八亀's Picks - September 2003

過去の八亀's Picks

9.23 The Pop Hits Collection - Skeeter Davis
9.23 Measure For Measure: The John Carter Anthology - VA
9.23 SUBURBIA SUITE; Evergreen Review
9.13 Diana (Deluxe Edition) - Diana Ross
9.13 Rain & Shine - Canterbury Music Festival
9.13 The Complete CBS Recordings - The Peddlers
9.06 TOP40 Music on CD 1955-2002
9.06 The Get Easy!: Sunshine Pop Collection - VA
9.01 The Lost Sessions - Eternity's Children
9.01 The Rare Bacharach 1 - VA

Skeeter Davis

The Pop Hits Collection - Skeeter Davis
(Taragon)



 またトリビア。“ビルボード誌のヒットチャート史上、もっともクロスオーバー(複数チャート)な成功を収めたシングルは何?”エルヴィス?それともレイ・チャールズ??正解はスキーター・デイヴィスの「The End Of The World(1963年POP2位/イージー・リスニング1位/C&W2位/R&B4位)」なんだとか。まぁ、1963年当時のR&Bチャートはちょっとアレな状態なので少々割り引いて考えないといけないが、それにしてもこれに匹敵する成功を収めたシングルは他にちょっと思い当たらない。

 1950年代に“デイヴィス・シスターズ”としてデビューして以来、彼女はカントリー界をメインに活躍を続け、カントリー・チャートにおけるヒットは70年代までに40曲超を数える。その彼女が「エンド・オブ・ザ・ワールド」の成功をきっかけに60年代に録音したポップ寄りの作品を集めたのがこのCD。この時期の(既に30歳を過ぎていた)彼女の代表曲といえばジェリー・ゴフィンとキャロル・キング作の「I Can't Stay Mad At You(恋はいじわる:63年7位)」ということになるが、この2人絡みの曲が全6曲、他にもカバー曲を中心に魅力的なナンバーが並ぶ。

 1964年のビートルズ来襲以降アメリカのポップスは様変わりし、それまでの如何にも“アメリカン・ポップ”風な曲はヒットチャートに登場する機会を大幅に奪われ、彼女もHOT100から姿を消すこととなるのだが、そんな状況下彼女を受け入れたのも(そのポップな音楽性に批判の声もあったそうだが)やはりカントリー・チャート。懲りもせずリリースを続けた(お陰でこのCDが存在する)ポップな作品の多くは“カントリー・ヒット”となり、66年には「夏」をテーマとしたコンセプト・アルバム(?)「Singin' In The Summer Sun」なるものまで発表。そこからこのCDに収録された「Under The Board Walk」「Remember (Walkin' In The Sand)」「Please Don't Talk To The Lifeguard」などのカバーの“同時代性”の無視ぶりといったら!この“無反省”さが素晴らしい。

 ガール・ポップをはじめとした“ゴールデン・オールディーズ”派、そして佳き時代のナッシュビル・サウンド好きにはたまらなく「大好物!」なコンピレーションになっている。残念ながらヒット曲をすべて網羅、というCDではないが、前述のゴフィン=キングによる作品群、そして80年代にトレーシー・ウルマンがカバーヒット(84年英18位)させた「Sunglasses」といった曲の中に、きっと掘り出し物が見つかるはず。

 余談になるが。10年ほど前アメリカ旅行の際にナッシュビルで伝統的なカントリーのショー「グランド・オール・オープリー」を観る機会に恵まれ、そのキャストの一人として登場したのが彼女。当時まだNRBQのメンバーの奥さんだったはずの彼女が、カントリー・ショーなのにステージで「エンド・オブ・ザ・ワールド」と「恋はいじわる」を歌い、舞台のそでから彼女と同じヘアスタイルをしたプードルを抱えて戻ってきて「見て〜!これうちの子なの〜っ!!」と見事なまでの“年齢不詳キャラ”に育っていたことに軽いショックを受けた覚えがある。本当にまったくの余談だが。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2003/9/23)

The John Carter Anthology

Measure For Measure: The John Carter Anthology - VA
(RPM)



 60年代〜70年代を通じて英米で様々なプロジェクトを成功させてきたイギリスのアーティスト/プロデューサー/ソングライター、ジョン・カーターの作品群は、これまでプロジェクト毎に様々な形でCD化されてきたが、今回はそのキャリアを総括する2枚組が登場した。

