八亀's Picks - November 2005

過去の八亀's Picks

11.27 The Sire Records Story - VA
11.27 Children Of Nuggets - VA
11.27 Remembrance Days/A Different Kind Of Weather - The Dream Academy
11.23 The Best of Chubby Checker
11.23 The Best of Bobby Rydell
11.23 The Best of Dee Dee Sharp
11.23 The Best of The Orlons
11.17 The Mercury Years - Timi Yuro
11.13 Give Me A Future - The Everly Brothers
11.13 Reunion Cencert DVD - The Everly Brothers
11.13 The Mercury Studio Recordings - The Everly Brothers
11.06 The Best of The Dovells
11.06 The Best of The Tymes
11.06 The Best of ? & The Mysterians
11.04 As Time Goes By - Harpers Bizarre

Just Say Sire: The Sire Records Story Children Of Nuggets: Original Artyfacts From The Second Psychedelic Era 1976-1995


Just Say Sire: The Sire Records Story (Rhino)
Children Of Nuggets: Original Artyfacts From The Second
Psychedelic Era 1976-1995 (Rhino)


 CD再発業界は10月頃から年末商戦がスタートしていて、次々と届く“大型案件”を聴きながらあれこれ調べたり、思いを馳せたり・・なんてことを続けていたら、寝る時間も削らざるを得ないくらいの毎日になってしまう。なのでここに掲載するCD紹介も、そのボリュームや内容で書き上がるのに時間がかかったり、意外にあっさりと書けてしまったり、とまちまちなので、取り上げるタイミングが発売や入手順にはならないことを予めお断りしておきたい。

 などと一体誰に対する言い訳なのかわからないことを書きつつ本題へ。日頃酒を飲みながら60年代やもっと古い年代の音楽の話ばかりしているから「あんた一体幾つなの??」とよく言われる。「音楽の聴き始めはいつ?」と聞かれれば、僕は「MTV世代」ど真ん中にあたるのだが、実はあの頃のリアルタイムな音楽が当時からあまり好きではなかった。だから実家に帰って残されたレコードを見ても80年代のポップスは殆どなし。60年代の再発ものばかりがゴロゴロしているという、当時10代にしてみれば異様な内容になっていて我ながら呆れたり。後年盛り上がった「ウィー・アー・ザ・エイティーズ(洋楽史上最悪のキャッチフレーズだと思う)」シリーズなんてのも、懐かしい曲、珍しい曲の幾つかには心惹かれたが、結局購入はせずじまい。

Madonna with Seimour Stein とはいえ学生時代、学校から帰ったら毎日夜遅くまでミュージック・ビデオが流される番組を観続けていた訳だから、それらが脳味噌に刷り込まれていないはずがない。先日発売の情報を見てその選曲に「おおっ!」と唸り、つい取り寄せてしまったボックス・セットが、サイア・レコードの歴史をたどったCD3枚+DVD1枚。ボックスに貼ってあるステッカーによれば“パンク、ニューウェーブ、そしてマドンナを世界に紹介したレーベル!”とのことだが、マドンナはともかくパンクとニューウェーブは言い過ぎだろっ!ま“世界”を“アメリカ”に置き換えればあながち間違いではないと思うので、言い掛かりはこれくらいにして内容に移ろう。今年「R&Rの殿堂」入りし、伝説のレコード・マンの仲間入りを果たしたシーモア・スタインがサイア・レコードを興したのはかなり古く1966年のこと。70年代にはフォーカスやクライマックス・ブルース・バンドをアメリカで成功させたが、このレーベルが真の意味で独自性を発揮し始めるのはスタインが単独で同社の経営権を握った76年あたりから。アメリカにおけるパンク・ムーブメントの中心となっていたライブハウス「CBGB」と伝説的なディスコ「Studio 54」を毎晩“シャトルのように”往復していたというスタインはシーンのユニークな才能と次々と契約。一方でイギリスの音楽シーンに精通したブレーンも得、当地の音楽をアメリカに紹介する役割も果たし始める。

 といった流れを踏まえて、収録曲をランダムに紹介。ボックス冒頭を飾るのは、当然のことながら同レーベル最大のスター、マドンナ。しかし選ばれているのは今聴くと意外なくらいエレクトロ色の強い「Everybody(彼女のファーストアルバム収録)」で、このボックスには「Like A Virgin」が入っていない!強気!!勿論他の作品とのバランスを考えてのことだとは思うが。他のアメリカ勢ではニューヨークのニューウェーブ・シーン最重要グループ、トーキング・ヘッズから派生したトム・トム・クラブ、当地のクラブ・シーンを賑わせたジョナサン・リッチマンやキッド・クレオール&ザ・ココナッツなど。イギリス勢はもっと豪華でイングリッシュ・ビートやマッドネスの2トーン系に始まり、エレクトロなイレイジャー、ソフト・セル、ヤズー、デペッシュ・モード、エヴリシング・バット・ザ・ガール・・と、Disc 1を聴いているだけで目眩いが。。「えっ!?オレってそんなにこの手が好きだったっけ??」と、意外に“エレクトロ好き”な自分も発見してしまった。比較的珍しめの曲にも印象深いものがあり、スティーブン“ティンティン”ダフィなんて10数年ぶりにその名前を見た気がする。

 続く2枚目は比較的ネオアコ/ギター・ポップものが多い。過去20年間に亘り、ある層の音楽ファンには最重要アーティストであり続けるスミス/モリッシーから、初めてMTVで観た時はまさかこんな大物バンドになるとは思わなかったキュア、本国と日本とどっちの方が人気が高いのかわからないエコー&ザ・バニーメンやアズテック・カメラなど。ちょっとエレクトロ入った感じでは、僕にとって未知のバンドであり続けたテレックスや純度100%の“ニューウェーブ(と僕は感じる)”、プラスティック・バートランドの「Ça Plane Pour Moi」なんてのも。モダーン・イングリッシュの名前も、別に思い入れがある訳ではないが妙に懐かしいし。プライマル・スクリーム、マイ・ブラディ・ヴァレンタイン、ライドあたりは、僕がイギリスのロックに興味を失って以降に登場したバンドなのでつい聴き飛ばしてしまうが(スマン・・)。

