八亀's Picks - October 2004

過去の八亀's Picks

10.17 Daybreak - Joe & Bing (Best of Friends)
10.12 American Chartbusters of the 70s - VA
10.12 歌謡曲の時代 - 阿久悠:著
10.04 Stompin' at the Savoy - VA
10.02 There Is Only One Roy Orbison/The Orbison Way
10.02 Soft Sounds for Gentle People Vol.1-3

Best of Friends

Daybreak - Joe & Bing (Best of Friends)
(Rev-Ola)



 ジョー&ビングというデュオが1976年に放ったヒット「Barnstormer」をご存じだろうか?僕は知らない。彼らのバイオグラフィーによればこの曲を唯一TOP100(この表記が微妙なのだが、ビルボードでもキャッシュボックスでも確認は出来なかった)に送り込んだという2人が、それに先駆け71年に発表していたアルバムがCD化された。

Joe and Bing Official Website ジョー・ビンガム&ビング・ノールトンの歴史は意外に古く、2人が最初にフォーク・グループを結成したのはまだ高校生だった1962年のこと。65年には本格的に音楽活動に専念するため進学した大学をドロップアウトしたが、その直後に徴兵されて4年間兵役に。69年秋に除隊し、まだ音楽の道を諦めきれなかった2人は音楽業界で働いていた高校時代のクラスメイトを頼ってデモテープを制作。そのセッションを取り仕切ったのがクラスメイトの上司ハリー・ルコフスキー(レフト・バンクのメンバー、マイケル・ブラウンの父)で、その出来に感心したルコフスキーはテープを当時懇意にしていたブラジルのプロデューサー/アレンジャー、エウミール・デオダート(ルコフスキーとデオダートはアストラッド・ジルベルトの「Beach Samba」を制作した直後だった)に手渡し、結果彼のプロデュースによるアルバム制作が実現した。

 レコーディングは終了したもののアメリカ国内の発売元が見つからなかったこのアルバムは、自主制作盤として1,500枚がプレスされ、ジョー&ビングのライブ会場で1枚10ドルで販売されるのみに終わったが、一方ブラジルではデオダート人気の高さから一般発売が決まり「ベスト・オブ・フレンズ」名義でリリース。70年代当時はブラジル、そしてやはりデオダ−トの人気が高かったイタリアでのみ公式リリースのあったこのチャド&ジェレミータイプのソフト・ロックアルバムは、中古市場を転々とするうちに再発見され、ごく一部の音楽ファンの間で“知られざる名盤”との評価が高まっていた。

 そんな訳でアルバムの内容を紹介。2人の自作曲を中心としたオリジナル・アルバム10曲に、デモや未発表7曲が追加されたこのCD、過去に紹介したRev-Olaものでいえば、デュオということでチャック&メリー・ペリン!といいたいところだが、残念ながらそこまでの透明感はなく、ウェットな曲調が多い点を考えるとカンタバリー・ミュージック・フェスティヴァルに近いものがあるだろうか。アルバム冒頭の「Daybreak」はアストラッド・ジルベルト72年のアルバム「Now」でも取り上げられた曲で、ひとまずの聴きどころ。以降「I'm Not Forgetting Your Name」「It's OK」「Summer Sound」と哀愁漂うメロディの曲が続き、なかなかいい雰囲気。デオダートはオーケストラ・アレンジを担当、ちょっと物悲しげなムードを盛り上げている。またつい期待してしまうボサ調の曲としては後半に「Sail」が登場、この手の曲がもっと多ければ、このアルバムはより熱狂的な支持があったのではないか?と思われる。カバー曲ではスティーブン・スティルスの「Love The One You're With」、ボーナス・トラックとして収録されているハリー・ニルソンの「Without Her」と、これまたソフト・ロックファン好みの作品を聴くことができるが、これらではちょっとボーカルの弱さが目立つ。その他ボーナス曲も若干音質が気になるところはあるがどれも出来はよく、聴く機会に恵まれて素直によかったなーと思える1枚。

