八亀's Picks - U.S. Live Reports (& More)

過去の八亀's Picks

5.28 New Orleans Jazz & Heritage Festival
5.28 Live Report: New Orleans, Apr.29 (Fri)
6.17 Live Report: New Orleans, Apr.30 (Sat)
7.17 Live Report: New Orleans, May 1 (Sun)

New Orleans Jazz & Heritage Festival


New Orleans Jazz & Heritage Festival 今年のゴールデン・ウィークはまとめて休みがとりやすい日の並びだったので、思いきって久々のアメリカ旅行に出かけた。今回の旅行の主目的はニューオリンズで開催される「New Orleans Jazz & Heritage Festival」。随分昔からその存在は聞いていたが、本当に自分が行くことになるとは。。ということで、まずはこのイベントの説明から。今年で35回目を迎える同フェスは、ジャズが誕生した街ニューオリンズで開かれる野外コンサート。“ジャズフェス”とはいっても演奏されるのはジャズばかりではなく、ロックもR&Bも、勿論ヒップホップも(今年は地元出身の人気者ネリーがだだっ広い会場でライブをやった)あり。ニューオリンズで独自に発展し、他の地域ではなかなか接することの出来ないケイジャンやザディコ、ネイティブ・アメリカンの音楽なども紹介されてるし、その一方で当地の名物料理も何十と出店されたテントでどっさり食べることができるという、こんな例えで感じが伝わるかどうかわからないが、日本で開催されているイベントでいえば「FUJIROCK」と「タイ・フード・フェスティバル」が一ケ所で展開されているような、音楽好きである上に喰い意地の張った僕みたいな人間には夢のような催し。フェスは2回の週末(4/22〜24、4/28〜5/1)にまたがって開催されており、僕はその後半、4/29〜5/1の3日間を観てきた。

How to go to Fairgrounds ジャズフェスの会場は、ニューオリンズの街外れにある競馬場「Fair Grounds Race Cource」。街中からシャトルバス(往復15ドル)が出ていて、それに乗れば会場へは約15分ほどで行くことができる。いや、これは便利。日本のロックフェスは基本的に物凄い郊外(というか田舎)で開催されることが多く、その往復を考えただけで参加を諦める、というケースが僕の場合多いのだが、これだったら何の苦もない。日本でも府中とか大井とか、そこら辺の競馬場でロックフェスが開催されるなんてことがあったら随分違うのに・・なんてことも考えたり。但し「Fair Ground」の場合レースコースが砂地で、日本のようにコースが芝だったら踏み荒らされて復元が大変なのかな・・?とも思ったが。

 で、ここでフェスの簡単な歴史を。1970年、伝説的なゴスペル・シンガー、マヘリア・ジャクソンを招いて地元の文化を紹介するフェスティバルのアトラクションの一つとしてスタートした(最初の観客は350人だったという)このイベントは72年に現在のフェア・グラウンドに会場を移し、以降観客数は年々増加。日程も週末の3日間から2週間に亘る規模となり、80年代後半には30万人を突破。2001年は過去最高の60万人が期間中フェア・グラウンドに押し寄せるという大変な状態に。元々ルイジアナの伝統的な文化や、その後コミュニティの一員となった様々な民族の伝統や芸能を紹介することを目的に始められたイベントなので出演するアーティストは非常に多岐に亘り、ニューオリンズのジャズやR&Bシーンを支えたベテラン・アーティストは勿論全米トップ・レベルの人気バンド、地元の高校や町内会(?)のブラス・バンドまで数えきれないほどの人々が出演、あらゆる角度からルイジナ、更にはアメリカの音楽を存分に堪能できる形になっている。

Jazz Fest Map 会場では競馬コースの内側や外側に10数ケ所ステージやテントが設営されていて、一番広いところでは数万人、狭いところでは数百人の観客が演奏を楽しむことができる。ステージによっては音楽のテーマがはっきり決まっているところもあり、そこでは一日中地元の音楽やゴスペル、ブルース、伝統的なジャズなどが演奏されている。イベントが開催される時間帯は午前11時から午後7時までと他のフェスと比較すれば短いが、質・ボリューム的にはこれで充分、物足りないという人は街に帰れば数十軒という店で朝までライブをやっているので(イベントに出演したアーティストが、街に戻ってもう一回夜にライブ、というケースも少なくない)それこそ倒れるまでライブ三昧も可能。期間中は街の中心にあるフレンチ・クォーター全体がフェスティバルの雰囲気に溢れ、レコード店もライブハウスも真っ昼間から深夜まで色々イベントをやっており、さながら“ジャズフェス第2部”の趣きがあるので、ライブ会場でグズグズしているよりは、さっさと街に戻って夜の喧噪の中に繰り出した方がいい。

