八亀's Picks - January 2004

過去の八亀's Picks

1.29 Girls Go Zonk!!: US Beat Chicks and Harmony Honeys
1.29 青い部屋 - 戸川昌子:監修
1.23 The Complete RCA Recordings...Plus - Mickey Newbury
1.23 Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich
1.19 Soul Satisfaction 4: Mouth Watering Motown & B-Side Beauties
1.19 談志が死んだ―立川流はだれが継ぐ
1.17 The Complete Warner Bros. Recordings - The Neon Philharmonic
1.17 Night Time Music...The B.T.Puppy Story
1.17 In The Garden...The White Whale Story

US Dream Babes

Girls Go Zonk!!: A fab collection of rare and hard to find
US Beat Chicks and Harmony Honeys of the 60's - VA (RPM)



 これまでにも何枚か紹介しているように、オールディーズのコンピレーションが大好きなんです。レコード屋に行って見慣れないコンピがあると必ず収録曲をチェックし、その選曲意図に共感が持てる場合は既に他のCDで持っている曲が殆どであってもダブりを気にせずどんどん買ってしまうという。

Folk Rock and Faithfull イギリスのロックバンド、セイント・エティエンヌ(ごめんなさい名前しか知らない)のボブ・スタンリーが中心となって選曲している60年代UKガールポップのコンピ「Dream Babes」シリーズは以前から気にはなっていたのだが、UKオンリー、しかもレアな曲ばかりを選曲という企画意図がいま一つ気に入らなくてこれまで購入を見送ってきた。しかし昨年末に発売されたシリーズ第5集のテーマが「女の子たちのフォークロック」、しかもタイトルがその流行のきっかけを作ったマリアンヌ・フェイスフルに引っかけて「Folk Rock and Faithfull」などととユニークなものになってくれば、これは聴いてみない訳にいかない。いかにもイギリスっぽい陰気な曲調の作品もあったが、仲間内では“イギリス嫌い”で知られる僕でも十分楽しめるサウンドが多数収録されたCDになっていた。以前友人の女の子から「ネオアコとソフトロックってどこが違うの?」と訊かれて物凄く驚いたことがあったけれども、このCDはそんなことを訊きたくなる気持ちも解らなくはないタイプの音楽、といった感じ。

 と、そんなこんなで複雑な、こちらの心情を知ってか知らずか、スタンリーを取り巻く自称“ドリーム・チーム”たちが今回新しく出したのが“アメリカ版「Dream Babes」”。1960年代半ば〜後半に米キャピトル及びその傘下のレーベル(リバティ、ユナイテッド・アーティスツ等)に残されたガールポップをコンパイル、勿論僕は即買い。ジャケットも可愛いし。

 そのコマーシャルなサウンドを考えれば意外かも知れないが“ガールグループ”は60年代前半にアメリカ各地のインディ・レーベルが巻き起こしたムーブメントだった。フィル・スペクターのフィレス、ベリー・ゴーディのモータウン、キャロル・キングとジェリー・ゴフィン夫妻のコルピックス/ディメンション、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーのレッド・バード/ブルー・キャット・・・主要なヒットを生んだのは殆どがインディ。ガールグループ市場にメジャーがようやく乗り込んでくるのは1963年に入ってからで、マーキュリーのようにレスリー・ゴーアの「涙のバースデイ・パーティ」やエンジェルスの「あたしのボーイ・フレンド」など全米ナンバー1ヒットを放ったところもあったが、多くは路線が軌道にのる前に1964年のビートルズ・ブームに巻き込まれ、これといった商売上の旨味を味わうことはなかった。しかしヒットチャート上の成果は上げられなかったものの、ガールポップものの制作は60年代後半まで続けられ、このCDに収められているような時代と制作状況を反映した、かつての“ゴールデン・ポップス”と当時流行のビート・サウンドやフォークロック・サウンドを融合したようなレコードが多数残されている。