 最後3枚目にはこういった流れの最初期に契約した重要バンド、ラモーンズが登場。そしてこちらも別格的存在のプリテンダーズ・・・もう名前を書くの疲れた。お気に入りの“エレクトロ”ものでは、レイド・バック「White Horse」のクールさに、今更ながらシビレてしまった。今までに挙げてきた“最先端”アーティストを紹介する一方で、サイアは常にベテラン・アーティストにも敬意をもったリリースも続けていて、このボックスにはブライアン・ウィルソンやルー・リード、デボラ・ハリーといったアーティストの復活作が収められているし、90年代に再発見され大きな話題となったリトル・ジミー・スコットも、思えばこのレーベルが仕掛けたものだった。当時は新人だったが、80年代後半〜90年代前半の音楽シーンで、もっとも才能ある女性シンガーと僕が考えているk.d.ラングの活動を一貫して支え続けてくれている点にも、個人的に感謝したい。オマケについているDVDには歴代のヒット20曲分のプロモ・ビデオが。79年のM「ポップ・ミューヂック」から、2000年のエイフェックス・ツインまで、バラバラなようでいて一貫したポリシーで送り出されている作品の数々を楽しむことができるので「MTV世代」が集まる際のBGVに使用してみては。

 一言でいえば“僕の好きな80年代”がぎっしり詰ったひと箱。他とは毛色が違うが、これも個人的な今年のベスト・リイシュー候補の一つである。

Nuggets: Original Artyfacts From The First Psychedelic Era 1965-1968 もう一つ最近入手したのが、ライノ・レコードの「ナゲッツ」シリーズ第三弾。第一弾は60年代のパンク/サイケデリック・ロックを集大成した歴史的名企画、第二弾はそれをイギリスやその他の国に範囲を広げて選曲し、アメリカ以外の各国のロック・マニアに「ぬるいっ!」と一喝された失敗作。続く第三弾はどんな内容かというと、オリジナルの「ナゲッツ」がリリースされた1972年以降、それらの音楽に影響を受けた作風の作品を20年間に亘って拾い上げてみたというもの。収録作品の中心は80年代に録音されたもので、そこら辺はちょっと「The Sire Records Story」に被るところもある。

 個人的な話をすると、80年代に洋楽を聴き始めた僕が最初に「サイケデリック」というキーワードに出会ったのはトム・ペティが85年に放った「Don't Come Around Here No More(米13位)」なのだが、その前後にロサンゼルスで“ペイズリー・アンダーグラウンド”というムーブメントがあったり(その流れからバングルスが登場した)、ロング・ライダーズなど60年代のバーズを彷佛させるフォークロック・スタイルのバンドが幾つも登場したり、イギリスのXTCが変名「ザ・デュークス・オブ・ストラスフィアー」名義でサイケデリック・アルバムを発表したり・・と一時期頻繁に「サイケデリック」が音楽シーンや誌上を賑わせた時期があった。

 今となればそういった一連の出来事が、このボックスがカバーする20年間の一部分に過ぎないことがわかるが、そんなことは時がたち、ある程度年齢を重ねてみないとわかるものではない。それはともかくこのボックス、アメリカ、イギリス(あとちょっとだけオーストラリア)遠慮なく様々なアーティストが残した“ネオ・サイケ”な作品を集めた4枚組で、全米ヒットの収録は殆どなし。中には現在も現役、「Fuji Rock」などで日本に来ているようなバンドも含まれているので“ウィー・アー・ザ・エイティーズ”な音楽ファンには取っつきにくいかも知れない。僕にとっても“これまで知らなかった80年代”が満載のこのひと箱、むしろもっと若い世代の音楽ファンの方が“ルーツ・オブ・ギター・ポップ”として楽しめるのかも。僕も勉強させていただきます。

収録曲等詳細(発売元のサイト)
Just Say Sire: The Sire Records Story
Children Of Nuggets: Original Artyfacts From The Second Psychedelic Era 1976-1995

(2005/11/27)

Remembrance Days (1987)/A Different Kind Of Weather (1990)

Remembrance Days/A Different Kind Of Weather
- The Dream Academy (Collectables)



 珍しく80年代ものを取り上げたので、ついでにもう一枚。何年か前、meantimeがまだ紙媒体のミニコミを年2回発行していた時期に「80年代TOP40ヒット人気投票」という企画をやったことがある。まだホームページの投票機能がなかった時期で、郵便による投票も受け付けていたような気がするから、わずか数年前とはいえ今思えばひと時代昔みたいなことを何の疑問も持たずにやっていた訳で、如何に当時ミニコミ制作にかける時間や情熱を持っていたのかと、つい感慨にふけってしまう・・。

 その投票の結果はいずれホームページの「Archieve」コーナーに再掲することにして話を進めると、何十人かに参加してもらったこの企画で見事ナンバー1に選ばれたのがクラウデッド・ハウスの「Don't Dream It's Over('87米2位)」。この結果には一部異論もあったが(特に年輩の方からは「なんでベスト100にフィル・コリンズもヒューイ・ルイスも入らないんだ!?」と強い口調で問い質された)、80年代当時その多くが学生で大学のTOP40研究会などに所属し、それなりにマニアックに洋楽を聴いていた・・というメンバーが集まるとどうしても他愛のないポップスは選ばれにくくなるし、更に人気投票の宿命でヒット曲の多いアーティストはどうしても曲毎の得票数が割れてしまう・・・など色々あってのこの結果、それなりにある世代には“リアルな”ものになっていてなかなか意義深い企画だったと思っている。

