八亀's Picks - June 2004

過去の八亀's Picks

6.27 Sheila And Other Songs/Everybody Likes - Tommy Roe
6.27 BBC Sessions - The Searchers
6.20 Teen Time - The Young Years of Rock & Roll, Vol.1 & 2
6.12 Golden Age Of American Rock'N'Roll - Special Doo Wop Edition
6.06 Standing In The Shadows Of Motown: Deluxe Edition
6.06 California - Wilson Phillips
6.06 Romance Is On The Rise - Genevieve Waite


Everybody Likes Tommy Roe

Sheila And Other Songs/Everybody Likes - Tommy Roe
(BGO)



 60年代に数多くのヒットを放ち、現在も多くの音楽ファンに認知されているにも関わらず、どういう訳かオリジナルアルバムのCD化が進んでいないアーティストの一人にトミー・ロウがいる。初期のバディ・ホリースタイルのR&Rから60年代半ば以降のソフト・ロック〜バブルガム調の作品まで興味深いものは多く、特に後期の作品などは「ソフト・ロック大国」日本でとっくにCD化されてもおかしくないくらい話題になっていて(お陰でいたずらに中古屋を儲けさせることになってしまっている)聴いてみたいけど聴けない状態が何年か続いていた。

 そんなトミー・ロウのアルバム復刻シリーズをスタートさせたのがイギリスのBGO(Beat Goes On)レーベル。ここは50年代〜70年代のアルバム復刻にかけて定評のあるところで、2イン1(CD1枚にアルバム2枚を収録する)形式でこれまでに数百種類のCDをリリースしている。ついこの前は60年代を代表するポップヒーロー、ボビー・ヴィーのアルバム20枚分の音源を10枚のCDでリリースという“偉業”を成し遂げたばかりで、同社の次のターゲットにトミー・ロウが選ばれたのは嬉しい限り。もう出るのか出ないのかヤキモキしないで只リリースの知らせを待てばいいということなのだから。

 トミー・ロウは1942年アトランタ生まれ。1960年に「Sheila」をマイナー・レーベルからリリースし、この録音を手がけたフェルトン・ジャーヴィスの手引きで大手のABCパラマウントと契約。62年に入って再録音された「Sheila」は全米ナンバー1を記録し、この成功に伴い発売されたのが彼のファーストアルバム「Sheila And Other Songs」。「Sheila」は“バディ・ホリーの「Peggy Sue」を下敷きに作られた”と評されるのが常套句となっているが、オリジナルの「Sheila」はもっとラフなR&Rで(バディ・ホリーの作品でいえば「Maybe Baby」あたりがより近い)、ABCパラマウントのバージョンで聴けるタムタム・ドラムは、彼がナッシュビルに乗り込んで吹込んだ際につけ加えられたもの。このセッションはドラムにバディ・ハーマン、ギターにウェイン・モス、コーラスがジョーダネアーズと完全に“エルヴィス組”によるもので、一級のセッション・マンたちのバックアップによりあの名曲が生まれたことを改めて認識させられる。アルバム残りの曲の大半もバディ・ホリースタイルのR&Rで、ホリーのカバーも「Heart Beat」「Look At Me」の2曲を収録。ジェリー・ゴフィンとキャロル・キング作のティーン・ポップ「Little Hollywood Girl」と、唐突に登場するファルコンズのカバー「I Found Love」が異色か。

 続く「Everybody Likes Tommy Roe(これはイギリスでリリースされた際のタイトルで、本国では曲目違いで「Something For Everybody」として発売された)」は翌年のヒット「Everybody(米3位/英9位)」をフィーチャーしたもの。本国で発売された盤にはシンギン・ナンの「ドミニク(!)」やロネッツの「ビー・マイ・ベイビー」のカバーなども収録されていたそうで、これも機会があったら聴いてみたいものだが(ボーナス・トラックで入れてくれればよかったのに!)、イギリス盤はよりバディ・ホリースタイルにこだわったセレクションになっており、ある意味良心的。「Everybody」では彼がアーティストとしてより逞しく成長している様子が窺えるし、もはやお約束のバディ・ホリーのカバー「That'll Be The Day」も好調。彼自身が作曲したナンバーもなかなか佳曲が揃っており、アルバムが発売された1964年という時期を考えるとやや時代遅れかな?という気もしなくはないが、オールディーズ・ファンには好感度満点な一枚。

