。そういう意味では彼は自分で言ってるように「王」であるかもしれない。ただしそれは「ラップ」ではなく「喜劇」という世界での.....。(はまべ)

It Wasn't Me / Shaggy feat. Ricardo "RikRok" Ducent (MCA)

すわ、ラテンの次はカリビアンか?バハ・メンなんぞにゃ負けられねえ、とばかりに 1995年に「Boombastic/In The Summertime」(3位)の大ヒットを飛ばしたシャギー 君がまたやってくれました。それもバリバリのダンスホール・レゲエではなく、男性シンガー、リカルド君(ちなみに彼の素性は不明です。情報乞う)のメロウなR&B風 ボーカルを配した、上手にプロデュースされたレゲエ風味のR&B・ポップ・ソングと いうことでこれはラジオで受けるだろうなあ、という感じの曲。確かに曲は悪くない が、しかし曲の大半はリカルド君のボーカルで、シャギーはポイントポイントでレゲエ風ラップを数小節かますだけ、という調子で、おまえそりゃあないだろう、これじ ゃフィーチャリングの前後が逆じゃねえのか、と言いたくなってしまったんですが。 詞の内容も隣の家の女の子と浮気の真っ最中を彼女に見つかってしまって必死に「俺 じゃねえ」なんて無理な言い訳をしてる男の歌、ということで結構笑えるあたりが受けてるもう一つの理由なのかも。まあしかし2位まで上がる大ヒットになるとはちょっと予想外でしたが、フロリダでああいう訳のわからん騒ぎが起きてるんで、アメリカ国民としてはこういう軽ーい曲が気楽でいいって感じだったのかも。そんなこと全然関係ないかもしれないけど。(阿多)

Ms.Jackson / Outkast ()

アウトキャストは、「1999」から「Sign 'O' The Times」ぐらいまでの全盛期のプ リンス並に評価されていい存在である。昨年のアルバム「Stankonia」はヒップホッ プだけでなく、あらゆる方面のメディアから絶賛され、その評価に相応しいぐらい、実際に売れてもいる。2000年前半の主役がドレ+エミネムなら、後半の主役はアウトキャストだろう。
プリンスを引き合いに出したのには理由がある。どちらも、「Pファンクやスライやジミヘンからの影響を受けながらも、他の誰にも作れない独自の音楽を生み出している」のだ。それが、極めて質が高く、かつ、適度に売れ線でもあるので一般受け もいい。アウトキャストはSF趣味や変な造語を駆使するあたりPファンク直系の感がやや強いが、全盛期のプリンスと、立場は非常によく似ている。違うのは、ここ日本での受け方だ。
プリンスの全盛期。当時は日本で今とは比較にならないぐらい一般的に洋楽が聴かれていたこともあり、地方の公立学校に通う普通の高校生だった私や、周りの友達 でさえプリンスの新作を追いかけて、聴いていた。そのルックスの気持ち悪さに誰 もが拒否反応を示しつつ、その「音」への興味は誰も否定できなかった。 今、いったいどれほどの日本人にアウトキャストが聴かれているのだろう。今回の アルバムは今までになく日本の雑誌でも評価されているし、彼らを表紙に抜擢した「BMR」のような雑誌もあるが、meantimeのホームページを見にくるような「洋楽リスナー」を自称するような人でさえ、まともにアウトキャストを聴いているのは少数派だろう。あの頃とはすっかり状況が変わっているし、日本の洋楽シーンがどうのこうのと言うのはここでは全然本題ではないのでこれ以上は触れないが、「我々が実感している以上に彼らは大物であり、超マストな存在」なのだと認識するべきだろう。
最近AristaがDVDシングルというフォーマットを試験的に出している(日本盤も出るらしい)。トニブラ、ホイッヒュー、ピンク、ダイドといった綺麗どころと、時期的には相当違和感があるものの、映像にこだわりがありそう、という意味ではうなずけるスピリチュアライズドがシリーズ第1弾として発売されている。そこに混じって発売されているのが、アウトキャストのこの曲と「B.O.B.」のカップリング・シングル。両曲のビデオクリップと6分ぐらいのインタビューが収録されていて、アルバムタイトル「Stankoina」の意味とか、この曲についても解説されている。実験的で革新的な「B.O.B.」を私は極めて高く評価するが、トップ40入りを果たしたのはサビのフレーズがキャッチーな「Ms.Jackson」。ミス・ジャクソンというのは自分の子供の母親の母親、つまりおばあちゃんにあたる人(を象徴するキャラであり、誰か特定の人を指すわけではない、というのが公式な説明)。離婚したか、または始めから結婚してないんだけど、子供がいるから仕方なく付き合いが続いてる、という「Baby's momma's momma」と自分の微妙な関係をちょっとコミカルな味わいも交えて歌った曲で、シングルマザーの多いアメリカ黒人の間では、単に「サビがキャッチーでポップな曲」という以上の受け止め方をされているのだろう。 R&Bチャートで1位、HOT100でもトップ10入りと、彼らのこれまでの最大のヒットとなっているこの曲。単に曲の良さだけでなく、彼らをとりまく評判や、曲のテーマがもつ求心力など、色んな要素が働いた結果のようだ。 (しんかい)