The Dream Academy (1985) で、そこら辺の経緯を踏まえると、この投票の第7位にドリーム・アカデミーの「Life In A Northern Town('86米7位)」が入っていたとしても、あまり不思議に思う人はいないだろう。彼らはイギリスで結成された3人組で、ブリティッシュ・トラッド系のメロディとクラシカルなオーケストラ・サウンドが印象的な前述「〜 Northern Town」が大ヒット、続いてソフトなテイストは保ちつつ、サウンドをやや(当時の)今日的なものにした「The Love Parade」もTOP40入りしたが、彼らのHOT100(及び全英チャート)における実績はそれでお終い。多くの洋楽ファンには一瞬で姿を消した“一発屋”として記憶に残っている。

 今回入手したCDはそんな彼らが“消えた後”発表したセカンド「Remembrance Days(87年発表)」とサード「A Different Kind Of Weather(91年発表)」の2枚組。穏やかなサウンドに包まれていたファースト・アルバムのプロデュースを手がけたのはピンク・フロイドのデイヴ・ギルモアで“音響派”にも興味をそそられる内容になっていたが、セカンドではヒュー・パジャムがプロデュースを担当。ファースト同様ニック・レイヤード・クロウズの技巧的とは言えないナルシスティックなボーカルが作品の中核を為しているこのアルバムで耳に残るのは、不発に終わったがアルバム発表時は相当な回数耳にした「Indian Summer(「〜 Northern Town」の完全なる二番煎じ)」や、“オタク系アイドル”的存在だった紅一点メンバー、ケイト・セント・ジョンのコーラスが印象的な「Hampsted Girl」、クラシカルな雰囲気がしみる「Here」など。後半はイメチェンを図ったらしくアップ・テンポなナンバーなども収録されているが、正直成功しているとは思えない(それが不発に終わった原因なのだろう)。

 それからしばらく間が空き、90年代に入って発表されたラスト作「A Different 〜」ではグランド・ビートで料理されたジョン・レノンの「Love(これ何かのCMに使われてたよね?)」、ティム・ハーディンの「It'll Never Happen Again」などカバー作品が印象的。このアルバムを最後にメンバーは各々別の道を歩むことになるが、残されたアルバムは「80年代型ソフト・ロック」として幅広い世代に楽しめる内容になっている。特にエイティーズ世代には感慨深いものがあると思うので、改めて振り返ってみるのもいいかも知れない。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2005/11/27)

The Best of Chubby Checker: Cameo Parkway 1959-1963

The Best of Bobby Rydell: Cameo Parkway 1959-1964


The Best of Chubby Checker: Cameo Parkway 1959-1963
The Best of Bobby Rydell: Cameo Parkway 1959-1964
(Abkco)


 ちょっと時間があいてしまったが、カメオ/パークウェイの再発シリーズの続き。まずはレーベルの「ビッグ2」、チャビー・チェッカーとボビー・ライデルのベスト盤から。

 レーベル最大のヒット・メーカー、チャビー・チェッカーは「The Twist」でヒットチャート史に金字塔を打ち立てたアーティスト。同じ曲同じバージョンがビルボードのHOT100で2回1位を記録したのは、長いHOT100史上後にも先にもこれしかないのだが、そんな重要曲が今年までCDで聴くことが出来なかったという不条理!とにかく正式なCDの発売を祝いたい。で、サウス・カロライナ生まれのアーネスト・エヴァンスがレコードデビューを果たしたのは1959年のこと。フィラデルフィアで物まね芸人をやっていたという彼は地元の(いや、世界的に)有名なDJディック・クラークの奥さんに「ファッツ・ドミノ(太ったドミノ)」に因んでゲームつながりの「チャビー・チェッカー(小太りのチェッカー)」と名づけられ、その芸風を活かしてエルヴィスからチップマンクス(!)まで歌真似で「メリーさんの羊」を歌うというノヴェルティ曲「The Class('59米38位)」が初ヒット。その翌年にはハンク・バラードとミッドナイターズがシングルのB面で発表していた「The Twist」をカバーして全米ナンバー1を記録し、フィラデルフィアのダンス・シーンの台風の目となった。

 61年には新しいダンス・ナンバー「Pony Time」もナンバー1ヒット、しかし彼が真の意味でヒットメーカーとなるのはその年の夏以降で、全米でツイスト・ブームが巻き起こり「The Twist」が再びチャートを上昇してナンバー1に。61〜63年の2年間に10枚のシングルを連続でTOP20に送り込む活躍を見せた。今回発売されたCDはそんな彼の全盛期である59〜63年に録音した作品に焦点を絞って編纂されたもので、TOP40ヒット18曲を収録。彼のすべてのヒットをカバーしている訳ではないがまずまずの選曲で、マイナーヒットも幾つか収録されていて、当時まだそれほどメジャーではなかったジェイムス・ブラウンのカバー「Good, Good Lovin'('61米43位)」など初めて聴いたがなかなか面白い。彼は宿命として常に新しいダンス・ナンバーを発表し続けなければならず、中には随分いい加減なものもあるが、一時期はエスニックなリズムの作品を立て続けにリリースし“ダンス界のハリー・ベラフォンテ”あたりの線を狙って延命を図ったのか?なんて様子も窺えたりして、そこそこ楽しむことはできる。

 彼の残るヒット曲、そしてその後の録音はいずれ出るであろう(出るのかな?)「Vol.2」に期待することにしたい。続いてカメオ/パークウェイの真打登場、ボビー・ライデルのCD。“ゴールデン・ポップス”の時代を代表する男性アイドルである彼はこの時期に20曲近いTOP40ヒットを放った人気者で、後年ロック史的にはビートルズ登場以前、R&Rが下火になった時期に甘ったるいポップスをヒットチャートに蔓延させた“悪人”として名前が挙げられるシンガー。

