八亀's Picks - February 2006

過去の八亀's Picks

2.18 The Best Of The Bob Crewe Generation
2.18 Gold - The Righteous Brothers
2.05 Hits Of '55 - VA
2.05 The R'N'B Hits Of 1955 - VA

Music To Watch Girls By: The Best Of The Bob Crewe Generation


Music To Watch Girls By: The Best Of The Bob Crewe Generation (Varese Sarabande)

 昨年末に紹介したオリヴァーのプロデューサーであるボブ・クリューがリーダーを務めたスタジオ・グループ「ボブ・クリュー・ジェネレーション」の作品集が発売されたのでご紹介。オリヴァーの項で書いたとおり、レーベル「ダイノ・ヴォイス」を立ち上げ成功させた彼は、一方でフォー・シーズンズをはじめとするアーティストにも精力的に作品を提供、67年にはダイエット・ペプシのTVコマーシャル用に短いジングル「Music To Watch Girls By」を書き上げている。

Music To Watch Birds By - The Bob Crewe Generation (1967) このジングルが好評を博していることを業界の噂で聞いた彼は当時構想中だったビッグ・バンドによるイージー・リスニングアルバムにこの曲を収録することを決断、折しもRCAレコード所属のトランペッター、アル・ハート(「Java('64米4位)」のヒットで知られる)がこの曲をレコード化するらしいという情報も入り急遽スタジオ・ミュージシャンが集められ「ボブ・クリュー・ジェネレーション(ペプシ・コーラのキャッチフレーズ“ペプシ・ジェネレーション”からグループ名が取られた)」バージョンが録音され、数日内に全米のラジオDJ向けにサンプル盤がばら撒かれるという電光石火の早業でアル・ハート盤をノック・アウト。当時ブームを巻き起こしていたハーブ・アルパート風のブラス・サウンドがフィーチャーされたこのシングルは結局HOT100の15位まで上昇し、それを受けて制作されたのがファースト・アルバム「Music To Watch Girls By」。タイトル曲で顕著だったブラスとファズ・ギターを前面に押し出したこのアルバムは、まずまずのセールスを記録することとなった。

Barbarella Original Soundtrack (1968) この成功に気をよくしたクリューは続いて非常に紛らわしいタイトルのセカンド「Music To Watch Birds By」を制作。こちらはイギリス人の女性アーティストやモデルばかり有名無名60人以上撮影した“スウィンギン・ロンドン”な雰囲気たっぷりの写真集「Birds of Britain」のイメージ・アルバムで、写真集から転用されたジャケ写にはジョージ・ハリスンの妻パティ・ボイド(多分)、内ジャケには美麗な“英国の小鳥ちゃん”たちの写真が満載。僕は10年近く前、アメリカを旅行した際にこのアルバム(勿論アナログ)を入手したのだが、それを土産として人にあげてしまったことを今でも後悔している・・。

 今回のCDはこの2枚のアルバムの音源を中心とした全19曲で、68年にクリューとチャールズ・フォックスがサントラを手がけたジェーン・フォンダ主演映画「バーバレラ」のテーマも収録。彼らのもう一つのヒット曲「Birds of Britain('67米89位)」がはずされているのは理解できないが、その替わりシングル・オンリーでリリースされた「Miniskirt in Moscow(同129位)」が入っているのでそれで帳消しか?(いや、そんなことはない)全編「Music To 〜」風のサウンドで料理されているので、非常に聴きやすい反面やや単調な印象も。ラウンジ系のポップスを気軽に楽しみたい方にはお勧めできる一枚。「バーバレラ」は別途CDが発売されているので、そちらのチェックも怠りなきよう。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2006/2/18)

Gold - The Righteous Brothers

Gold - The Righteous Brothers
(Polydor/Chronicles)



 60年代の人気グループ、ライチャス・ブラザーズは「ふられた気持ち」や「アンチェインド・メロディ」といった超有名なヒットもあり、ベスト盤CDが我が国も含め世界中で何種類も発売されている。中でも一番内容の充実したCDは?となると米ライノが80年代末にリリースした2枚組32曲入りの「Anthology」が、彼らの前身であるパラモアズの貴重な音源から、70年代の再結成までをカバーした決定版とされてきたが、今年になってこれを凌ぐ内容のCD(2枚組48曲入り)が発売され“オールディーズのスタンダード”が塗り替えられた。こういう機会でもないとなかなか取り上げられないメジャー・グループなので、彼らの歴史を振り返りながら今回のCDを紹介することにしたい。