 聴きどころをいくつか紹介しよう。このCDに収録されている作品で一番古いのは1963年にブライアン・ウィルソンが制作したハニーズの「The One You Can't Have」で、彼のサウンドがキャピトルのガールグループものの礎を築いたということなのか。実際ブライアンによるスペクター直伝の「ウォール・オブ・サウンド」の影響下にある曲が非常に多く(これがキャピトルの“芸風”だったのか、それとも単なる選曲家の好みなのかは不明)どれもやたらと音圧が高い。中にはどう聴いてもロサンゼルスのゴールド・スタースタジオ、しかも「ペット・サウンズ」セッションの合間に録音したんじゃないか?という音がしている女の子バンド、パンドラズの「Games」なんて曲もあったりする。

 他には美人三人姉妹ケイン・トリプレッツによる色々使い道がありそうな「ミッション・インポッシブル」テーマのボーカル版、「Popsicles And Icicles(63年3位)」のヒットを持つマーメイズが歌うトラフィック「Paper Sun」のカバー(!)など。パティ・セイモアのこれまたスパイもの「The Silencers」は、ナンシー・シナトラの「You Only Live Twice」に先駆けたクール&ビューティな“はすっぱガールポップ”で、好事家を喜ばせそうだ。

 今後もこのシリーズが続くとすれば“続編が出れば当然購入”のCDが増えてしまったことになるドリーム・チーム入魂の一作。なおこれとよく似た状況・時代背景のコンピレーションとしては、イギリスのエース・レコードが米コロムビア系の音源をまとめた「Where The Girls Are」第5集というのも出ているので「Girls Go Zonk!!」が気に入った方は併せてこちらもお聴きいただきたい。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/1/29)

青い部屋

青い部屋 - 戸川昌子:監修
(NTT出版)



 10年くらい前のこと。ある週末西麻布のクラブで明け方まで時間を過ごした僕は(まだ大江戸線がない時代だったので)始発電車に乗るため六本木通りを渋谷駅に向かってテクテクと歩いていた。青山学院のトンネルを抜けた辺りでふと側に目をやると、ビルからお供を何人か連れた戸川昌子が出てきて、黒塗りのハイヤーに乗り込んでいった。明け方の六本木通りに戸川昌子・・。まるで“都市伝説”に遭遇してしまったような、僕はそんな気分になった。

 「日本語のシャンソン」が非常に気になっていた時期があって。音楽のユニークさも勿論のこと、ステージに出てくる歌い手たちのいちいち個性的なところが物凄く面白くて、ひと頃毎月のように「日本シャンソン協会」主催のライブに通ったり、パルコ劇場に美輪明宏のリサイタルを観に行ったり。旅行のついでに群馬県渋川市にある「日本シャンソン館」なんてとこまで立ち寄ったり(たいしたところではなかったが)と、気になると結構しつこい性分なのである。

 そんな中で戸川昌子のステージを観たこともあった。その時はシャンソン協会会長の石井好子に彼女、そして何故か水森亜土(!)という豪華メンバーで、恐らく僕が観た中で最も楽しいシャンソンのコンサートだったと思う。ベテランのシャンソン歌手は概してリズム感に問題があり、洋楽リスナーとしては聴いててちょっとキツいところがあるのだが、戸川さん(何故か“さん”付け)もその例に洩れないものの、歌っている内容を観客に伝えようという姿勢や説得力には物凄いものがあって、不覚にも僕は客席で涙しそうになったことを覚えている。

 その彼女が昭和40年代前半から経営を続けているというシャンソン・バー「青い部屋」は、以前から気になっているけど(六本木通りで見かけたのは、その日の営業を終えた彼女だったのだ)でも足が向かない・・という状態が今日まで続いている。なにしろ毎晩店に戸川昌子がいるのだっ!考えただけで恐くない???そんな訳で「梅ちゃんの青い部屋」には行けても、本家には行けない腰抜けシャンソン・ファンであり続ける私。。

