現在メルマガの「Flashback」コーナーは日本の洋楽年間チャート1950年代編に突入しており、情報が少ないため説明が難しい曲が多くて毎回超深夜までヒィヒィ言いながら原稿と格闘する(時には結局書き上がらない)状態が続いている。それに比べればこの前までやっていた1970年代編など易しいもので・・と言いたいところだが、こちらはこちらでリアルタイムにそれらの音楽を聴いていた方が大勢メルマガを読んでいて、迂闊なことを書くとすぐにツッコミメールが届きそうなので結構細心の注意を払って文章を書いていたり。いずれにしても苦労は絶えないのだ。
で、その内容をまとめて再掲している別サイトの方では、それら紹介した曲が収録されているCDのリンクを一曲一曲貼っているのだが、1970年の回の時1曲だけ収録CDを探し出すことが出来なかった。それがオリジナル・キャスト(以下“オリキャス”)の「ミスター・マンデイ」で、今回待望のアルバム世界初CD化が為されたので早速ご紹介することとしたい。
オリキャスは1960年代後半にカナダで結成されたポップグループで、フォーク系の音楽をルーツとしている。70年代のヒットチャートで大成功をおさめるプロデューサー・コンビ、デニス・ランバートとブライアン・ポッター(以下L&P)が活動初期に手がけたグループとしても知られており、以前メルマガで僕は以下のように紹介した。
【70年にアメリカで「One Tin Soldier(『天使の兵隊』米34位)」をヒットさせたオリジナル・キャストは、カナダ人のブルース&ディクシー・リー・イネス(当時夫婦)を中心に結成されたポップ・グループ。この後ダンヒル・レコードで一時代を築くデニス・ランバートとブライアン・ポッターが全面的に制作に参加していることでも注目に値する彼らの、日本における最大のヒットがマイナー・メロディの「ミスター・マンデイ(本国カナダでは最高3位を記録)」で、ストリングスとホーンのアレンジに早くもランバート&ポッターの手腕が窺える仕上がりとなっている。このヒットにより人気を確立した彼らは度々来日を果たし、オリジナル・グループが活動を停止するする翌71年までに発売されたシングルは、次々とラジオ洋楽チャートの上位にランクインした。】
・・情報不足がそこかしこから感じられる何とも言えない文章だが、今回発売されたCDのライナーや、諸々の情報を総合してこのアルバムが発売されるまでの経緯を長くなり過ぎない程度にまとめてみたい。
彼らがレコード・デビューを果たしたのは1968年のこと。2枚の不発シングルの後T・A(タレント&アソシエイツ)というプロダクションと契約を結び、そこで出逢ったのがL&Pの2人だった。彼らの制作で発表した同社からの第1弾シングル「One Tin Soldier(天使の兵隊)」が見事全米TOP40入りを果たし、続いてリリースしたのが「ミスター・マンデイ」。これはアメリカでは最高119位に終わり、その後彼らがHOT100に返り咲くことはなかったため名実共に“一発屋”で終わったが、日本では事情がまったく違い、前作を遥かに凌ぐヒットを記録。「オリコン」によれば45.8万枚ものシングルを売上げたのだという。その後も「Leaving It All Behind(愛する未来に歌おう)」「Ain't That Tellin' You People(虹を架けよう)」とヒットが続き、そんな盛り上がりの中発表されたのが彼ら唯一のアルバム「One Tin Soldier」だった。
収録曲は既発のシングル作品が中心となっているが、ヒット曲から受ける彼らのイメージ 〜マイナー・メロディで叙情的〜 とはちょっと違った、かなり洗練されたハーモニーを聴かせる曲も少なからずあり、そこら辺に注目するとカート・ベッチャーが担当をはずれた後期のエタニティーズ・チルドレン(彼らもカナダ出身だ)あたりに通じる雰囲気を感じなくもない。アルバム全10曲中7曲までをL&P作品が占め(残りはリーダーのブルース・イネス作品)、彼らの初期作品集としてもその価値は高い。
このアルバム発売後間もなくL&Pはダンヒル・レコードの誘いに応じて移籍、指導者を失ったオリキャスはロジャー・ニコルスのプロデュースの下シングル「When Love Is Near(朝やけの二人)」をリリース。今回のCDにボーナス・トラックとして収録されたこの曲はポール・ウィリアムスがニコルスとの共作曲の売り込みのため吹込んだデモ・アルバム収録曲を取り上げたもので“田舎のカーペンターズ”といった趣になっている。このシングルのB面「Salt Saint Marie(ブルース・イネス作)」もアルバム未収録曲で、是非とも聴いてみたかったが残念ながらこのCDからは漏れてしまった。結局このシングルをもって“オリジナル”オリキャスは解散、その後の活動については後述をご覧いただきたい。一方L&Pの方はダンヒルでヒット作を連発、手許の資料によれば71年の洋楽ラジオチャートでハミルトン、ジョー・フランク&レイノルズの「Don't Pull Your Love(恋のかけひき)」がなんと年間1位、翌72年にはグラスルーツの「Two Devided By Love(恋は二人のハーモニー)」が年間26位にランクインしているから、よほど日本人の“ツボ”を押さえたサウンド作りが為されていたということなのだろう。
1970年代前半の“洋楽ラジオ黄金時代”をよく知る方には、非常に懐かしい音楽が詰ったCDではないかと思う。なお彼らやL&Pの活躍に関する更なる詳細、そしてブルース・イネスの近況等は、彼らに関しては世界一詳しいファンサイトを日本の洋楽ファン、その名も「ミスター・マンデイ」さんが立ち上げておられるので、下のリンク先をご覧下さい(今回これを書くにあたっても様々なソースを参照させていただきました、御礼申し上げます)。
オリジナル・キャスト超詳細情報