Some Blue Eyes Soul - The Righteous Brothers (1964) 南カリフォルニアで活動していたボーカル・グループ「ザ・パラモアズ」のメンバーだったバリトン・シンガー、ビル・メドレーと、テナーのボビー・ハットフィールドが出逢ったのは1962年のこと。翌年デュオとしてステージに立つようになった2人はそのエキサイティングなR&Bサウンドで黒人の聴衆をも魅了し、彼らに“That's righteous, bro!(我々の正統な同胞)”と呼ばれるまでの支持を受ける。目出たく地元のレーベル「ムーングロウ」との契約も獲得した彼らは、折よくイギリス人のTVプロデューサー、ジャック・グッドの目に止まり、音楽バラエティ「Shindig!」のレギュラーに抜擢され、その露出を味方にシングル「Little Latin Lupe Lu('63米49位)」がヒット。64年にリリースしたセカンド・アルバム「Some Blue-Eyes Soul」のタイトルは後に“白人R&B”のジャンル名として一般化するほどの認知を得た。

You've Lost That Lovin' Feelin' - The Righteous Brothers (1965) そんな2人の活躍に注目したのが当時のトップ・プロデューサー、フィル・スペクター。年々壮大になっていた彼のサウンドに相応しいシンガーとして彼らを「フィレス」に招いたスペクターは、約4分に及ぶポップ・シンフォニー「You've Lost That Lovin' Feelin'(ふられた気持ち)」を完成させ英米でナンバー1を獲得。曲を作ったバリー・マンとシンシア・ウェイル夫妻が出来上がったシングルを初めて聴いた時「回転数が間違っているんじゃないか?」と思ったほどのメドレーの超低音で始まり、途中からハットフィールドが熱く絡んで盛り上げるこの曲以降、ライチャスとスペクターのコンビはブリティッシュ・ビートブームの中アメリカン・ポップスの新時代を切り開いていくのか?と思われたが、残念ながら彼らの関係は長くは続かなかった。自信満々で市場に送り出したフィレスから3枚目のシングル「Hung On You('65米47位)」が期待したほどのヒットにならなかったばかりか、完全に“捨て曲”としてB面に収録したスタンダード「Unchained Melody」が大ヒット(同4位)してしまったことにへそを曲げたスペクターは、元々プロデューサー的資質を持ち、必要とあればスペクター・サウンドの模倣さえやってのけたメドレーとの折り合いの悪さもあり、以降発表するシングルはどれもハットフィールドがソロで歌うスタンダードのカバーばかりという事態に。

Soul and Inspiration - The Righteous Brothers (1966) この状況に嫌気がさし、新天地を求めヴァーヴと契約した彼ら(スペクターは彼らに愛想をつかしてしまったらしく、フィレス時代の録音の権利まで一緒に同社に売ってしまう。お陰で我々は今日これらの音源をCDで自由に聴くことができることに)は第一弾シングルとして「ふられた気持ち」録音時に候補に挙がりながら、コンペで負けてお蔵入りとなっていたキャロル・キング&ジェリー・ゴフィン作の「(You're My) Soul & Inspiration」を録音、メドレーがプロデュースし壮大な“スペクター・サウンド”に仕上げられたこの曲は彼らに2曲目の全米ナンバー1をもたらす。幸先のいいスタートを切った彼らだったがその成功はこれがピーク、以降シングルをリリースする度成績を落としていった2人は67年にはヒットチャートをフェイド・アウト。翌68年に袂をわかちソロ・アーティストとしてのキャリアを築いていくこととなった。

Bill Medley 100% - Bill Medley (1968) 各々の道を歩み始めた彼らは次々とソロ・シングルをリリース。成功を収めたのはメドレーの方で、マン&ウェイル作品「Brown Eyed Woman('68米43位)」と「Peace Brother Peace(同48位)」はTOP40目前まで上昇。一方ハットフィールドはこれといったヒットを出すことが出来ず69年には元ニッカボッカーズのジミー・ウォーカーと、こともあろうに「ライチャス・ブラザーズ」を再編しアルバムを発表したがこれも失敗。暫しの沈黙の後再びシーンに浮上するのは、彼とメドレーがリユニオンを果たした70年代半ばのことであった。1988年に映画「ゴースト」のテーマに使用された「Unchained Melody」が再ヒットして以降2人はほぼ恒常的にコンビでステージに上がり、2003年にはR&Rの殿堂入りを果たしている。

Messin' in Muscle Shoals - Bobby Hatfield (1970) と、そんな2人の60年代の活躍を丹念に追った今回のCD2枚組、彼らのデュオ、ソロ名義併せたディスコグラフィを作成したのでまずは下のリンクをご覧いただきたいが、シングルA面曲の大半を網羅した充実盤となっている。ムーングロウ時代に2人が既にソロ・シングルを発表していたことを今回僕は初めて知ったし、ハットフィールドがヴァーヴでリリースしたシングルA面5曲すべての収録も快挙といっていいだろう。70年代以降ビル・メドレーはソロとして様々なジャンルでヒットを放っており、これは是非ともソロ時代のアンソロジーを企画して欲しいところ。また残念ながら2003年に亡くなったハットフィールドの「コンプリート・ヴァーヴ・レコーディングス(彼は同社に未発表を含めアルバム2枚分の音源を残している)」なんてのも、いつかHip-O Selectが出してくれることを願いたい。