original picture sleeve なおCDジャケットは作品の雰囲気に合わせ、今回のリリースのため新たに作られたもので「気に入らなかったらオリジナルのジャケ写(右)もつけたからそちらを使ってね。」とのこと。彼らはこのアルバム以降も音楽活動を続け、76年にはRCAと契約。念願であったメジャー・デビューアルバムの発表にこぎつけ、冒頭の「Barnstormer」のヒット(?)へと至るのだが、RCAはほぼ同時期に契約したもう一組のロック・デュオ(ダリル・ホール&ジョン・オーツ)に力を入れたため、ブレイクを果たすことはなかったという。その後も80年代まで音楽業界で働き続けた2人は現在も連絡を取り合っているようで、近年の再評価の気運に合わせてオフィシャルサイト(上掲イラストのリンク先)を立ち上げ、現金にも“ジョー&ビンググッズ”を販売している。Tシャツ、マグカップ、トート・バッグ・・。レアであることは間違いないので、興味のある方は是非ともお立ち寄りを。あと、本人たちが「いずれ再発されると思うのでお楽しみに!」と書いているRCA盤のCD化、こちらの実現は本当にあるのだろうか?あるとしたら日本でだと思うのだが・・。

曲目等詳細(発売元のサイト)

(2004/10/17)

THE HIT LIST

THE HIT LIST: 24 Hot 100 American Chartbusters of the 70s
(Ace)



 恒例の「今月のエイス・レコード新譜」コーナー。同社から出ているコンピレーションで、最も優れている(と僕が思っている)のが以前も紹介した1955年〜1964年のヒット曲を執念深く集めた「Golden Age of American R&R」シリーズ。今回はこの70年代版といえるCDが発売されたので、こちらをご紹介。

 70年代前半から半ばにかけてのヒット曲(殆どがTOP20入りを果たしている)をランダムに24曲集めたこのCD、曲目を眺めてもそれほど珍しいものがある訳ではない。70年代のヒット曲集というとライノから出ていたもはや伝説的と言っていい全25枚の「Have A Nice Day」シリーズがあって、どうしてもそれと比べてしまうことになるが、そういう点ではこのCDは分が悪い。何しろかなりの部分が「〜 Nice Day」シリーズとカブってしまうので。

 収録曲を一応紹介してみよう。先ずナンバー1ヒットを列記してみるとゲス・フーの「アメリカン・ウーマン(70年)」、ルッキン・グラスの「ブランディ(72年)」、最近メイスがリバイバルさせたジョン・セバスチャンの「ウェルカム・バック(76年)」といった感じ。その他は如何にもラジオ向けな耳障りのいいロックを中心に、アダルトなポップスやR&Bも少々。まだラジオ局がジャンル別にあまり細分化されておらず、TOP40ステーションからは雑多な音楽が流されていた時代のヒット曲集といった感じで、78分結構気楽に聴き流すことができる。

 しかし、これだけだとコンピレーションとしては弱いよね。このCDの最大の特徴は、恐らく音の良さでしょう。エイスのCDはマスタリングの良さでも有名だが、ここでもお馴染みのヒット曲が見違えるようないい音で聴ける。僕は余りハードにこだわる方ではないけれども、そんな環境でも「いい音だな。」と感じたので、それなりに設備のあるところで聴けば、その違いは鮮明に判るのではないだろうか。70年代音楽のCDを既にそれなりに所有している方には、このCD単体としては余り必要の無いものかもしれない。今後これがシリーズ化され、徐々に珍しい曲も収録されるようになれば、それなりに面白いものになるだろうが。逆にこれまで余り70年代の音楽に親しみがなく、これから聴き始めよう、という方には入門編としてはまずまずのCDだと思う。いずれにしても今後の展開に期待、ということになるか。

