1990年リリースの彼らのデビュー作。アイデアと賑やかさが詰まったアルバム、という印象が強い。既に彼らの典型的なジャジーなグルーヴはこのデビュー作で完成されているが、後に完成される独特のゆったりしたビートではなく、かなり覚醒したアップテンポなトラックが多い。音作りにも趣向がこらされ、フランス国歌は出てくるは、Stevie Wonder「Sir Duke」のイントロのループは出てくるはで、単純に楽しめる内容の作品に仕上がっている。いかにも彼ららしい「Bonita Applebum」もいいが、ストリート噺を軽いビートに乗せた「I Left My Wallet In El Segundo」も楽しい。
The Low End Theory (1991)
デビュー作から1年でリリースされた本作は、彼らがTribeサウンドを確立した初期の重要な作品。ここから今をときめくBusra Rhymesをフィーチャーした初のHot1OOヒット「Scenario」も生まれた。ファーストでの若干荒削りな勢いがスムースなグルーヴヘ一歩進み、現在のスタイルがこのアルバムで確立されたと言える。「Buggin' Out」「Butter」などジャジーだがファンキーで単調なループにのせたPhifeのラップが小気味よく、強く印象に残る。しかし、このアルバムの中心は彼らのスタンス表明とも言える、「Check The Rhime」。このトラックはリリックの内容もさることながら、勢いのよいトラックに乗ったPhifeとQ-Tipのスリリングな掛け合いが気持ちよい。
Midnight Marauders (1993)
Tribeの作品の中ではベストの呼び声高い、3作目。女性アナウンスの「Midnight Marauders Tour Guide」で始まり、アルバム全体をミディアムスピードのジェットコースターで走り抜けるかのように、一気に(しかしゆったりと)流れに乗せて聴かされてしまうアルバム構成も秀逸。オープニングから「Steve Biko(Stir It Up)」〜「Award Tour」へと流れるあたりはいきなりこのアルバムのハイライト。お馴染みのジャジーなグルーヴにのったPhifeとQ-Tipのフロウが冴えまくる。Bikoといってもプロテストソングではない。ここでのBikoはあくまで彼らにとってのレトリックであり、リリックのフロウを重視する彼らのスタンスは変わっておらず、そのベストな面が遺憾なく発揮されている。中盤の「Electric Relaxation」〜「Clap Your Hands」のあたりももう一つのハイライトだ。いかにもCTI系のギターのループに乗せた前者も、今やヒップホップトラックには定番のBob Jamesのエレピのループを使った後者も、Tribeの典型的な勝ちパターンのトラック。全体の完成度も高く、このアルバムで彼らは一つの頂点を究めたと言えるだろう。
Beats, Rhymes And Life (1996)
本作はいろんな意味で話題作である。まず、彼らにとってアルバムチャートで1位に輝いた初のアルバムであり(しかも初登場1位)また、音作りでもこれまでになくジャジー/フリーソウル的なグルーヴだけでなく、冒頭の「Phony Rapper」に見られるようにエレクトリックな打ち込み系の音が耳に付く。それ以外でも、今回はR&Bへのアプローチも見せており、中でもFaith Evansをフィーチャーした「Stressed Out」などはまるでMary J. BligeのトラックにTribeが参加しているようだ。リリックでも、前出の「Phony Rapper(ラッパーもどき)」のように、彼らにしてはメッセージ色の強いトラックもあったりして、彼らのビートとライムに対する強いこだわりに根ざした主張が感じられる。今回の作品はあの完成度の高い前作「Midnight Marauders」の後に何をやるべきか?というTribeにとってある意味困難な作品であったろう。ある意味で従来に比べれば単調なビートが展開される本件に対し一度は「つまらない」との烙印を押した筆者だが、何度か聴き込むうち、本件はいわば次なるサウンドの形へ向けてのプロトタイプではないか、と思えるようになった。次作こそがTribeの新境地が真に発揮された作品となるのかも知れない。