'89 #15 Pop Singer
しかし、売れなくなることは彼にとっては全然落胆するべきことではなかった。彼はこの曲で宣言した「Never want to be no pop singer / Never want to write no pop song」と。これまでもずっと、彼には陰があり、メインストリームには居心地の悪さを感じている風だった。しかし社会のメインストリームに対して反骨精神をむき出しにする様は、庶民、もっと言えば社会の底辺にいる人々にとってのヒーローに成り得た。実際彼はそうして極めて庶民的なヒーローとして、何百万ものファンの心をつかんできた。だが、この曲は、多くのファンの心には届かなかった。曲に、メロディに、彼の曲にいつも感じられた人なつっこさがない。それほど本気で「ポップシンガーにはなりたくない」と言いたいのだろうけど、これは表現者としての自由を一歩踏み越えて「プロとしてやってはいけないこと」の領域に踏み込んでしまったように思えてならない。