 狭義のオールディーズ・ファン、そしてバディ・ホリーをはじめとする“ピュアロカ”ファンには是非とも薦めたいCD。なお彼は「Everybody 〜」をリリースした64年に兵役に就いており、しばらくのブランクの後「Sweet Pea」のナンバー1ヒットで華々しくヒットチャートに返り咲くのが66年。ということはBGOから出る次のトミー・ローのCDは、早くもカート・ベッチャーがプロデュースした“ソフト・ロック期”に突入!ということで、これは今から発売が楽しみ。次のレビューが書ける時が一日も早く来ることを祈りたい。

曲目等詳細(発売元のサイト)

(2004/6/27)

BBC Sessions - The Searchers

BBC Sessions - The Searchers
(Castle)



 以前も書いたことがあったけれども、マージービート系のバンドで僕が一番好きなのがサーチャーズ。突出した才能を持つメンバーはいなかったけれども、残された作品のどれもがセンスがよくて、何度聴いても飽きない。そんな彼らが60年代に残したBBCラジオのライブ録音が2枚組でCD化、これは買わない訳にはいかない。

 ここに収められているのは彼らが「サタデイ・クラブ」という番組のために65年から67年にかけて録音したもので、インタビューのみのトラックを除くと全31曲の演奏を聴くことができる。彼らがイギリスのパイ・レコードからデビューし、ヒットチャートで最も華々しく活躍したのは63〜64年なので、残念ながらその時期のヒット曲は「When You Walk In The Room」くらいしか入っていないが、僕はそれ以降の“バブルガム・フォークロック”といった趣のポップな作品群も大好きなので、それら後期、いや彼らは断続的ながら80年代までメジャー・レーベルで録音を続けたバンドなのでここら辺を後期と言ってはいけない、いうなれば“パイ後期(『太閤記』みたいだな)”の作品がたっぷり聴けるのは非常に嬉しい。

 まずヒット曲を列挙してみよう。前述の「When You Walk In The Room(64年英3位/米35位)」に加え、「What Have They Done To The Rain(英13位/米29位)」「Goodbye My Love(65年英4位/米52位)」「Bumble Bee(米21位)」「He's Got No Love(英12位/米79位)」「When I Get Home(英35位)」「Take Me For What I'm Worth(英20位/米76位)」「Take It Or Leave It(66年英31位)」「Have You Ever Loved Somebody(英48位/米94位)」、書いてみると結構入ってるな。これらをレコードのバージョンと殆ど変わりなく披露している。彼らが如何に優れたライヴ・バンドであったかということの証明でもあるし、一方で若干面白味に欠けると言えなくもないし。。

 で、その他アルバム収録曲に混じって“正式録音盤”では聴けないナンバーも幾つか。まずはデビュー前のハンブルグ時代に頻繁に演奏していたというチャック・ベリーの「Sweet Little Sixteen」、これは可もなく不可もなく。ボブ・ディランの「Blowin' In The Wind」は、ピーター、ポール&マリーのイギリス公演に感銘を受け、カバーを思い立ったというコーラスをフィーチャーしたバージョン。ミッチ・ライダーのバージョンを参考にした「C C Rider」と「Jenny Take A Ride」のメドレー(以前スウェーデンのラジオ録音がCD化された時にもこのようにクレジットされていたが「C C Rider」と「Jenny Jenny」のメドレーのことを本当は「Jenny Take A Ride!」と呼ぶ。言い替えれば“親子丼の卵とじ”みたいな表現になっている訳で、60年代の音楽のCDを制作している人間が、そんなことも知らないとは思えないのだが)は若干迫力不足。メンバーたちのペンによる「I'll Be Loving You」はスタジオ録音が残されなかった作品で、マニアは見逃せない貴重曲。CDの最後に収録されている「I Don't Believe」は彼らがアメリカで出演したTVショーで共演した“ギロティーンズ”というバンドがオリジナルだそうで、これまた珍しい。