Bye Bye Birdie Original Soundtrack (1963) あまりにもヒット曲が多いので一枚のCDには収めきれず、今回のコンピレーションはところどころ歯抜けな選曲になってしまっているが、それでもこれはかなり熱心に彼のキャリアを振り返ろうと編纂されたものになっている。まず冒頭2曲の不発に終わったシングル、ここで彼はアイドルらしくちょっと可愛らしい感じで歌っており(同郷のアイドル、フランキー・アヴァロンが当初鼻をつまんで歌っていたように)、彼本来の魅力が出されていない出来になっているが、初ヒット「Kissin' Time('59米11位)」や「We Got Love(同6位)」では“ボビー節全開”なのびのびとした歌唱に改められており、ここから彼の黄金期がスタートする。R&Rシンガーというよりは若きポピュラー・シンガーという感じの彼は非常に器用にどんなタイプの曲も歌いこなし、そのジャンルはR&Rナンバーからカンツォーネ(「Volare('60米22位)」)、ラテン・ナンバー(「Sway(同12位)」)まで幅広い。今挙げた2曲はどちらもディーン・マーティンのレパートリーとして知られている曲で、“ヤング・ディーン・マーティン”として彼を大成させたかったのだろうという制作スタッフの意図も見え隠れしている点が面白い。

Complete Bobby Rydell on Capitol ヒットに次ぐヒットを生んだこの時期の彼の、キャリアのピークとされる作品だが、実はこれらカメオ/パークウェイ録音ではなく、ミュージカル映画「バイ・バイ・バーディ('63)」への出演。アン=マーグレットを大スターにしたことで知られるこの作品でライデルは重要な役柄の一つを演じ、ソロで歌う曲はないもののサウンドトラック盤にも参加。ジョニー・ソマーズのヒットで知られる「One Boy」の録音では、キャストの中で一番歌が上手いのは彼なのではないか?と思わせる健闘を見せている。64年に入るとビートルズをはじめとするブリティッシュ勢の勢いに対応しようと、トニー・ハッチ作の「Forget Him('64米4位)」、ピーター&ゴードンのヒットを素早くリメイクした「A World Without Love(同80位)」と苦心を続けながらチャート成績を落とし、翌65年にはキャピトルに移籍して大人の歌手への脱皮を試みたが失敗・・と、その後あまりいいことのない彼だが、全盛期のヒットは今聴いても新鮮な魅力を保ち続けている。60年代前半を代表するトップ・アイドル、そして現在もフランキー・アヴァロン、フェビアンとともに“ゴールデン・ボーイズ(フィラデルフィア御三家!?)”として全米をツアーしている彼のヒット曲集は、今後オールディーズ・ファンのマスト・アイテムとなるだろう。こちらも残りのヒットを完全収録した「Vol.2」のリリースを期待したい。

収録曲等詳細(All Music Guide)
The Best of Chubby Checker: Cameo Parkway 1959-1963
The Best of Bobby Rydell: Cameo Parkway 1959-1964

(2005/11/23)

The Best of Dee Dee Sharp: Cameo Parkway 1962-1966

The Best of The Orlons: Cameo Parkway 1961-1966


The Best of Dee Dee Sharp: Cameo Parkway 1962-1966
The Best of The Orlons: Cameo Parkway 1961-1966
(Abkco)



 カメオ/パークウェイの再発シリーズ残り2枚も手短かに紹介しておこう。チャート実績はチャビー・チェッカーやボビー・ライデルにには及ばないものの、その音楽性は同レーベルの「核」を形成しているのではないかと思われる二組なので、これを取り上げないと片手落ちになってしまう。まずはレーベルの歌姫、ディー・ディー・シャープ。チャビー・チェッカーの成功に続いてレーベルが送り出した女性アーティストで、最初のレコーディングはチェッカーの作品にゲスト出演した「Slow Twistin'('62米3位)」、続いて録音したのが新しいダンス・ステップ「Mashed Potato Time(同2位)」と明らかに“女版チャビー・チェッカー”を目指した路線で作品をリリース。続いて今度はポテトではなくトウモロコシが原料の「Gravy (For My Mashed Potatoes)(同6位)」、そして「Ride!(同5位)」「Do The Bird('63米10位)」と大ヒットを連発して“ダンス・クレイズ”の時代に華を添えた。

Dee Dee Sharp Gamble on Philadelphia International カメオ/パークウェイの全盛期は63年で終わり、翌64年には他のアーティスト同様彼女もチャート的に低迷することとなるのだが、ここでラッキーだったのは地元フィラデルフィアで頭角を現しつつあった若き才能、ケニー・ギャンブル&レオン・ハフとの出逢い。彼らが制作したシングル曲は早くも“アーリー・フィラデルフィア”な雰囲気に満ちあふれており、特に65年のマイナー・ヒット「I Really Love You(米78位)」はこれをもって「フィリー・ソウルの誕生」を宣言してしまいたくなるような、ドリーミーな名曲。その後ケニー・ギャンブルとプライベートでもパートナーとなり、“ディー・ディー・シャープ・ギャンブル”としてフィラデルフィア・インターナショナルのファミリー入りを果たした彼女は76年に「I'm Not In Love(R&B62位;10ccのカバー)」を同社からヒットさせている。

 最後のオーロンズは男性1人、女性3人の“ガール・グループ”。62年の大ヒット「Tha Wah-Watusi(米2位)」を皮切りにダンス・ヒットを連発した彼女たちは、ツイストに固執して次第に時代からずれていったチャビー・チェッカーに対し、62〜63年と期間は短かったがダンス・サウンド、とりわけ後年“ノーザン・ビート”と呼ばれるものの最先端を突っ走った存在だった。彼女たちの絶頂期は63年で、この年にリリースした「South Street(米3位)」「Not Me(同12位)」「Crossfire!(同19位)」いずれもがモータウンも真っ青な“ノーザン・ソウル”の原型を形作っており、この時期に限ればレーベルのエース的存在であったと言っていいだろう。特に「Crossfire!」、数多いモータウン・クラシックの中でも特にプライオリティの高いマーサとヴァンデラスの「Heatwave」と殆ど同じ時期に録音されたこの曲は、ダンス・ナンバーとして非常に完成度が高く、この時点まではカメオ/パークウェイ(まだモータウンより全然格上)も時代をリードしていけるだけの制作能力を持っていたことがわかる(翌年に両者の立場は逆転し、以降その差は永遠に縮まることはなかった)。