 その「青い部屋」は3年前に大幅リニューアルを行い、現在はジャンルを問わぬ濃〜いスペースに変貌しているという。この本は35年の店の歴史とともに、現在の「青い部屋」の様子を伝えるものとなっている。野坂昭如からピエール・バルーまで、本に登場する人々、そして紹介されるエピソード・・一つ一つがやたらに“濃い”。更に現在の「青い部屋」を支える若者(といって差し支えない年代の人々)の熱さ・・。今後も「青い部屋」を遠巻きに眺めながら、僕は地味にシャンソン・ファンを続けていくことになりそうだ。

内容等詳細(発売元のサイト)

「青い部屋」ホームページ

(2004/1/29)

Mickey Newbury

Harlequin Melodies (The Complete RCA Recordings...Plus)
- Mickey Newbury (Raven)



 この前紹介したネオン・フィルハーモニックのCDにはアルバムを宣伝するラジオ・スポットが5パターン入っているのだが、その中の一つに「ワーナー・ブラザーズ・レコードがお贈りするナッシュビル・サウンド」という台詞が登場するものがあった。そう、あのサウンドはナッシュビルのレコーディング・スタジオで生み出されたものなのだ。で、そのナッシュビルでネオン・フィルハーモニックのタッパー・ソウシーが、ワーナーと契約する以前に参加したアルバムが昨年オーストラリアでCD化されていたので、今回はこれをご紹介。

 このアルバムの主人公、ミッキー・ニューバリーは1971年の「An American Trilogy(米26位。その後晩年のエルヴィスがステージで必ず歌う曲となり、更に知名度をあげる)」で知られるカントリー系のシンガーソングライター。これは彼のファーストアルバム(1968年発表)で、当時ソングライターとして売り出していたニューバリーの“セルフカバー”を中心に構成されている(プロデュースは“エルヴィス組”のフェルトン・ジャーヴィス)。他のアーティストが既にヒットさせていた曲を挙げるとまずアンディ・ウィリアムスの「Sweet Memories(68年75位/イージー・リスニングでは4位)」、エディ・アーノルドの「Here Comes The Rain, Baby(67年74位/カントリーでは4位)」、ドン・ギブソンがカントリーで(67年8位)トム・ジョーンズがポップで(67年49位/イギリスでは7位)ヒットさせた「Funny, Familiar, Forgotten Feelings」、ボックス・トップスがアルバムで取り上げた「Good Morning Dear」「Weeping Annaleah」、そしてケニー・ロジャーズとファースト・エディションの「Just Dropped In(68年5位)」など。

 これらの曲をニューバリーは比較的落ち着いたトーンで吹込んでいる。で、タッパー・ソウシー(彼がソングライターとして音楽出版社と契約したのは、友人だったニューバリーの手引きによるものだという)はこれら録音の大半のオーケストラ・アレンジを担当しており、ネオン・フィルハーモニックのような派手さはないものの、ところどころその片鱗を窺わせるユニークなサウンドを聞かせる。タイプ的には南部産のポップ・サウンドという意味ではビリー・ジョー・ロイヤルあたりに、“シンフォニック・ポップ”という意味では数年前にCD化されたが全然話題にならなかった(僕は嬉しかった)キース・バーバーの「Echo Park」あたりに共通性を感じるか。このCDには「コンプリートRCAレコーディングス」を謳っているだけあってアルバムに収録されなかったシングル曲も入っているのだが、そちらにもソウシーは参加、中でも「Organized Noise」という曲(1968年にこのネーミングセンス!)では、タイトルに負けないマッドなオーケストラ・サウンドを展開している。

 結局このアルバムは売れず、RCAはニューバリーを解雇。ソウシーもアレンジャーだけの仕事に飽き足らず、翌年ワーナーからリーダー作を発表するのだが、ここで残された録音は「An Amerivan Trilogy」の成功後「Mickey Newbury Sings His Own」のタイトルで再編され、1972年に再び市場に出回ることとなる(再びヒットせず)。なおCDには更にボーナスとして80年代に彼が出したセルフ・カバーアルバムから7曲が収録されており「An Amerivan Trilogy」はそちらのバージョンを聴くことができる。彼は1988年にこの曲をカントリーチャートでリバイバルヒット(最高93位)させているので、てっきりそのバージョンだと思っていたら、どうも違うらしい(録音は1985年)。この人は一体何度この曲を録音しているのだろうか?

