'89 #18 More Than You Know
キューバからカリフォルニアに移住してきた両親を持つ69年生まれの当時20歳。本名はMarta Marrera。幼い頃からテレビの子供番組に出演し、82年の映画「アニー」のダンサー役もつとめたこともある彼女のデビューシングルがこの曲である。まず誰もが「マドンナそっくり」と思ったことでしょう。彼女の容姿、曲調、おまけにリミックスがジェリービーンと何から何まで「ホリディ」や「ボーダーライン」の頃のマドンナそっくりそのまんまの状態で我々の前に現れたわけだから。曲はプロデューサーのマイケル・ジェイらとの共作となっており、ただのマドンナ・フォロアーでなく才能を持ち合わせているところも示していた。このような売りだし方も今考えると確信犯的戦略であったようにも思う。
'89 #1 Toy Soldiers
2曲めも彼女とマイケル・ジェイの共作によるもの。1曲めのダンス・ポップチューンと異なり、歌詞に重みがある作品になっている。おもちゃの兵隊が一歩一歩行進し倒れていく様を麻薬の魔力に次第に惹きこまれ、濫用し、そのたどる先に待っているものは破滅しかないという恐怖になぞらえた内容になっている。この曲がチャートを上昇している頃、プロモーションのために来日、出演した歌番組「夜のヒットスタジオ」がちょうど七夕の時期にあたり、番組内で出演者がそれぞれの願いを短冊に書いて笹に結ぶという企画があった。彼女が短冊に書いた願いは「この曲が1位になりますように」。そして、その願いがその翌週のチャートで実現したことが印象に残っている。
'89 #25 I Feel The Earth Move
デビューアルバムからの3曲めのシングルも無事TOP40入り。今度は71年にリリースされ、今も洋楽史の中で名盤とされるキャロル・キングの「Tapestry(つづれ織り)」からナンバー1を記録した「イッツ・トゥー・レイト」のカップリングヒット「空が落ちてくる」のカバーをカット。永い間人々に愛聴されてきた作品はオリジナルの良さを損なってはいけない、ある意味“不可侵領域”内にあるものとして、聴く者、演じる者の間で原曲のとおりであるべしという暗黙の了解が存在していると思う。それゆえにマルティカのこの曲を聴いたとき、新鮮な驚きを感じた。あまりの大胆なダンスヴァージョンのアレンジに眉をひそめるどころか、ここまでやっちゃったか!と返って痛快に感じることができた。彼女によって新しい生命を吹き込まれ、よみがえった曲も作者のキャロル・キングもきっとうれしかったことでしょう。この曲のビデオクリップもステージで溌剌と歌い、踊る彼女のライヴヴァージョンとなっており、是非、生のステージを体験してみたいと思ったものである。(菅沼)