 と、ここまで色々細かく書いたのは、僕自身今回実際に行ってみるまでフェスに関して得られる情報が少なく、一体どんなイベントであるかのイメージが涌かなかったから。来年のゴールデン・ウィークにアメリカに行かれる方は是非ともニューオリンズに立ち寄ってこのイベントに参加していただきたい、ということでガイド的な意味も兼ねてこれから期間中に観たステージや会場で食べた料理、イベント中如何に過ごしたか等を日別にご紹介。それではジェズフェス・レポートのはじまりはじまり。。

(2004/5/22)

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Live Report: New Orleans, Apr.29 (Fri)


Sprint Stage ニューオリンズ・ジャズフェス参加初日は午前中街のレコード屋を漁り(詳細は別項にて)、その後昼食で念願の生牡蠣(これも別項)を食した上での参加だったため、到着は14:00過ぎとかなりゆっくりめ。競馬場の敷地に入るとまず見えてくるのがメイン・ステージの一つ「Sprint Stage」で、メジャー・アーティストや地元の有力アーティストが次々と出演。この日と翌日の大半をここで過ごすこととなった。

14:50 Jamie Cullum @ Sprint Stage

Jamie Cullum UKジャズ・シーンから登場した、イカした「小男」ジェイミー・カラム。日本でも昨年Fuji Rockに出演済で僕もそれを映像で観たが、非常に個性的なパフォーマンスが印象的でこの日のステージを楽しみにしていた。アメリカでも彼はなかなか人気がある様子で、登場すると女の子たちの黄色い歓声が上がっていた。

 彼のいでたちはTシャツにGパンという非常にラフなスタイルで、その第一印象は「とにかく小さい(笑)」。バックはベーシスト(異常に長いエレクトリック・ベースを抱えている)とドラマーの2人で、ピアノに向かうと中腰の“ジェリー・リー・ルイス・スタイル”でジャズのスタンダードを弾き語り。途中ピアノの所々(壁やら柱やら)をパーカッション替りに叩いたり、グランドピアノの中に手を突っ込んでピアノ線をミュートしながら音を出してみたりと“傍若無人”ぶりが非常に楽しい。更にはピアノの上に立つ、ソロを始めるのにわざわざ側からピアノを飛び越える(手から着地するのだが、最初の一音は見事はずさない)など、ピアノに関するあらゆることについて“躾が為されていない”感じが、現在の彼の最大の魅力になっている。

 シンガーとしての彼はまだそういったパフォーマンス抜きで魅力的、とまでは言いがたいが、そこら辺は今後徐々に味わいを増していくのだと思う。披露した曲の中にはレディオヘッドの「High & Dry」だとか、言葉遊びみたいな自作曲などもあり、色々とバラエティを持たせている様子が覗え、アルバムの枚数を重ねるにつれ彼がどのように世界を深めていくかが今から楽しみである。ニューオリンズは初来訪で「ここは食べ物が美味しいね!ガンボとかジャンボ(ジャンバラヤのこと)とか。」なんてボケをかましつつ、しっかりフェスの雰囲気に馴染んでいたジェイミー。今度は単独の来日公演でその雄姿をたっぷりと拝見したいところ。

Randy Newman16:20 Randy Newman @ Sprint Stage

 海外のフェスの楽しみは、日本ではなかなか観ることの出来ないアーティストのライブに接することが出来るところ。ランディ・ニューマンのステージは出国前から随分楽しみにしていて、その登場を予定時間の随分前から会場でワクワクしながら待っていた。

 MCの紹介を受けてステージのソデから姿を現した彼は意外なくらいの長身(オレはアーティストの背丈しか見てないのかっ?!)。舞台の前に陣取った観衆はかなり平均年齢が高く、数千人が立ったり椅子を持ち込んだりで思い思いにパフォーマンスに接している。彼のCDを聴いているとどうしても「気難しそう」とか「難解そう」など先入観を持ってしまうが、流石に30年以上ステージをこなしているだけあってその進行は非常に熟れており、とにかく曲に入るまでのMCで喋ること喋ること。観客はMCで笑い、曲のブラックな歌詞でまた笑う。なんだ、笑ってないの英語がわからない僕だけじゃん。不勉強なことに90年代以降の彼の作品を僕は全然聴いていなくて、初期の曲が始まると「あっ!あれだ!」と反応するという感じだったが、他の客も反応は似たような感じ。ただ歌詞が面白い(らしい)ので、どれも歓声をもって受け入れられてはいたが。