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/1/19)

Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich

If Music Be The Food Of Love

If No One Sang


Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich/
If Music Be The Food Of Love/If No One Sang
- Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich
(Repertoire)



 ここのところメルマガ「Flashback」では1960〜70年代のUKチャートを紹介していて、その関係もあって当時イギリスで活躍したアーティストのCDを気をつけて聴くようにしている。勿論好みもあってブリティッシュ・ビート系のグループであればまずサーチャーズ、あとジェリーとペースメーカーズ。「あれはブリティッシュじゃないよ。」と言われそうだがチャド&ジェレミーはCDで出たアルバムは全て持っている。

 で、本当は好きなんだけどなかなか人に言えないのがデイブ・ディー、ドジー、ビーキー、ミック&ティック、日本で言うところの“デイブ・ディー・グループ”。60年代半ばから後半にかけてイギリスで10数曲のヒットを放ち、日本でもGSにカバーされた「オーケイ!」や「キサナドゥの伝説」などで知られる彼ら、でも“作られたグループ”というイメージが強いのと、アメリカでヒットらしいヒットがない(HOT100入りしたのは「Zabadak」のみで、68年に最高52位を記録)ことが災いしてか、これまでまともに再評価されたことがなく、ベスト盤こそヨーロッパで何種類も出されているが、オリジナルアルバムのCD化が遅れていた。

 その“念願の”CDがこれらで、昨年末にヨーロッパの再発レーベルRepertoireから1〜3作目がボーナストラックをゴッソリ追加して発売された。彼らが“作られた”イメージがあるのは、シングル曲のほとんど全てをソングライター/プロデューサーのケン・ハワードとアラン・ブレイクリーが手がけているからで、感じはアメリカでいえばモンキーズが一番近いだろうか。但しデイブ・ディーたちはそれなりにキャリアを積んだライブバンドだったそうだが。

 各々のアルバムの内容に移ろう。まずグループ名が冠されたファーストはおどけた調子でメンバーを紹介するナンバーから始まる(さすがアイドル!)。「Hold Tight」の大ヒット(66年英4位)に合わせて急遽制作されたのか、ハワードとブレイクリー以外の作品も3分の1ほど収録されているが、それらも含め非常にキャッチ−でポップな曲揃い。“アイドル歌謡”としてはほぼ完璧なアルバムだと思うので、まず買うとしたらこれをお薦め。ボーナストラックには彼らが発表したシングル最初の6枚分と、66年のEPの音源を収録。売れなかったファーストシングルは別として、どれも耳を捕える佳曲ばかり

 続く2作目「If Music Be The Food Of Love」も前作を引き継いでポップなビートナンバーが並ぶ。今のバンドがカバーしても結構イケそうな曲が幾つもあって、あと見過ごされがちだがコーラスもなかなかいい。ボーナスには「オーケイ!」をはじめとする彼ら中期のシングル4枚分の音源をモノラルとステレオ両方で収録。そして3作目「If No One Sang」は68年という時代背景を反映して、コンセプト・アルバム的体裁になっている。エスニック風味も少々。“ソフトロック”という聴き方をするならこれが一番しっくりくるかも知れないが、彼らの持ち味であるポップさはやや後退。但し「キサナドゥの伝説」と「ザバダック」の二大ヒットがここに収録されているので、これはこれで無視できないアルバムなのだが。ボーナスには彼らが68年に発表したシングルとEP音源、そして「Zabadak」「Save Me」のイタリア語バージョンを収録。彼らなりに新しいロックの流れに追い付いていこうという気概が感じられる。

