八亀's Picks - March 2004

過去の八亀's Picks

3.27 For Women Only - Bergen White
3.25 Hits and Misses - Muhammad Ali etc.
3.18 This Time Long Ago - The Guess Who
3.18 Shakin' All Over/Hey Ho/It's Time - The Guess Who
3.14 The Last Word (Kin/Next of Kin) - Chuck & Mary Perrin
3.13 LAND OF 1000 DANCES - Special Soul & Funk Edition
3.10 Come To The Sunshine: Soft Pop Nuggets from The WEA Vaults
3.10 Hallucinations: Psychedelic Pop Nuggets from The WEA Vaults
3.06 Carry It On [Boxed Set] - Peter, Paul and Mary

For Women Only

For Women Only - Bergen White
(Rev-Ola)



 今月2枚目のRev-Olaものは以前紹介したネオン・フィルハーモニックミッキー・ニューバリー同様ナッシュヴィル産のソフト・ポップ。現在もかの地でボーカリスト/アレンジャーとして活躍しているバーゲン・ホワイトが1970年に発表し、当時は殆ど注目を集めることのなかった幻のアルバムがCD化。

Ronny & The Daytonas 1960年代半ば、サーフィン/ホットロッドが流行した時期にナッシュヴィルから登場したポップグループがロニーとデイトナス。ナッシュヴィルなのにサーフィン??そう、当時はコロラド州デンヴァーからはアストロノウツが、ミネソタ州ミネアポリスからはトラッシュメンが、と海のない州出身の“サーフ・バンド”が多数登場した時代だったのだ。で、そのデイトナスのメンバーだったのがホワイト。“ロニー・デイトン”という如何にもな名前の人物がリーダーということになっていたが、グループの実体はないも同然で、ジョン“バッキー”ウィルキンスを中心にバズ・ケイスン、ボビー・ラッセル、そしてホワイトと将来のソングライターの卵たちが入れ替わり立ち替わり参加して作品を録音していた模様。66年頃には作風がサーフィンからソフト・ロック風のものに移行していて、アルバム「Sandy」は後年ソフト・ロックファンの間でちょっと話題になったりもした。

 グループの活動後期、彼らはRCAレコードと契約し5枚のシングルをリリースしたが(CD化希望!)大した成功を収めることは出来ず自然消滅。しかしその期間中に彼らはナッシュヴィルの“スタジオ・シーン”とコネクションを得たようで、その後も主要メンバーたちは引き続き当地の音楽制作に携わっていった。ホワイトはコーラスやアレンジで様々な作品に参加、トニー・ジョー・ホワイトの「Palk Salad Annie(69年9位)」がエルヴィスの耳にとまって彼のアレンジャーとして雇われ、日本でも大ヒットした「You Don't Have To Say You Love Me(『この胸のときめきを』70年11位)」などを手がけたという。

 そんな彼がアーティストとして発表の機会を得たのがこの「For Women Only」。元デイトナスの面々もコーラスで参加しているというこのセッションの中心となったのは、ナッシュヴィルのスタジオ・ミュ−ジシャン集団“エリア・コード615”。アレンジャーとしてチャーリー・マッコイ、ソングライターとしてブレッドのデヴィッド・ゲイツの名前も確認でき、当時のナッシュヴィルでは日常的な、しかし現在となっては非常に贅沢な面々で制作された様子が窺える。ヴォーグスが歌ったマン&ウェイル作のソフト・ロック・クラシック「She Is Today」のカバーで幕を開けるアルバムは、比較的沈んだトーンの曲が多い“ダウナー系シンフォニック・ポップ”で、ホワイトのハイトーンな歌声(何故かタイガースの“トッポ”加橋かつみを思い浮かべてしまう)は作品に陰影を与えている。

 アルバムに先駆けて発表されたシングル音源(ボーナスとして収録)も含め、キャッチーなメロディを持つ曲が少ないので、正直言って気軽に聴き流せる感じのアルバムではない。またこれはマスターテープの保存状態の問題なのか、それとも当時の“意欲的な”試みの結果なのか、曲によっては非常に音のバランスの悪い(曲毎の録音レベルが極端に違ったり、左右チャンネルのボリュームが不自然に上下したり)ものがあり、この点は気になる。ホワイトは現在も現役バリバリで、最近でいえばゲイリー・アランの「See If I Care」やジョージ・ストレイトの「Honkytonkville」などにもクレジットが確認できるような人なので、今回のCD化に際しては、彼によるミックスの見直しがあってもよかったのでは?と思った。