 会場が最も沸いたのはなんといっても大ヒット「Short People」が演奏された時で、イントロが始まるとワっと歓声が上がり、続いて♪チビには生きてる意味がない〜、の部分で大合唱。この時ばかりは会場の外側の通路まで見物客が溢れた。他に印象に残ったのはご当地ソング「Louisiana 1927」と、アルバム「Good Old Boys」に収録されている地味な曲「Marie」。この曲を歌い始めたらもの凄く喜んでいる客(50代くらいの男性)が後ろの方に一人だけいて、それが印象的だった。確かに僕も「ランディ・ニューマンの曲で何が一番好き?」と訊かれたら「Marie」と答えるかも知れないけど。質問した人はポカーンとするだけだろうけれども。

 ライブは全編が弾き語り、曲間のジョークもよく理解出来ないので立ちっぱなしが辛くなり、暫く会場を離れて方々を散策。時間を見計らってステージ近くに戻ると、丁度最後の曲が終わって彼がアンコールの催促を受けているところ。余り乗り気でない雰囲気でなかなかピアノの前に座らなかったニューマンがオマケとしてやったのがファースト・アルバムに収録されている「I Think It's Going Rain Today」。こんな地味な曲を最後にやるとは。本当に彼らしい。。


Eh-La Bas! Sprint Stageのセット替えの時間帯に方々を歩き回ってはみたが、初日はほとんど他のステージを観ることが出来ず。最近のヒットチャートに関係のありそうなアーティストでいえば

クイズ:会う人会う人「TVで観るより実物の方が全然いいですね。」と言われるバンドは何だ?
答:ベター・ザン画面(えづら)

 なんてのも出演していたが、観る時間がなかった。このイベントではどんな大物でも割り与えられる時間はせいぜい1時間かそこらなのに、唯一例外的に2時間半ものコマを与えられていた地元のジャム・バンド、ワイド・スプレッド・パニックも気になって一応会場に足を運んではみたが、グレイトフル・デッド系の長尺演奏には、基本的に自分は興味がないのだ、ということの再確認をしただけだった。

 また大きな会場と会場を結ぶ様々な場所にも小型のステージが設けられていて、テーマ別に地元のアーティストが登場して場を盛り上げていた。中でも通りかかる度に楽しかったのがケイジャンやポルカ(?)系のダンス・バンドが次々と登場する「Fais Do-Do Stage」で、さすがは“地元代表”だけあってどれも大変ノリがいい。この日僕が観たのは「Eh-La Bas!」というケイジャンとカリビアンをガンボにしたようなバンドで、ひたすら「Eh-La Bas!」と叫ぶ曲を延々と演奏していたのだが、これが物凄い盛り上がり。極めて単調だがこのバンドが出てきたら同じイベントに出てる他のアーティストは絶対に喰われるな、という迫力が感じられた。他にニューオリンズ・クレツマー・オールスターズも何曲か観たが、そこら辺は省略。


Marcia Ball18:00 Marcia Ball @ Sprint Stage

 Sprint Stageこの日のトリはテキサス出身のブルース系アーティスト、マルシア・ボール。このフェスに参加することになって僕は初めて彼女の存在を知ったが、調べてみるとどうやらルイジアナの音楽シーンでは“ミス・ニューオリンズ”のように奉られているようで(テキサス出身なのに!)フェス期間中は毎晩方々で引っ張りだこ。出演者リストに彼女の名前が加わるとイベントの格がワンランク上がるくらいの認識でもあるのか、幾つもの大物が顔を揃えるライブで、彼女と彼女のバンドがまるで世話役のようにバックを務めていた。

 ライブで観た彼女の印象は、一言でいえば「R&Rママさん」といった感じ。ニューオリンズでは大変高名でも、他所からフェスを観にきた観客の知名度はいま一つのようで、僕の近くでも「マルシア・ボール?(『アイ・ラヴ・ルーシー』の)ルシール・ボールだったら知ってるけど。」なんて会話が実際にされてもいた。それでもブギウギ・ピアノを豪快に弾く彼女の演奏は徐々に観客を掴んでいき、アップテンポな曲で会場を大変に盛り上げ見事この日は大団円。19:00を過ぎてもまだかなり陽の高い会場を後に、シャトルバスに乗り込んで観衆は夜の街へと帰っていった。