Chartbusters USA, Vol.1 Chartbusters USA, Vol.2 Chartbusters USA, Vol.3 

 ついでにこの企画の姉妹編を紹介。狭義の“オールディーズ”の時代のヒットを集めた「Golden Age 〜」と、今回の「Hit List」の中間に位置する60年代半ば〜後半のヒットは「Chartbusters USA」というシリーズでカバーされており、こちらは現在第3集まで発売されている。これも当初は有名曲ばかりが収録されていて、入手を迷った覚えがあるが、シリーズが進むにつれていい感じになってきたので、僕は第4集以降のリリースを密かに心待ちにしている。「Hit List」も枚数を重ねていけばそれなりに意味のあるものになっていくと思うので、いずれ“「Have A Nice Day」に匹敵する名シリーズ”と呼ばれるような企画に育ってくれることを期待したい。

曲目等詳細(発売元のサイト)

(2004/10/12)

歌謡曲の時代 ―歌もよう人もよう―

歌謡曲の時代 ―歌もよう人もよう―
阿久悠:著(新潮社)



 小さい頃、阿久悠が嫌いだった。当時小学生だった僕にとって彼は、日曜日の朝毎週観ていた「スター誕生」の審査員席でやたら偉そうにしている悪人面のオッサンで、あの“悪人面”が日頃夢中になって聴いていた(当時はそうは思わなかったが、毎日々々TVやラジオにかじりついて次々と新しい曲を覚えていたんだから、恐らく大好きだったんだろう)ピンクレディーや沢田研二の詞を手がけているという事実に、相当な違和感を覚えていた。

愛すべき名歌たち − 私的歌謡曲史 その“違和感”は結構延々と続いて。印象が変わったのは数年前、小説家としても地位を確立した彼がかつての歌謡曲を懐述する著作をいくつか出すようになり、それを読み始めてから。特に「愛すべき名歌たち―私的歌謡曲史」という本は彼が育ち、やがて時代を創った“戦後”のBGMとして機能した100のヒット曲を、自作他作混じえて語っていく興味深いもので、自分で生んだ作品と他人の作品をこのように並列に客観視しながら語れる人だというのが何だか意外で、あの“悪人面(何度も何度も失礼な表現・・)”に隠された一面を垣間見たような気がした。

 今回入手したのは彼が過去に生んだヒット(一部ヒットしていないものもあり)99曲をテーマに書かれたエッセイ集で、とある新聞に約2年間に亘って連載されたものだという。各篇は基本的にその歌の生まれた背景や舞台裏について触れた部分と、その物語が現在ではどの様に機能するのか(またはしないのか)という部分の二部構成になっており、圧倒的に面白いのはやはりヒット曲にまつわる裏話。“それが現在では・・”と始まるとどうも老人の愚痴のような話になってしまいがちで、ついついページを先に進めてしまう。

 洋楽に夢中になる前に僕は昭和50年代の歌謡曲の世界にどっぷりとつかって、その経験は現在の音楽の聴き方にも大きな影響を与えている。僕の耳には無味乾燥に聞こえるヘヴィ・ロックやメロコアやらエモやらといった音楽よりも、より歌謡性の高い今どきのカントリーに興味がいくのもそういうことだろうし、大好きだったかつての歌謡曲に多大な影響を与えたいにしえの洋楽を執念深く聴き続けているのも、もしかしたら根底にそれがあるのかもしれない。あの当時、かなりチャート(この場合オリコン)にこだわりのある子供であることを自負していた僕だったが、やはりクレジットのチェックは相当甘かった様で、取り上げられている曲のリストを見て「あーっ、これも阿久悠だったんだー。」と初めて知るもの多数。メロディを思い浮かべながら、時には一寸歌ってみたりして一気に読みきってしまった。