 ともあれ、ソフト・ロック、そしてナッシュヴィル産のポップスに興味のある方には無視できない1枚だと思う。聴き方によっては「ロニーとデイトナス」の発展型と捉えることもできるかも知れない。なお“ロニー”ことジョン“バッキー”ウィルキンスも同時期にソロアルバムを制作しており、恐らくこのアルバムとかなり重複する面々が参加し、当時新鋭のソングライターだったクリス・クリストファーソンの作品(ジャニス・ジョプリンより早い「Me and Bobby McGee」など)を数多く取り上げている「In Search of Food, Clothing, Shelter and Sex」、タイトルもユニークなこのアルバムのCD化も希望したいところ(意外に早く実現しそうな予感・・)。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/3/27)

Muhammad Ali and the Ultimate Sound of Fistfighting

Hits and Misses: Muhammad Ali and
the Ultimate Sound of Fistfighting (Trikont)



 ドイツに「Trikont」というレーベルがあって。リリース数はそう多くないものの、アメリカ音楽を20世紀前半まで掘り下げたりしてこれまでに色々とユニークなCDを出している。一昨年は「ブラック・パンサー」を中心に1960〜70年代に盛り上がった“ブラック・パワー”をテーマにした「Black & Proud Vol.1 & 2」という非常にパワフルなコンピレーションが出され、これは僕にとって2002年最優秀リイシューの一つだったが、今回入手したCDのテーマはなんと“モハメッド・アリ”。これまたユニークなCDを出してくれたものだ。

I'm The Greatest 説明するまでもないカシアス・クレイ、イスラム教改宗後はモハメッド・アリと名乗った黒人青年は、1960年ローマ・オリンピックのボクシング金メダリストからプロボクサーに転じ、その圧倒的な強さもさることながら“ビッグ・マウス”が世界中のブラック・ピープルを熱狂させ、史上最強ではないかも知れないが、史上もっとも名を知られた世界ヘビー級チャンピオンとなった男。その後ベトナム徴兵にまつわるゴタゴタやら何やらでタイトルをはく奪され、国外を転戦し・・といったあたりの話は数年前にウィル・スミス主演で映画化された「アリ」で相当きれいごとながら詳しく描かれているので、そちらをご覧いただきたい。で、そんな彼には世界中のアーティストから歌が捧げられ、それらを集めたのがこのCDという訳。

 洋楽ファンがアリをテーマにした曲というとまず思い浮かべるのがジョニー・ウェイクリンとキンシャサ・バンドの「Black Superman - "Muhammad Ali"(『モハメッド・アリ〜俺はスーパーマン』75年米21位/英7位)」だと思うが、あらかじめ書いておくとそんなチャラけたノヴェルティ曲の収録はなし。昨年発表され、恐らくこのCDの企画発想の源となったと思われるカントリーシンガー、トム・ラッセルの作品を例外として、アメリカをはじめジャマイカ、ブラジル、アフリカ・・と、世界中のブラック・アーティストによるアリへの熱いトリビュート+αが全22曲。うちタイトルが「モハメッド・アリ」なのが6曲、「カシアス・クレイ」が3曲と半分近くを占めているのは当たり前といえば当たり前なのだが、初期の彼のキメ台詞である「I'm The Greatest!!」が曲中に登場するのが4曲、超有名な「蝶のように舞い、ハチのように刺す」が4曲、1974年ザイールのタイトルマッチで沸き起こったこれまた超有名なコール「アリ、ボンマイェ(ボンバイエ)」が4曲、というのはあまりにも類型的な気も。これは選曲者の好みだろうか。

 ・・なんてことばかり書いて、誰かにパンチを喰らうのもヤなのでいい加減聴きどころの紹介を。曲の大半が録音されたのは70年代なので、基本的にはジャズ・ファンク系の作品が多く、ネタとしてかなり有用。何よりアリに対する各アーティストの「リスペクト」の念がヒシヒシと伝わってきて、これは非常にいいCDだと思う。他にレゲエやトロピカルな作風(「アリさん、キンシャサ(ザイール)へようこそ!」なんて曲もある)の曲も結構楽しめるし、ブラジルの重鎮、ジョルジ・ベンによる「Cassius Marcellus Clay」は真摯というか生真面目というか、他の作品とは明らかに空気が違ってて、背筋が伸びる思い。

