八亀's Picks - August 2004

過去の八亀's Picks

8.31 The Leiber & Stoller Story Vol.1
8.15 The Very Best of Gary Lewis & The Playboys
8.02 The Paris Sisters Sing Everything Under The Sun!!!
8.02 The Best Of Paris Sisters

Leiber & Stoller Story Vol.1

The Leiber & Stoller Story Vol.1 - Hard Times:
The Los Angeles Years 1951-56 (Ace)



R&R 50th AnniversaryR&R 50th Anniversary ポップ・ミュージックを学究的にコンパイルしていく作業にかけて、イギリスのエイス・レコードに勝るレーベルはないだろう。このコーナーでも毎月のようにニュー・リリースのCDを紹介しているが、とても追いきれないくらいの勢いで次々と興味深いCDが発売されている。今月紹介するのは初期のR&Rシーンにおける最大の貢献者であるソングライター・コンビ、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの作品集。彼らの数多い作品から80曲を時代順に、3枚のCDに収録していくというシリーズの第一弾で、まさに“R&R生誕50周年”の今年に相応しいリリースといえる。

 リーバー&ストーラー(以下L&S)はともに1933年生まれ。ユダヤ系青年2人は高校時代に出逢ってソングライティングを開始。高校卒業後間もなくモダン・レコードのプロモーターをやっていたレスター・シル(後述)とのコネクションを得、曲の売り込みのきっかけを掴む。彼らの曲を最初に録音したのはモダン・レコードに所属していたR&Bボーカル・グループ、ロビンスで、これも後述するが彼らとの出逢いはL&Sに幾つものチャンスを呼び込むことになる。1952年には彼らにとって最初のR&BTOP10ヒット、チャールズ・ブラウンの「Hard Times(このCDのタイトルとなっている)」が生まれ、西海岸のR&Bシーンで売れっ子ソングライターとなった彼らは来るR&R時代のスタンダードとなり得る名曲を次々と生み出し、中でも有名なのがビッグ・ママ・ソーントンの「Hound Dog」と60年代に入って「Kansas City」のタイトルで大ヒットする「K.C. Loving」。ここでは「Hound Dog」はフレディ・ベル&ザ・ベル・ボーイズによるカバー(後にエルヴィスがこの曲を録音する際に、参考にしたといわれるアップ・テンポなバージョン)と「K.C. Loving」のリトル・ウィリー・リトルフィールドの貴重なオリジナル・バージョンが収められている。

The Spark Records Story ヒットメーカーとして頭角を表しつつあったL&Sは、続いてレスター・シルの支援によりレコード・レーベル「スパーク」を設立。その看板アーティストは所縁の深いロビンスで、彼らの「Smokey Joe's Cafe」はR&Bとポップのクロスオーバーヒットを記録(55年R&B10位/POP79位)し、他にも歌のサビの部分「There's A Riot Goin' On」が後にスライ&ザ・ファミリー・ストーンに採用されたことから歴史的重要曲と見なされるようになった「Riot In Cell Block #9」などを相次いでリリース。ここら辺は“メジャー作品”ということなのかオリジナル・バージョンが収められていないのが厳しいところだが、それは別に出ている「The Spark Records Story」で補完していただくということで。

 「Smokey Joe's Cafe」のヒットはニューヨークのアトランティック・レコードの関心を惹き、L&Sは制作スタッフとしてニューヨークに招待されることに。これを承諾した2人は「スパーク」を1年で閉鎖し、ロビンスのうち彼らと行動をともにすることとなった2人に、新メンバーを加えて名前を「コースターズ(グループ名に西海岸出身の名残り)」と改めた4人組を伴ってニューヨーク入り。折しもR&Rブームが爆発し始めた時期で、L&Sは次々と名作をものにしていくことに。。

 と、ここまでが「Vol.1」の内容。その後R&Rの古典的名作の量産と、西海岸に残ったレスター・シルが見つけた有望な若者「フィル・スペクター」が2人の見習いとしてニューヨークに送り込まれ・・というポップス・ファンにとって胸躍るストーリーは「Vol.2」以降のお楽しみということで。意識的にヒット・バージョンや有名アーティストの録音を避けて編集しているので、初心者にはかなり難しい内容になっているが、初期のR&Rの流れをその最重要ソングライターの作品でたどっていくという企画意図は大いにかいたい。但し、この“お勉強”の前提となる「L&S名曲集」的なコンピレーションが現在存在しないのは厳しい。それこそライノがここら辺をしっかりフォローしておいてくれないと。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/8/31)