 60年代前半のポップス、そしてそれ以降のフィラデルフィアをはじめとするアメリカ北部のR&Bサウンドの変遷を知るにあたって決してはずすことの出来ないこれらのCD、60年代音楽のファンを自認する人なら当然持っているべきものだと思う。最後に今回発売された7枚の収録曲を含め、カメオ/パークウェイが残した全ヒット曲と、そのうちどれがCDで聴けるのかを一覧にしたリストを再掲したので、下のリンク先をご覧いただきたい。大半のヒット曲がカバーされているものの、気になるところに漏れもあり・・。Abkcoにはこれでお終いと言わず、さらなる再発シリーズをお願いしたいところだ。

The Cameo/Parkway Chartgraphy 1957-1968

収録曲等詳細(All Music Guide)
The Best of Dee Dee Sharp: Cameo Parkway 1962-1966
The Best of The Orlons: Cameo Parkway 1961-1966

(2005/11/23)

The Amazing Timi Yuro: The Mercury Years

The Amazing: The Mercury Years - Timi Yuro
(Spectrum)



 60年代前半に何曲ものヒットを放ちながら、オールディーズ・ファンにはいま一つ人気のない女性シンガーの一人にティミ・ユーロという人がいる。その低人気の原因は、彼女の音楽スタイルがいわゆる“ガールポップ”ではなく、あまり可愛げのないR&Bタイプ(逞しいその歌声は、そそっかしい音楽ファンであれば男と聴き間違えるかも知れない)だからだと思うのだが、60年代を代表する“ビッグ・ボイス”な彼女を、新しいCDの入手を機会に紹介しておきたい。

Hurt: The Best Of Timi Yuro シカゴ出身、イタリア系の家庭に育ったローズマリー・ティモティア・アウロが音楽シーンに登場したのは、1961年にリバティ・レコードから放った大ヒット「Hurt(米4位、R&Bチャートでも最高22位を記録)」がきっかけ。R&Bシンガー、ロイ・ハミルトンのヒット('54米R&B8位)をカバーしたものだが、これを力強く歌い上げた彼女は以降「What's The Matter Baby('62米12位)」「Make The World Go Away('63米24位)」などヒットを連発。その歌声は音楽業界内でも評価が高く、フィル・スペクターが彼女のプロデュースを申し出たという話もあるし(実現はしなかった)、バート・バカラックは彼女に「The Love Of A Boy('63米44位)」を書き下ろし、これは“バカラック・クラシック”の一つとなっている。結果3年間に10曲をHOT100に送り込んだ彼女は64年に入ってマーキュリー・レコードに移籍、キャリアは次のフェーズに移る。

The Amazing Timi Yuro (1964) 今回入手したCDは、ユーロがそのマーキュリーに在籍した64〜67年の録音集。前半の12曲は彼女が同社から発表した唯一のアルバム「Amazing Timi Yuro」収録曲で、これはオーケストラをバックにスタンダード・ナンバーに挑戦したもの。力強く歌い上げる様子は“ジャジー”という感じではなく、言ってみれば「ジェイムス・ブラウン、スタンダードを歌う」みたいな、無骨なR&B調。ボーカル・アルバムとしては“粋”を楽しめる雰囲気ではないので、リスナーは限定される内容。続く残り13曲はシングル音源が集められたもので、こちらの方が聴きどころは多い。この時期彼女がHOT100に送り込んだ唯一のヒットが「You Can't Have Him('65米92位)」で、これは「Hurt」同様ロイ・ハミルトンのカバー。同年ディオンヌ・ワーウィックもまったく違ったアレンジでヒットさせているので、聴き比べてみると面白いかも。そのB面に収められていた「Could This Be Magic」は、ダブズのドゥ・ワップクラシック('57米23位)のカバー、こちらはかなり正調の“ガールポップ”になっていて、オールディーズ・ファンの耳に馴染み易い。

 続いて彼女がリリースしたシングル「Get Out Of My Life」と「Can't Stop Running Away」のカップリングは、このCD一番の聴きもの。両曲ともにテディ・ランダッツォの作・プロデュースで、この時期彼が再生に成功していたドゥ・ワップの名グループ、リトル・アンソニー&インペリアルズの作品世界を、ここでも楽しむことができる。ランダッツォは元々ユーロに強い思い入れがあったようで、彼女の「Hurt」をこの翌年にインペリアルズでリメイク('66米51位)しているし、それから約10年後の75年にも今度はマンハッタンズを手がけて再びカバー(R&B10位/POP97位)するほど。もしこのシングルがヒットしていたら、ランダッツォとユーロのコラボレーションによるアルバムの制作があったかも知れない、などと考えると不発に終わったのが残念でならない。

 その後彼女は67年まで数枚のシングルを同社に残し、68年にはリバティに復帰してシングルを更に何枚かリリース。何れも成功はしなかったが、一定の質を保った内容となっている。全盛期であるリバティ時代と併せ、これまであまりスポットが当てられなかったこのマーキュリー録音も、今後注目されるといいと思う。

(2005/11/17)

Give Me A Future

Reunion Cencert DVD

On The Wings Of A Nightingale: The Mercury Studio Recordings 1984-1988


Give Me A Future (Varese Sarabande)
Reunion Cencert DVD (Digital Site Corporation)
The Mercury Studio Recordings 1984-1988 (Hip-O Select)
- The Everly Brothers



 もはや“当り年”というより“ファン受難の年”といった方がいいかも知れない。エヴァリー・ブラザーズ関連の作品リリースが止まらない。ファンとしては買わない訳にはいかないのだが、それにしても随分と極端な。。