(2004/5/28)

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Live Report: New Orleans, Apr.30 (Sat)


 土曜日の午前中はアメリカ東部を襲ったハリケーンの影響でこれまで見たこともないような大土砂降り。前日の反省から早めにライブ会場入りしようと思っていたのだが断念し、この日もフレンチ・クオーターで朝食がてら散策とレコード屋巡り。昼には天気が好転してきたので街の中心部から出ている会場行きのシャトルバスに乗り、13:00過ぎからのライブ参戦となった。

13:30 The Dixie Cups @ Sprint Stage

The Dixie Cups 会場に到着してまず最初に目に入ったのがディキシー・カップスのステージ。そう、あの全米ナンバー1ヒット「Chapel of Love(愛のチャペル)」の。ニューオリンズ出身の彼女たちはニューヨークでデビューを果たし、出身地に因んで「ディキシー・カップス」と名づけられて1964年に短期間ながらヒットチャートで活躍。幾つかのヒットを残したがガール・グループブームの末期に登場したためその成功は長く続かず翌年にはシーンからフェイドアウト。多くの音楽ファンはその後の彼女たちを知らないが、実は60年代後半には活動拠点をニューオリンズに移して現在まで息の長い活動を続けているのだとか。つい最近ニューオリンズの音楽殿堂入りも果たしたそうで、キャリアの出発点こそ“ソングライターの造りもの”だったかもしれないが、現在は立派な当地の大御所となっている様子。

 現在の彼女たちのステージは、流石おばさん3人寄っているだけあってかしましい。確か姉妹と従姉妹の3人組だったはずで(MCでもそう言っていた気がする)言葉のやりとりも熟れたもの。この世界長く続けている者の勝ちで、例え自分の曲でなくてもあの当時のヒットを歌えば観客は拍手喝采、クリスタルズの「Da Doo Ron Ron」なんて曲で結構盛り上がったり、「続いてはブロードウェイ・ミュージカル『ママ・ミア』から一曲歌います。」と言ってやったのはアバの「ダンシング・クイーン」だったり。まぁ確かにそういう言い方もできるけど。

 ステージのラストは待ってましたの「愛のチャペル」。ここでメンバーはボストンバッグから紙のぎっしり詰まった袋を取り出して客席に投げる。どうやら紙を皆に配れと言っているらしく回ってきた束を見たら「Dixie Cups」のロゴが入ったペーパー・ナプキンで、これを皆で振りながら一緒に歌うという。ナプキンをひらひらさせながら皆で歌った「愛のチャペル」は非常に楽しく、雨上がりで足元がぬかるんでいるのは気になったがいいステージだった。ご当地ニューオリンズで是非とも聴きたかった「Iko Iko」は僕が会場に到着する前に既に演ってしまっていたらしく、アンコール替わりにオマケとしてアカペラで歌ったのはその元歌のような曲(♪なんとか小父さんが死んじゃった〜、みたいな歌詞のやつ)。地元の人には分かるのでしょう、何人かが合わせて歌っていたが、他所者が多いフェスでは反応が弱い印象は否めなかった。

14:20 Wayne Toups & The Zydycajun @ Sprint Stage

Wayne Toups 「ザディコ界のスプリングスティーン」のキャッチフレーズで80年代にメジャー・デビューし、ちょっと話題になった人。当時アルバムがチャートの下位(調べてみたら89年に「Blast from the Bayou」が最高183位を記録している)に登場したが、その後彼の噂はまったく日本には届かず。しかし地元では現在でもスターのようで、アルバムもコンスタントに発表し続けているらしい。彼のMCによればこのフェスには20年連続で出演を続けているのだとか。

 彼らの音楽性は、簡単に言えば80年代的なアメリカン・ロックをアコーディオン入りで演奏するといった感じ。さすがにライブ馴れしていて、場を盛り上げるタイプの曲が多い。ボーカリストとしてのトゥープスは、タイプ的にはスプリングスティーンというより“声量のないヒューイ・ルイス”といった方がいいだろうか(?)、こういうローカル・スターが他所の人間には知られることがないまま、世界中にたくさん存在するんだろうな、などと思いながらその演奏を聴いていた。