 結局彼らはサイケデリックの時代に突入した67年になっても、相変わらず昔ながらのスタイルで演奏を続けており、これがヒットチャートから見放される原因となったのだが、マージービートの時代から一貫して聴き続けられるクオリティを保った録音が残されているというのは、ファンにとっては有り難い限り、さすがは“飽きのこないバンド”。サーチャーズを人並み以上に愛する者でないと手の伸び辛いCDかも知れないが、内容はとてもよい。個人的には大好きな67年頃のシングル曲がライブバージョンで聴けるだけでも満足。こういうCDが時折出てくれるのは非常に有り難い。

曲目等詳細(発売元のサイト)

(2004/6/27)

Teen Time Vol.1

Teen Time Vol.2


Teen Time - The Young Years of Rock & Roll
Vol.1: Love Me Forever/Vol.2: I Got Rhythm
(Eric)



 米エリック・レコードのマニアックなオールディーズ復刻シリーズを前回紹介したのは、昨年5月のこと。これまでは“Hard To Find 〜”と、なかなかCDで聴けない音源の発掘をはっきりとシリーズの目標にしていたのだが、今回届いた新シリーズは「Teen Time - The Young Years of Rock & Roll」なるはっきりしないタイトル。行きがかり上紹介しておくことにしよう。

The Chantels 今回のシリーズは明確なテーマはなし。1957年〜67年の大ヒット曲やそれほどヒットしなかった曲を20曲ずつ集めたもので、曲によっては珍しいステレオ・バージョンを収録。Vol.1とVol.2はかつて“再発の王者”と呼ばれたライノ・レコードが権利を有しているもの及び現在ライノが管理しているワーナー・ブラザーズ系の音源から選曲がなされている。他社に音源をリースしてオールディーズCDを出させるなんて、ライノはいつからそんなにエラくなったんだ!?内容は後で触れるとして、このCDでまず目を惹くのはジュークボックスに少年少女が寄りかかっているイラストのジャケット。このデザインはR&B系ガール・グループ、シャンテルズが1959年に発表したアルバム「We Are the Chantels」のセカンド・プレスに使用されたものがオリジナルだが、日本のオールディーズファンにとってはそれ以上の意味がある。

昭和30年代後半に発売されたビクター・ワールド・グループのシングルは、みんなこんな感じでした。 昭和30年代後半、日本のビクター・レコードが様々な英米のマイナー・レーベルとライセンス契約して発売した「ビクター・ワールド・グループ」のシングル盤、そのジャケットにはこのデザインが転用されており、かなりの種類が発売されたので、当時のポップスをリアルタイムで聴いていた方々や、現在オールディーズの日本盤シングルを血眼になって捜し回っている人々には非常に馴染み深いものとなっている。リアルタイマーでない僕もこのデザインに敬意を表して、当ホームページ内にいずれ開設する予定である(現在延び延びとなっている・・)「Flashback」コーナーの壁紙を作ってみたのだが(現在バックナンバーのページで使用中)、これはベンE.キングの「スタンド・バイ・ミー」を加工したもの、というのはちょっとした“meantimeトリビアの種”だったりする。。

 いい加減CDの内容に移ろう。Vol.1の方で米国内初CD化が謳われているのは以下の5曲。

Love Me Forever - The Four Esquires ('57 #25)
When The Boys Talk About The Girls - Valerie Carr ('58 #19)
First Anniversary - Cathy Carr ('59 #42)
Stay With Me (A Little While Longer) - Ed Townsend ('60 #101)
Poor Little Puppet - Cathy Carrol ('62 #91)

 フォー・エスクワイアーズは当時ありがちな男性ボーカル・グループであまり面白味はなし。ヴァレリー・カーの「When The Boys 〜」は50年代随一のヒットメーカー、ボブ・メリルが作った思わせぶりなナンバー。キャシー・カーの「First Anniversary」はヒューゴ&ルイジの作品で、可愛らしいティーン・ポップ。しかしこの2曲、他のCDで聴いたことがあるぞ。1958年の「For Your Love(最高13位)」で知られるエド・タウンゼントは、ここまでのマイナーヒットは誰も気にしないでしょう、といった感じ。彼はその後マーヴィン・ゲイの制作パートナーとして「Let's Get It On」などの名作をものにすることとなる。このCD一番の収穫といえるキャシー・キャロルの「Poor Little Puppet」はハワード・グリーンフィールドとジャック・ケラーという豪華な顔合わせの作曲。この曲はジャン&ディーンが「A Sunday Kind Of Love(62年95位)」のB面曲として取り上げているが、実はそちらの方がオリジナル録音である、ということを今回初めて知った。続くVol.2の初CD化は淋しく以下の2曲のみ