Just Another Day In Paradise / Phil Vassar ()

“カントリー界で現在最もポップな曲を書く男”フィル・ヴァッサーにキャッチフレーズを付けるとすれば、こんなところだろうか。アラン・ジャクソンの 「Right On The Money」、ティム・マグロウの「For A Little While」、そしてなによりもジョ・ディ・メッシーナの「I'm Alright」と「Bye Bye」のナンバー 1ヒットが、彼のライティング・スキルの高さを証明している。ヴァージニア州 出身のヴァッサーはスポーツ特待生として大学に進んだが、そこでたまたま専攻 した音楽ビジネスの世界に魅せられてミュージシャンになることを決意。1987年以降ナッシュビルで音楽活動の傍ら8年間バーテンダーとして働き、貯めたお金で自分のクラブ・レストランを開店、夜毎ステージで自作曲を披露していた。開店資金を援助してくれた友人の中にはベテランポップシンガー、エンゲルベル ト・フンパーディンクの息子がおり、その縁でプロのソングライターとして初めてフンパーディンクのアルバムに曲を提供。これをきっかけに前述のヒット曲量産への道が開け、昨年マグロウ(今回取り上げられている「My Next Thirty Years」もヴァッサーの作)やメッシーナとの作業を通じて知り合ったバイロン・ガリモアのプロデュースのもと、シンガーとしての第一作目をリリースし た。デビュー曲「Carlene」はカントリーチャートでTOP5入り、続くこの曲(バーティ・ヒギンズのヒット(82年46位)とは同名異曲)はそれ以上の成績を残してポップのTOP40にも初登場。超ポップな「Carlene」に比べるとこの曲はやや泥臭く、ロックファンには「またカントリーオヤジが出てきた。」という印象かもしれない。しかし今後リリースされるであろうポップな作品群でそのイメージは徐々に払拭されるはず。暫し長い目で見守ってやってください。(八亀)

Crazy For This Girl / Evan And Jaron ()