なぜか売れなかったが愛しい歌 歌謡曲は昭和という時代とともにその機能を失ったという。その後の“J-POP”と呼ばれる音楽とは別物である、という基本認識がこの本にはあり、そこら辺の“断絶感”が理解できないと若い世代にはピンとこないかもしれない。阿久悠が平成年間に入って“歌謡曲(現在では演歌とほぼ同義語になってしまっている)”として張り切って書いた曲がこの本にはいくつか紹介されており、中には「平成〇〇年日本作詞大賞受賞」なんて立派な成果をあげたものもあるが、一部CM曲を除いて見事に知らない(≒社会的に影響力を持たなかった)曲ばかり。勿論僕の怠慢もあるが、一方で“歌謡曲的なもの”がヒットチャートを賑わしたり、人々の話題に上ったりという現象は現在も年に何曲かはあり、その殆どはかつてのオールドスクール的な“歌謡曲”人脈以外の場所から発生しているという現実もある。“歌謡曲的なもの”はマイナー・ジャンルながら今後も生き続けるだろうけれども、それは旧来の“歌謡曲”のシステムからは生まれない、ということなのかもしれない。

 阿久悠の著作で以前この「Editor's Pick」で取り上げようと思って果たせなかったものがあるので、併せてご紹介。「なぜか売れなかったが愛しい歌」は彼の数多い作品の中で、比較的セールスは振るわなかったものの、特に愛着のある50曲を取り上げた本。これは話題が曲そのものに絞られているので、その点では今回の「歌謡曲の時代」より音楽好きにはより興味深い内容になっている。色々発見が多いので、歌謡曲ファンは是非とも読んでおいていただきたい一冊。なおこの本に収録されている文章は元々彼のホームページ「あんでぱんだん」で1年間に亘って連載されていたものが元になっていて、それらは現在もWeb上で「あまり売れなかったが なぜか愛しい歌」として読むことができるので、時間があったらまずはそちらの50篇をじっくりとご覧になってみていただきたい。

内容等詳細(発売元のサイト)

(2004/10/12)

Stompin' at the Savoy

Stompin' at the Savoy: The Original Indie-Label 1944-1961
(Savoy Jazz)



Atlantic Rhythm & Blues 1947-1974 以前書いたことがあったかも知れないけれども、僕がR&B(現在いうところの“トラディショナルR&B”)の世界に本格的に興味を持つきっかけになったのが、1980年代に発売されていたアトランティック・レコードの歴史をたどるアナログ14枚組「Atlantic Rhythm & Blues 1947-1974(現在は曲が追加されCD8枚組で発売中)」。1940年代のジャンプ・ブルースから70年代のニュー・ソウルまで、R&Bのメインストリームを贅沢な選曲で堪能できるボックスで、この“基礎固め”がその後の僕の音楽の聴き方に大きな影響を与えている気がする。で、このシリーズがリリースされるちょっと前に、やはり同じくらいのボリュームで出されていたのがR&Bの重要レーベルの一つ「Savoy」の作品集「Roots of Rhythm & Blues」シリーズ。こちらも是非とも聴いてみたかったが、なにしろ当時はまだ学生で、経済的に両方とも入手するのは無理。その後直ぐにCDの時代に入ってしまったこともあって、いずれ似たようなコンピレーションが出されるだろうと呑気に構えていたら、それが出たのが何と10数年後の今年。ようやく入手できたのがこれ。

 サヴォイは1942年にニュー・ジャージーのハーマン・ルービンスキーによって設立されたレーベル。チャーリー・パーカーやレスター・ヤングなどのジャズ作品によって現在は主に知られているが、R&B録音も多数残されていて、40年代後半から50年代前半にかけてR&Bチャートに多くのヒット曲を送り込んでいる。今回発売された4枚組全84曲は、このサヴォイ、そして後に買収され系列入りしたナショナル・レーベルのR&B作品を録音順に収めたもので、R&B/R&Rがメインストリームに浮上するまでの約10年間の、貴重なドキュメントになっている。