 CDの後半には60年代に「Stand By Me」のヒット(最高102位!)を放ったこともあるアリの録音「I'm The Greatest」や、71年のタイトルマッチでアリを負かしたジョー・フレイジャーが彼に再起を促す「Try It Again」、伝説となったキンシャサの対戦相手、ジョージ・フォアマンのスピーチとかも収録されていて、僕以上に格闘技に詳しい方には非常に感慨深いCDではないかと思う。「ボンバイエ」といえば猪木しか思い浮かばない洋楽ファンも、これを聴いて認識を改めて欲しい、と、そんな気になってくる好企画盤。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/3/25)

This Time Long Ago

3 Classic Albums/1 Great CD


This Time Long Ago: The Lost Sessions 67-68 (Ranbach Music)
Shakin' All Over/Hey Ho/It's Time (Friday Music)
- The Guess Who



 70年代有数、そしてカナダでは史上最大のヒット・メーカーバンドの一つ、ゲス・フー。彼らが1969年の「These Eyes(米6位)」でブレイクする前に1965年の「Shakin' All Over(米22位)」という“前史”があることを多くの洋楽ファンはご存じのことと思うが、今回はこの2曲のHOT100上のブランクを埋めるCDを入手したので、ご紹介したい。

 ゲス・フーの前身である“チャド・アランとエクスプレッションズ(当初はリフレクションズ)”が結成されたのは1962年のこと。数枚のシングルをリリースし、ツアーに明け暮れる数年間を送った後イギリスのジョニー・キッドとパイレーツのカバー「Shakin' All Over」が大ヒット、カナダの人気グループに成長する。アメリカにおける成功はひとまずこの曲のみで終わったが、本国ではヒットチャートの常連的存在となり、当時カナダのクオリティ・レコードから発売された3枚のアルバムを1枚のCDに押し込んだのが「Shakin' All Over/Hey Ho/It's Time」の方。

 ガレージロック・クラシックとなっている「Shakin' All Over」が冠されたファーストアルバム(1965年)は、意外なくらいにストレートなマージー・ビート風作品集。地元では既に有名だった彼らを、如何にもイギリスからやってきたグループのように売り出そうとアルバムのジャケットに「Guess Who?(誰かしら?)」と書いたところ、多くの人々にそれがグループ名だと思い込まれてしまったという経緯を持つこのアルバムは、ライブ・アクトとして彼らが如何に優れたバンドであったかが窺い知れる、UKビートマニア必聴の1枚。

 続いて同年にリリースされた「Hey Ho (What You Do To Me)」は、ファーストで美味しいところを出し切ってしまったのか、オリジナル曲の質もサウンド的にもいま一つ精彩を欠いた内容になってしまった。興味をそそられるのは後にカーペンターズに取り上げられる「Hurting Each Other(これがオリジナル?)」、ブルース・ジョンストンがリップ・コーズに書き下ろした(後にジョンストン自身もリメイク)「Don't Be Scared」のハーモニー・ポップあたりか。ブリティッシュ色も引き続き濃厚。66年に入ってからの「It's Time」はチャド・アレンが脱退し、リードボーカルにバートン・カミングスが収まった、現在我々が知る“ゲス・フー”のスタート点となったアルバム。ワイルドさが増し、こちらはガレージ・ロックファンも安心して楽しめる。

 この3枚ではやはり1枚目のフレッシュさが突出していて、多くのガレージ・バンド同様ファーストの到達点を超えることなく解散し、メンバーは各々サラリーマンになったり・・という道をたどるのが普通なのだが、彼らがそうはならなかった経緯のドキュメントが2枚組の「This Time Long Ago」の方(ようやく本題だ)。クオリティ・レコード後期にリリースした6枚のシングル音源(Discography参照)を中心とした28曲入りのこのアルバムでは、オリジナル・メンバーであるランディ・バックマンと、バートン・カミングスによるオリジナル曲の比率が飛躍的に上がっており、もはや“ガレージ”の枠に収まりきらない彼らの成長ぶりが窺える。