15:50 Allen Tousant @ Sprint Stage

Allen Toussaint 60〜70年代のニューオリンズの音楽シーンを象徴するアーティスト/プロデューサーで、今から約30年前の非常によかった時期の日本のロックにも多大な影響を与えた人。折角ニューオリンズに来たんだから、それを実感するためにもこういう人のステージを観ておきたいよね、ということで。とにかく物凄い数のヒット曲を生んでいて、その仕事は相当メジャーなロック・アーティスト(ザ・バンド、ポール・サイモン、ウィングスなどなど)にも及ぶ。ただ彼自身が70年代に発表したアルバムを聴いた限りではちょっと難解な印象があったので、ステージ自体がどのようなものになるのかが予想がつかず、期待半分、不安半分といった気分で眺めていたのは確か。

 ステージに登場した彼は特に気難しい感じではなく(後で聞いた話では、時によっては相当気難しいこともあるそうだが)軽妙洒脱なエンターテイナーに徹していて、非常に楽しいライブだった。彼がかつて手がけたヒットを次々と披露していくのだが、個人的にはリー・ドーシーのナンバーを何曲もやってくれたのがとても嬉しかった。芸風も歌声も明るい感じで、日本の音楽ファンにも間違いなく愛されると思うので、ドクター・ジョンばかりでなく機会があればアラン・トゥーサンも再び日本に呼んでいただきたいところ。

なお彼のステージのテーマ曲となっていたのは「Southern Nights」。グレン・キャンベルがカバーして75年に全米ナンバー1を記録したあの曲だが、かなりキャンベルのバージョンに忠実な感じ(トゥーサンがかつてやっていたのとはかなり違う)で演っていたのが印象的だった。


Dave Matthews スプリント・ステージを離れて方々観まわったものとしては、まずはやはりニューオリンズ名物といっていいグループ「ダーティ・ダズン・ブラス・バンド」をチラッと。このバンドは数限りなく分裂を繰り返しているようで、今回のフェスのプログラムには彼らの他にも「original member of 〜」とか「formerly with 〜」などといった形でダーティ・ダズンの名前が登場するアーティストが3組くらい出ていた。実際に観た演奏は、たまたま立ち寄ったタイミングが悪かったのか普通のファンク・バンドみたいであまり面白みがなく、1〜2曲でその場を立ち去ってしまった。

 もう一組、この日一番大きな会場でメイン・アクトを務めたデイヴ・マシューズ・バンドも印象深かった。とはいっても殆ど演奏は観ていないのだが。とにかく物凄い人気でステージに向かって何万人という観客が押し寄せており、何とか満足に観れる場所を確保しようと会場の後方でウロウロしてみたが人が多すぎてよく見えないし、音も満足に届かないし。演奏が始まるまで粘ってみたがとても聴ける状態ではなかったので諦め、スクリーンに映し出されるマシューズの広〜いおでこをはるか彼方に見ながらスプリント・ステージに戻ることにした。


17:30 Elvis Costello & The Imposters @ Sprint Stage

Elvis Costello デイヴ・マシューズの会場は物凄い人出で一体何万人集まっているのかわからない状態、同じ時間帯にやっている他のアーティストはさぞかし割を食っているだろうとコステロが演奏しているスプリント・ステージに戻ってくると、こちらもまた熱心なファンでギッシリ。スペースが縦長なのでかなり距離があるのだが、恐らく1万人くらいは集まっているんじゃないか?という盛況ぶり。

 今回の彼のツアーではバンドに週替りくらいでゲスト・メンバーが入れ替り立ち代り参加しているようで、この日のゲストはロス・ロボスのデヴィッド・ヒダルゴ。彼がギターやアコーディオン、フィドルなどでサウンドに多彩な色付けをしていて、ちょっと得した気分。演奏曲はお馴染みのものが中心で「Alison」では一部観客の合唱も聴かれた。「アメリカ人の中にもこれだけ熱心なコステロ好きがいるんだー。」などと、考えてみたら当たり前のことに変に感心してしまったり。

 近年はダイアナ・クラールと結婚したりですっかり落ち着いちゃってるのかなー、と最初思っていたがそれは全然間違い。あのハイテンションな歌声は健在で会場をガンガン盛り上げる。後半にさしかかって「Pump It Up」と「(What Is So Funny About) Peace, Love and Understanding」のメドレーが始まると会場の熱気は最高潮に。僕の傍で「そうだー!ラブ&ピースのどこがおかしい!!」と叫んでいる客がいたが、今日のフェスに集まっているようなアメリカ人ばっかりだったら、こんなひっきりなしに戦争なんか起こるはずないのに・・と僕も思った。ライブのクロージングは恒例だという「You've Really Got A Hold On Me」、とにかく客の盛り上がりとコステロの熱演が凄くてその場を離れることが出来ず、本当は観るつもりだった新進R&Bアーティスト、アンソニー・ハミルトンの会場には結局一度も行けなかった・・。