 1枚目のCD(1944-47年)から時代を追って作品をたどってみよう。サヴォイ最初の大ヒットはジャズ・グループ、ベニー・バンクス・トリオの「Don't Stop Now(43年R&B1位)」。しかしこのボックスではジャズ作品は対象外のようで、この曲の収録はなし。R&Bレーベルとして一足先に成功を収めていたナショナル作品が目立つ。まず後に“元祖R&Rシンガー”の称号を得ることになる“ビッグ”ジョー・ターナーがボーカルを務めるピート・ジョンソン・オールスターズの「S.K. Blues(45年R&B3位)」、この人は40年代でも60年代でも全然変わらない。渋い声でバラードを唸った“Mr. B”ビリー・エクスタインの「Prisoner Of Love(46年R&B3位/POP10位)」は、当時ペリー・コモとチャート争いを演じた大ヒット。47年に大変な共作ブームとなった「Open The Door, Richard」はダスティ・フレッチャーのバージョン(47年R&B2位/POP3位)」が聴けるし、ドゥワップ・グループの始祖的存在とされるレイヴンズも「Write Me A Letter(47年R&B5位/POP24位)」で登場。一方でその後サヴォイの最重要アーティストに成長するジョニー・オーティスの「Harlem Nocturne」や、ソングライターとして大成するドク・ポーマスの貴重な47年録音「My Good Pott」なんてのも収録されていて、やがて到来するリズム&ブルースの時代の前哨戦的趣き。

 CD1枚目終盤から2枚目では、ジャンプ・ブルースの黄金期に突入。ヒットを列記するとポール・ウィリアムスの「35-30(48年R&B8位)」「The Huckle-Buck(49年R&B1位)」、“ワイルド”ビル・ムーアのタイトルが素敵な「We're Gonna Rock, We're Gonna Roll(48年R&B14位)」、ハル・シンガーの「Corn Bread(48年R&B1位)」、ブラウニー・マギーの「My Fault(48年R&B2位)」、エックス・レイズの「I'll Always Be in Love with You(48年R&B3位)」、ディーコン・マクニーリーの「Deacon's Hop(49年R&B1位)」など大ヒットが満載。50年代に入るといよいよジョニー・オーティスが頭角を現し、リトル・エスター・フィリップスをフィーチャーした「Double Crossing Blues(50年R&B1位)」「Cupid's Boogie(50年R&B1位)」、ロビンスをフィーチャーした「If It's So Baby(50年R&B10位)」、メル・ウォーカーをフィーチャーした「Rockin' Blues(50年R&B2位)」と大活躍。R&Bレーベル、サヴォイのもっとも輝かしい時期だったかも知れない。他にはアトランタで活躍し、同郷の後輩リトル・リチャードやジェイムス・ブラウン、オーティス・レディングらに多大な影響を与えたというビリー・ライトの「Stacked Deck(51年R&B9位)」、20歳そこそこのラヴァーン・ベイカーが“ミス・シェアクロッパー(小作人)”の名で吹込んだ「I Want to Rock」など。

Rhythm & Blues Caravan: The Complete Savoy Recordings CD3枚目(1951-55年)では既にビート、スピード感ともにR&Rの原形を成した作品が並ぶ。が、この時期サヴォイは早くも創造性を失いつつあったようで、他社の人気アーティストを模倣した作品(ルース・ブラウンのイミテーター、ヴァレッタ・ディラードの「Easy, Easy Baby(52年R&B8位)」「Mercy Mister Percy(53年R&B6位)」やレイ・チャールズとルイ・ジョーダンの掛け合いのようなエミット・スレイ・トリオの「My Kind Woman(53年R&B9位)」など)が目立つ。これが55年、R&BシーンがすっかりR&Rに席巻されるとサヴォイは完全に取り残され、生まれるヒットもナッピー・ブラウンの「Don't Be Angry(55年R&B2位/POP25位)」やジャイヴ・ボンバーズの「Bad Boy(56年R&B7位/POP36位)」、前述のヴァレッタ・ディラードがロシアン・ルーレットで突然この世を去ってしまったジョニー・エイスに捧げた「Johnny Has Gone(55年R&B6位、メロディはエイスの「Pledging My Love(55年R&B1位/POP17位)」から拝借)」などちょっとノヴェルティがかったものばかりになってしまう。中にはビッグ・メイベルがジョニー・マーサーの名曲をソウルフルに歌う「Candy(56年R&B11位)」のような思わぬ収穫もあることにはあるが。