 60年代を通じて相棒のケン・ルイスと行動をともにした彼はサウザナーズ、アイヴィー・リーグ、フラワーポット・メンと次々とグループを結成し、アイヴィー・リーグでは「Tossin' And Turnin'(65年英3位)」が、フラワーポット・メンでは「Let's Go To San Francisco(67年英4位)」がイギリスでTOP10ヒットを記録。一方でソングライターとして他のアーティストにも作品を提供、ハーマンズ・ハーミッツの「Can't You Hear My Heartbeat(65年米2位)」は彼とルイスのコンビによるものである。

 アイヴィー・リーグ以降の彼の作風は、一言でいえば“ブリティッシュ・ソフトロック”。ビーチ・ボーイズなどに強く影響を受けたハーモニー・ポップは、90年代以降特に日本で人気が高い。正直60年代の作品は“耳タコ”状態なものが多く詳しく紹介する気はないので、ここでは比較的珍しいものを中心に。まずは「作家」としての彼が吹込んだデモ・テープの数々。ハーマンズ・ハーミッツとの関係は以降も続いたようで、ここには「Sunshine Girl(68年英8位)」「My Sentimental Friend(69年英2位)」のデモが収録されている。また今回初めて彼の作品であることを知ったが、メリー・ホプキンの「Knock Knock Who's There(70年英2位)」も聴くことができるし、何故か彼の作品ではない「Winchester Cathedral(66年にニュー・ヴォードヴィル・バンドが全米ナンバー1を記録)」までが収められている。

 続く70年代の作品をメインとした2枚目の方は、なんといっても「Beach Baby(74年米4位/英13位)」が大ヒットしたファースト・クラスの作品が目を引くが、それ以外にもヘイスタック、スケアクロウ、スタンフォード・ブリッジ、キンケイドといった成功しなかった、またはヨーロッパの一部の国だけで成功したプロジェクトの作品が興味深い。ワーカホリックといっても差し支えない当時の彼の作品乱発ぶり(でもどれも一定以上のレベルを保っている)は、あの時代の熱気を感じさせてくれる。そういえば彼はファースト・クラスでアイヴィー・リーグ時代の「Funny How Love Can Be」をリメイク(75年米74位、このCDにはアイヴィー・リーグ版が収録されている)し、不成功に終わったアメリカにおける60年代への“復讐戦”を人知れずやっているのだが、当時それに気づいた人はどれだけいたのだろうか。。

 ジョン・カーター関連のCDをこれまでも買っている音楽ファンにとっては、彼の活動歴のおさらい、そして数々の成功したプロジェクトの裏には、当然のことながらそれ以上の不成功に終わったプロジェクトがある、ということを再認識できるアルバム。逆にこれまで彼の存在を知らず、アメリカのヒットチャートには詳しい音楽ファンにとっては、70年代突然生まれたかのように思えるファースト・クラスの「Beach Baby」のヒットの背景には、10数年という歴史があることを今更ながら知ることができるアルバムである。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2003/9/23)

SUBURBIA SUITE

SUBURBIA SUITE; Evergreen Review
(Suburbia Factory)



 前回ペドラーズのCDを紹介した際に図らずも使ってしまった表現“サバービアな”の語源である「Suburbia Suite」のアンソロジーが偶然にも出版されたので紹介しておきたい。

 「Suburbia Suite」は90年代に不定期に発行された現在では“伝説的な”ディスク・ガイド(ミニコミ)。発行人はその後音楽ファンに「Free Soul」なる新しい概念を植え付けるクラブ・イベント&無数のコンピレーションCDを企画、またタワー・レコードのフリーペーパー「Bounce」の編集長として同誌を“日本一の音楽誌”に育て上げたことでも知られる橋本徹。紹介する音楽はイージー・リスニングからブラジリアン・ポップス、ブーガルーなど、それまでごくマニアックな音楽ファン以外には語れることのなかったものばかり。