Don't Mention My Name - The Shepherd Sisters ('63 #94)
Que Sera, Sera (Whatever Will Be, Will Be) - The High Keys ('63 #47)

 シェファード・シスターズの方はフォー・シーズンズのボブ・ゴーディオとボブ・クルーの作品で、お馴染みのラテン・リズムとノヴェルティぎりぎりの“仕掛け”が楽しめる作品、ハイ・キーズはあの有名曲のこれまたラテン調リメイク。どちらもマニア向け。

 単体のオールディーズCDとしては、あまりお薦め出来ないかな・・という感じだが、日頃エリック・レコードに恩義を感じているオールディーズ・ファンは、入手しておいて罰は当たらないだろう(??)。なおこのシリーズ、早くも第3弾の発売が予告されており、そちらは大分マシな内容になるようなので、到着した際はもうちょっと張り切ったレビューを書きたいと思っている(「Vol.3」のレビューはこちら)。

曲目等詳細(発売元のサイト)
Teen Time - The Young Years of Rock & Roll, Vol.1: Love Me Forever
Teen Time - The Young Years of Rock & Roll, Vol.2: I Got Rhythm

(2004/6/20)

Special Doo Wop Edition

Golden Age Of American Rock'N'Roll - Special Doo Wop Edition
(Ace)



 エイス・レコードの看板シリーズ「Golden Age Of American R&R」 は、確認してみたら最初のボリュームが出たのが1991年という長寿企画。年に1枚くらいのペースで新しいCDが出続けていて、一昨年の第10集が最後ということでファンを悲しませたが、その後はジャンル別の“番外編”「Special Edition」シリーズが後を継ぐ形でこれまでに3枚出されている。

 エルヴィスの登場からビートルズがアメリカのヒットチャートを制圧するまでの1955年〜1964年、狭義の“オールディーズ”の時代に生まれたヒット曲を毎回30曲、しかも単独のベスト盤が出ているようなメジャー・アーティストは出来るだけ避け、高音質で収録するというこのシリーズを僕は“世界で最も優れたオールディーズ・コンピ(ライノの「Have A Nice Day」シリーズが最も優れた70年代コンピであると同じ意味で)”だと考えている。今回の番外編第3集は「ドゥ・ワップ特集」で、これまた同シリーズならではのこだわりが見られる。

 過去の「Golden Age 〜」シリーズにもドゥ・ワップ系のヒット曲は数多く収録されていたが、収録曲のジャンルが片寄り過ぎないように配慮されたり、これまで収録の許可がおりなかったり・・と様々な理由でシリーズに登場しなかった30曲が集められたこのCD、ドゥ・ワップ系のコンピレーションはCDの世界でも最も深く掘り尽くされたジャンルの一つなので特色を出すのが難しい中、あくまでもHOT100ヒットからの選曲という同シリーズならではのポリシーに基づいて健闘している。

 そう「Golden Age 〜」シリーズはごくわずかな例外を除いて、収録曲は必ずHOT100ヒットから選曲されているのだ。同シリーズをすべて揃えれば現時点でマイナー・アーティストを中心としたオールディーズ・ヒットが400曲近くも聴ける訳で、これは本当に重宝である。このCDではまず“何処に出しても恥ずかしくない”大ヒット(括弧内は発表年と最高位)

Blue Moon - The Marcels ('61 #1)
The Great Pretender - The Platters ('55 #1)
Little Darlin' - The Diamonds ('57 #2)
Why Do Fools Fall In Love - The Teenagers feat. Frankie Lymon ('56 #6)

 といった曲をはじめとして、ドゥ・ワップのスタンダードが続々。更に(ここからがこのCDのセールス・ポイント)そのアーティストの大ヒットはよく聴くけど、それ以外の曲は聴いたことがないといったタイプのものも狙いすましたように収録

Runaround - The Regents ('61 #28)
Try The Impossible - Lee Andrews & The Hearts ('58 #33)
You Cheated - The Slades ('58 #42)

 リージェンツの「Barabara Ann」やリー・アンドリュースとハーツの「Teardrops」は、ちょっとオールディーズに詳しい人なら誰でも聴いたことがあるだろうし、「You Cheated」はシールズのカバー・バージョンがより有名。そういったアーティストやレーベル別のコンピレーションからは漏れがちなヒットをまとめて聴けるのが嬉しい。そして最後に、チャートファンにはシビレる超マイナーヒットの数々