 その後彼らは69年にシングルをあと何枚かと、デイヴ・ディーが独立し“D.B.M and T”名義で発表した作品があるので、CDもう一枚分くらい音源がありそうなのだが、そこまではさすがに出さないか・・。もし出ても僕は買わないかも知れない。このリリースを機会に、これまであまり注目されることのなかった彼らの“ブリット・ポップ”が再評価されることを願ってやまない。

収録曲等詳細(All Music Guide)
Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich
If Music Be The Food Of Love
If No One Sang

(2004/1/23)

Soul Satisfaction 4

Soul Satisfaction 4: Mouth Watering Motown & B-Side Beauties
(Motown)



 モータウンというのは恐ろしい会社で、調べてみたら1960年代だけでTOP40ヒットを200数十曲も生み出している。アーティスト毎のヒットも他のレーベルと比べたら段違いの差があって、モータウンで一線級といわれるアーティストは40〜50曲のヒットを持つなんてザラ、20数曲もヒットを出せば十分「R&Rの殿堂」入りの資格があるが、モータウンでは“二線級”、10曲程度だと手短かにモータウンの歴史を語られた日にゃ名前すら挙げてもらえないという・・。それだけのヒットを持つ会社なのでCDの時代に入り、過去のカタログを掘り起こす際も主要なヒット曲の復刻で手一杯、“隠れた名曲”の発見など“隠れていない”名曲のケアもままならない中作業が進むはずもない状態がしばらく続いた。

 しかしモータウンもやがて大メジャー、ユニヴァーサルの1セクションとなり、社長も替わり、ということで音源の使用が随分自由になったようで、ヨーロッパ(特にイギリス)を中心にここ数年それまで見過ごされてきた音源の再評価が熱心になされている。

 今回紹介するのもそういったものの一つ。メジャーアーティストのアルバム収録曲やシングルB面曲、そしてチャート入りを逃したマイナーアーティストのシングル曲などをコンパイルした第3弾。“4”なのに第3弾なのは“1”がユニヴァ−サル系の他のレーベルのコンピだから。全24曲、メジャーどころでいくとスティービー・ワンダーの「Yester-Me, Yester-You, Yesterday」、マーヴェレッツの「Danger Heartbreak Dead Ahead」、マーサとヴァンデラスの「Honey Chile」、エドウィン・スターの「Stop Her On Sight (SOS)」、ここら辺のB面曲が入っている(当然A面ではない)。その他マーヴィン・ゲイやグラディス・ナイトのアルバム曲など、60年代後半を中心に60年代初頭から70年代半ばまでの音源をセレクト。

 イギリスは“ノーザン・ソウル”と呼ばれる比較的単調なビートのR&Bが人気で、数限り無く出ている“ノーザン”コンピレーションの多くはどれも似たような曲調がズラッと並び、CD一枚聴き通すのが結構苦痛だったりする場合があるが、流石はモータウン、そして選曲者の方も“ノーザン”に固執せずモータウン発足当初のレアなシングルや、70年代に入ってからの“フリーソウル”な(?!)ものなど、色々と変化をつけて楽しませてくれる。中にはBottom & Co.というグループが74年に残したアラバマはマッスル・ショールズの録音(モータウンなのにマッスル・ショールズ!因みにこのオリジナルシングルはイギリスで100ポンド以上の高値で取り引きされているという)なんてのもあって、発見も多い。大半はお馴染みのアーティスト、でもこれまで聴いたことがない曲ばかりなので、結構ショックの大きいCD。調べてみたらこの手のコンピレーションは最近結構出ていて、それらをamazon.co.jpでリストにしてみたので、興味のある方はご覧になってみていただきたい。

収録曲等詳細(音楽サイトのレビュー)

(2004/1/19)

だんしがしんだ

談志が死んだ―立川流はだれが継ぐ - 立川談志+落語立川流一門
(講談社)