 当時同誌がユニークだと思ったのは、どの音楽に対してもニューウェイヴ以降のイギリス音楽の影響下にある視点から語られているように感じられたから。恐らく80年代以降過去に取り残された未知の音楽の発掘/再現に果敢に取り組んだイギリスのインディ・レーベルの活動に大いに触発されたものと思われるが、これは以降の音楽の聴き方に非常に大きな影響を与えていると思う。もう一つは音楽の評価に“グル−ヴ感”という新しい視点を与えた点。R&Bならいざ知らず、それまでポップスやイージー・リスニングをそういった視点から評価するものはなく、同誌のお陰でたちまち“幻の名盤”化した作品は枚挙に暇がない。

 ここが「元祖」かどうかはともかく、ジャズボサ、シネジャズ、モッドジャズ、メロウ・グルーヴ(これは“フリー・ソウル”の前によく使われた)、アコースティック・グルーヴといったキーワードが現在当然のように使用されているのは「Suburbia」の存在なくしてはあり得なかっただろう。あと書き忘れるところだったが「Suburbia」のスポークスマン的存在として様々なメディアから情報を発信していた(当時)ピチカート・ファイヴの小西康陽、彼の存在も大きかった。90年代前半(現在もそうかも知れないが)、橋本・小西の二人は東京の一部の音楽ファンにとってはちょっとした“カルチャー・ヒーロー”的存在だったのだ。

 橋本徹が過去10年間に様々なメディアで発表した文章を10(とう)インチ盤サイズで集めたこの本は、現在も有効な60〜70年代の“グルーヴィーな”音楽のカタログであると同時に、90年代のある時期、ごく限られたエリアに確実に存在した「空気」を真空パックした“フューチャー・レトロ”なカタログでもある。恐らくこの「空気」を吸って育ったであろう人材が多く活躍している渋谷の外資系CD店では、現在何処も挙ってこの本のキャンペーンを展開中、ちょっとした盛り上がりを見せているので渋谷来訪の際は各店鋪をひと回りしてみることをお勧めする。なお第二集は11月に発売予定だとか。

内容等詳細(発売元のサイト)

(2003/9/23)

Diana (Deluxe Edition)

Diana (Deluxe Edition) - Diana Ross
(Motown/Universal Chronicles)



 ポップス史に残る名盤にボーナス・トラックをうんと追加して2枚組で蘇らせるユニヴァーサルの「Deluxe Edition」シリーズ、これまでにも色々と興味深いアルバムが珍しい音源とともに“ミニ・ボックス化”されたが、今回はダイアナ・ロス1980年の大ヒットアルバムがその対象となった。

 実はこのアルバム、個人的にはギリギリ“リアル・タイム”ではなく、それから約10年後、CDの時代になって初めて「Upside Down」や「I'm Coming Out」といった曲を聴いて、完全に打ちのめされた覚えがある。80年代を通じて数々の名作ダンス・アルバムを生み出したプロデューサー、シックのバーナード・エドワーズとナイル・ロジャース初の“外部仕事”であったこのアルバムは、オリジナルのミックスを聴いたモータウンのスタッフがあまりのシック色の強さに「これはダイアナのアルバムではない。」と判断し、LAでリミックスし直されたバージョンが正式に発売されたことで有名だが、今回はそのボツになった“オリジナル・シック・バージョン”をボーナスとして収録。

 水増しされた(?)正式バージョンでもあれだけの衝撃があったのだから、オリジナルはどれほど凄いんだろう?と、発売の予告があった時点から随分楽しみにしていたのだが、実際聴いてみるとバンドの演奏時間が長いくらいでそれほど極端な違いはなく、むしろ「余計な装飾が多い」という印象なので、リミックスの指示を出した当時のモータウンの判断はあながち間違いではなかった、ということなのだろう。

 そして更にボーナスとして一枚付けられているのが、70年代後半から80年代前半に彼女が公式/非公式(プロモーション・オンリー)にリリースした12インチシングル音源集。つまりベスト・オブ“ディスコ・ディーヴァ”ダイアナ・ロスがオマケに一枚付いてくるという。これは嬉しい。「Deluxe Edition」シリーズは、物によってはボーナス・ディスクでリハーサル・テイクとかミックス違いとかを延々と聞かされて終わる、というパターンがあったりするので、今後はできるだけこういった“編集意図の感じられる”物にしていただきたい(と、アメリカ人に言っても声は届かない)。なお今回ドナ・サマーの「Bad Girls」も同じようなボ−ナス・ディスク付きで発売されたのだが、彼女の場合「12インチ・コレクション」がこれまで何度も出ているので、いま一つ購買意欲がそそられない。。