The Bells Are Ringing - The Van Dykes ('61 #99)
If - The Paragons ('61 #82)
What Will I Tell My Heart? - The Harptones ('61 #96)
Deserie - The Charts ('57 #88)
The Reason - The 5 Chanels ('58 #98)

 ここら辺が堪らない。勿論全体を通して内容は優れたものばかり、気軽に楽しめもするし、細かく調べてみると結構シビレる曲が続々という、なかなかよく練られた一枚である。

Special Country Edition Special Novelty Edition 

 先ほどから何度も触れているように「Golden Age 〜」の番外編「Special Edition」シリーズは過去にあと2枚出ていて、それぞれ「カントリー編」「ノヴェルティ編」となっている。「カントリー編」の方は、カントリーファンだったら誰でも知ってる、でもポップスファンは意外に縁遠いカントリー・クラシックを30曲、そのうち実に20曲までがC&Wナンバー1という“常識を試される”一枚で、入門用としてはこれ以上ないCD。貴方がもしアメリカに行って、アメリカ人だらけの中カラオケで一曲歌わなければならない状況に陥った時、この中の一曲でも見事に歌い切ることができたら、恐らく貴方はそのお店のヒーローとして握手攻めに遭うこと請け合い。一方「ノヴェルティ編」の方は有名曲を中心にきわものヒットが30曲。貴方がもしアメリカに行って、アメリカ人だらけ(略)そんな時は、ここら辺の曲は避けた方がよいだろうと、そんなセレクション。「オマエはなんでそんな曲を歌うんだ?」と冷ややかな目で見られること請け合い。

曲目等詳細(発売元のサイト)

(2004/6/12)

Standing In The Shadows Of Motown

Standing In The Shadows Of Motown: Deluxe Edition
(Hip-O/Motown)



 皆さん、ご覧になりました?映画「永遠のモータウン」。黄金期のモータウン・サウンドを支えたミュージシャン集団「ファンク・ブラザーズ」の生存メンバー達を中心に据え、かつての大ヒットナンバーの再演ライブを縦糸に、それら大ヒットが生まれたエピソードの、インタビューや再現映像を交えての紹介を横糸に編み上げられた「モータウン・サウンドの裏側」ドキュメント。上映されている渋谷の映画館に平日の最終回観に行ってきたが、スクリーンが非常に観づらい劇場であるにもかかわらずほぼ満席で、40〜50代の男性の比率がこんなに高い映画も珍しいのではないか?という感じだった(同じフロアの隣のホールで上映されていたのが今話題の“ヨンさま”映画で、その客層の違いもまた面白く・・)。映画の内容は既に方々で伝えられているとおり秀逸で、僕が観た日は終映時に会場で拍手が起こったほど。渋谷での上映は少なくとも今月中はレイト・ショーで続く様なので、音楽ファンは是非ともあの感心・感動を味わっていただきたいと思う(地方上映の予定もあり)。

Standing In The Shadows Of Motown 音楽にそれほど関心のない方(がこのページを見ているはずはないと思うが)に「永遠のモータウン」がどんな映画なのかを簡単に説明すると

A:「大阪城を造ったのは誰でしょう?」
B:「豊臣秀吉?」
A:「ブー。正解は、大工さん。」

 という感じだろうか。“総帥”ベリー・ゴーディを頂点に、数多くの才能溢れるプロデューサーやソングライター、アーティストが寄ってたかってこさえた立派な「城郭」の数々。それらを形にするには当然腕利きの職人が必要だったわけで、後に「ファンク・ブラザーズ」と呼ばれる彼らがどの様に集められ、技術を磨き、数々の名曲を現実のものとしていったか?の謎を、聞き手である現役ミュージシャンたちも興味津々な様子で解き明かそうとしている。例えば、初期のモータウンのヒットで決まりごとのように登場するドラマーのベニー・ベンジャミンによる♪ドゥワンタラタタン・・というイントロ前のドラムのフレーズ、あれをどうやって叩くか?なんてレコードだけで聴いている者にとって長年の疑問の数々を、カメラの前で再現してくれる。僕など映画館で「へぇーっ!」と、何度口に出しかけたことか。

