ブリティッシュ・インヴェイジョンが沈静化した80年代後半、しかしMTVスターと呼ばれたバンド達が残したのは派手な映像だけではなかった。華やかさの裏に自国のアーティストにはないポップセンスを感じとったリスナーは少なくなく、それは英国ニューウェイヴの再検証という形でブームを巻き起こし、ビルボード誌にモダン・ロック・トラックスというチャートを新設させてしまう。しかしその時点で現存したバンドは既に少なく、数少ない生き残り組はその分熱狂的な歓迎を受けることになる。その一例がこの年のキュアーのブレイクであった。79年のデビュー以来、英国ポスト・パンク世代のみならず80年代を代表するバンドにまで成長した彼らは、結局フロントマンのロバート・スミスとアルバムごとに入れ替わるバックメンバーという形態となる。スミスやエコー&ザ・バニーメンがメンバー間の確執によって解散していく中、キュアーは着々とキャリアを重ねていく。もっともロバートの気まぐれな解散宣言は何度もあったのだが、すぐに撤回していたよう。さてこの年にはロバートが長年の恋人とついに結婚、そして全米での成功と、ある意味キュアーは最も充実した状態にあり、その後も92年にはポップ感あふれる「Friday I'm In Love」がTOP40入り、97年には新曲を含むベスト盤をリリース、98年はデペッシュ・モードのトリビュート盤に参加とコンスタントな活動を続けている。そして今年、待望のニューアルバムが発表された。(松本)
Hit List
'89 #2 Love Song
ついに全米でもブレイクしたアルバム「Disintegration」からのセカンドシングル。ロック局ではバンドのエキセントリックさを前面に出した最初のシングルである「Fascination Street」がヒットしたが、ポップ局のリスナーが選んだのはこの曲。彼らとしてはアクの弱い淡泊な曲調で、シンプルなリズムに起伏の強いベースライン主導で進んでいき、目立つパートは最初のヴァースの終わりに突然入るストリングスくらい。もちろんロバートのヴォーカルを聴けばすぐにキュアーだとわかるのだが、この曲でしか彼らを知らない人が多いとしたら、ずいぶんもったいない話である。
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