The Righteous Brothers Singles Discography 1961-1991

(2006/2/18)

Hits Of '55: Moments To Remember

The R'N'B Hits Of 1955: Red-Hot Rockin' Rhythm & Blues


Hits Of '55: Moments To Remember (ASV/Living Era)
The R'N'B Hits Of 1955: Red-Hot Rockin' Rhythm & Blues (Castle)



 イギリスのサンクチュアリー・レコード・グループから毎年恒例の“年始挨拶”が2組届いた。ヨーロッパで50年の著作権保護期間があけ、めでたく「パブリック・ドメイン」となった1955年のヒット曲ばかりを集めたこのCD、まずポップ編「Hits Of '55」は収録されている29曲のうち20曲までが英米のどちらか(または両方)でナンバー1を記録しているという豪華盤。1位になった日付順に並べてみると

01/01 Let Me Go, Lover! - Joan Weber (US)
01/07 Finger Of Suspicion - Dickie Valentine (UK)
02/05 Hearts Of Stone - The Fontane Sisters (US)
02/12 Sincerely - The McGuire Sisters (US)
02/18 Softly, Softly - Ruby Murray (UK)
03/11 Give Me Your Word - "Tennessee" Ernie Ford (UK)
03/26 The Ballad Of Davy Crockett - Bill Hayes (US)
04/30 Cherry Pink And Apple Blossom White - Perez "Prez" Prado (US/UK)
05/14 Dance With Me Henry (Wallflower) - Georgia Gibbs (US)
05/14 Unchained Melody - Les Baxter (US)
07/09 (We're Gonna) Rock Around The Clock - Bill Haley & His Comets (US/UK)
07/09 Learnin' The Blues - Frank Sinatra (US)
07/15 Dreamboat - Alma Cogan (UK)
07/29 Rose-Marie - Slim Whitman (UK)
09/03 The Yellow Rose Of Texas - Mitch Miller & His Orchestra & Chorus (US)
09/17 Ain' That A Shame - Bat Boone (US)
10/08 Love Is A Many-Splendored Thing - Four Aces (US)
10/14 The Man From Laramie - Jimmy Young (UK)
10/29 Autumn Leaves - Roger Williams (US)
11/26 Sixteen Tons - "Tennessee" Ernie Ford (US/UK)

 アメリカのナンバー1ヒットは14曲すべてを収録、イギリスの方は14曲中8曲のみだが残る6曲のうち2曲は既に1954年編に収録済、あと4曲は恐らくヨーロッパで出される他のシリーズでカバーされることだろう。「Hearts Of Stone」「Sincerely」「Dance With Me Henry」「Ain' That A Shame」はR&Bヒットの白人アーティストによるカバーで、ヒットチャートにR&Rの時代が近づいてきていることがわかる。イギリスのみでヒットした曲を除けばとりたてて珍しいものはないが、その年のヒット状況をおさらいするには最適な内容になっている。続いてR&B編「The R'N'B Hits Of 1955」の方、こちらは前年に続き3枚組全84曲という大変なボリュームで、ナンバー1ヒットを列記すると

01/15 Earth Angel (Will You Be Mine) - The Penguins
02/12 Pledgeing My Love - Johnny Ace
04/09 The Wallflower - Etta James
04/23 My Babe - Little Walter
05/07 I've Got A Woman - Ray Charles
05/21 Unchained Melody - Roy Hamilton
06/25 Bo Diddley - Bo Diddley
08/20 Maybelline - Chuck Berry
10/22 Only You (And You Alone) - The Platters
10/29 All By Myself - Fats Domino
12/17 Hands Off - Jay McShann
12/31 Adorable - The Drifters

 R&Bチャートは完全にR&R時代に突入しており、上記以外にもB.B.キングの「Every Day I Have The Blues」、マディ・ウォータースの「Mannish Boy (I'm A Man)」、リトル・リチャードの「Tutti Frutti」など古典的名曲がズラリ。エルヴィスも控えめに一曲「Baby, Let's Play House」のみ収録されているが、彼がR&Bチャートに登場するのはこの翌年の「Heartbreak Hotel」からなのでこれは仕方がない。

 この時期の音源もいよいよフリーでCD化できるようになり、エルヴィスのサン・レコード時代(1954〜55年)の録音群は早くも「コンプリート・コレクション」がイギリスのインディ・レーベルから発売が予告されている。今後数年間はこれまで考えられなかったような大がかりかつ詳細で安価なオールディーズのコレクションが次々と企画されるようになると思うので、オールディーズ・ファンはある程度覚悟した上で臨んだ方がいいかもしれない。

収録曲等詳細(発売元のサイト)
Hits Of '55: Moments To Remember
The R'N'B Hits Of 1955: Red-Hot Rockin' Rhythm & Blues

(2006/2/5)