 黄金のモータウン・サウンドが完成し、ヒットチャートを独占した後、70年代に入ってモータウンは如何に呆気なく彼らを切り捨て、デトロイトからロサンゼルスに去って行ったのか?という話が物語の最後にあるので、この映画は日本版タイトルの様な「モータウン万歳!」な映画ではない。60年代〜70年代の10年間、レコードやラジオを通じて常にアメリカの“何処にでもいた”彼らがデトロイトに取り残され、30年経った現在になってまるで「ブエナ・ビスタ・ソーシャル・クラブ」のように再発見されるという現象は、モータウンが如何に非情な会社であったかということの現われでもある。そんなこともあってかこの映画に現在もモータウンにかかわりを持つ人間の登場はなし(過去の映像のみ)、ライブに登場する現役ミュージシャンもすべて非モータウン系と、結構複雑な状況で制作された様子が伺える。

The Funk Brothers と、映画の話が長くなってしまったが、ここから話題はサントラへ。再演ライブを主に収録したサントラCDは一昨年に発売され、グラミーにもノミネートされたが、映画の評判が各国で高まり、ファンク・ブラザーズのリユニオン・ツアーも盛況となるとレコード会社も黙っていられなくなったようで、ファンク・ブラザーズ単独の演奏を集めたCDなんてのも発売されたし、続いてはオリジナルのサントラに大量のボーナス・トラックが追加された2枚組の「デラックス・エディション(今回紹介)」の発売にまで至っている。

 で、内容。再演ライブはコメディ・リリーフ的な起用と思われるブーツィー・コリンズを除いて(ベースを弾かないブーツィなんてっ!)実力派シンガーが集められており、どれもその歌唱力に唸らされる。特に印象的だったのは物凄くクセのあるミッシェル・ンデゲオチェロと、数年前の大ヒット「One Of Us」の時の印象とは全然違って滅茶苦茶いい女のジョーン・オズボーン。2人ともこれほど優れたボーカリストであるということにまったく気づかずにこれまで聴いていたので、認識を改めさせられる思い。それにしてもジョーン・オズボーン、逢いたいなー。男性陣も勿論健闘、映画でも最後に演奏されるモンテル・ジョーダンとチャカ・カーンの「Ain't No Mountain High Enough」は、映画館で涙が出そうになった記憶(この曲を最後に持ってくるのはズルいっ!)が甦る。

 サントラに続くボーナス・トラックには、当時彼らが他のレコード会社のレコーディングに匿名で参加した“アルバイト・ヒット”が3曲。ライブではその代表としてキャピトルズの「Cool Jerk(66年7位)」をブーツィが歌っていたが、追加でジョン・リー・フッカーの超古典ブルース「Boom Boom(62年60位)」、50年代末ベリー・ゴーディにソングライターとして成功の第一歩を踏み出させたジャッキー・ウィルソンに、完成形のモータウン・サウンドを提供した“恩返しヒット”「(Your Love Keeps Lifting Me) Higher And Higher(67年6位)」、そして映画の中で「1972年、この曲が弾けないベーシストは全員クラブをクビになった。」と語られていたデニス・コフィ&ザ・デトロイト・ギター・バンドのインスト・ヒット「Scorpio(72年6位)」が収録され、サントラの見事な補完を果たしている。

 続いて今回の目玉、2枚目のCDは題して「In The Snakepit: Naked Instrumental Remixes of The Original Hits」。黄金のモータウン・ヒッツからボーカルを削ぎ落とし、ファンク・ブラザーズの演奏をググッとフィーチャーしたインスト集。先ず最初は映画のタイトルの元となったフォー・トップスの「Standing In The Shadows Of Love」、当然でしょう。その後映画で紹介されたエピソードが頭に残っている者にとっては興味深い録音が続々。「レコード史上最も重要なギター・フレーズの五指に入るだろう。」と語られていたテンプテーションズの「My Girl」、近所のストリップ劇場の伴奏のアルバイトで覚えたラテン・ビートを取り入れたというグラディス・ナイトとピップス版「I Heard It Through The Grapevine」、ベーシストのジェームス・ジェマーソンを泥酔状態でスタジオに連れてきたら椅子にまっすぐ座っていることが 出来なくて、仕方がないので床に寝転がった状態で弾かせたという「What's Going On」の替わりの「Mercy Mercy Me(こちらはちゃんと素面なのか?)」とか。映画の場面々々が甦ってくる。

