「八亀さんの『Editor's Pick』いつも読んでるんですけど、取り上げるものがマニアック過ぎるんで、もうちょっとオールディーズ入門編みたいなCDを紹介してもらえませんか?」と以前breakout後の飲み会で言われたことがある。「Editor's Pick」で紹介するCDは実際に自分で購入したものに限る、と題材を限定しているので、今更「入門編」的なCDは「全曲持ってるよ。」みたいな感じでなかなか手が出せないのだが、今回は珍しくオールディーズ初心者にも自信を持って勧められるCDを購入したので、ここでご紹介したい。
このCDの主人公ゲイリー・ルイスは、コメディ俳優のジェリー・ルイスを父に持つ“二世タレント”。父のコネでリバティ・レコードと契約し、プロデューサーにスナッフ・ギャレット、アレンジャーにレオン・ラッセルと有能なブレーンを得、ソングライターのクレジットにはアル・クーパーの名も確認できるデビューシングル「This Diamond Ring(恋のダイアモンド・リング)」が全米ナンバー1を記録と、とことん幸運に恵まれた彼は1965〜66年にかけて7曲連続のTOP10ヒットを記録し、この時期を代表する人気アーティストとなった。
一応バンド形態でデビューし、正式メンバーもいてツアーを回っていたという彼らだが、レコーディングではウェスト・コーストの代表的なスタジオ・ミュージシャンたちが挙って参加し、この時代の理想的なポップスを具体化している。そんな訳で60年代中期のポップスの入門編としては最適なゲイリー・ルイス、しかも相当な廉価ということでこれはちょっとでもポップスに興味のある音楽ファンであれば、買ってみて損はないだろう。
それにしても20曲入りのCDが1,200円!僕もCDを買うようになって10数年になるけれども、CDの値段て年を追って安くなるような気がしない?もっともこれは普段輸入盤ばかり買ってて、\3,000以上するという邦楽のCDなど購入の検討すらしたことがない、という特殊な消費パターンからくる実感なのかもしれないが、それにしても\1,200は安い。と、ここで考えるのは「東芝だから、もしかして出るのはCCCD?」という疑念。
CCCDを必要以上に目の敵にするつもりはないけれども、買ってみてもかからないかもしれない、かかってもPCでは聴けない、MDにも落とせないとなると、日頃CDを聴く時間のかなりの部分が通勤時間にMDか、会社の残業中にPCで・・なんて聴き方をしている者にとって、これは致命的なこと。大体袖に腕を通せないかもしれない服とか、開けてみたら顔がないかもしれない人形とか、落語の「道具屋」みたいな商売をやっている企業は他にはない訳で、これは「音楽なんか聴けなくても、別に死なないじゃん。」と音楽の送り手自身に言われているような気がして、どうしても「その了見が気にくわねぇ。」という気持ちになってしまう。
輸入盤屋でもヨーロッパのEMI等から出ている結構面白い選曲のコンピレーションが、店頭価格で一枚\1,000くらい、但しCCCDというパターンで置いてあることがある。これもそのパターンなのかな、と発売日まで警戒して予約を控えていたのだが、実際に店頭に並んだものを見たらこれが立派なCD!東芝さんエラいっ!コロッ!!(手のひらを返した音)そんな訳で、何の後ろめたい気持ちもなく自信を持ってお薦めできるゲイリー・ルイス、無駄に長かった前置きは忘れて内容の紹介に移りましょう。
ゲイリー・ルイスの入門用CDとしては1990年にアメリカで発売された「The Legendary Masters Series」が長いこと決定盤とされてきたが、今回の東芝盤はそれに迫る、いやもしかしたらそれを凌ぐ内容。両者を比較して気がついた点を列記してみよう。まずはなんといっても安い(多分\500以上)!これはもう書いたからいいか。あとHOT100ヒット15曲がすべて収録されている(前者からは69年の「Rhythm Of The Rain(米63位)」が漏れている)点も評価したい。意外にこの“ベスト盤のあるべき姿”が守られていないケースが多いので、これは書いておかないと。続いては少々細かい点を。
「Sure Gonna Miss Her(66年9位)」は両者で違うバージョンが収録されている。「Legendary 〜」に収録されている方ははっきりシングル・バージョンと謳われていて、そうなると東芝盤はアルバム・バージョンということになるが、こちらの監修者に言わせると「シングルのバージョンにこだわった結果」こちらを収録することになったのだとか。どういうことなんでしょ?「Legendary 〜」でマスターテープの使用を誤ったのか?それとも当時発売されたシングルで、アメリカと日本では違うバージョンが使用されていたのか・・?詳しい方は是非真相情報をお寄せ下さい。因みに僕はこちらに収録されているバージョン(イントロのトランペットがなく、歌中の「Sure Gonna Miss Her」を3回繰り返すところで♪I'm Sure Gonna Miss Her 〜と歌わない)の方が好きなので、この収録には感謝しているが。
僕がゲイリー・ルイスのレコードを初めて買ったのは1980年代、「恋のダイアモンド・リング」の再発シングルだった。FENで聴いていた「恋の〜」がいいのは当然として、カップリングに収録されていた「My Heart's Symphony(66年13位)」がまた素晴らしい曲で、この曲によって自分の中で彼の評価がグッと上がったのを覚えている。その後前述の「Legendary 〜」を入手してこの曲を楽しみに聴いてみたら、シングルとはミックスがちょっと違う感じになっていてガッカリ、これが“デジタル・リマスタリング”というものなのかと諦めていたのだが、今回のCDを聴いたらかつて聴いたシングルと殆ど同じ音像が聴けてビックリ。これはミックスがいいのか、それとも逆に、使ったマスターテープが古かったからアナログと同じ音が聴けたのかよく判らないけれども、個人的にはほとんど既に持っている曲とダブるにもかかわらず買ってみてよかったな。と思った次第。“ビートルズ以降のアメリカン・ポップス”を理想的な形で作品化したゲイリー・ルイス、あとは初期の4枚のみで止まっているオリジナル・アルバムのCD化を待ち望みたいところだが、その実現はいつになることやら。
なお今回東芝から発売された「プライス・バスターズ1200ミート・ザ・ベスト!(なんというタイトル・・)」シリーズは全部で30枚出ており、他のお薦めを挙げるとすればクラシックス・フォーとラズベリーズあたりか。あわせて購入をお薦め。