 いずれにしても「Diana」が非常に良いアルバムであることは間違いないし、それに一連のディスコ録音がオマケに付いてくるのだから、これは非常にお得といえる。「カミング・アウト」という言葉が日本でも認知されるようになったのは90年代に入ってからのことなので、今聴く「I'm Coming Out」は、きっと当時とはまったく違う印象のはず。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2003/9/13)

Canterbury Music Festival

Rain & Shine - Canterbury Music Festival
(Rev-Ola)



 60年代に活躍したボーカルグループ、トーケンズの面々はプロデューサーとしても優れた仕事を残しており、彼らが設立したレーベル「BTパピー」からはハプニングスというヒットメーカーも生まれた。このレーベルは現在も営業しており、トーケンズの新作などをリリースしているのだが、何故か60年代のアルバムはなかなかCD化されなかった。

 今回この「BTパピー」の再発プロジェクトに乗り出したのが、ソフト・ロックファンの強い味方、イギリスのRev-Olaで、手始めにトーケンズのレアなアルバム「Intercourse(こちらは本家BTパピーからも再発されている)」とともにリリースされたのがこの奇妙な名前を持つポップグループのアルバム。

 ライナーノーツを読んでもこのグループが何故ト−ケンズのもとアルバムを発売するに至ったのかよく解らないところがあるのだが、簡単に経緯を書いておくと、BTパピーとソングライター契約を結んでいたメンバーの縁でレコーディングが行われ、アルバムは1968年にリリース。しかし当時プロデューサーとして多忙を極めていたトーケンズ(彼らによればレコード業界全体の売上の2.7%は、彼らが手掛けた作品によるものだったとか)はこのアルバムの売り出しに時間を割くことが出来ず、結局150枚(!)がプレスされたのみで作品はあっという間に闇に消えてしまったという。。

 音楽的にはちょっとバブルガムがかったソフト・ロック(ディノ、デシ&ビリーとか)といった感じだろうか。他にまったく違った層のロックファンにアピールしそうなビート・ナンバー「Super Duper Trooper」なんてのがある一方で、バンドのメンバーが参加しているのかどうかも怪しいインストが2曲入っていたりと、ちょっと混沌とした内容。この時代、この手の“隠れた名作”は幾らでもあるのだろうから、追いかける方は大変である。

 同レーベルのディスコグラフィを見ると興味深いアルバムが結構あるので(トレイド・ウィンズのアルバムなんて本当に存在するのか!?)今後の再発シリーズに期待したい。なおハプニングスのアルバムは今年の前半にCollectables社から2in1でCD化されているので、興味のある方は是非ご入手を。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2003/9/13)

The Peddlers

How cool is cool... The Complete CBS Recordings
- The Peddlers (Columbia)



 60年代にコロンビア・レコード(英米とも)から発売されたアルバムのジャケットはどれも共通のいい雰囲気を持っていて(特に写真もの)、中古レコードを見かけると知らないアーティストでもつい買ってしまうことがある。で、音楽的にもハズレが殆どないというのが、当時の同社の凄いところ(クライヴ・デイヴィス!!)。

 今回買ったのもそんな一つ。イギリスのイージー・リスニング/ジャズ・トリオ、ペドラーズが1967〜69年に発表した3枚のアルバムを2枚のCDに収録したコンプリート盤(全42曲)。ジャケットの雰囲気と曲目(ポピュラーな曲のカバーが多い)で衝動買いしてしまったのだが、これが意外なくらいカッコいい。

 一言でいえばジョージー・フェイム的な“モッド・ジャズ”ですかね。調べたら日本でも“カフェもの”のコンピレーションに彼らの曲が収録されているので“サバービアな”音楽ファン(この言い方もう古い?)にはとっくにお馴染みのグループなのかも知れないが、すみません、私殆どイギリスものを無視して育ってきてしまったもので。

 ジョージー・フェイムに比べればボーカルも全然上手いし、ソウル・ジャズの先達(特にレイ・チャールズ)への憧憬があまりにもストレートで少々くどいところもあるが、どれもポップでヒップで、ものすごく楽しめる。因みに彼らが当時放った2曲の全英TOP40ヒットのうち「Birth(69年17位)」はもろレイ・チャールズ風、「Girlie(70年34位)」はブラス抜きのブラッド、スウェット&ティアーズといった趣。