 数日後地元のフリーペーパーを読んだらコステロはこの前月にもニューオリンズを訪れていたようで、その時のライブ評が載っていた。そこに書かれていた文句がなかなかよかったので最後に引用しておこう。

【ロックなまま年齢を重ねることが出来たアーティストは歴史上ボブ・ディランとニール・ヤングの2人しかいないが、もしかしたらコステロはその3人目になるのかもしれない。】

(2005/6/17)

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Live Report: New Orleans, May 1 (Sun)


Jean Knight14:10 Jean Knight & The Knight's of Rhythm @ Blues Tent

 ハリケーン一過で日ざしは強いものの涼しい風が吹き非常に過ごしやすかった3日目は大きい会場は避け、周辺の小規模なテントを中心に徘徊。競馬コースの外側に位置するスペースには各々1,000人くらいずつ入るテントが3つ建てられていて、ジャズ、ゴスペル、ブルースをテーマに1日中演奏が行われている。言ってみれば「ニューオリンズ・ジャズフェス」と聞いて一番イメージが浮かびやすい類いの音楽がまとめて聴けるスペース、という感じ。中は日陰で椅子も並べられており快適なので、直射日光の下歩き回って疲れたらここでのんびり過ごすことも出来、実際年輩の客はここら辺に長時間居ることが多いようだ。

Mr. Big Stuff (1971) そんな中でまず観たのが1971年に「Mr. Big Stuff」の大ヒットを放った女性R&Bシンガー、ジーン・ナイト。例のアルバムジャケットの印象が強烈なので「彼女もビッグ・スタッフなのか!?」と考えがちだが実際にはそれほどでもなく、確かにふくよかではあるが健康的な感じ。ヒットチャート・ファンにとって彼女は「一発屋」同然なのでつい「他に歌う曲なんてあるの?」などと余計な心配をしてしまうけれども、彼女自身のヒット曲は少なくても、あの時代のR&Bヒットを片っ端から歌えば客は大喝采なのでエタ・ジェームスからアレサ・フランクリンまで何でもござれ状態。ようやくお目当ての「Mr. Big Stuff」が始まった!と思ったら実はそれはベティ・ライトの「Clean Up Woman」だったり(確かにこの2曲よく似てる・・)、なんてことをしているうちに隣のゴスペル・テントで次のお目当てが始まりそうなので心残りではありながらも移動。

Aaron Neville14:45 Aaron Neville @ Gospel Tent

 フェスのトリを務めるネヴィル・ブラザーズとしての出演前に、アーロンがゴスペル・テントにソロで登場。有名人ということでテントは物凄い人だかりで最初は中に入れないくらい、彼の人気の高さを窺わせた。

 ステージに登場した彼は伴奏を伴わず、カラオケでひとしきり有名曲を歌う。最初は音響の調子が悪くていま一つだったが、曲が進むに連れて会場は盛り上がり始め、ハンク・ウィリアムスの「I Saw The Light」を歌ったところで客席の歓声は一気に高まる。予定した曲がすべて終わりスタンディング・オベーションの中彼がステージを立ち去ろうとすると観客はそれを許さず、ようやくのことで(渋々)もう一曲歌うことを承知した彼にかかった声が“「アヴェ・マリア」歌って!!”。あの名唱を生で聴けることになるとは・・。万客の歓声と拍手の中立ち去る彼に涙ぐむ老婦女の姿も。


Louisiana Live Ragniappe Stage ジャズフェスは競馬場全域を使って開催されており、ステージ間の移動に使われる(あと仮設トイレの設置場所でもある)競馬コース以外はすべてが「会場」。ちょっとした中庭にもステージが設けられて地元のバンドが出演しているし、グランド・スタンド(屋内の観覧席)にも当然ステージが。ここはライブよりもトークが中心のステージで、ライブの出番が終わったアーティストがインタビューに応えたり、地元のベテラン・ミュージシャンが昔の音楽シーンの興味深い話を聞かせてくれたり。

 このグランド・スタンドがちょっとした穴場で、観客はそれほど多くなくて比較的空いてるし、冷房もきいて快適なので外のフード・テントで思い思いに食べ物を調達した上でここに集合し、涼しい席でのんびりランチ、なんて野外フェスらしからぬことも出来そう。今度行かれる方は是非ともお試しを。


