ヴァレンタイン・ブラザーズのクラブのみで知られた名曲「Money's Too Tight (1982年R&B41位)」のしなやかなカバーで1985年にUKで見事にブレイク、今様のブルー・アイド・ソウル・グループとして注目を集めたミック・ハックノール(ボーカル)率いるシンプリー・レッドも、アメリカでのブレイクはバラードの「Holding Back The Years (1986)」のナンバー1だった。R&B/クラブ指向のリスナーがマーケットの多勢を占めるUKマーケットとTOP40/ACステーションでのエアプレイがヒットのキーを握っていたこの頃のUSマーケットのデモグラフィの差を改めて感じさせる彼らのデビューだったのだが、セカンドの『Men And Women』は、内容がやや地味な出来だったこともあって、英米共にヒット状況も大人しめだった。そんな中、リリースされたのがサード『A New Flame』。セールス的にはそこそこのヒットだったが、ご存知屋舗豪太(ドラムス)参加で改めてきっちり作られたR&B/アダルト・オリエンテッドなサウンドに乗せたミックのボーカルが伸びやかに存在感を感じさせる出来で、久しぶりのヒット作となり、当時日本でもタイトルナンバーや英米で大ヒットしたハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツのカヴァー「二人の絆」がガンガンにFMでエアプレイされ、大人のリスナー達の支持を得た。個人的にはファースト以来のR&B色がやや薄れ、これ以降『Stars(1991)』『Life(1995)』『Blue(1998)』と、どちらかというとアダルト・オリエンティッド・ロック的路線(アルバムには必ず何曲かミックのハイトーン・ボーカルの活きるバラード曲が入っている)が続いていて、またそれが今ひとつセールスや評価に繋がっていないのが気になる。最新作『Love And The Russian Winter(1999)』も音的にはかっちりとした出来だし、ミックのボーカルも相変わらず歌ってはいるのだが...(阿多)
Hit List
'89 #1 If You Don't Know Me By Now
どちらかというと「Money$ Too Tight (To Mention)」とか「The Right Thing(セカンド収録)」といったミディアムアップの方がミックのやや線の細めなボーカルには合っていると思っていたが、こういうスケールの大きいバラードも唄えることが証明できたのは彼にとって大きな収穫だったに違いない。ミックのボーカルの高いピッチと伸びやかさが、原曲のスケールの大きさと詞の内容の醸し出すエモーションと相俟って、見事なリメイクとなっていてナンバー1も宜なるかな、と思わせる出来。オリジナルはリードボーカルにテディ・ペンダーグラスを擁したフィリー・ソウルの至宝、ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルーノーツの1972年のTOP3ヒット。オリジナルの重厚なイメージとはまたひと味違った切々としたミックの歌に彼のブルー・アイド・ソウル・シンガーとしての真骨頂と彼のR&Bへの純粋な憧憬を見る気がする。
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