 で、それらオリジナルもさることながら、このCDのもう一つの聴きどころは数多く収録されている“カバー”。当時彼らは「Let's Go」というTVショーのレギュラーバンドを務めていて、毎週最新ヒットのカバーを披露していたのだとかで、ここではトロッグスの「Love Is All Around」、ブルー・チアーの「Summertime Blues」、クリームの「White Room」といった曲がほぼ“完コピ”で再現されている。「Light My Fire」なんてドアーズ(しかもシングル・バージョン)とホセ・フェリシアーノの両方とも演ってる!!あちらには最新ヒットをバーで演奏する「TOP40バンド」が何千とあるそうだが、その鑑のような演奏。しかもそれをやってるのがゲス・フーなんだから非常に貴重。シングル発売もされた「Flying On The Ground Is Wrong」はバッファロー・スプリングフィールドのカバーで、後に彼らはバッファローの「Bluebird」そっくりな「No Time(69年米5位)」というヒットを放ってもいるが、そんな彼らの“バッファロ−好き(カナダ人同士ということで特にニール・ヤングとは親しかったらしい)”な一面が早くも現れている。

 CD後半ではブレイク作「These Eyes」の初期バージョン(もう既にあのイントロ、あのボーカル)をはじめアメリカではRCAを通じて発売されたアルバム「Wheatfield Soul」に収録されることになる作品6曲も聴けるこのCD、ゲス・フーマニア(いるのか?)は勿論、「アメリカン・ウーマン」しか知らない70年代派にもお薦めしたいところ。勿論彼らのRCA時代のヒット曲を集めた「Greatest Hits」を聴いていただいた上での話だが。

収録曲等詳細(Randy Bachmanホームページ)
This Time Long Ago: The Lost Sessions 67-68
Shakin' All Over/Hey Ho/It's Time

(2004/3/18)

Chuck & Mary Perrin

The Last Word (Kin/Next of Kin) - Chuck & Mary Perrin
(Rev-Ola)



 イギリスのRev-Olaは毎月々々マイナーなソフトロック系のアルバムを何枚も発掘してきて、いちいちフォローアップしていくのが本当に大変。購入するCDもできるだけ厳しめに選定して枚数を絞るようにしているのだが、内容が興味深いものであれば入手しない訳にはいかない。

Chuck & Mary Perrin 今回紹介するのは60年代から70年代にかけてイリノイ州にある“ペキン”という町で活動していた兄妹デュオ、チャックとメリー・ペリンの2人が60年代後半に地元のレーベル「Webster's Last Words」に残した2枚のアルバム(当時各々500枚ずつプレスされたという)をCD化したもの。まったく、マイナーすぎ。でも内容は非常にいい。

 基本的にチャックのギターに2人のハーモニー、そしてベースという非常にシンプルな編成で録音されているファースト「Brother and Sister(67年発表)」は、チャックのオリジナルと他のフォ−ク系アーティスト作品のカバー(ドノヴァンの「Circus of Sour」、ラヴィン・スプーンフルの「Younger Generation」など)を半分ずつ収録。オール・アコースティックだと地味すぎて聴いてて辛い場合があるが、二人のコーラスと、録音がなんともいえない“アシッド・フォーク”感を醸し出していて、結構楽しめる。追加情報としては、このアルバムでベースを弾いているのは後にRUN-D.M.C.とエアロスミスの「Walk This Way」やニルヴァーナの「Nevermind」のエンジニアを務めるアンディ・ウォレス。だからといって、特別な貢献が認められる訳ではないが。

Chuck & Mary Perrin 続くセカンド「Next of Kin(69年発表)」にはバンドサウンドが導入され、こちらは“ソフトロック”として申し分のない内容。サウンドも格段に良くなり、こちらは本当にお薦め。インストの「Beginning」から「Here Comes The Weekend Again」「Run Away With Me」「Sundance」へという冒頭4曲の組曲風な流れが非常に好きで、何度も繰り返し聴いてしまう。シンプルながらアーシーな演奏は、アメリカンロックの秘宝的な輝きも。ル−ツ・ロック派も是非ご一聴のほど。CD終盤には70年にリリースされた「Webster's Last Words」のオムニバス盤からの録音2曲もボーナスとして収録。こちらは再びアコースティックなフォーク・サウンド。