Gary Lewis & The Playboys

The Very Best of Gary Lewis & The Playboys
(Toshiba EMI)



 「八亀さんの『Editor's Pick』いつも読んでるんですけど、取り上げるものがマニアック過ぎるんで、もうちょっとオールディーズ入門編みたいなCDを紹介してもらえませんか?」と以前breakout後の飲み会で言われたことがある。「Editor's Pick」で紹介するCDは実際に自分で購入したものに限る、と題材を限定しているので、今更「入門編」的なCDは「全曲持ってるよ。」みたいな感じでなかなか手が出せないのだが、今回は珍しくオールディーズ初心者にも自信を持って勧められるCDを購入したので、ここでご紹介したい。

 このCDの主人公ゲイリー・ルイスは、コメディ俳優のジェリー・ルイスを父に持つ“二世タレント”。父のコネでリバティ・レコードと契約し、プロデューサーにスナッフ・ギャレット、アレンジャーにレオン・ラッセルと有能なブレーンを得、ソングライターのクレジットにはアル・クーパーの名も確認できるデビューシングル「This Diamond Ring(恋のダイアモンド・リング)」が全米ナンバー1を記録と、とことん幸運に恵まれた彼は1965〜66年にかけて7曲連続のTOP10ヒットを記録し、この時期を代表する人気アーティストとなった。

 一応バンド形態でデビューし、正式メンバーもいてツアーを回っていたという彼らだが、レコーディングではウェスト・コーストの代表的なスタジオ・ミュージシャンたちが挙って参加し、この時代の理想的なポップスを具体化している。そんな訳で60年代中期のポップスの入門編としては最適なゲイリー・ルイス、しかも相当な廉価ということでこれはちょっとでもポップスに興味のある音楽ファンであれば、買ってみて損はないだろう。

 それにしても20曲入りのCDが1,200円!僕もCDを買うようになって10数年になるけれども、CDの値段て年を追って安くなるような気がしない?もっともこれは普段輸入盤ばかり買ってて、\3,000以上するという邦楽のCDなど購入の検討すらしたことがない、という特殊な消費パターンからくる実感なのかもしれないが、それにしても\1,200は安い。と、ここで考えるのは「東芝だから、もしかして出るのはCCCD?」という疑念。

 CCCDを必要以上に目の敵にするつもりはないけれども、買ってみてもかからないかもしれない、かかってもPCでは聴けない、MDにも落とせないとなると、日頃CDを聴く時間のかなりの部分が通勤時間にMDか、会社の残業中にPCで・・なんて聴き方をしている者にとって、これは致命的なこと。大体袖に腕を通せないかもしれない服とか、開けてみたら顔がないかもしれない人形とか、落語の「道具屋」みたいな商売をやっている企業は他にはない訳で、これは「音楽なんか聴けなくても、別に死なないじゃん。」と音楽の送り手自身に言われているような気がして、どうしても「その了見が気にくわねぇ。」という気持ちになってしまう。

 輸入盤屋でもヨーロッパのEMI等から出ている結構面白い選曲のコンピレーションが、店頭価格で一枚\1,000くらい、但しCCCDというパターンで置いてあることがある。これもそのパターンなのかな、と発売日まで警戒して予約を控えていたのだが、実際に店頭に並んだものを見たらこれが立派なCD!東芝さんエラいっ!コロッ!!(手のひらを返した音)そんな訳で、何の後ろめたい気持ちもなく自信を持ってお薦めできるゲイリー・ルイス、無駄に長かった前置きは忘れて内容の紹介に移りましょう。

 ゲイリー・ルイスの入門用CDとしては1990年にアメリカで発売された「The Legendary Masters Series」が長いこと決定盤とされてきたが、今回の東芝盤はそれに迫る、いやもしかしたらそれを凌ぐ内容。両者を比較して気がついた点を列記してみよう。まずはなんといっても安い(多分\500以上)!これはもう書いたからいいか。あとHOT100ヒット15曲がすべて収録されている(前者からは69年の「Rhythm Of The Rain(米63位)」が漏れている)点も評価したい。意外にこの“ベスト盤のあるべき姿”が守られていないケースが多いので、これは書いておかないと。続いては少々細かい点を。