あまり洋楽に興味を示さないうちの奥さんですら、一度ちらっとプロモビデオを見ただけなのに、ラジオから流れてきたこの曲を聴いて「これって、あの双子の曲だよね」としっかり覚えていた。やはり双子ってそれだけでインパクト強いなあ。兄エヴァンと弟ジャロンのロウスタイン兄弟は現在26歳。音楽を始めたのはエヴァンのほうが早く、13歳のときにエルヴィス・コステロを聴いて目覚めたという。そんな兄を横目にジャロンは読書を趣味とし、自分で詩や小説を書きはじめる(影響を受けたアーティストとして詩人の名を出すほどだ)。その彼はやがて当然の成り行きとして、兄のバンドに詞を提供し、音楽の世界に足を踏み入れることになる。1994年、二人で自主制作したアルバム「Live at Kalo's Coffeehouse」が話題を呼び、98年にはアイランドレコードと契約、今回のアルバムがメジャー2作目となる。さて「Crazy For This Girl」。ちょっと前にヒットしたナイン・デイズの「Absolutely」を押さえ気味にした感じのナンバー。ギターサウンドに「いつも彼女のことを考えている/彼女は気づいてないけど/ぼくはもう夢中なのさ」と他愛もない歌詞が乗る。正直、曲/詞ともに「なんの特徴もない、ありがち」だ。ウケた原因はよく分からないが、最近ヒットするロック系ソングに共通の要因である「ラジオ・フレンドリー」という言葉が思い浮かぶ。ところで双子アーティストで真っ先に思いつくのが「(Can't Live Without Your)Love And Affection」のNO.1ヒットを持つデュオ、ネルソンであるが、彼らの寿命はアルバム一枚と短かった。女性三つ子グループ、トリプレッツに至ってはわずか一発で忘却の彼方へと消えた。先達の用意した轍に落ち込むことなく彼らが今後ビッグになれるか、活躍に期待したいものである。(つつみ)

911 / Wyclef Jean feat. Mary J. Blige ()

ワイクレフが97年発売のソロアルバム「The Carnival」から約3年ぶりにセカンドアルバム「The Ecleftic: 2 Sides II A Book」をリリースした。このアルバムのタイトル「Ecleftic」 とは「Eclectic(折衷的な)」と「Clef(クレフ=彼自身)」の造語だそうで、面白いものならなんでも取り込むぞ、という彼の音楽精神を顕著に表したいい言葉だと思う。2000年のワイクレフはというと、あのサンタナの10週連続No.1ヒット「Maria Maria」やホイットニーの「My Love Is Your Love」など2つの特大ヒットをプロデュースという、一見好調なようにも思えた。しかし、そんな追い風な中久々にカットされたアルバムの先行シングル「It Doesn't Matter」は大コケするは、続くアルバムのセールスもぱっとしないわ、で正直ワイクレフファンの私も戸惑った。その「It Doesn't Matter」、プロレス団体WWFの大人気レスラーThe ROCKをゲストに迎えるのはいいものの、これがあまりに勘違いかつ自己マンな内容でラジオ局からは総スカンをくらった。だいたい今のご時世、「いくら金や車を持っていようがラップスキルのないやつはワックだ。」なんて言われてもねぇ。イマイチ真実味がないというか 全盛期のハマーみたいというか。(第一、あなたに言われても、って話もあるし。) CD屋の視聴器でさらっとアルバムを聞いたところ、「このアルバムから果たしてシングル ヒットは出るのか?」と思えるほどの内容だったため更に心配した。しかし、セカンドカット 「911」がHot100入り後8週かけてなんとかトップ40入り。が、これがまた彼らしくない湿っぽい内容の詩で、メアリーJブライジと一緒に力のこもったデュエットを展開してたりなんかする。 時には裏声で歌ったり、はたまた感情に訴えてみたりとか。うーん、期待していたのはそういうノリではないんだけど、などと思いつつも聞き込んでいくとなんとなくこの人の音楽的背景&アイデンティティを考えるとこういう「ブルース=哀愁」みたいな曲をやるのは自然かも、という結論に至った。なおワイクレフはすでに次回のソロアルバムの構想をたてており、そこではラップはさらに減り、歌物の割合が増えるだろう、と述べている。(はまべ)

We Danced / Brad Paisley ()