 このデュオはその後70年代半ばまで存続、メリーは昨年亡くなってしまったそうだがチャックは現在も音楽活動を継続中。彼のウェブサイトではこれまでの彼の経歴が詳細に紹介されていて、そこではなんとこのCDに収録されている作品の約半分がMP3でフルコーラス聴けてしまうという大盤振る舞いをしているので、まずはそちらに立ち寄った上でCDの入手を検討されたし。今回CD化された2枚の後1971年に発表したサードアルバム「Life Is A Stream」もそこでは何曲か聴け、これがサウンド、曲ともに非常にいい感じ(恐らく「Next of Kin」以上)なので、近いうちのCD化を楽しみに待ちたい。カレン・カーペンターがそのアルバムを聴いて、2人にファンレターを書いたほどの内容だそうなので。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/3/14)

Special Soul & Funk Edition

LAND OF 1000 DANCES - Special Soul & Funk Edition
(Kent)



 “毎月買ってしまう”エイス・レコードのコンピレーション、今月はこれ。ダンス・ステップの名前が冠されたヒット曲を集めた「ダンス天国」第三弾。

Vol.1 このシリーズは過去に2枚出ていて(1999年と2002年)、50年代後半から60年代前半のダンスヒットがたっぷり楽しめる内容になっていたが、今回は時代をちょっと後にずらし、60年代半ばから70年代前半にかけてのソウル・ヒットを中心にコンパイルされている(発売もエイスのR&Bセクション「ケント」からに変更)。なのでこれまでのボリュームとはひと味違うファンキーなCDとなった。

 収録曲から印象的なものをいくつか紹介していこう。以前出された2枚は殆どがHOT100に登場した曲で占められており、ヒットチャートファンには非常に有り難いものだったが、今回はよりマニアックな選曲でノン・ヒット割合は増加、ヒットでもR&Bチャートのみに登場したものが多く、かなりディープな内容となっている。比較的知名度が高いヒットでもメイジャー・ランスの「The Matmor(64年POP20位)」、ジェームス・ブラウンの「Let A Man Come And Do The Popcorn(69年POP21位/R&B2位)」、エディ・ボーの「Hook And Sling(69年POP73位/R&B13位)」と一筋縄では行かないチョイスで、これだけを見てもこのCDが如何にマニアックかが窺い知れる。他にダンス名だけを挙げてみると「モンキー」「ブーメラン」「ディップ」「フィリー・ドッグ」「ジャーク」「ダック」「ブロードウェイ」・・どうやって踊ったのかよくわからない(残念ながらライナーノーツに踊り方の解説はない)ものも含め、当時無数のダンスが生まれ、そして消えていったという“民俗学”的資料価値もありそうな全26曲。

Vol.2 今回収録曲が選ばれている時代は今でいう“トラディショナルR&B”から“ソウル・ミュージック”へと移行した時期で、ほぼ年代順に曲が収録されているこのCDでは、音楽的にやはり後半の部分がより楽しめる。60年代末から70年代のダンス・ミュージックといえば、どうしてもフィリー〜ディスコが思い浮かぶが、このCDでは意識的にそこら辺を避け、P-Funkの原点、パ−ラメントとして初のヒット「The Breakdown(71年R&B30位)」など初期のファンクサウンドを優先。そんな中ブーガルーの人気ナンバー、TNTバンドの「The Medtation(69年R&B32位)」なんてのも混じっていて、一服の清涼感を醸し出しているのがいい。

 オールディーズのヒット曲を色々な角度から楽しむ、というこれまでの同シリーズの方針は後退したが、よりマニアックに60年代前半のダンスブーム以降のR&Bサウンドの発展を追っていこうという学究的なCDとして、これは評価できる。勿論音楽的にも楽しめる曲ばかりなので、内容面は問題なし。いろんな意味でネタとして使えると思うので、ショップで見かけたら入手してみるといいかも知れない。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/3/13)

Soft Pop Nuggets from The WEA Vaults

Psychedelic Pop Nuggets from The WEA Vaults


Come To The Sunshine: Soft Pop Nuggets from The WEA Vaults
Hallucinations: Psychedelic Pop Nuggets from The WEA Vaults
(Rhino Handmade)