 ここ数ヶ月の間にリリースされたものを、録音年代順にご紹介。まず最初は何ヶ月か前に取り上げた50年代のデモ録音集「Too Good To Be True」の続編である「Give Me A Future」。こちらも音楽出版登録用に吹込まれた仮録音が18曲収められており、前作よりはやや時代が進んだ1960年頃の作品が中心となっている。「Too Good 〜」は一番古い作品がデビュー当初の1957年ということで兄のドナルド(ドン)の作品が大半を占めていたが、こちらでは弟のフィリップ(フィル)の成長が著しくCDの半分近くが彼の作品。エヴァリー・ファンお馴染みの曲では「Maybe Tomorrow」「Since You Broke My Heart」「Oh What A Feeling」などがあり、公式録音ではいきなり大サビで始まる「Oh What A Feeling」は、曲の途中で登場するパート(“僕は君からの電話を待っている・・”で始まる部分)がそもそもの冒頭部分であったことが判明したりでマニアには非常に興味深い。作風的には非常にポップなフィルに対し、ドンは非常に繊細で、その“過度な繊細さ”をレコーディングの際は(前述のように)パートの入れ替えなどにより“明るく”作り替えて商品化されていたのだな、ということがわかる。

 このCDの後半には何故かドンが70年代に作った「I'm Tired Of Singing My Song In Las Vegas(71年のアルバム「Stories We Could Tell」収録)」のデモが入っているが、この曲のタイトルが暗示する通り73年に彼らはコンサートのステージ裏での口論がきっかけでデュオを解消(ドンは持っていたギターを床に叩きつけてその場を立ち去ったらしい)。その後約10年各々ソロ活動を続けたが、83年には再結成が実現。そもそもはその年初頭にフィルがクリフ・リチャードとデュエットした「She Means Nothing To Me(英9位)」がイギリスでヒットしたことを受けてフィルが渡英する際に「折角ならデュオの再現で」というオファーがありコンサートが行われたものだが、最近このコンサートのDVD(なんと日本盤!)が発売されている。

 収録されている曲目・曲順が以前から発売されているCDと若干違うので、公演日の違いがあるのかも知れない(どちらも1983年9月23日録音と書かれてはいるのだが)。2人とも40代になっての再結成だがまだまだ若々しく、往年のヒット曲の数々をスピード感を失わずに再現している。バックバンドにはその後彼らの重要なサポーターとなるアルバート・リー(エミルー・ハリスのホット・バンドにいたギタリスト)も参加、軽快なロッキン・カントリーを聴かせている。今となっては22年も前のイベント(彼らは現在も活動を続けているので、もはや再結成後のキャリアの方がそれ以前より長くなってしまっている)なので「何故今頃こんなDVDを出すんだ?」という非常に素直なトーンで終始書かれているライナーノーツの愛情のなさは、彼らに興味のない人の代表的な意見と受け止めることとし、とにかくこんな映像を日本語字幕つきで観られることに感謝したい。

 で、この再結成公演を成功裏に終えた彼らは続いてマーキュリー・レコードと契約しスタジオ・レコーディングも再開。再デビュー・シングル「On The Wings Of A Nightingale(『ナイチンゲールの翼』'84米50位/英41位)」はポール・マッカートニーの提供、プロデューサーにデイヴ・エドモンズが起用されオールスター・キャストで制作されたのがアルバム「The Everly Brothers(通称「EB 84」)」。同社には84〜88年にかけてこれに加え「Born Yesterday ('86)」「Some Hearts ('88)」と計3枚のアルバムが残されたが、これらの音源が集大成されたのがHip-O Selectから出された「On The Wings Of A Nightingale: The Mercury Studio Recordings 1984-1988」。

 彼らはこの時代に前述の「ナイチンゲール〜」の他カントリー・チャートで4曲のヒットを放っており、それらを含め全34曲が2枚のCDに収録されている。彼らの再結成はちょうど僕がオールディーズに興味を持ち始めた頃だったので、この時期のアルバムはすべてアナログで買っていた(後にすべてCDで買い直した)ため個人的に非常に印象深い。当時は現在のところラスト・アルバムである「Some Hearts」が一番好きだったが、今聴き返してみると「Born Yesterday」の出来が抜きん出て良く感じる。意外なくらいに未発表録音は少なく、初出はジム・スタインマンとアンドリュー・ロイド・ウェバーがミュージカル「Whistle Down The Wind」のために作った「A Kiss Is A Terrible Thing To Waste」のみ。これは87年の録音当時上演が叶わなかったためおクラ入りとなった音源で(その後この作品は98年にロンドンで初演され、そこからボーイゾーンの「No Matter What」が全英ナンバー1を記録している)、その内容はエヴァリー・ファンとしてはまったく彼ららしさの感じられない“唾棄すべき録音”ではあるが、このようなプロダクションに彼らを起用しようと思い立ってくれたことには感謝したいと思う(さっきから感謝ばっかり・・)。

 エヴァリー兄弟の再発はこの他にもドイツのベア・ファミリーから60年代録音を集めた大型ボックスもアナウンスされており、何処までつきあっていけるのかファンにとっては頭の痛いところ。あとは一度でいいから彼らの生のステージに接したいところだが、最近「無理してでも観ておけばよかった・・」と思うことが多いので、いずれアメリカに出かけてでも実現することにしたい。

収録曲等詳細(発売元のサイト):
Give Me A Future / Reunion Cencert DVD

(2005/11/13)

The Best of The Dovells: Cameo Parkway 1961-1965

The Best of The Tymes: Cameo Parkway 1963-1964

The Best of ? & The Mysterians: Cameo Parkway 1966-1967


The Best of The Dovells: Cameo Parkway 1961-1965
The Best of The Tymes: Cameo Parkway 1963-1964
The Best of ? & The Mysterians: Cameo Parkway 1966-1967
(Abkco)



