U2
Biography

 今や「何でもあり」のバンドになった感のあるU2だが、80年代の彼らには不器用なまでに一本気なところがあった。パンクバンド然としてアイルランドから登場した彼ら。3作目「War」でその生き急ぐような怒りの姿勢を極めると、4作目「The Unforgettable Fire」が転換点となり、アメリカの芳醇な音楽への憧れを隠さなくなった。5作目「The Joshua Tree」はこれまでになく落ち着いた、地に足のついた作品となり、商業的にも最大の成功作となった。同名映画のサントラを兼ね、ライヴや新曲が混じった変則的な作りの88年のアルバム「Rattle And Hum」は、彼らのアメリカ探訪の旅の総決算だ。憧れのB.B.キングやボブ・ディランと共演し、音楽的にはアメリカ南部のR&B、ゴスペルの影響を感じさせる作り。豊かな音楽を育んだ土地への憧れ、先人達への敬意、音楽を生み、育み、守ってきた黒人達に対し、アメリカがしてきたことへの憎しみと怒り。それらの感情が溢れんばかりに詰め込まれた作品は、しかし、彼らにとっての大きなターニングポイントとなった。90年代になると、U2は意識的にこうしたソウルや汗臭さを排除し、何か、プラスチックのような質感を感じさせるようになった。好みは人それぞれだろうが、少なくとも私にとって1989年は、U2が輝いていた最後の年だった。(しんかい)


Hit List

'89 #14 Angel Of Harlem
 メンフィス・ホーンズを迎えた、南部フレイヴァーたっぷりのグルーヴィな曲。U2のヒットの中では最もアメリカ色の強い曲だろう。曲の出来もいいし、ボノの歌も、バンドの演奏もとてもリラックスしてのびのびしていて、聴いていてすごく気分がいい。曲の雰囲気は南部っぽいが、タイトルのハーレムの天使とはビリー・ホリデーを指しており、歌詞にはコルトレーン、マイルスといった名前も出てきて、実はニューヨークが舞台の曲だったりする。それもまだハーレムが華やかで、黒人文化の中心地だった頃の。ある意味まだアメリカが今よりも純粋で、輝いていた頃。ボノがアメリカを賞賛するとき、それは黒人というマイノリティーだったり、トム・ウェイツというアウトサイダーだったり、ハーレムが輝いていた頃という古き良き時代だったりする。それは彼が天の邪鬼なのではなく、彼がアメリカの本当の美しさを分かっているからだろう。



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