キャロル・キングと並ぶR&R時代最古の女性シンガーソングライターの一人であるジャッキー・デシャノンが1960年代に発表したアルバムが、昨年後半立て続けにCD化されたのでまとめてご紹介。職業ソングライターとしても数多くのヒットを生み出した当時の彼女の活躍ぶりを上手くまとめた一節がCDのライナーノーツにあったので引用させてもらうと、彼女は
【 エルヴィスとデイトし、ビートルズとツアーに出、バート・バカラックやブライアン・ウィルソンとレコーディングし、ジミー・ペイジやランディ・ニューマンと曲を共作した 】
人であった(そうだ)。しかも彼女は“恋多き女”としても知られており、多くのミュージシャンやソングライターと当時浮き名を流している(そうだ)・・となると、その“活躍ぶり”を50年代後半のデビューからいちいちたどっていくと殆ど「R&Rの歴史」そのものに匹敵するほどのエピソード数になってしまうためここでは省略し、各々のCDを取り上げながら60年代半ば〜後半の彼女の活動を紹介することにしたい。
まず最初は「BGO」からリリースされた「Don't Turn Your Back On Me (1964)」と「This Is Jackie DeShannon (1965)」のカップリング。これは彼女のイギリスにおける1枚目と2枚目のアルバムに当たるようで、当時彼女がアメリカでマイナーヒットさせた「Needles And Pins('63米84位)」、そして彼女が書いた「When You Walk In The Room」をサーチャーズがカバーヒットさせたことによりイギリス発売が実現した模様。この時期彼女はジャック・ニッチェと盛んに仕事をしており「Don't Turn 〜」の収録曲の殆どは彼のアレンジ。異色なのはこのアルバムのタイトル・トラックで、これはイギリス進出のためか特別にロンドンで録音されており、アレンジはまだ10代だったジミー・ペイジが担当。彼の張り切った12弦ギターを曲全般で楽しむことができる。
その他の聴きどころとしてはサーチャーズ関連の2曲は勿論、まだ駆け出しのソングライターだったランディ・ニューマン作の3曲にも注目。彼が62年に書いたという典型的なティーン・ポップ「Just Like In The Movie」は別として既にドラマチックな作風が確立されつつあり、この数年後に訪れる成功の萌芽が認められる。続いてのアルバム「This Is 〜」の方は本国でバカラック作の「What The World Needs Now Is Love('65米7位)」が大ヒットしたことを受けて制作されたもので、内容は米国盤と一緒。「What The World 〜」に加えバカラック・ナンバーとしては「A Lifetime Of Loneliness('66米55位)」が収録されており、更にランディ・ニューマン作も一曲・・とこの調子でアルバム一枚仕上がればよかったのだが、慌てて作られたせいかスタンダード・ナンバーのカバーも多く、なんとなく中途半端な印象。シンガーとしての彼女はデビュー以来ブレンダ・リーの強い影響下にあり(皮肉にもデシャノンは彼女に大ヒット「Dum Dum('61米4位/英22位)」を提供してもいる)、そこから彼女独自の歌声を獲得したのが「What The World 〜」のヒットで、このアルバムはその過渡期にある作品であったということができる。
話は次のCDへ。「BGO」同様イギリスのレーベルである「RPM」から再発された「Breakin' It Up On The Beatles Tour」は1964年にビートルズのアメリカ公演に同行した彼女を売り出すため本国でリリースされたアルバムで、内容を見たら前述の「Don't Turn 〜」と一曲を除いて同じ(英盤はこれにジミー・ペイジがらみの一曲が追加されている)!!知っていれば買わなかったのに・・。仕方がないのでボーナス・トラック(全8曲)の方に目を向けてみると、サーチャーズがまたまたカバーした「Till You Say You'll Be Mine」、80年代にトレイシー・ウルマンがカバーしたことで知られる「Breakaway」あたりが聴きどころか。ジャック・ニッチェとの共同作業(≒スペクター・サウンド)期の彼女の録音を集大成した、と捉えれば、これはこれでいいCDなのかも知れない。
気を取り直して続く「Are You Ready For This (1966)」に。前年に「What The World 〜」が大ヒットしたことで歌手としても自信をつけた彼女がその成功を維持すべく発表したアルバムで、なかなか聴き応えのあるナンバーが並んでいる。まずバカラック作品が3曲(ボーナスでさらに3曲)収録されていて、それだけで“バカラック・マニア”は入手必須な訳だが、入っている曲がまた良くて「Windows And Doors('66米108位)」と後にハーブ・アルパートがヒットさせる「To Wait For Love」、そして「So Long Johnny」。僕個人的には「〜 Johnny」が、彼女が歌うバカラック・ナンバーの中で一番好き。彼女作のナンバーもなかなか充実しており、アルバム・タイトル曲と「Love Is Leading Me」「Find Me Love」の3曲はまるでシュープリームスのようなモータウン調。中には「You Don't Have To Say You Love Me」のカバーなんて欲張り過ぎなものもあるが、今回紹介する中では一番好きなタイプのアルバムであることは間違いない。ボーナス・トラックも前述「This Is 〜」と若干重複するもののアルバム発表前後の期間のシングル音源を網羅しており、大変満足のいく内容になっている。
で、いよいよ最後のCD「Laurel Canyon (1969)」へ。これは彼女がアーシーなロックに挑戦した意欲作で、ザ・バンドのカバー「The Weight('68米55位;オリジナルより1週早くチャートインし、最高位争いにも勝った)」を収録。この曲及びアルバム「Music From Big Pink」に彼女は相当感銘を受けた様子が窺え、信頼のおけるバンドをバックに熱いロックを聴かせている(録音はロサンゼルス)。バンドのメンバーには各曲でピアノを自在に操っているマック・レベナック(Dr.ジョン)、70年代に入ってワーナーの大プロデューサーとなるラス・タイトルマン、ジャズ畑のポール・ハンフリーの名もあり、特徴的なコーラスに聴き覚えがあるなと思ってクレジットを確認したら、その主はなんとブレイク前のバリー・ホワイト(!)彼はこのアルバムに「I Got My Reason(「The Weight」ソックリ)」という曲も提供。他には彼女がマリアンヌ・フェイスフルに提供しイギリスでヒットを記録した「Come And Stay With Me」の味わい深いセルフ・カバーにも要注目の、時代を先取りした「隠れたロック名盤」である。
その後ボーナス・トラックには彼女がアラバマのマッスル・ショールズに赴き、ボビー・ウォマックのプロデュースの下録音した4曲他、この時期のシングル録音等を8曲収録。今回の4枚のCDでこれまでベスト盤でしか聴くことが出来なかった彼女の作品を体系的に聴くことができるようになったのは嬉しいことだが、実は彼女の充実期(60年代後半〜70年代前半)の作品は、CDをあと2、3枚は出してもらわないととてもカバー出来ないくらいの量がある。どちらのレーベルからでもいいので、是非とも近いうちの続編を。
収録曲等詳細(発売元のサイト)
Don't Turn Your Back On Me/This Is Jackie DeShannon
Breakin' It Up On The Beatles Tour, Are You Ready For This & Laurel Canyon
(2006/1/3)