 毎週のメルマガを読んでいただいて既にお察しの方もいるかも知れないけれども、落語が好きなんです。洋楽のライブより寄席に通う回数の方が多いくらい。で「噺家では誰が好きなの?」と訊かれると「談志です」ときっぱり。落語をよく知らない人からは「あぁ、あのたまにTVに出てくる変人ね。」という反応が返ってくるし、落語を少しでも聞いている人(特に年輩者)であれば「もう少しマシな名前が挙がんないのかね。」という反応が。

 簡単に落語界の勢力図を説明しておこう。現在落語界には4つの会派があると言われている。まず「落語協会」と「落語芸術協会」、これはちょっと前のプロレスで言えば「全日」と「新日」、但し馬場も猪木ももういない。残る2つ「円楽党」と「立川流」、これが「維新軍」なのかなんなのか・・プロレス詳しくないからヨクワカラナイ。。

 そんな訳で「立川流」、立川談志を頂点に噺家数十人が群れをなしている。弟子の中で一番一般に名前が知られているのが志の輔で、NHKの「日曜美術館」などに出てくる志らくの顔を知っている人もいるかも知れない。「快楽亭ブラック」という“変態”もいて、多くの人はその名を聞くと「あぁ、『美味しんぼ』の・・」となるが、あれは“快笑亭”。快楽亭は一度観たら絶対忘れられない強烈さ。彼らは協会を飛び出してしまったので「定席」と呼ばれる都内4つの寄席からは声がかからない。なので自分で場を作りながら落語を続けていかなければならない。

 「立川流」が発足して20年になるという。数年前に報じられた通り談志はガン宣告を受けており、その健康状態は立川流の会では常にネタにされる。談志も2年毎に死ぬ準備をしているそうで(彼曰く「今年は死なない年」だそうだ)語り残しちゃいけないということなのか、ここ数年物凄い数の本が出版されているし、CD全集も出された。彼の独演会は「これが最後かも・・」と思いつめた常連客でいつも満員(そこまで思いつめてはいないか)、私は年末の2ヶ月に4回行った。

 で、談志の死後、立川流は、そして落語界はどうなるのか?がこの本のテーマ。随分前から「落語界はこの人を中心に回っていくのだろう。」と共通認識の出来ていた古今亭志ん朝が亡くなり(談志も「そーゆー面倒くせぇことはヤツに任せておけばいい。」くらいの心持ちで協会を脱けたのではないか?)支柱となる存在を失った落語界の今後は?ここでは「その後」の立川流、そして落語界について弟子たちが対談、または鼎談形式で好き放題語っている。名指しの個人批判もバシバシ。特に協会に所属し、定席に出続けることで安心しきっている噺家たちに対しては「バカばっかり。」の一言でバッサリ。

 結局噺家たちの議論(?)なので「どうとでもなれ、俺は俺で勝手に生きる。」という結論になるのだが、そこに至るまでに見える師匠談志への畏敬の念、落語愛、現代では通用しないのかも知れない「落語」という芸能形態を、どのように現代の聴衆に受け入れさせるかの葛藤など各々の見解が面白い。本の後半には家元談志が弟子一人々々を「コイツはこんな奴。」と語るページがあり、これは今後何十年も弟子たちの芸道の指針になるだろうし、立川流ファンにとっても言われた彼らがどのように課題を克服していくのか?という興味の元になっていくのではないかと思う。また、この議論を立川流固有のテーマと考えないで「創業者がいなくなったオーナー企業」「教祖がいなくなった宗教団体」に置き換えて読んでみるのも、面白いかも知れない。

 「我々以外はみんなバカ。」というこの本を紹介しながらなんだが、「旧態依然」のお手本のような落語界もここ数年色々と興味深い動きが見え始めている。もしかしたらこれから数年間に起こることが、この先数十年の落語界を決定づけるのではないか?という予感がしているので、今年は若手を中心に熱心に通ってみたいと思っている。そこから得た収穫は、いずれこのコーナーでも紹介できるといいのだが・・(それじゃ洋楽サイトじゃないか)。