いやー、観てきましたよブラペ。わざわざ熊本まで。ここではちょっと野外イベント「カントリー・ゴールド」におけるブラペ・レポートを。当初ウィルキンソンズが務める予定だったイベントのトリが、その後の目覚しい活躍によって急遽回ってきた彼、その数日前にCMAアワードで新人賞を獲るなど、これ以上ないタイミングの来日となった。日本カントリー協会の森井さん(有難うございました!)に随行してバックステージでのインタビューに立ち会ってきたが、間近で見た彼の印象は(1)それほど大柄ではない(とはいっても180センチくらいはある)(2)やっぱりいい男(3)体毛が凄く濃くて、ちょっと油断するとすぐ眉毛がつながってしまいそう・・ってな感じ。非常に穏やかな話し方をする人で、出番前には会場内を歩き回ってファンと談笑するなど、気さくな面も見せていた。なんだかいい奴だったなぁ。当日は二万人近く観客がいたけど、正直いっ て彼を知る人は殆どなし。しかし彼のステージが始まった途端に会場は大盛りあがり、女の子たちはキャアキャア言いながら写真をパチパチ撮ってました。ルックスもいいし、歌もうまい。更にリードギターまで弾きながらのステージだから、これは彼の将来性を感じない訳にはいかない。会場を後にするバスの中でも 「ブラッド・ペイズリーってよかったね。」というオールド・カントリーファン の声がそこかしこで聞かれた。さて「We Danced」はそのステージでも新曲とし て演奏された曲で、彼にとって3曲目のナンバー1カントリーヒット。この前に出た軽快なカントリーロック「Me Neither」はそれほどのヒットにならず、バラードのこの曲がまたもや当たってしまったので(前のナンバー1ヒットもバラー ド)、なんだか「バラード屋」っぽいイメージがついてきてしまった感があるが、アルバムではトゥワンギーなギターを弾きまくる彼の姿もしっかり記録されているので、いずれそれらから大ヒットが生まれることを願いたい。21世紀最初の大物候補、ブラペの今後の活躍に期待。(八亀)

My Next Thirty Years / Tim McGraw (Curb)

2000年のカントリー界の話題はまさしく嫁さんのフェイス・ヒルとディキシー・チックスがさらっていったという感が強いにも関わらず、カントリー・ミュージック・アウォードで嫁さんと並んで最優秀男性ボーカル賞を獲得するなど、相変わらず確固たる存在感を示していたのがティム・マッグロー。年末に初のベスト・アルバムをリリースし、キャリアの中間総括状態に入った彼が若干33歳にして「これからの30年に誓うこと」を軽快なメロディに乗せて表明してみせたのがこの曲。私事で恐縮ですが先月人生4つ目の大台を迎えた自分あたりには結構歌詞が「うんうんそうだよなあ」ってな感じで胸に響くものがあって、最初聴いたときは思わず聴き入ってしまったものです。決して大上段には構えてないところがまた共感を覚えるというか、いつも気にしてることをさらっと代弁されたような気がして、きっと同じくらいの世代の奴等に結構受けてるんではないか、と思うことしきり。「これから30年は体重に気をつけよ う/も少しサラダを食べて夜更かしはやめとこう/ビールは控えめにしてレモネードを飲もう」なんてなあたりは小市民的でおいおい、ってな感じですが「これからの30年は俺の人生で最高の時期にしよう/ささやかな家族を育んで嫁さんと一緒の時間をもっと作ろう/大事な一瞬一瞬を愛する人達と過ごそう/これまで無駄にした時間の埋め合わせをするために」というあたりは思わずそのまま自分の今年の新年の誓いに しようか、と思うほどです。まあ30代半ばにしてそれじゃあ老成しすぎ、という意見もあるでしょうが、一方じゃあガース・ブルックスが離婚してたりするのを見ると、 これだけのスターダムにのし上がった彼が自分を見失わずに人生の本当に大事なことの意味を確実に認識してこの歌を作ったとすると、結構大変なことかもしれません。アメリカじゃあ結婚記念日のパーティとかにガンガンに歌われるんだろうなあ。(阿多)


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