 結局サヴォイはR&Rの波に乗ることが出来ず、以降ヒットチャートへの影響力は急速に衰えることになってしまったが、初期R&Bの輝きをとらえたこのボックスCD1枚目後半〜3枚目前半は本当に聴き応えがあり、学究派R&Bファンには見逃せない内容になっていると思う。なおレーベル所属の重要アーティストのうちジョニー・オーティス(上のジャケ写)とレイヴンズはコンプリート・レコーディングスが出されており、こちらも熱心なファンにはお薦め。僕も10数年越しの念願叶ってサヴォイの全貌を知ることが出来、大変満足。


(2004/10/4)

There Is Only One Roy Orbison/The Orbison Way

There Is Only One Roy Orbison/The Orbison Way
- Roy Orbison (Edsel)



 地道に進むオールディーズ系オリジナル・アルバムのCD化。今回のターゲットはR&Rの巨人ロイ・オービソンが1960年代後半に発表したアルバムの数々。

 1936年にテキサスで生まれたオービソンは、地元で結成したバンド“ティーン・キングス”のリーダーとしてリリースした「Ooby Dooby」がメンフィスのサン・レコードに買い上げられて全国ヒットを記録(56年59位)、かつてエルヴィスも在籍した同社ファミリーの一員として50年代後半を過ごし、60年代に入ってモニュメント・レコードからリリースした一連のバラード作品でブレイク。60〜65年にかけて20曲以上のヒットを放ち、時代のトップ・アーティストとなった。

 そんな彼を100万ドルの契約金で迎え入れたのがMGMレコードで、60年代半ば以降彼は同社に約10年在籍、期間中に11枚のオリジナル・アルバム(と2枚のサウンドトラック)を遺した。イギリスのエドセルがスタートさせた今回のリイシュー・プログラムはこの11枚を2イン1で次々とCD化していくもので、その第一弾「There Is Only One Roy Orbison」と「The Orbison Way」のカップリングが到着した。

 移籍したばかりの65〜66年こそTOP40ヒットが続いたが、以降は時代の流れもあってチャートアクションが次第に地味なものとなってしまったため、彼のMGM時代は“不遇”の一言で片付けられてしまいそうな印象があるが、本国におけるヒットは減ったものの、イギリスでは依然人気が高く、またこの当時オービソンはまだ30歳前後、シンガーとして脂ののった時期にあった彼が歌う作品集の出来が悪いはずがない。

 アルバムの内容に移ろう。まず「There Is Only One Roy Orbison(65年)」は移籍第1弾ヒット「Ride Away(65年25位)」がフィーチャーされている。収録曲の殆どはオービソンと長年のパートナー、ビル・ディーズまたはジョー・メルソンとの共作になっており、自前で強力なソングライターチームを組めたことが、彼がビートルズ登場以降も安定した活躍を続けられた理由であることが窺える。例外的に一曲この翌年以降クラシックス・フォーの制作スタッフとして頭角を現すバディ・ビューイとオービソンのバックバンド、キャンディメンのメンバーであるジョン・アドキンス、ビリー・ギルモアの3人による共作「Afraid To Sleep」が収められているが、70年代にクラシックス・フォーとキャンディメンのメンバーが合流して“アトランタ・リズム・セクション”が結成されることを考えると、この人のつながりは興味深い。オービソンが書き、エヴァリー・ブラザーズがヒットさせた「Claudette(58年30位)」は彼の奥さんに捧げられた歌だが、皮肉にもこのリメイクが発表された翌年にオートバイ事故で亡くなるという悲しい逸話も残されている。