 “Nuggets”、日本語に訳すと「金属の塊」という意味の言葉、チキン・ナゲットの“ナゲット”でもあるのだが、ロックファンにとっては少々意味合いが違う。

 今から遡ること約30年、アメリカのエレクトラ・レコードから発売された60年代半ば〜後半のサイケ/ガレージ・ロック作品を集めた2枚組アルバム。当時音楽評論家だった(その後パティ・スミス・グループのギタリストとなる)レニー・ケイが選曲と解説を担当したそのアルバムのタイトルが「Nuggets: Original Artyfacts From The First Psychedelic Era 1965-1968」で、これがロック・コンピレーションの古典とみなされるようになって以降“Nuggets”といえばガレージもののコンピを指すようになり、以降様々なレーベル(主にインディ)からこのタイトルが冠されたアルバムがいろいろな形でリリースされた。

Original Artyfacts From The First Psychedelic Era その“Nuggets”精神を最も強く継承したレコード会社が80年代ロサンゼルスに設立されたライノで、同社が当時新たにスタートさせた“Nuggets”シリーズは、アナログ時代にテーマ別10数種を数える大型企画に育った。CD時代に入り、何枚かのトライアル盤をリリースしたライノは、98年に満を持してオリジナル版“Nuggets”をCDで復刻、2枚組全27曲を1枚のCDに収めた上に増補盤として更に3枚(!)を追加、4枚組全118曲のガレージ・ロック一大歴史絵巻として蘇らせ、この時代のロック・コンピレーションの最高峰として、ロックファンの基本アイテムとなっている。

 あれから6年、Rhino Handmadeが今回その続編として世に問うたのがこの2枚。以前聞いた話によると選曲担当者が1964年〜1970年の間にワーナー系列のレーベルから発売されたすべてのシングルを聴いて収録曲を決定したという(本当かね?)このCDは、先のボックスがハードなガレージものに主眼が置かれたものであったことを考慮してか、よりソフトかつサイケなサウンドをテーマに編まれている。

 まず「Come To The Sunshine」のテーマは“サンシャイン・ポップ”。ミュージシャンで、キンクスのデイヴ・デイヴィスのツアー・バンドメンバーでもあるという“アンドリュー”ことアンドリュー・サンドヴァル監修のこのアルバムは、タイトル通りハーパース・ビザールのナンバーで幕を開ける。ワーナーはソフトロックの宝庫なので選曲には事欠かず、メジャーどころを挙げればアソシエイションやトーケンズ、ヴォーグスやモンキーズなどお馴染みの顔ぶれが並ぶ。通常レーベルもののコンピというと何組かのプロデューサーが複数のアーティストを各々手がけていて、サウンドはそれなりに統一感がある、というパターンのものが多いが、さすがはメジャーレーベル、プロデューサーが見事にバラバラ。でもなんとなくサウンドに一貫性があるように感じられるのは“バーバンク・マジック”の為せる技か。

 耳を惹くマイナー作品を順に紹介。まずはアソシエイションの「Windy」の作者、ルーサン・フリードマンの作品を取り上げたパット・シャノンの「Candy Apple, Cotton Candy」、後のブレッドのメンバー2人が提供したモーニング・グローリーズの「Love-In」、トーケンズの面々が手がけたベテランガール・グループ、クッキーズの「Wounded」、何故かブライアン・ハイランドの作品をカバーしているストリート・コーナー・ソサイエティの「Summer Days, Summer Nights」などなど。更にポール・ウィリアムスが在籍していたホリー・マッケラル(いい加減アルバムをCD化してもよいのでは?)の「Scorpio Red」、シールズ&クロフツの2人がデュオとして活動を始める直前に結成していたアンクル・サウンドの「Beverly Hills」と、聴きどころはたくさん。選者の好みか、リー・マロリーの「Take My Hand」、ルッキング・グラスの「Silver Sunshine」、アニター・カー・シンガーズの「Happiness」、アドリシ・ブラザーズの「Time To Love」と、何故かアドリシ兄弟の作品が多く選ばれていて、そのどれもがいちいちいい曲で彼らの才能を再認識させられたりもする。