Cameo/Parkway Story 半年ほど前に紹介したカメオ/パークウェイ・レーベル待望のボックス・セットが発売された際、レーベルは主要アーティストのベスト盤も年内に発売する旨の予告をしていた。しかしこの“レーベル”アブコは過去に様々な発売延期や中止を繰り返したところなので多くのオールディーズ・ファンはそのニュースを半信半疑で受け止めていた。しかし。今回だけはアブコは約束を守ってくれたようで10月に7種類のCDが無事市場に出回り、現在ファンはそのボリュームに圧倒されながら音源への対応に追われている。

 それら7枚のうち比較的“小物アーティスト”に当たる3枚をまずはご紹介。フィラデルフィアの高校生5人組(後に4人となる)ダヴェルズは60年代前半の数年間に数々のダンス・ヒットを放ったボーカル・グループ。リード・ボーカルのレン・バリーを中心とした彼らはこの時代を代表するホワイトR&Bアーティストで、バリーの扇情的なボーカルは同時代の黒人アーティストと比較しても決してひけを取らない迫力。TOP40ヒットを記録した「Bristol Stomp('61米2位)」「Do The New Continental('62米37位)」「Bristol Twistin' Annie(同27位)」「Hully Gully Baby(同25位)」「You Can't Sit Down('63米3位)」いずれも品には欠けるが楽しいナンバーで、典型的な“オールディーズ”を堪能することができる。

Very Best Of Len Barry 中でも63年の「You Can't Sit Down」、これは61年にフィル・アップチャーチというR&Bサックス奏者が放ったインスト・ヒットをボーカル版でリメイクしたものだが、初期のノーザン・ソウルとして大変魅力のある一曲。他にもごく一部のオールディーズ・マニアだけに知られていた(なにしろ20年以上市場から姿を消していたのだ)「Your Last Chance」など隠れた名曲も収録されての全20曲。グループは人気下降とともに次第に険悪な雰囲気となり63年暮には解散したが、バリーはソロとして録音を続け、ここでは彼の貴重な64年のソロ録音が聴けるのも要注目。その後彼はデッカに移籍し「1-2-3('65米3位/英3位;このCDにもボーナスとして収録されている)」の大ヒットを放つが、この時代の録音は過去に一枚のCDにまとめられている(現在は廃盤らしい)。

 続いては63年のナンバー1ヒット「So Much In Love(渚の誓い)」が非常に人気の高いR&Bボーカル・グループ、タイムズ。50年代末にフィラデルフィアで結成された彼らはジョージ・ウィリアムスのスムースなボーカルを売り物としており、当初は「The Sttroll」というスローなダンスナンバーだったメンバーたちの自作曲を改題した「So Much In Love」が63年に大当たりし一躍スターダムに。以降姑くはウィリアムスのボーカルを活かしたポピュラー・ナンバーのカバーを次々とシングル・カットしてヒットチャートに登場。スタンダードで埋めつくされた“イージーリスニング・ドゥ・ワップ”なアルバムも何枚か発売されたが、どの曲も物凄く似通ったアレンジ(「渚の〜」を彷彿させるスタイル)で処理されているため聴いているうちに退屈してしまう。今回のCDにはそれらスタンダード・ナンバーも多く収録されているが、注目すべきはそれらを縫うように収められているオリジナル曲。「Come With Me To The Sea」「Wonderland Of Love」といったあからさまに「渚の〜」の二番煎じを狙ったものもそこそこ楽しいが、翌64年にかけて録音された「The Magic of Summer Love」「Malibu」「Anymore」「Here She Comes」といった同時代のポップ/R&Bサウンドになんとか対応していこうという姿勢が窺える曲がより興味深い。

Ms. Grace - The Tymes (1974) 彼らのカメオ/パークウェイにおける活躍は約1年という短期間で終了。レコード契約を失った彼らはそのままフェイドアウトしていくのかと思われたが非常にしぶとく生き残り、60年代末にはヒットチャートに復活。「People('68米39位/英16位)」「You Little Trust Maker('74米12位/英18位)」「Ms. Grace(同年米91位/英1位)」「It's Cool('76米68位)」などどれも内容は良く、特に「ビーチ・ミュージック」愛好家の間で人気が高い。出来れば後年の作品(特に60年代半ば〜後半の不遇時代の録音)のCD化も願いたいが、まずはこのCDで彼らの“癒し系”コーラスを存分に楽しむことにしたい。

 最後はもしかしたら今回の再発シリーズで、このCD化を喜んでいる人が一番多いかも知れないクエスチョン・マーク&ザ・ミステリアンズ。彼らは“オールディーズ”の時代から数年を経た1966年に突如シーンに登場したミシガン州のガレージ・ロックバンドで、メキシコ生まれの“?”ことルーディ・マルティネスが中心となったその名の通りミステリアスなグループ。

96 Tears (1966) 全盛期を過ぎ次の営業路線を模索していたカメオ/パークウェイのスタッフとなったニール・ボガート(後にカラブランカ・レコードを興し、ドナ・サマーやヴィレッジ・ピープルなどの作品で一大ディスコ・ブームを巻き起す)がローカル・ヒットとなっていた「96 Tears」に注目し全国配給を引き受けたもので、延々と繰り返されるボックス・オルガンのフレーズが耳に憑いて離れないこの曲は徐々に全米の電波を侵蝕、66年の秋にフォー・トップスの「Reach Out, I'll Be There」を蹴落としヒットチャートのナンバー1を獲得する快挙を達成。この手のバンドの宿命で成功は長くは続かなかったが、ロックシーンに無視の出来ない痕跡を残した。