 「Sure Gonna Miss Her(66年9位)」は両者で違うバージョンが収録されている。「Legendary 〜」に収録されている方ははっきりシングル・バージョンと謳われていて、そうなると東芝盤はアルバム・バージョンということになるが、こちらの監修者に言わせると「シングルのバージョンにこだわった結果」こちらを収録することになったのだとか。どういうことなんでしょ?「Legendary 〜」でマスターテープの使用を誤ったのか?それとも当時発売されたシングルで、アメリカと日本では違うバージョンが使用されていたのか・・?詳しい方は是非真相情報をお寄せ下さい。因みに僕はこちらに収録されているバージョン(イントロのトランペットがなく、歌中の「Sure Gonna Miss Her」を3回繰り返すところで♪I'm Sure Gonna Miss Her 〜と歌わない)の方が好きなので、この収録には感謝しているが。

This Diamond Ring/A Session With Everybody Loves A Clown/She's Just My Style 

 僕がゲイリー・ルイスのレコードを初めて買ったのは1980年代、「恋のダイアモンド・リング」の再発シングルだった。FENで聴いていた「恋の〜」がいいのは当然として、カップリングに収録されていた「My Heart's Symphony(66年13位)」がまた素晴らしい曲で、この曲によって自分の中で彼の評価がグッと上がったのを覚えている。その後前述の「Legendary 〜」を入手してこの曲を楽しみに聴いてみたら、シングルとはミックスがちょっと違う感じになっていてガッカリ、これが“デジタル・リマスタリング”というものなのかと諦めていたのだが、今回のCDを聴いたらかつて聴いたシングルと殆ど同じ音像が聴けてビックリ。これはミックスがいいのか、それとも逆に、使ったマスターテープが古かったからアナログと同じ音が聴けたのかよく判らないけれども、個人的にはほとんど既に持っている曲とダブるにもかかわらず買ってみてよかったな。と思った次第。“ビートルズ以降のアメリカン・ポップス”を理想的な形で作品化したゲイリー・ルイス、あとは初期の4枚のみで止まっているオリジナル・アルバムのCD化を待ち望みたいところだが、その実現はいつになることやら。

 なお今回東芝から発売された「プライス・バスターズ1200ミート・ザ・ベスト!(なんというタイトル・・)」シリーズは全部で30枚出ており、他のお薦めを挙げるとすればクラシックス・フォーラズベリーズあたりか。あわせて購入をお薦め。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/8/15)

The Paris Sisters

The Paris Sisters


The Paris Sisters Sing Everything Under The Sun!!! (Eric)
The Best of The Paris Sisters (Curb)



 60年代のポップ・シーンを彩ったガールグループはそれこそ星の数ほどあり、芸風もまちまち、ヒットの数もまちまち。ヒット曲数はそれほど多くないが、オールディーズ・ファンだったらまず嫌いな人はいないだろうというグループもいくつかあって、その代表的な存在がプリシラ、シェレルとアルベスの3人姉妹パリス・シスターズ。

The Paris Sisters 彼女たちがオールディーズ・ファンにとって特別な存在なのは、1960年代前半に残されたヒット曲の殆どをフィル・スペクターが手がけたことが大きな理由となっている(1961年のヒット「I Love How You Love Me(米5位)」は60年代末に日本のガールグループ、モコ・ビーバー・オリーブによって「わすれたいのに」のタイトルでカバーされ、そちらの方でこの曲を覚えている方もいるかも知れない)。そんなこともあり“ゴールデン・ポップス”の時代に儚げに花咲いて消えていったという印象の強い彼女たちだが、キャリアは意外に古くデビューは1954年。当初はマクガイア・シスターズ風のイメージで、ビングの息子ゲイリー・クロスビーとの共演盤もあるバリバリの“ポピュラー派”だったが、時代がすっかりR&Rに変わった60年代に入ってスペクターと出逢いイメージチェンジ、現在我々が知る“パリス・シスターズ”として1961〜62年にかけて4曲のHOT100ヒットを放った。

 スペクターによる霧がかかったような“プレ・スペクター・サウンド”、プリシラのウィスパリング・ボイス(今回CDのライナーで初めて知ったがこの“囁き”はスペクターのリクエストによるもので、それまで彼女はそんな歌い方をしたことはなかったという)、そして本名である“パリス”からイメージさせられるどことなくヨーロピアンな雰囲気。完璧なプロダクションで“究極のガールグループ”に祀り上げられた彼女たちはこの時期在籍したグレッグマーク・レコードにアルバム1枚分以上の録音を残したそうだが、スペクターとレーベルの意見が合わずアルバム・リリースの計画は頓挫。そうこうしているうちにスペクターは自身のレーベル「フィレス」を設立して彼女たちから離れてしまい、パリス・シスターズは拠り所を失ってしまう。。