 近年日本では再発ラッシュが一段落の感があるソフトロック系のコンピとして、約20ドルの値段分十二分に楽しめる一枚。一方「Hallucinations」のテーマは“ポップ・サイケ”。こちらもアンドリューの選曲で“産業サイケ”のこけ脅し的な、無駄に派手なサウンドを存分に楽しむことができる。

 まずアルバムタイトル曲は元ロカビリー・シンガーのトーマス・ベーカーがこれ又ロカビリー出身で、この頃は業界のベテランに育っていたジミー・ボウエンのプロデュースで録音したこれぞ“産業サイケ”の鑑。現ベンチャーズのジェリー・マギーのギターもイカす。他にはエヴァリー・ブラザーズが手がけた(でもサイケ風)エイドリアン・プライドの「Her Name Is Melody」、単独のCDを出して欲しいカナダのフォークシンガー、トム・ノースコットの「Who Planted Thorns In Miss Alice's Garden」、オハイオ・エクスプレスのジョーイ・レヴィンがプロデュースした“サイケデリック・バブルガム”ソルトの「Lucifer」、キム・フォーリーとマイケル・ロイドという業界のつわもの二人が組んだこけ脅しの極み「Stranger From The Sky」、“産業サイケ”といえば忘れてはいけないエレクトリック・プルーンズの「Antique Doll」などなど。当時ビートルズをはじめ様々なアーティストたちが音楽表現の拡大を目指した末に得た“サイケデリック・サウンド”の表層のみをすくい上げ、都合よく商売に利用した感じの業の深い作品が次々と登場。これが非常に楽しい。

 これは純粋にサイケ/ガレージ・ロックを愛する音楽ファンには憤まんやるかたない“Nuggets”精神に反するCDかも知れない。でもね、こういう音楽の楽しみ方もあるということで。アルバム終盤にはこの路線の極み、モンキーズの「Porpoise Song」も登場、アンドリューの選曲ポリシーは首尾一貫している。

 ライナーノーツには「続編をお楽しみに!」なんてことも書いてあるので、この“Nuggets”番外編は今後シリーズ化されるようだ。人気シリーズになるであろうことを目論んで、ライノも通常は5,000枚限定で出すところを強気の7,500枚プレスにしているし、これは“ソフトロック先進国”日本の我々が率先して買い支えていくしかなさそうだ。

収録曲等詳細(発売元のサイト)
Come To The Sunshine: Soft Pop Nuggets From The WEA Vaults
Hallucinations: Psychedelic Pop Nuggets From The WEA Vaults

(2004/3/10)

Peter, Paul & Mary

Carry It On [Boxed Set] - Peter, Paul and Mary
(Rhino)



 かつて“再発の王様”と言われた(今も言われることはある)米ライノ・レコード。しかし近年は単なる“ワーナーの再発部門”という感じになってしまい、以前のようにオールディーズ・ファンをワクワクさせてくれるような斬新なリリースは殆どなくなってしまった。もっとも最近は再発される作品が60年代から70〜80年代ものに移りつつあるので、個人的に興味をそそられるものが出ていないだけなのかも知れないが。

 で「ハンドメイド」ものを除けば恐らく2年ぶりくらいに購入したのがこれ。60年代ポップシーンの重要グループの一つピーター、ポール&マリー(以下PP&M)のCD4枚プラスDVD1枚のボックス。不思議なことにこれまで彼らにはヒット曲を網羅したベスト盤が存在せず、ヒットチャートファンには悩みの種の一つだった。彼らのリイシューに対する姿勢の現れなのか、それとも彼らにはチャートには登場しなかった代表曲が多いため、選曲が難しいからだったのかはわからないが、ともかくこれはPP&Mの40年を超えるキャリア初の包括的アンソロジーである。

Peter, Paul & Mary 1960年代、日本でもフォーク・ミュージックはかなり人気があったようで、キングストン・トリオやブラザーズ・フォーなど当時の洋楽チャートに多くのヒット曲を送り込んだグループがいるのだが、彼らとPP&Mの音楽センスには明らかな違いがあったように感じられる。言ってみれば“R&R”と“Rock”の違いのような・・。ジャズ的なものを感じさせるコーラスとか、グループ内の男女対等(むしろ女性上位?)な感じとか。そういえば彼らは今や死語中の死語となってしまった“ドリカム編成”の元祖的存在でもあったのだ。キャラクターの強い女性1人に、地味で人のよさそうな男性2人という組み合わせ。ユニークで高度なPP&Mの音楽性の継承に成功した日本のポップグループは残念ながら存在しなかったが、“編成”という形で現在に至るJ-POPに彼らは大きな影響を与えている、と言えなくもない、くなくもない(どっちなんだ?)。