 他にも主役のマーヴィン・ゲイの後ろで必死に声を張り上げている、デビュー前のマーサ&ザ・ヴァンデラスのコーラスが前面に出された「Pride And Joy」とか、インスト・ナンバーとしても完結した心地よさを感じるスピナーズの「It's A Shame」とか。聴きどころはたくさん。先ずは映画を観て、そこで感じたことを何度も反芻する為にこのCDを何度も聴くと。これは楽しい。何ヶ月も前から噂で聞いているファンク・ブラザーズの来日公演、本当に実現するかどうかわからないが、実現の際は是非とも会場に馳せ参じて、多くの音楽的宝物を我々に残してくれた彼らに、出来る限りの賞賛を贈りたいと思っている。

「永遠のモータウン」公式サイト

(2004/6/6)

Wilson Phillips

California - Wilson Phillips
(Columbia)



 10年以上のキャリアを持つ洋楽ファンにとってはヒジョーに懐かしいウィルソン・フィリップスの、12年ぶりになる再結成アルバム。アルバムのコンセプトは「カリフォルニア・ロック名曲集」。まさに“カリフォルニア・ガールズのご帰還”である。

 80年代末に音楽シーンに登場した彼女たちは、メンバーのカーニーとウェンディがビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンの、チャイナがママス&パパスのジョンとミッシェル・フィリップスのそれぞれ娘という「2世グループ」の話題性もあってヒットチャートで成功を収め、2枚のアルバムと7曲のTOP40ヒット(うちナンバー1が3曲)を残した。90年代に入って人気が翳りをみせると、一番人気のチャイナの独立に伴いグループは解散。以降チャイナはソロで、ウィルソン姉妹はデュオとして、また父ブライアンと共演したり、ビーチ・ボーイズのアル・ジャーディン親子と一緒にツアーに出て「ビーチ・ボーイズ・ファミリー・コンサート」の看板で興行したらマイク・ラヴに訴えられたり・・と、様々な活動をしていたものの目立った商業的成功は収められず。この10年で一番の話題となったのはポッチャリ癒し系(かなり遠慮した表現)のメンバー、カーニーが劇的なダイエットに成功した!というくらいだった。

90年代のWilson Phillips そんな訳で今回のリユニオン盤、ジャケットを見てまず思うのは、やはり「カーニーは何処っ!?」。彼女は1999年にもはや「工事」といっていい大手術の末、ダイエットを果たして現在は主にその分野で有名人となっているらしい(因みに今回のアルバム・ジャケットの一番左)。すっかり様変わりしたカーニーを含む3人の容姿は、現在で言えばディクシー・チックスに続く女性カントリー・グループ二番手として頑張っているシーデイジー、あれのアダルト版といった感じ。肝心の内容の方は、冒頭のリンダ・ロンシュタット「悪い貴方」はいきなりループっぽいリズム使用の今どきサウンドで「君たちに期待しているのは、こういうもんじゃないんだよ・・」と不安にさせられるが、続くニール・ヤングの「Old Man」で持ち直し。これはオリジナルも聴き直してみたくなるなかなかの仕上がりになっている。

 アルバムを聴いて一番感じるのは、10年以上たってもまったく変わらない彼女たちのハーモニー。そして以前はチャイナがリードをとり、ウィルソン姉妹がハーモニーをつける・・と何となく思っていたボーカル編成が、実はそうではなく3人が曲によってリードを分担しており、しかもそれぞれがかなりの力量を持ったシンガーであるという事実。特にカーニーがリードをとっている曲にグッとくるものが多く、彼女がこんなにいいシンガーだったんだということは、10数年目になって初めて知った。

 その後カバーはジョニ・ミッチェル、イーグルス、フリートウッド・マック(カリフォルニア??)と続き、後半に差しかかると選曲はグッと60年代寄りに。バーズ、ヤングブラッズ・・。勿論ここら辺と70年代のウェスト・コーストものが一つながりである事は認識しているが、やはり曲調の大きな違いが気になる。とはいえ、彼女たちの出自的にこのコレクションにビーチ・ボーイズやママス&パパスの曲を入れない訳にはいかないから、その時代のギャップの“つなぎ”であるという考え方をすれば、何となく納得はいくが。で、その“親トリビュート”曲ではまずママパパの「Monday Monday」、まぁ、こんなものかな、といった出来。まるでゴー・ゴーズのようなビーチ・ボーイズの「Dance Dance Dance」は、ライブでやったら盛り上がりそう。最後の「In My Room」には“パパ・ウィルソン”ブライアンが登場、娘たちの再売出しに一役買っている。

