PART6-5
JUNIOR M.A.F.I.A. / LIL' KIM (M.Ata feat. Y.Hamabe)

 ビギー同様、ニューヨークのベッドフォード・スタイヴェサント地区出身のティーネージャー達によるラップ・ユニットがジュニアM.A.F.I.A.だ。M.A.F.I.A.はMasters At Finding Intelligent Attitudes(知的な態度を身につけるのに長けている者達)という意味だそうだが、あまりにもそのストリート・ギャングスタ的なイメージから考えると嘘くさいacronym(省略語)だ。ジュニアM.A.F.I.A.は一つのグループではあるが、4つのサブグループから構成されている。Little Caesar, Chico, Nino Brown, Bugsy, Caponeの5人からなる666、TrifeとLarcenyの2人からなるザ・スネイクス、および2人の独立したMC(ラッパー)であるKleptoとLil' Kim(別名ビッグ・ママ)である。
 多くの曲はリトル・シーザーとリル・キムの2人のMCのラップで構成され、主な曲には彼らのメンターであるノトーリアスB.I.G.が参加しているが、内容はといえばこの紙面に掲載するのもはばかられるような極めてX-レイテッドな世界とアルマーニ、DKNY、プラダ、ヴェルサーチ・・・といったブランド志向拝金主義にまみれた下世話な世界。サウンド面では、DJクラークケントなども絡んでいて渋目のサンプルも決めてそこそこではあるが、決定打に欠けるような気がする。デビューアルバム「Conspiracy」(1995)はビギーのプロデュースとバックアップもあってミリオンセラーとなったが、グループとしての存在感は今一の感あり。ビギーと一緒に1996年には銃器とマリファナ所持の門でグループまとめて逮捕されるなどというしまらないエピソードもあり、ビギー亡き後、彼らの行く末が気になるところではありますな。
 そのジュニアM.A.F.I.A.の姉御分として早くから活発なソロ活動を展開していたのがリル・キム。4フィート7インチ(=140センチ)と超小型ながら、そのドスとパンチの効いたラップぶりはソロデビュー前から業界では評判を呼び、同時期にやはり客演を重ねた後にソロアルバム「Ill Na Na」を発表したFoxy Brownと並び称されるラップ界の代表的女性ラッパーとして認知されるに至っていた。トータルのシングル『No One Else』などでその存在感を着々と固め、ついにクイーン・ビッチ(ブランド物に身を固め、女性のセクシャルな側面を全面に押し出した女性ヒップホッパー)としてのイメージを決定づけるソロアルバム「Hard Core」(1996)をリリース。期待に違わずセックスにまみれたライムと、腰の座っていると同時に微妙にビートを外し気味にしたラップテクニックを駆使するフロウで大ヒット。肝心のビギーは2曲プロデュースで参加している他、多くの曲でラップも披露している。また先行シングルで中ヒットとなった『No Time』ではバッドボーイのドン、パフ・ダディとの共演も実現している。
 以降もPuff Daddyのアルバムで『Don't Stop What You're Doing』『It's All About The Benjamins』の2曲、ビギーの遺作では『Another』、メアリーJの新作「Share My World」では『I Can Love You』、さらには話題のMissy Elliottのソロ作で『Hit Em With The Heee』などの数々の目立つ客演をこなしており、モラル的な視点からの是非はさておき、今のラップ界の一面を良くも悪くも象徴するキャラクターとして大車輪の活躍は続いている。ラップのスタイルにも独特の個性があることから、今後もいろいろな局面での活躍が楽しみなアーティスト、応援してやりたいもんです。

PART6-5-1
JUNIOR M.A.F.I.A. / LIL' KIM discography (M.Ata)

Conspiracy / Junior M.A.F.I.A. (1994)

[album cover] Biggieが、地元の仲間達をデビューさせた、それがJunior M.A.F.I.A.。しかも彼はこのグループがデビューする以前から、自分の曲"Juicy"、"Big Poppa"などでこの"Junior M.A.F.I.A."という名前を触れている。誠に仲間思いな奴である。アルバムを通して言えるのは、マフィアというだけあってとにかく内容がかなりハードコア。セックス・レイプ・売春をテーマにした大ヒットシングル"Get Money"を筆頭に、チンピラそのものな"White Chalk"、ヤクのある日常を誇らしげに語る"Crazaay"などなど。しかし音だけを聴くにはそれを全く感じさせないのがサウンドプロダクションの妙。例のほのぼの系"Get Money"を始め、P.Rushen "Remind me"を敷いたシックな"I need you tonight"、Rene & Angela "Your smile"をサンプルして緊張感のある音作りに成功した"Back Stabbers"などはそのギャップに驚く。曲毎にプロデューサーを換え、片寄らない音を作り出したことにより、飽きずに聴けた。まあ、これは「Biggieとその仲間達」ってアルバムかな。(Y.Hamabe)

Hard Core / Lil' Kim (1996)

[album cover]  特に目立ったプロデューサー陣を配しているわけではないが(ビギーが2曲、パフィが1曲、ジャーメイン・デュプリが1曲、といった程度)トラックはきっちり作りこんであり、それにリルキムのべらんめえチックなフロウが気持ちよくのっかっている曲が多く、サウンド面では充分楽しめる。しかし汚いな、やっぱり。アルバム全面dick-sucking bitchとpussy-eating niggaがどろどろした世界を繰り広げるライムの中身はあまり突っ込んで読み込まない方がいいかも知れない(日本版の訳詞がまたすごいです、これ)。先行シングルの『No Time』の後、この作品から既に『Not Tonight』や『Big Momma Thang』がヒットしているが、いずれもエアプレイバージョンはサンプルもがらりと変えた上にBPMも全然違い全く別の曲になってしまっている。前者はアルバムではジョージ・ベンソンの『Turn Your Love Around』だがシングルはクール&ザ・ギャング『Ladies Night』をサンプル、後者はアルバムではシルベスター『Was It Something I Said』だがヒットバージョンはあのカール・カールトンのそう、『She's A Bad Mama Jama』というはまり具合!特に後者はアルバムバージョンも最高だが、ヒットバージョンもなかなか。この辺の戦略は誰が立ててるのでしょう。ちょうどジュニアM.A.F.I.A.の『Gettin' Money』リミックスの時のようなうまさはただ者ではないと思うのですが。
 取り合えずイントロの生々しいダイアログ(XXX映画館に男が入っていって銀幕のリルキムを見ながら昇天するというもの)などその手の趣味が生理的にダメな人でなければ、音的には楽しめる1枚です。

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