 最近イギリスの音楽に対する不勉強さを痛感していて。メルマガ「Flashback」でも近々「イギリスお勉強シリーズ」をやろうかと考えているくらい。今回も改めて認識させられました。

収録曲等詳細(発売元のサイト)

(2003/9/13)

TOP40 Music on CD

TOP40 Music on CD 1955-2002 - Pat Downey (Authur)
(Pat Downey Enterprises)



 以前テンプテーションズのCDを紹介したときに「シングル・バージョンの鬼のような人がいて、分厚いガイド本を出している。」と書いたことがあったが、その本の最新版が先日発売された(画像は前回のエディション)。

 1955年以降に生まれたすべてのTOP40ヒット(「Cashbox」誌が基準と言われているが、同誌でTOP40入りしていない曲も含まれているので実際のところは不明)について、アメリカで発売されているどのCD(シングルCDを除く)に収録されているか、そしてどのCDが“正しい”シングル・バージョンなのかが延々とリストアップされているこの本の存在を数年前に初めて知ったときは、ちょっとした衝撃を覚えたものだった。一つ一つのCDに「これはシングル・バージョン」「LPバージョン」「どっちでもない。」「シングル・バージョンに似せてエディットしているが偽物。」など一刀両断のコメントがつけられていて、著者のこの“道”にかける情熱がひしひしと伝わってくる。

 元々私はあまりシングル・バージョンに拘る方ではないのだが、世の中にはシングル・バージョンのみを捜し求めているマニアも結構いて、この本をCDコレクトの絶対基準としている人も少なからず存在する。この本で「大丈夫」と書かれないと不安で購入できないため、米国以外で出たCDには手が伸びないし、米国盤もこの本の最新版で取り上げられるまでは恐くて購入できないという重度の“Pat Downey依存者”が。

 そんなこともあって私は密かにこれを「悪魔の本」と呼んで敬遠していたのだが、今回は誘惑に負けてついに購入してしまった。世界中のコレクターの熱意に応えるように、非常識に分厚くなってしまった本版(第9版)のボリュームは約1,200ページ。2002年12月までのTOP40ヒットが取り上げられているので、オールディーズ愛好者だけでなく「最新ヒットをどうやったら効率的に集めることができるか?」というタイプの音楽ファンにも重宝する一冊だと思う。

 但し、近年のヒットは“正しい”シングル・バージョンの認定が困難となっているせいか、各CD収録曲の演奏時間を表記するのみにとどめており、往年の“切れ味”に欠ける(明らかにシングルと違うバージョンに何のコメントも付けられていないのは、かなり不親切)。またこの本の影響もあってか以前のように変なバージョン(オリジナルに似せた再録とか、オリジナル・シングル発売当時、ラジオにかけてもらい易くするためレーベルに表記した実際の演奏時間より短いタイムを鵜呑みにして、それに合わせてCD用に音源をエディットしてしまったという、そそっかしい“偽シングル・バージョン”など)が発売されているケースは目に見えて減っており、かつてのスリルのようなものは薄れてしまっている。それだけ“影響力のある”ガイド本であるということではあるのだが。。

 この本によると「2002年末現在米国内でCDアルバムに収録されていない1955年〜2002年のTOP40ヒットは330曲ある」と書いてあるが、実際に数えてみるとそれ以上ありそう。ともかく年代別にリストしてみたので、チャートマニアの方はどうぞご一読を。

  • 1955年〜1959年(103曲)
  • 1960年〜1969年(141曲) うちCameo/Parkwayレコード57曲
  • 1970年〜1997年(91曲)
  • 内容等詳細(発売元のサイト)

    (2003/9/6)

    Sunshine Pop Collection

    The Get Easy!: Sunshine Pop Collection - VA
    (Universal Jazz Germany)



     “サンシャイン・ポップ”、日本でいうところの“ソフト・ロック”のコンピレーションがドイツで発売された。ライナーノーツ、そして曲目リストを見ると相当日本の状況、一言でいってしまえば「Vanda」誌の影響下にあるようで、2枚組40曲のうちかなりの部分を同誌でお馴染みのアーティストや曲で占められている。