Linda Ronstadt Neil Young Joni Mitchell Eagles Fleetwood Mac The Byrds The Mamas and The Papas The Youngbloods Jackson Browne The Beach Boys The Beach Boys

 カバーされた曲のアルバム・ジャケットを曲順に並べてみたら、このアルバムの意図するところがわかるかな?と思ってやってみたが、あまり関連性はないみたい。「カリフォルニア産のロックを気分で選んでみました。」といったところか。あまりにも唐突なウィルソン・フィリップスの復活、しかもあのピーター・アッシャーをプロデューサーに起用したサウンドはなかなか充実しているし、コロンビアはどこまで採算を考えてこのアルバムのリリースを決断したのかな?と思ってたら、何とこのアルバム、今週のアルバムチャート初登場35位なんだって。へぇーっ、こういった音楽を聴きたがっている人って結構いるんだね。この好評に続くアルバムが出るとしたら、是非ともより深く掘り下げた「カリフォルニア・クラシック集パート2」をお願いしたいところ。

曲目等詳細(発売元のサイト)

(2004/6/6)

Genevieve Waite

Romance Is On The Rise - Genevieve Waite
(Chrome Dreams)



 復活ウィルソン・フィリップスに続いて紹介するのは、偶然にもママス&パパスのリーダー、ジョン・フィリップスの3番目の妻、チャイナにとっては「継母」にあたるジュネヴィエーヴ・ウェイトが1974年に発表したアルバム。

Joanna 現在はビジュー・フィリップスの実母といった方が判り易いかもしれないウェイトは、1950年南アフリカ生まれ。モデルになるため10代で渡英し、68年に「ジョアンナ」という映画に主演しており、これは一部の“ガーリー”な映画を好むマニアには評判のいい作品だそうだが、目立ったキャリアはこれと70年にアメリカに渡って出演した「マイラ」という映画くらい。その後は「マイラ」に曲を提供したジョン・フィリップスと関係を深め、やがては彼の家庭に入っていくこととなる。

 このアルバムはフィリップス自らが設立したレーベル「Paramour」からリリースされたもの。アーヴィン・バーリンの「Slumming On Park Avenue」を除く全曲がフィリップスによって書き下ろされた同作には、全体的にノスタルジックな雰囲気が漂っている(冒頭曲「Love Is Coming Back」がママ・キャス・エリオットの「Dream A Little Dream Of Me」とまったく同じイントロで始まる時点でニヤリとするファンもいるだろう)。当時評判になっていたベット・ミドラーやマンハッタン・トランスファーあたりの線を狙ったのか?ニューヨークのトップ・ミュージシャン(デヴィッド・スピノザ、ケン・アッシャー、リック・マロッタ他)を起用したサウンドも上々。しかし・・。

 「フラッパー」という今から80年くらい前に流行した形容がピッタリな感じのスタイルでジャケ写に登場しているウェイトの歌は、一言で言えば“カマトト系”。声色で言えばヴィクトリア・ウィリアムス、同じ時代で言えばイギリスのヌーシャ・フォックスか。でもウェイトのそれは完全な素人芸。むしろ「ニューウェーブ以降の時代にこういう“不思議ちゃん”がいっぱいいたなー。」と言う感想の方が的確だろうか。

 結局アルバムは数千枚しか売れず、その後30年間(つまり現在まで)再び市場に流通することはなかった。ある世界ではコレクターズ・アイテム化しているというこのアルバム、ジョン・フィリップスの名や参加ミュージシャンにつられて買うと相当な肩透かしを喰うが、珍品として愛でるならばそれなりの味わいがある一枚。ボーナス・トラックにはヴェルヴェット・アンダーグラウンド「ファム・ファタール」のカバーもあって、その倒錯した世界はちょっとした聴きもの。

The Mamas & The Papas Price Guide

(2004/6/6)