 続く「The Orbison Way(66年)」もオービソンとビル・ディーズの作品で大半が占められた内容となっており、「Crawling Back(65年46位)」と「Breakin' Up Is Breakin' My Heart(66年31位)」をフィーチャー。彼のボーカルは相変わらず好調だが、ソングライターの固定が裏目に出て、それまでのレパートリーと似たような曲ばかりが収められている印象が強く、そろそろ新しい展開が必要なのでは・・?と思わせる内容になってしまっている。それらの問題がその後どのように解決されていったか(もしくは解決されなかったのか?)は、今後出されるCDのレビューに合わせてたどっていくこととしよう。

Crying/Lonely and Blue In Dreams/Orbisongs 

 ついでにこのアルバム以前、全盛期であるモニュメント時代の作品もご紹介。60年代前半はまだリリース形態がシングル中心の時代で、あれだけのヒット数にもかかわらず彼は当時ベスト盤を除くオリジナル・アルバムを5年間に4枚しか発表していない。それらは90年代に2枚のCDとして再発済で、まず「Lonely & Blue(61年)」と「Crying(62年)」のカップリングには「Only The Lonely(60年2位)」と「Blue Angel(同年9位)」、そして「Running Scared(61年1位)」と「Crying(同年2位)」という初期の代表曲に加え、エヴァリー・ブラザーズのカバーが印象的だったボードロー・ブライアント作の「Love Hurts」やヴェルヴェッツに提供し、日本のみで大ヒットした「Lana(愛しのラナ)」が収録されている。日本のみヒットといえばオービソンの我が国における代表曲「Come Back To Me」もこちらに入っていて、これは彼にしてはやや異質な純正ティーン・ポップ風。

 一方「In Dreams(63年)」と「Orbisongs(65年)」のカップリングは「In Dreams(63年7位)」と「Blue Bayou(同年29位)」の2曲をフィーチャーした前者と、MGM移籍後残された「Oh, Pretty Woman(64年1位)」をはじめとする未アルバム化曲を集めた後者を一挙に聴ける形になっている。これらアルバムから漏れるシングルヒットは、数多く出ているベスト盤で補完してもらうこととして、彼の奥深いバラードの世界をオリジナル・フォーマットで是非とも味わって欲しい。なおMGM時代のアルバムは現在次々と再発スケジュールが発表されているので、また入手できたら続報として紹介したいと思う。

曲目等詳細(発売元のサイト)

(2004/10/2)

Soft Sounds for Gentle People Vol.1

Soft Sounds for Gentle People Vol.2

Soft Sounds for Gentle People Vol.3


Soft Sounds for Gentle People Vol.1-3 - VA
(Pet)



 なんでもありの「Editor's Pick」、今回紹介するのはブート(海賊盤)もの。ソフトロック系の音楽を深く聴き入っていくには色々と強い味方があって、現状一番はこれまで何度も取り上げているイギリスのレーベルRev-Ola、あと最近はライノのハンドメイドものとか。何年か前までは日本で随分色々と珍しい音源がCD化されていたのだが、現在はやや小康状態。ミニコミ「Vanda」誌が編纂したガイド本を頼りに、見る度うんざりするような値段がつけられたアナログ盤を漁ってみるのも、週末他に用事が見つからない方にはなかなか有意義な時間の過ごし方かも知れないが、できれば気のきいたコンピレーションが絶えず幾つか出てて、聴く度未知の名曲に出逢えたりする状態が、音楽ファンとしては有り難い。

 そんな中存在を知ったのがこのコンピレーション。「ペット・レコード」という正体不明の怪しげなレーベルから出されている「Soft Sounds for Gentle People」なる素敵なタイトルのつけられたこのシリーズは、現在までに第3集が発売されている。明らかにアナログ起こしの音源も混じりつつ、知られざる“ソフト・ロック”の佳曲をまとめて聴くことのできる有り難いCDで、日頃もっぱら“Vanda頼り”な耳&頭には新発見が続々。いずれもマイナー・アーティストばかりで詳細には確認していないが、チャートヒットは恐らくアヴァン・ギャルドの「Naturally Stoned(68年40位)」くらい。よく見つけてきたなーってくらいのレア曲が各々20数曲。順に紹介してみましょう。

