Rick Astley
Biography

 80年代の名プロデューサーチームの一つに間違えなく数えられるであろうストック/エイトキン/ウォーターマンの秘蔵っ子としてデビューしたリック・アストリー。いかにも坊ちゃんといった顔立ちとそこからは想像もつかないようなソウルフルな歌声、そこにポップなメロディが絡まり、デビューアルバム「Whenever You Need Somedody」はナンバー1ヒット「Never Gonna Give You Up」「Together Forever」等と共に大成功を収める。そして間髪を入れずに出されたのが88年末に発表されたセカンドアルバム「Hold Me In Your Arms」。スタジオ火災によるマスターテープの焼失などといったアクシデント(実際は助かっていたらしいが)を乗り越えて完成したこのアルバムは、S/A/Wによるポップなチューンと共にリック自身の作・プロデュースによる作品も多数収められ、彼のアーティスティックな部分も強調されている。しかしこのアルバムとリードオフシングルのヒット、そしてそれに続くツアーの成功が逆にリックに自信を植え付けさせ、S/A/Wとの訣別を決意させるというなんとも皮肉な結果となってしまった。そして90年代に入ってからは91年、93年とセルフプロデュースによるソロアルバムを出しているが、いずれも成功したとは言い難く、現在では「あの人は今?」状態である。個人的には自立後初のアルバム「Free」で見せたロン毛が何といっても印象的であった。(高野)


Hit List

'89 #6 She Wants To Dance With Me
 アルバムからのファーストシングルはリック自身の作・プロデュースによるファンキーなナンバー。普通だったらアルバム2曲目に収められているいかにもS/A/W風の「Take Me To Your Heart」をファーストに持ってくるのがセオリーだが、あえてこれ曲を持ってきた所にリックの自我が感じられて非常に面白い。実際、この曲におけるリックのアレンジは生音を大事にした非常に人間味が感じられる仕上がりで、S/A/Wの作ったトラックの上に機械的にボーカルを乗せただけといった流れ作業を嫌い、やがて彼らの許を去っていくリックのアーティスト魂みたいなものが十分に感じられる。リックのボーカルも心持ちリラックスしてように聞こえるのは私の気のせいだろうか。いずれにしても聞いているだけで心がウキウキしてくるような明るく楽しいナンバーである。

'89 #38 Giving Up On Love
 セカンドシングルとなったこの曲はファーストの路線を引き継ぎつつ、アレンジを少しおとなしめにした感じのポップチューン。ただ、正直この曲がアルバムからのセカンドシングルに決まった時は「本当?」という感じだった。曲自体は非常に良いと思うのだがそれはアルバムの中での話であって、シングルとして単独で売るには、何かこう華やかさが足りないような気がしたからである。ただ、リックのボーカルの良さをストレートに伝えるには格好の曲であるのもまた事実で、この辺りの選曲が、デビュー作のサードシングルに「It Would Take A Strong, Strong Man」を選んだのと相通じるものがあるような気がする。曲を書いたのはファーストと同じくリック本人。ソウルテイスト溢れる非常にキャッチ−なナンバーである。



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