内容等詳細(発売元のサイト)

(2004/1/19)

The Neon Philharmonic

Brilliant Colors: The Complete Warner Bros. Recordings
- The Neon Philharmonic (Rhino Handmade)



 2004年に入って最初に聴いたCD(正確にいうと年末に届いたCDをMDに落とし、これのみ持って実家に帰ったので、正月の移動中他に聴くものがなかった)がこれ。1969年に「Morning Girl(米17位)」のヒットを放ったスタジオ・プロジェクト、ネオン・フィルハーモニックが60年代後半から70年代前半にワーナー・ブラザーズに残した全録音を集めた2枚組が、米ライノのネット通販専門レーベル「Rhino Handmade」から発売された。

Moth Confesses 彼らのファーストアルバム「The Moth Confess」は数年前に米サンデイズドからCD化されていて、一部の音楽ファンの間で話題になったが、今回はそれにセカンドアルバム「The Neon Philharmonic」と、その後発表したシングル及び未発表曲を2枚のCDに収録した“完全版”。「The Moth Confess」はジミー・ウェッブ(特に彼が制作したリチャード・ハリスのアルバム)の強い影響下にある“シンフォニック・ポップ”で、その手の音楽が好きな者にはたまらない内容。続くセカンドは、ファーストの作風を引き継ぎながらやや重い雰囲気になった感じ(なにしろ冒頭曲のタイトルは「君はドレスデン(第2次大戦中、空襲で壊滅的な被害を受けたドイツの都市)を覚えている年齢かい?」である)。

 ここまでが1枚目のCDで、2枚目はシングル&未発表曲集。前述のアルバムからカットされた2枚のシングル(モノラル・シングルバージョン)はおいといて、1969年から71年にかけてリリースした5枚のシングル+3曲の未発表、言ってみれば“失われたサードアルバム”の方を。この時期になると“オーケストラが主役”という作風は後退し、ボーカルのドン・ガントを中心としたアダルトなポップスに移行している。ソングライター/プロデューサーのタッパー・ソウシーの作品は未発表曲に至るまでどれも質が高く、そのユニークなコード使いは他の作曲家に例えると70年代に円熟期を迎えたバート・バカラックを思わせる・・とでも書けば少しは感じが伝わるか。アルバムの大仰なオーケストラ・サウンドに抵抗感を思える人でも、これらの作品は非常に耳障りがいいのではないかと思う。

 これらの作品の実質的な主役タッパー・ソウシーは、これだけの作品を生み出す才能を持ちながら、70年代以降他のアーティストを手掛けるなど目立った活動をしていないのが非常に不思議な人で、いずれあるかも知れない未発表作の発掘を心待ちにしたいものである。ともあれ、60年代後半のソフトなポップスを好む音楽ファンにとって「The Moth Confess」は必聴のアルバム、それ以上の音源を聴きたいハードコアな音楽ファンのみライノにメールを送ってこの2枚組を取り寄せる。と、そんな感じだろうか。なにしろ安くないし(40ドル近くする!)、ライノ側も「こんなの欲しがるの、せいぜい世界で2,500人だよね。」と限定プレスにしているくらいなので。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/1/17)

B.T.Puppy

White Whale


The B.T. Puppy Rarities...Night Time Music
- Phantom Jukebox Volume 1
The White Whale Rarities...In The Garden
- Phantom Jukebox Volume 2
(Rev-Ola)



 以前紹介したとおり、イギリスのレーベル「Rev-Ola」はこのところほぼ毎月60年代のマイナーなソフトロック作品を復刻し続けており、それに対応し続けるこちら側は何を入手するかの取捨選択や、クレジットカードの引落し残等に頭を悩ませる毎日を送っている。但しこれまで同社がリリースしてきたものの多くは、既に日本やアメリカでCD化済で“ソフトロックの名盤”の評価が確立しているものの後追いという印象が強かったが。

