以前モータウンのコンピレーションを紹介したことがあったが、個人的にそれ以上に好きなR&Bレーベルが「アトランティック」。高校生当時、それまでオールディーズといっても白人ポップス一辺倒だった僕がR&Bにも目を向けていくようになったきっかけが「アトランティックの歴史」シリーズ7組14枚(当然アナログ)で、1940年代後半から70年代半ば、音楽的にいえばジャンプ・ブルースからニュー・ソウルまでR&Bメインストリームの一角を占め続けた同レーベルのヒットが200曲近くギッシリ詰まったこの“一抱え”を手に入れるため、必死にバイト代をはたいていたあの頃が懐かしい(遠い目)。
アトランティックは非常に大きいレーベルで、しかも各地のマイナー・レーベルから作品をどんどん買い上げて全国配給していたため制作者はそれこそまちまちでモータウンのような統一感はまったくないのだが、それでも45回転盤に「アトランティック」のロゴが貼られると、どれも一定以上のクオリティを持つ「品質保証付き」というイメージのある不思議なレーベルであった。このレーベルを通じて発売された数々のソウル・クラシックをテーマ別にコンパイルしたものとしては、イギリスのエイス・レコードが数年前まで出していた「Where It's At」シリーズというのがあったが(僕は殆ど持ってます)、最近は代わって英アトランティックの親会社、ワーナー・ブラザーズが色々と手の込んだコンピレーションを出し始めている。数年前日本でも出されたレア・グルーブ集「Right On!」シリーズなどをレコード屋で見かけたことのある方もいるかもしれない。
今回紹介するのはまず60年代のクラブ向けR&B集「Sock It To 'Em Soul」。“Sock It To Me!”は60年代後半に流行ったかけ声だが、その時代、“ソウル・ミュージック”が一番熱かった時代に生まれた作品がヒット曲を中心にコンパイルされている。CD冒頭を飾るのはレックス・ガーヴィンの如何にもクラブ向けなインスト「Sock It To 'Em J.B.」で、ここでいう“J.B.”とはジェームス・ブラウンではなくジェームス・ボンドのこと。「ドクター・ノー」「サンダーボール」といった作品名に因んだかけ声が非常に楽しい。その後はひたすらヒット曲の連続、ジョー・テックス、ドン・コヴェイ、エディ・フロイドなど、文句のつけようのないメジャー・アーティストが並ぶ。
比較的名前を知られていないアーティストの中ではグージー・ルネ・コンボ(?)の「Smokey Joe's La La(66年R&B35位)」が面白い。ラムゼイ・ルイスをより猥雑にしたようなインストで、これはちょっとした掘出し物。あとダレル・バンクスの「Open The Door To Your Heart(66年R&B2位/POP27位)」は非常に感じのいいノーザン・ソウルで、これだけの大ヒットなのにこれまで聴いたことがなかった自分が恥ずかしい。CD前半はビートの効いたクラブ・ソウル、後半“モータウンの歌姫”メリー・ウェルズがアトランティックに移籍して放ったヒット「Dear Lover(この曲大好きだ!)」以降はグっとチルアウトした“ビーチ・ミュージック”風という曲編成も素晴らしく、この時代のR&Bの魅力をたっぷりと楽しむことができる。
で、もう一つレコード屋で見かけるとつい手が伸びてしまうキーワードが「フィリー・ソウル」。特にフィラデルフィア・インターナショナル発足以前の通称「アーリー・フィラデルフィア」なんて言葉がタイトルについていたら、僕はまず間違いなく購入。昨年後半に出された「Creme De La Creme」のテーマは“アトランティック・レコードのフィリー・ソウル集”で、こんなCDの存在を知ったら収録曲リストも見ずに即発注、といった感じ。60年代後半〜70年代前半に新しいR&Bサウンドの発信地として注目を集め始めたフィラデルフィアで、アトランティックはいち早くプロデューサーチーム、ケニー・ギャンブル&レオン・ハフを起用、ウィルソン・ピケットやダスティ・スプリングフィールドを当地に送り込んで「〜イン・フィラデルフィア」の名のアルバムが生み出されている。
このCDにはギャンブル&ハフと並んでフィリー・ソウルを支えた人々、トム・ベル、彼の弟トニー・ベルがいた“ヤング・プロフェッショナルズ”、MFSBの中心メンバーであるノーマン・ハリスやボビー・イーライ、レーベル「フィリー・グルーヴ」を立ち上げたスタン“ザ・マン”ワトソンなどが手がけた作品がぎっしり詰まっている。ヒットを記録したものは比較的少ないが、それでもスピナーズの「I'll Be Around」、ブルー・マジックの「Sideshow」、メジャー・ハリス必殺の「Love Won't Let Me Wait」などお馴染みのR&Bナンバー1ヒットも収録、フィラデルフィア・インターナショナルだけではないフィリー・ソウルの“アナザー・サイド”をたっぷり堪能できる内容に。サウンドは勿論例の“フィリー印”なので、品質は保証付き。
こういうCDが手に入ると、本当にR&Bファンをやっていてよかったと思う。その邦題のため日本人にとってフィリー・ソウルの代表的存在であるスピナーズの「フィラデルフィアより愛をこめて(Could It Be I'm Falling In Love)」が入っていないのは残念だが、これはMDに落とす時、個人的に追加することにしよう。
収録曲:
Sock It To 'Em Soul: 60's Club Soul Classics
Creme De La Creme: Philly Soul Classics and Rarities