 通常であればこの話はこれで「非運のガールグループ物語」のおしまい、ということになるのだが“究極のガールグループ”には当時相当数の業界内ファンが存在したようで、彼らの手引きで以降彼女たちはほぼ1年おきに様々なレーベルを渡り歩き、売れないシングルを各社から発表し続けるという数奇な運命をたどることとなる。今回紹介する「The Paris Sisters Sing Everything Under The Sun!!!」は、そんな“業界の渡り鳥”パリス三姉妹が1966年にリプリーズから発表したアルバム。プロデュースはスペクターのアレンジャーとして活躍したジャック・ニッチェと、50年代のロカビリーから90年代のガース・ブルックスまで長期間に亘ってヒット作を生み続けた業界のベテラン、ジミー・ボウエン。ニッチェお得意の“ウォール・オブ・サウンド”をバックに、彼女たちは大いに歌う。

 スペクター時代の彼女たちしか知らない者にとって、このアルバムはちょっとショッキングな内容かも知れない。その“お騒がせ”の元がリード・ボーカルのプリシラで、まずは彼女のソングライターとしてのセンス、これが意外なくらいいい。アルバム全10曲中4曲を占める彼女の作品はどれもなかなかの水準で、他のポップ職人たちの曲に決してひけをとらない出来。特に冒頭の「My Good Friend」はドリーミーなアメリカン・ポップスの王道的作品で、この曲を耳にした途端オールディーズ・ファンはこのアルバムを手にして正解であったことを悟るはず。他には内省的な作風の「I'm Me」もなかなか捨て難い。そしてもう一点、プリシラがこれほど力強い声で歌うシンガーであることも「忘れたいのに」しか知らない者には衝撃かも。この前年にライチャス・ブラザーズがスペクターのもとで歌った「See That Girl」のカバー「See That Boy」はシャーリー・バッシーあたりすら連想させるような熱唱だし、バカラック・ナンバー「Long After Tonight Is All Over」やゴフィン=キングの「Some Of Your Lovin'」はダスティ・スプリングフィールドにも劣らぬ迫力。勿論ウィスパリング・ボイスが楽しめる曲もあって、往年のガールポップ「シンシアリー」や「涙のバースデイ・パーティ」のカバーはオールディーズ好きには堪らないだろう。決してこの時代一級品のアルバムではないが、ポップスを愛する者にとって感謝すべき再発である。

Golden Hits of The Paris Sisters (1965) でもう一枚、このCDの再発から何日もおかずにカーブ・レコードからリリースされたのが「The Best of The Paris Sisters」。こちらは1965年にリリースされた「Golden Hits of The Paris Sisters」に1曲が追加されたものだが、タイトルに反してベスト盤ではない。確かに「わすれたいのに」他60年代前半のヒットが何曲か収録されているが、すべて再録。それにプリシラのオリジナルが4曲、エルヴィスの「好きにならずにいられない」とビートルズの「イエスタデイ」のカバー等という内容の、彼女たちにとって事実上のファースト・アルバム。よくこんなものをCDで出したよね。当時このアルバムがリリースされたのはプロデューサーを務めたマイク・カーブが経営する「サイドウォーク」というレーベルからで、「〜 Everything Under The Sun!!!」のCDリリースを聞きつけたカーブが「ついでにこれも出しちゃうか。」ってな感じで現在経営するカーブ・レコードから滅茶苦茶廉価(リンク先の値段を見て驚くなかれ!)で発売してしまったということなのか。

 アルバムには取り立てて聴くべき作品がある訳ではなく、往年のヒット曲のリメイクはまずまずの出来、でもプリシラ作の曲にはまだ粗っぽさが目立つし、カバーもいま一つか・・。ベスト・トラックを挙げるとしたら、ボーナスで収録の同年マーキュリーからリリースされたスペクター調のシングル曲「Always Waitin'(作・プロデュースはマイク・カーブ)」ということになるが、オールディーズ好きだったら彼女たちのCDが出たとなれば、どんな内容であれ買うのが義務でしょう(??)。彼女たちはさらにもう一枚「The Paris Sisters Sing From The Glass House 」というアルバムも66年に発表しているそうで、こちらもCD化を期待したいが、何よりも実り多いグレッグマ−ク時代のコンプリート録音集、このCD化が昨年惜しくも亡くなってしまったプリシラの追悼に相応しいだろう。誰が権利を持っているか知らないが、是非とも実現を望みたい。

内容等詳細(発売元のサイト)

(2004/8/2)