Puppy そんな中、同社がスタートさせた新シリーズが「Phantom Jukebox」。これはアルバム復刻から漏れがちなシングル・オンリーのアーティストや、アルバム未収録の曲を中心にレーベル別に編集しようというもので、第一弾がB.T.パピー・レコード編。この会社はボーカルグループとしては勿論、プロデューサーとしても多くのヒットを生んでいたトーケンズが運営する「ブライト・チューンズ・プロダクション」が制作した作品のリリースのため設立されたもので、当のトーケンズをはじめ弟分的存在のハプニングスなどが在籍していた。

 “レアリティーズ”がこのCDのテーマなので、彼らのヒット曲の収録はなし。その他のアーティストとしては既にアルバムがCD化されたカンタバリー・ミュージック・フェスティヴァル、いずれ単独CDが出るであろうサンデー・トレインなど。トーケンズ関係ではどういう訳か64年〜66年にB.T.パピーから出したシングルやカービー・ストーン・フォーとの共演盤は入らず(これも今後のリリース用にとってあるのか?)、それ以降にワーナーからリリースしたものを収録。うちトーケンズ名義ではなくメンバーの連名でリリースした「Mister Snail」は日本のワーナーから出された「It's A Happening World」のCDには未収録だったので貴重。ハプニングスのボブ・ミランダが作りジェリーとペースメーカーズがヒットさせた「Girl On A Swing」のミランダによるソロ録音というのも、今回初めて存在を知った。

 収録されている作品の多くは、トーケンズの面々のペンによるものなので統一感があり、アルバム通してソフトロックを楽しむことができる。またトーケンズのメンバー、ハンク・メドレスとの共同プロデュースで70年代にトニー・オーランドとドーンを大成功させるデイヴ・アペルが結構早いうちからB.T.パピーと絡んでいることがわかったりして、色々と興味深い。

White Whale 一方第二弾は西海岸のホワイト・ホエール編。こちらの方がヒットを放ったアーティストは多く、まず筆頭はあの時代有数の人気グループであったタートルズで、加えてニノ・テンポとエイプリル・スティーヴンス、クリーク、リズ・デーモンとオリエンタル・エクスプレス、変わったところではレネ&レネのスペイン語曲「Lo Mucho Que Te Quiero(69年米14位)」なんてヒット曲もあるが、このCDにはそれらヒットは1曲も入っていない。数年前にアメリカのVarese Sarabandeというレーベルからホワイト・ホエールのヒット曲集は発売されており、これはその明確な続編として企画されている(ダブりは一曲のみ)。

 レーベルの全体的な傾向としては、ソフトロックというよりはフォークロック〜ガレージの印象が強いが、ここでは“サンシャイン・ポップ”に重点をおいて興味深いアーティストが多数収録されている。まず若き日のウォーレン・ジヴォンが在籍していたライム&サイベル、ジャン&ディーンのディーン・トレンスがアルバム「Save For A Rainy Day」に参加したミュージシャンたちを従えてビーチボーイズの「Smile」収録曲をカバーしたラフィン・グレイヴィ名義の「Vegetables」、後に俳優/歌手として有名になるドン・ジョンソンがメンバーだったのでは?と噂されるホーセズ等々。セルジオ・メンデスの完コピぶりが微笑ましいテキサスのグループ、トリスティ・ジャネイロも単独CDが出ているが、全部があの調子だとキツい人はこのCDで間に合わせていいのかも。

 個人的に一番の発見はフレディ・アレンというアーティストによる「We've Only Just Begun」。この人の正体はパレードのスモーキー・ロバーツで、当初CMのジングル用に作られた短いメロディを、レコードにするため3分以上の尺に作り直すようロジャー・ニコルスに依頼した(ロバーツとニコルスはヴォーグスの「Just What I've Looking For」を共作するなど旧知の仲)のは彼なんだとか。カーペンターズの代表曲となる「愛のプレリュード」の誕生秘話として、トリビアの種が一つ増えたような気分。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2004/1/17)