Susan Cowsill15:30 Susan Cowsill @ Heritage Stage

 ピンとこない人もいると思うが、彼女は60年代に活躍したポップ・グループ、カウシルズにいた小さな女の子。あれから30数年、彼女はシンガーソングライターになり、その作品はバングルスやフーティ&ザ・ブローフィッシュなどに取り上げられているという。特にバングルスとの親交は深く、90年代にはメンバーのヴィッキー・ピーターソンと「コンチネンタル・ドリフターズ」に参加(2人だけで活動する場合は「サイコ・シスターズ」という変名も持つらしい)。数年前にはこのヴィッキーとカウシル兄弟のジョンが結婚し、オールディーズ・ファンの間でちょっとした話題となったが、その仲を取り持ったのがスーザンであることは間違いないだろう。この日もヴィッキーの話題が出ると「私の義理の姉」という表現を使っていた。

 彼女は前週の日程でステージの出演を終え、この日はアコースティック・セットを組んでトーク半分、ライブ半分といった感じの内容。もう40代半ばになろうというスーザン(それでも芸歴を考えれば物凄く若い)だが、実際観た印象は物凄く明るくお話好きでチャーミング。司会者から振られる質問にペラペラと話が止まらなくなり、予定時間を大幅にオーバー。何曲か披露したオリジナル曲もなかなかいい雰囲気だったし、メジャー・レーベルとレコード契約を結んだという話だったので、帰国したら彼女の作品をチェックしてみたいなと思った。

16:10 Tribute to Sister Rosetta Tharpe feat. Maria Muldaur, Marcia Ball, Tracy Nelson, Angela Strehli, Del Ray and special guest Irma Thomas @ Blues Tent

A Tribute to Sister Rosetta Tharpe: Shout, Sister Shout! (2003) 一昨日観た「R&Rママさん」が気になって再びブルース・テントへ。今回は1940年代〜60年代に活躍した女性ゴスペル/ブルース・シンガー、シスター・ロゼッタ・サープの作品を紹介する1時間半の長尺ステージ。数年前に彼女のトリビュート・アルバムが出ていて(この日の出演アーティストの殆どが参加している)、今回はそのステージ版という感じ。他にもアーマ・トマスとマルシア・ボール、トレーシー・ネルソンの3人でアルバムを出したこともあるようで、その息はピッタリ。

Marcia Ball ステージはマルシア・ボールとそのバンドが中心となって進行し、曲によってマリア・マルダーやトレーシー・ネルソンがそれに加わり、更にスペシャル・ゲストとしてニューオリンズR&Bの「女王」アーマ・トーマスが登場するという形。この手の音楽に対するアメリカ人の反応というのは本当に凄くて、こればかりは日本人は適わない。これは生まれてこの方何を聴いて育ってきたかという「バックボーン」の問題とか、はたまた宗教的倫理観とかまで関わってくる話なので難しくなるけれども、日本人には到底及ばない“違い”のようなものを感じさせられた気がする。

 それはともかく。改めて観たマルシアさんは女性にしては物凄い長身で、組んだ足をリズムに合わせてユラユラさせながらピアノを弾く姿が印象的。他の出演者ではマリア・マルダーは独り場違いなくらいケバケバした“クラブのママ風”で、ちょっと浮いてたかも(ただし打ち上げでは一番モテるタイプ)。アーマ・トーマスに対する聴衆の賞賛ぶりは本当に物凄くて、本人が感極まってしまうほど(さすが女王様!)。これはニューオリンズならではの光景だろう。


Marcia Ball 「食の街」ニューオリンズだけあって、音楽と並ぶジャズフェスの楽しみは食べ物!会場のフード・テントには地元の名物料理がズラッと並ぶ。ガンボやバーベキュー・チキン、ナマズやザリガニにワニのパイ・・。料理は大体4ドルくらいに統一されていて(ラージサイズは6ドルか8ドル)、ビールはちょっと高くて350ml缶が約3ドル(街の酒屋で買うと半ダース6本で4ドル!)。色々試してみたが甘口のソースが少々苦手の僕にはBBQ系はいま一つ。ジャンバラヤが大鍋で非常に大雑把に作られている割には味がよくて、街中の店で食べるより美味しかったかも。ニューオリンズ名物ということで生牡蠣を出してるテントもあったが、それは流石に野外ではね。。

 meantimeらしく現在ヒットチャートで活躍しているアーティストのことも触れておくと、この日は昨年生まれたTOP40ヒットの中ではかなり聴ける一曲「Heaven」を放ったロス・ロンリー・ボーイズのステージもチラッと観た。プロモーション・ビデオでは一風変わったグループという印象が強かった彼らだが、実際にライブを観た感じでは物凄く若くて、物凄くオーソドックス(基本に忠実)なバンドだった。丁度「Heaven」を演っている時に立ち寄れたので、これは幸運だった。


