再発市場(?)もクリスマス商戦に突入ということで、このところ大型商品のリリースが相次いでいるが、中で結構レコード会社の力が入っているな、と思わせるのがビー・ジーズのナンバー1ヒットを集めたこのCD。アメリカで9曲、イギリスで5曲のナンバー1ヒットを放っているばかりでなく、彼らは世界各国でヒット曲を持っているのでリストを見ると意外な曲が収められているのが面白い。日頃英米のチャート記録を見なれている方には「おやっ?」と思われるであろう収録曲のナンバー1獲得状況を列記しておくと
Words('68 ドイツ、オランダ、スイス)
World('67 ドイツ、オランダ)
I Started A Joke('68 ニュージーランド)
Don't Forget To Remember('69 オランダ、南アフリカ、ニュージーランド)
といった感じ。彼らのナンバー1ヒットというと、どうしても70年代後半に偏ってしまうのでこの収録は歓迎すべきだろう。曲の紹介はあまりにもお馴染みのものばかりなので省略するとして、このCDはアメリカ盤とイギリス盤(及び日本盤)では収録曲が違う、というお話を。簡単にいえばイギリス盤はアメリカ盤よりボーナスが3曲多く、逆にイギリス盤には70年にキャッシュボックス誌で1位になった「Lonely Days」が入っていないということなのだが、ボーナスの3曲はサントラ「Saturday Night Fever」に収録されたタヴァレスのバージョンがヒットした「More Than A Woman」、ケニー・ロジャースとドリー・パートンにより83年に全米ナンバー1を記録した「Islands In The Stream」、そしてセリーヌ・ディオンと共演した「Immortality」で、いらないといえばいらないという気も・・。その代わりアメリカ盤には初回プレス限定で、生前のモーリスが参加しているスタジオ・ライブ5曲が収められたDVDがついているので、どちらを買うかはビー・ジーズに対する思い入れとか、歌詞カードが付いていた方がいいとか、イギリスのアーティストはイギリス盤で揃えたいとか、各々に理屈をつけて決心していただけばいいと思う。
あと一点米・英盤ともに共通しているのが、昨年亡くなった“次男坊”モーリスに捧げられた「Man In The Middle」の最終トラック収録。これは3人による最後のアルバムになってしまった2001年の「This Is Where I Came In」に収められていた曲で、バリーとロビンがその喪失を乗り越え、今後どのような活動を展開していくのか興味をそそられる終わり方になっている。ビー・ジーズのヒット曲をちゃんと聴くとしたら最低でも2枚組(ディスコ以前とディスコ以降)にはなると思うので、このCDが入門編として最適、というつもりはない。むしろ既に彼らのCDをそれなりに持っているけど、最新のマスタリングで代表曲を手軽に聴いてみたい、という気持ちで買うのが一番かも。
で、もう一枚は、彼らの作品を60年代後半〜70年代前半に他のアーティストがカバーした録音を集めたもの。このコーナーでも何回か紹介しているイギリスの再発レーベル、キャッスル・コミュニケーションズが熱心に枚数を重ねている企画の一つに「The Songs Of 〜」シリーズというのがあって、テーマによりコンピレーションの出来不出来にばらつきがあるためどれもお薦めとは言えないのだが、シリーズ最新盤である“ビー・ジーズ編”は、彼らのファンだったらこんなCDが欲しかったでしょう、といえる内容になっている。
マンチェスター生まれのバリー、モーリス、ロビンのギブ3兄弟に友人が加わった“B.G(Brothers Gibb)S”はまず幼少期に移住したオーストラリアでレコード・デビューを果たし、成功を収めた後凱旋という形でイギリスで「New York Mining Disaster 1941(ニューヨーク炭坑の悲劇)」をリリースすることになるのだが、このイギリス再上陸の際マネージャーのロバート・スティグウッド(後にレーベル「RSO」を設立し、ビー・ジーズ全盛期を謳歌する)はギブ兄弟のソングライターとしての才能を売り込むためオーストラリアで制作されたデモ録音を業界にばらまき、その中から幾つかの作品が取り上げられレコード化が実現している。
CDに収録されている22曲のうち、ビー・ジーズ自身によりヒットした曲は3分の1程度、残りはアルバム収録曲か、純粋な“提供曲”ということで、あの実り多い時代に彼らが如何に幅広く活躍していたか、オリジナル・アルバムを聴いただけでは判らない部分を知ることができる。登場するアーティストはまず最近TVCMに使用されてやたらと耳にする「Spicks & Specks」のステイタス・クオー版に始まり、「Top Hat」のモンタナス、「Butterfly」のマーマレードといった当時のライバル(というかフォロワー)、更に元ジェリー&ペースメーカーズのジェリー・マースデン「Gilbert Green」、ビリーJ.クレーマーの「Town Of Tuxley Toymaker」、元マンフレッド・マンのポール・ジョーンズ「And The Sun Will Shine」、アダム・フェイスの「Cowman Milk Your Cow」など彼らより一世代前のアーティスト、その他泡沫系等幅広い。中にはモーリスの覆面プロジェクト“ファット”によるビートルズのパロディ曲「Have You Heard The Word」なんて珍品もある。あ、あとCDの一番最後にシークレットでメチャクチャ音痴な「Stayin' Alive」が入っているので、そちらもお聴き逃しなく(誰が歌ってるの??)。
どれもまずまずの水準の作品ばかり、当時の流行を巧みに取り入れたソフト・サイケ作品集として十分聴き応えのある内容になっているので、ビー・ジーズの熱心なファンばかりでなく、ソフト・ロックファン、60年代のブリティッシュ・ポップスファンだったら入手すべきコンピレーションだと思う。何故か不当に低い“ソフト・ロック界”における彼らの評価も、このCDや12月に一気に日本盤がリリースされるというオリジナル・アルバムによって見直しが為されることを願いたい。
収録曲等詳細
Bee Gees Number Ones
Maybe Someone Is Digging Underground: The Songs Of The Bee Gees