Sing Great Country Hits/Gone Gone Gone
Rock 'N Soul/Beat 'N Soul
From Nashville To Hollywood
- The Everly Brothers (WSM)
もしかしたら2005年は、エヴァリー・ブラザーズファンにとって21世紀最初で最後の当たり年なのかも知れない・・と思えてきた。それは大袈裟かも知れないので“21世紀前半”と微妙に期間を狭めてもいいが(大して変わらないか)、そんなことも書いてしまいたくなるくらいに昨今の彼ら関連のCDリリースは凄まじい勢い。先日はコレクターズ・チョイスから再発されたワーナー時代のオリジナル・アルバムを紹介したが、今回はそれらのうちの何枚かがヨーロッパで2イン1形式でCD化されたものをご紹介。
1950年代後半にインディ・レーベル「ケイデンス」で華々しい活躍を見せたエヴァリー・ブラザーズは、1960年には新興のメジャーレーベル、ワーナー・ブラザーズと長期契約。約10年間に10数枚のオリジナルアルバムを残したのは以前書いたとおり。過去に2イン1でCD化されているものを先に紹介しておくとまず1960年には「It's Everly Time」と「A Date With The Everly Brothers」をリリース。兄弟作の名曲「So Sad (To Watch Good Love Go Bad)」で幕を開ける前者は、ケイデンス時代の主要ヒットを手がけたフェリックス&ボードロー・ブライアント夫妻作の曲が12曲中6曲を占める内容だが、若干急造の印象がある一枚。夫妻作の「Sleepless Nights」は掛け値なしの名作だが。続く「A Date 〜」はこの時期の彼らの最高傑作で、兄弟作の4曲はワーナー移籍第一弾のナンバー1ヒット「Cathy's Crown」以下佳曲揃い、夫妻の方も負けずに「Always It's You」「Love Hurts」などを提供と、大変な充実ぶり。彼らのメジャー移籍はひとまず大成功ということになった。
翌61年には「Both Sides Of An Evening」と「Instant Party」を録音。前年の兄弟オリジナル+夫妻提供曲という体制が続けばよかったのだが、ツアー生活を送り、数カ月毎にシングル盤をリリースしながら別に年2枚ペースでアルバムを制作し続けるのは負担だったのか、以降彼らのアルバムはスタンダードなど過去の作品のカバーで埋めつくされることになる。「Both 〜」はアルバムA面が「ダンス・サイド」、B面がバラード中心の「おやすみサイド」とふた通りの夜の過ごし方を提案した“コンセプト・アルバム(?)”で、出来は比較すればバラード側に軍配が上がるか。「Instant 〜」はテーマのあまり感じられないカバー集で、早くもアイディアの枯渇か?と心配させられる。映画「上流社会」のテーマ「True Love」で聴かれる二人のハーモニーは、非常に美しいのだけれども。
と、ここまでが過去(2001年)に2イン1化済みのアルバム。これでようやく新着CDの紹介に入れる。62年に彼らは半年間海軍に入隊、この年にも録りだめたシングル音源とベスト盤&クリスマス・アルバムで見事契約をこなした2人が翌63年に入って発表したのが「Sing Great Country Hits」。カントリー名曲集ということでまたカバーかよっ!と言いたくなるが、彼らの音楽的ルーツだけあって流石に出来はよく、二人のハーモニーも絶好調。このアルバムはそれまで彼らがレコーディングを行っていたナッシュビルを離れ、ワーナーの本拠ハリウッドで制作された最初の作品で、バックにはグレン・キャンベル、レオン・ラッセル、ハル・ブレインといった錚々たる面々が参加。この“音のよさ”もアルバムの価値を高めている。
しかしこの時期ヒットメーカーとしての彼らは既に下降線状態にあったためその後アルバム制作は暫し停滞。そうこうしているうちに64年にはビートルズ以下イギリス勢のアメリカ襲来が巻き起こり、彼らも時代遅れの存在としてシーンから追いやられてしまうのか・・・と思ったら大間違い、イギリスのビート・バンドたちにとってエヴァリー兄弟は神様のような存在で、その再評価もあってか“敵国”イギリスでヒットを連発。本国アメリカでもブリティッシュ勢にひけを取らぬビートナンバー「Gone Gone Gone」が約2年ぶりにTOP40ヒットを記録し、その勢いにのってリリースされたのが同名アルバム。しかし内容はといえば60年に録音された作品が今更収録されていたり、ナッシュビル録音の安易なカバー録音が目立ったりと、ヒットに合わせて急遽曲が集められたという印象が拭えない出来となってしまった。
続く65年には、彼らはR&Rクラシックを集めた2枚のアルバム「Rock 'N Soul」と「Beat 'N Soul」をリリース。またカバーかよ!なのだが仕方がない。このカップリングで面白いのは「Rock 〜」はナッシュビルで、「Beat 〜」はハリウッドで録音されている点で、前者はやや精彩に欠け、対照的に後者のサウンドには大変な勢いが感じられる。音楽界に“西海岸の時代”が到来した様子が、こんな古株アーティストの作品からでも窺い知れるのは大変興味深い。因みに参加ミュージシャンはドラムにジム・ゴードン、キーボードがビリー・プレストン、ベースは後にブレッドを結成するラリー・ネクテル、ギターには元クリケッツのソニー・カーティスにグレン・キャンベルとジェイムス・バートンが加わるという大変なオールスター・バンド状態。
どちらのCDにも同時期に録音されたシングル音源や未発表曲などがたっぷり追加され、大変聴き応えのある内容になっているのだが、今回これに加えリリースされたのが61年から63年にかけて録音された未発表曲や別バージョン、アルバムから漏れたレア音源をアルバム一枚分詰め込んだ「From Nashville To Hollywood」。このCDの聴きどころは、恐らくシングル用に録音されたであろうアルドン系のソングライターたちによる作品群で、ハリウッドで録音を始めた彼らは当時アルドン・ミュージック(スクリーン・ジェムス)の西海岸の窓口を務めていたルー・アドラーと知り合い、その縁で同社の作品を数多く取り上げるようになったようだ。有名なものではキャロル・キングとジェリー・ゴフィン作の「Crying In The Rain('62米6位/英6位)」があるが、ここにはそのキング=ゴフィン作品が4曲、更にゴフィンがジャック・ケラーと組んだ作品が6曲と、かなりの数が収録されており、黄金期のアメリカン・ポップスの舞台裏を覗いたような気分にさせられる。
実はこれらCDの発売がアナウンスされたのは今から3年以上も前のことで、それから待ちに待って今月ようやくの入手となったのだが、この続編もまた何年後かに発売されることになるのだろうか?少なくとも「From Nashville 〜」のライナーは【続く】で締められているが・・。ドイツのベア・ファミリーは彼らの60年代録音を網羅したボックスセットの発売を予告しているし。待つか待たないか、ハードコアなファンには悩ましいところである。
(2005/10/22)