 彼らがポップミュージックに果たした貢献は、勿論そのモダンなセンスのフォーク・サウンドやハーモニーをポップ市場に紹介したという点もそうだが(彼らに影響を受けていないソフトロック・グループはないだろう)、もう一つよく指摘されるのが、フォークシーンの有能なソングライターたちの作品をいち早く取り上げ、多くの人々の耳に届けたこと。最も顕著な例がボブ・ディランの「風に吹かれて(63年に最高2位を記録)」で、これは彼自身が「Subterranean Homesick Blues」で初めてHOT100に登場する2年前のこと。他に彼らが世に紹介した当時新進気鋭のソングライターを年毎に挙げてみると

1964年 ゴードン・ライトフット
1965年 トム・パクストン
1966年 ローラ・ニーロ
1967年 ジョン・デンバー

 といった感じ。ジョン・デンバーが1967年に提供した「悲しみのジェットプレーン」などは戦争に対するメッセージが1969年になってようやく世の中の共感を呼び、ヒットチャートのナンバー1を記録したという早さ。

 それぞれのCDについて簡単に紹介しておこう。1枚目と2枚目は日本でもお馴染みの“純粋フォーク時代”。ワーナーからの最初のシングルのB面「Early In The Morning」というちょっとひねったオープニングに続いて「500マイル」「レモン・トゥリー」「天使のハンマー」と大スタンダードが並んで気分はすっかりあの時代に。有名曲は勿論漏れなく収録、ディラン・ナンバーも「風に吹かれて」に加え「くよくよするなよ」「時代は変わる」「船が入ってくるとき」などたっぷり。「悲惨な戦争」にストリングスが、「ハリー・サンダウン」にホーンがかぶせられたシングル・バージョンは、もしかしたら他では聴けないのかも知れない。

Peter, Paul & Mary 3枚目のCDはそれまでのアコースティック編成にエレキやストリングスが加わったいわゆる“フォークロック期”。で、冒頭には67年の来日公演(新宿と大阪)の録音3曲が。イントロのところで通訳が詞の内容を日本語で説明するスタイルが、生真面目な感じ(フレッド・ニールの「The Other Side Of Life」を「これが人生の裏道です。」と訳している)で微笑ましい。このライブ盤何故日本でCD化されないのだろうか。それに続く本編は現在の音楽リスナーの耳にはここら辺が一番聴き易く“ソフトロック”的な意味でも楽しめる。しかしこの時期にはグループ内に倦怠感が漂い始めていたようで、前述「悲しみのジェットプレーン」のナンバー1ヒットにもかかわらず彼らは70年代に入ると解散。71年に「Pter」「Paul and」「Mary」と3人同時に発表したソロアルバムから各々生まれたヒット曲も、このボックスには収録されている。

 ソロ活動の後3人は1978年に再集結し(このボックスは“再結成25周年記念盤”でもある?)以降の録音は4枚目のCDにまとめられているが、正直言って僕はあまり聴いてない。各CDには隠しトラックとしてグループ結成以前の3人のデモ録音が一曲ずつ収録されているのだが、これがCD一曲目の前に入っている(CDのあたまのところで逆戻しボタンを押すと聴ける)という凝りよう。機種によっては聴けないんじゃないの??ついでにオマケのDVDも簡単に。映像が8曲分入っていて、見どころは1963年の「ワシントン大行進」セレモニーで歌った「天使のハンマー」と、日本で独自にシングルカットされた「ジェーン・ジェーン」の「アンディ・ウィリアムス・ショー」におけるライブ、そして1969にジョン・デンバーを交えて歌う「悲しみのジェットプレーン」映像あたり。このDVDだけでも相当な価値がある。

 このボックスを聴いて、僕はようやく彼らの音楽にある程度決着がつけられたかな?という気持ちになった。あとは気になるアルバム何枚かを中古で拾って、音楽的興味の補完を行いたいと思っている。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/3/6)