'89 #1 Miss You Much
緊張感、不気味、不思議、屈折..。曲調を一言でいうとそんな印象。音楽経験のある人なら、全編不協和音だらけなことに気付くだろう。そう、この不協和音が、その変な曲調の元凶。バッキングは短調なのに、その上にのるメロディは、同主の長調。しかも長調を特徴づける「ミ」の音が冒頭から強調される。クラシック畑(除く現代音楽)の人ならこういうハーモニーには生理的に耐えられないかもしれない。それでいて詞は、タイトルどおり、男への激しい想いを歌ったわりと普通のラブソング。これでは“Miss You Much”じゃなくて“Mis Match”だ。冗談はさておき、ジャネット3年ぶりの新譜からのファーストシングルで、引き続きジャム&ルイス参加とくれば、実際の曲の出来以前に期待度だけで、ヒットは約束されてしまうのだが、冷静に聞いてみると、ほんとうに何でこんな変な曲が大ヒットしたんだろうとも思えてしまう。??、インパクトの強さとという意味では紛れもなく彼女やジャム&ルイスの代表といえるだろう。
'89 #2 Rhythm Nation
セカンドシングルもファースト同様、不協和音が多いのに加え、ゴリゴリの硬質なサンプリング音主体の打込みビートが全編通して強調された、癒しとは対極に位置する曲調の曲。よくも悪くも、これが当時のダンス系の先端の音だったのは確か。モノクロ画面で、ナチスみたいな軍隊コスチュームのダンサーが、ある種アンドロイド的に、一糸乱れぬ統率のとれたダンスを披露する"極右"プロモビデオも、かなり話題になった。TRF、安室など小室系アーチストのダンスって、未だにこの辺の模倣から脱せていない気がする。
尚、サードシングル以降は一転、ポップなメロディや多少人間味のあるリズムが心地よいポップス、ダンス、バラード、ロックと様々な曲調のすごくわかりやすい曲が続き「まだこんないい曲もあるんだぜ!」と言わんばかりに、あい次いでチャートに登場して、アルバムの存在感を長期にわたって維持することに成功した。この「名曲出し惜しみ」商法は、彼女の特許でもあり、次作の「janet」でも披露された(兄は「Dangerous」でこれを盗用し、無残にも失敗に終わっている)。