Neville Brothers17:30 The Neville Brothers @ Acura Stage

 ニューオリンズのジャズフェスでトリといったら彼らしかいないでしょう、ということで一番広いアクラ・ステージに最後に登場したのがネヴィル・ブラザーズ。個人的には90年代(80年代後半?)の来日時に都内のライブハウスで観て以来だから10数年ぶりの彼らは、流石に歳をとっていた。リズム隊は若手のミュージシャン、それにもう一人ミュージカル・ディレクター的な立場のメンバーが加わっていて、兄弟たちはそれにのっかって客を楽しませるという感じ。

 それにしてもこの兄弟、この前の週にはオリジナル・ミーターズの再結成もやっているし、他にもほぼ毎日兄弟の誰かが自身のユニットで何処かのステージに出演していたりとフェス期間中は大活躍。「ニューオリンズのファースト・ファミリー」としての気概を見せつけられたような気がする。兄弟としての演奏はベテランらしく余裕のあるもので、フェスの終わりを皆でのんびりと迎えるといった雰囲気。演奏の半ばくらいで僕は隣の会場でトリを務めているアーティストを観るために移動。

18:15 Isaac Hayes @ Congo Square Stage

Isaac Hayes ジャズフェスの中で異彩を放っていた会場がこのコンゴ・スクエア・ステージ。ジャズやR&Bが中心の当フェスだが観客は白人の方が多く、それも比較的教育程度が高い(明らかに大学出風の夫婦や、地元の学生など)印象があったのだがここだけは別で、客層は真っ黒。廻りのテントもアフリカの民族衣装や工芸品などを売っていて、他所とは随分雰囲気が違う。出演するアーティストも比較的若手のR&B系アーティストが多かったのだが、最終日のトリは超ベテランのアイザック・ヘイズだった。会場に着いた時にはもう彼のステージは始まって30分ほどのはずだったのだが・・。

 実際現場に行ってみると演奏はまだ始まっていなかった。どうやら機材のトラブルがあったようで、更に10分ほど待たされてようやく御大がニヤニヤしながら登場。「まぁ、色々あるさ。」と大して気にとめる様子もなくライブはスタート。お馴染みのヒット曲やジャム風のインストが延々と続く。

 ここで面白いなと思ったのが、ステージの前にはちょっとした台があって、その上でスタッフがアーティストの歌や話している内容を手話で同時通訳していた点。帰国してから調べたのだが聴覚に障害のある観客には希望により手話のスタッフが随行するのだそうで、こういうサービスは日本では考えられないだろう。最初僕が気づいたのはアーロン・ネヴィルのステージの時で、ゴスペルのライブは半分説教のようなものだから、これはなかなかいいアイディアだなと思って観ていたのだが、まさかアイザック・ヘイズのようなアーティストのステージまで手話にするとは。。

 彼の演奏はインスト部分が異常に長く、しかも歌が始まるとその内容はかなり際どいものが多い。“最も手話向きでない音楽”といってもいいのだが、手話スタッフは果敢にこれに挑戦。インストの部分では楽器を弾く真似をして(今はギターのソロです)とか(今ドラムを叩いています)みたいな表現をし、物凄く際どい下ネタ系の歌詞(確か「オレのボールをしゃぶってくれ」みたいなことを延々と歌っている・・)でも女性のスタッフがこともなげに手話でサラッと表現して、周囲の観客は大喝采・・という光景があり、それにはちょっと感動してしまった。

 アイザック・ヘイスは現在も芸能界的に大物のようで、その存在感は大変なもの。バックのバンド編成もかなり豪華で、やはりこういうところでトリを務めるようなアーティストは歳をとっても立派なものなのだな、などと感心しきり。演奏は定時である19時を過ぎても一向に終わる様子はなく、こちらもいい加減疲れていたので途中で会場を後にすることにした。

 ということで僕の3日間に亘るニューオリンズ・ジャズフェスのレポートはこれでおしまい。どうもお疲れさまでした。

(2004/7/17)

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