Action (1967) 今回のCDは彼らが同社に残した2枚のアルバム「96 Tears ('66)」と「Action ('67)」のカップリングに後期のシングル一枚分、そして未発表が2曲という“ほぼコンプリート”録音集。件の「96 Tears」に加え、僕個人的にはベスト・ナンバーである「I Need Somebody」など初期のシングル曲が収められた「96 Tears」は、アルバム制作にあたって急遽レパートリーが用意されたのか、シングルと比べれば幾分質の劣るオリジナル曲が大半を占めている。とはいえそんな中にも後にミシガン・ロックの後輩にあたるアリス・クーパーがカバー・ヒットさせる「"8" Teen」があったりして油断は出来ないのだが。続く「Action」はマルティネス単独のペンによる作品が目立つ内容で、プロの作曲家が手掛けるようになったシングル曲との対比が面白い。シングル曲では数年前にスマッシュ・マウスがリバイバルさせた「Can't Get Enought Of You Baby」がポップでよく、マルティネスのオリジナルは、そこら辺と比べるとやや劣る出来か。

 ブックレットのディスコグラフィを見ると“;(セミ・コロンズ)”名義の変名シングル、なんてものもあったそうで、時間的にはそこら辺のCD収録も可能だったのではないか?と思われるのだが、その類いはいずれ発売されるであろう“カメオ/パークウェイ・レアリティーズ”への収録に期待し、長年欲しくても買えなかった彼らの公式音源をこれを機会にじっくり味わい、ガレージ・ロック史における彼らの重要性などを考察してみることにしよう。

収録曲等詳細(All Music Guide)
The Best of The Dovells: Cameo Parkway 1961-1965
The Best of The Tymes: Cameo Parkway 1963-1964
The Best of ? & The Mysterians: Cameo Parkway 1966-1967

(2005/11/6)

As Time Goes By - Harpers Bizarre

As Time Goes By - Harpers Bizarre
(Forest Bay/Muzak)



 ビザ〜ルでゴザ〜ル!(©渡辺満里奈)ということでハーパース・ビザ〜ル。彼らが発表した全アルバムがこの度日本で紙ジャケCD化された。その中で今回は比較的珍しいものをご紹介。

As Time Goes By (1992 Japanese Pressing) こういう時でないと二度と書く機会はないと思うので余談から入らせてもらうが、ハーパース・ビザールなんてマニアックなグループ、60年代当時の日本でどれだけの人が聴いていたんだろう?とずーっと思っていた。しかし数年前、友人の奥さんのお母さまと当時の洋楽の話をしたら(なんでそんな人と知り合って、そんな話をする機会があるんだっ!?と言われると困るが)「私は女学生時代『ミュージックライフ』にハーパース・ビザールのアルバム評を投稿して掲載されたことがある。」と言われて吃驚したことがある。彼らは当時の“女学生”にも聴かれるようなアーティストだったのか??ま、それはともかく。1960年代後半の“バーバンク・サウンド”を代表するグループの一つである彼らは、ワーナー・ブラザーズで4枚のアルバムを発表。それらは“ソフト・ロック再評価”が盛り上がった今から15年ほど前に日本でCD化されたが、その余勢をかって92年には70年代にマイナー・レーベルから発表された彼らの再結成アルバムまでCDに。しかしこのジャケット・デザインが、ちょっとCD屋のレジに持っていくのを躊躇われるようなものだったため(上掲)結局買わずじまい(当時よく一緒にCD屋巡りをしていた女性には「なんでー?かわいいじゃん。」と言われたのだが・・)。

 その再結成アルバム「As Time Goes By」が10数年ぶりに再発された。今回はオリジナル・デザイン、しかも紙ジャケ仕様。このアルバムが生まれた背景を説明しておくと、前述の通りワーナー・ブラザーズに所属していた彼らは1970年に一旦解散。その後リーダー格だったテッド・テンプルマンは同社にとどまりドゥービー・ブラザーズ他を手掛けるトップ・ブロデューサーとなり、彼を除くメンバーが76年に再結集し「フォレスト・ベイ」というレーベルから発表したのがこれ。76年というと60年代当時とはすっかり音楽制作システムも変わってしまっており、かつてのドリーミーなサウンドなど期待することは出来ないだろう、ということで(ジャケットの問題もあったが)前回再発された時は試聴もせず購入を見合わせたアルバムだったが、今回聴いてみると意外なくらいに“ハーパース・ビザールっぽさ”を忠実に再現した内容になっている。

 アルバム全体の雰囲気は、ワーナー時代のアルバムでいえば「Anything Goes」あたりに通じるか。収録曲はいにしえのスタンダードと70年代に生まれた曲が入り混じった構成になっていて、前者にはアルバムタイトル曲で映画「カサブランカ」で有名になった(その時点で既にリバイバルだった)「As Time Goes By」、有名なミュージカルナンバー「Lullaby Of Broadway」、クルト・ワイルが作曲した「Speak Low」など1930〜40年代に生まれた曲と、もうちょっと時代が近くなってディキシー・ベルズの「Down At Papa Joe's」とマーベレッツの「Beechwood 4-5789」の60年代ナンバーがあり、後者にはメンバーのディック・スコパトーンによるオリジナル何曲かと、何故かポール・マッカートニーの「Everynight」があったりする。どれもソフトなコーラスで料理されていて耳障りがいいが、中でも突出して出来がいいのが「Speak Low」。ボサっぽいビートのジャジーなナンバーで、90年代にクラブで人気を呼んだという話も頷ける。

 1976年はアメリカが「建国200年」で沸いた年。ノスタルジックな音楽が再び注目されるような動きもあったようで、それに乗じての再結成だったのだと思うが、残念ながら音楽シーンに殆どインパクトを残すことは出来ず、グループは再び散り散りに。時代の流れに人知れずポツン、ととり残されたようなこのアルバム、ハーパース・ビザールのファンであれば、購入してみてもガッカリはしない内容だと思う。逆に彼らにあまり思い入れはなく、何かのコンピレーションで聴いた「Speak Low」のみに惹かれて買うのであれば、あの曲以上のものはないので注意が必要。僕は「紙ジャケ」にあまり購買意欲をそそられる方ではないのだが、その手の物が出るとつい買ってしまうような方であれば、ワーナー時代のアルバム4枚と併せてまとめ買いしてみては。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2005/11/4)