 まずは第1集から。既にCD化されていたりでお馴染みのアーティストを先に挙げるとプレジャー・フェア、ディープ・シックス、パレード、ペパーミント・トローリー・カンパニー、ファン&ゲームズあたり。ここら辺が既に「???」だともうついていけないかも。シリーズのオープニングを飾るのは、最近主にレア・グルーブ方面でやたら名前を聞くプロデューサー、デヴィッド・アクセルロッドのプロジェクト、ムーンパーク・インターセクションによる“ジェントル・サウンド”な「I Think I'll Go And Find Me A Flower」。その後ステンド・グラスのクラシカルなメロディが耳に残る「My Buddy」、1964年に「Don't Let The Rain Comes Down (Crooked Little Man)」のヒット(最高6位)を持つフォーク・グループ、セレンディピティ・シンガーズがソフト・ポップに転じて発表したサイケな「Love Is A State Of Mind」、マイケル・マーティン・マーフィが在籍していたルイス&クラーク・エクスペディションの「Blue Revelation」など興味深い作品が並ぶ。日本でいう“ソフト・ロック”と同じようでちょっと違う、アメリカ人の考えるところの“サンシャイン・ポップ”がぎっしり。

 続く第2集の有名どころはコラージュ、再びプレジャー・フェア、ポール・ウィリアムスがいたホリー・マッケレル(このグループ、この手のコンピを買っているとアルバムが正式発売になる前に全曲手に入ってしまうのでは?)など。第1集と重複するアーティストが多いのであまり細かくは触れないが、一番の収穫はサウンド・オブ・サンシャインが71年に放ったヒット「Love Means (You Never Have To Say You're Sorry)(最高39位)」のB面「Linda The Untouchable」。これは典型的な70年代型のバブルガム・ポップで、トニー・マコウレイあたりのファンであれば、探し出して聴いてみる価値のある一曲。

 実は第1集、第2集は既に昨年リリースされており、最近になって届いたのが最新の第3集。名の知れたアーティストはグッと減り、更に深い世界に我々を誘ってくれる。まずはお馴染みモジョ・メンがレーベルを移籍し“モジョ”と改名してから発表した「Candle To Burn」、ソフト・ロック界が誇る美女、ジャン・エリコ嬢のボーカルも好調。近年では「ポカホンタス」や「プリンス・オブ・エジプト」のスコアを担当しているブロードウェイの作曲家スティーヴン・シュワルツが手がけたパイプ・ドリームの「January Girl」は、パートリッジ・ファミリーをメロウにしたような作風で、かなりいい。後に“アサイラム・クワイア”を名乗ることになるレオン・ラッセルやマーク・ベノらによるプロジェクト“ル・サーク”のサイケ・ポップ「Land Of Oz」や、ジム・メッシーナと出逢う前のケニー・ロギンスがボーカルを務めるセカンド・ヘルピングの「Floating Downstream On An Inflatable Rubber Raft」も、マニアなら見逃せない。日本では71年に映画「ゲッティング・ストレート」の主題歌がヒットしたP.K.リミテッドの貴重な70年録音が聴けるのも非常に有り難い(曲もレフト・バンク「Ivy Ivy」系のソフト・サイケで非常にいい)。

 最初に書いた通り、このシリーズはブートなので何処に行けば確実に買える、というのが明言出来ないところが辛い。収録曲リストは僕が作ったので、そちらを参考にネットで探し出してください。ペット・レコードではこのシリーズとは別に新たなコンピレーションのリリースを予定しているようなので、そちらも日々ネット上で目を光らせ、入手することにしたい。

収録曲リスト

(2004/10/2)