     ただ、お馴染みとはいえ正式なライセンスのもとCDされたのは初めての曲も結構あって「この手のCDは聴き飽きた。」という感覚にはならない。またこの「The Get Easy!」シリーズは元々ラウンジ系のコンピで、このCDにもイージー・リスニング系のアーティストによる耳障りのいいロック作品が多く収録されており“似非ビーチ・ボーイズ”風の裏声ポップグループがやたらと珍重される我が国とは少々カラーが異なっている。

     現在物凄い数のレーベルと音源を抱えているユニヴァーサルなので選曲は幅広く、純粋なポップからジャズ・ボサ風のものまで多彩。珍しい音源としてはケニー・ランキンが60年代にマーキュリーに録音した方の「Peaceful」だとか、ドン・コスタのオーケストラによる「サイモンとガーファンクル作品集」からの「Punky's Dilemma」など(アルバム単体の復刻も望みたい!)があるが、一番嬉しいのはヴァン・ダイク・パークスがMGMに残したデビュー・シングル「Number Nine」の収録!なんだ、何年経ってもCDにならないから契約関係で難しいのかと思ってたら、出せるんじゃない。日本のレコード会社が先にやるべき仕事でしょうこれは。

     “ソフト・ロック入門用”としてもなかなか充実した内容・音質のCD。ユニヴァーサルの音源はまだまだ無尽蔵にあるので続編も望みたいが、ソフト・ロックがメインのシリーズではない(他のボリュームにはフレンチ・ポップやジャーマン・ポップ編などがある)ので、これ以上のものを期待することは無理か。またヨーロッパの何処かの国で、なんらかの形で同様なコンピレーションがひょっこり出ることを期待。

    収録曲等詳細(発売元レーベルのサイト)

    (2003/9/6)

    Eternity's Children

    The Lost Sessions - Eternity's Children
    (Gear Fab)



     ソフトロック・ファンの間では1968年のヒット(米69位)「Mrs. Bluebird」がお馴染みのニューオリンズ出身のポップグループ、エタニティーズ・チルドレンは、しばらく廃盤状態だったRev-OlaのCDが昨年再発売され、彼らが当時公式に発表した作品の大半をそこで楽しむことができるが、今回はそのほぼ完璧といえる“追補盤”が発売された。

     レコーディング・アーティストとしての彼らのコアな活動時期は1967年〜69年頃だが、このCDはその前後の時期に残された以下の録音を集めている。

  • デビュー前のデモ録音
  • A&Mから発表したデビューシングル
  • Towerに移籍し発表したアルバム未収録のシングル曲
  • Libertyに移籍後録音したが、未発表に終わった作品群
  •  ソフトロック系のアーティストの殆どがそうだが、最初から“ソフトロックな”バンドというのはまずなく(レコーディング時にプロデューサー主導でそうなる場合が殆ど)、デビュー前はエタニティーズ・チルドレンも例にもれず結構ガレージっぽい演奏をしていたことがわかって面白い(そもそもこのCDを出しているGear Fabは、ガレ−ジ系のマイナーバンドの発掘を得意とするレーベルである)。またA&MやTowerの貴重なシングル音源も有り難い限りだが、個人的にはその後Libertyに残した70年代に向けての試行錯誤(女性ボーカルをメインにMOR路線をとるか、それともR&B色を前面に押し出すか)が非常に興味深かった。なにしろスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「Somebody's Watching You」のカバーなんてのまでやっているのだから。

     Rev-Ola盤とこのCDの収録曲を録音時期順に並べ替えてMDなどで聴いてみると、このバンドの歴史がよ〜く解る仕組み。なおグループは1975年まで存続したとのことだが、メンバーのうちブルース・ブラックマンとジョニー・ウォーカーは「Moonlight Feels Light(76年米3位)」でよく知られるスターバックを結成。チャーリー・ロスはソロとして「Without Your Name (Mr. Jordan)(76年米42位)」などのヒットを放ち、女性ボーカルのリンダ・ロウリーはキャロル・キングらの作品に参加と、以降もそれぞれ活躍を続けた。そのルーツという意味では、70年代ポップスのファンにも気になるグループかも知れない。

    収録曲等詳細(発売元レーベルのサイト)

    (2003/9/1)

    Rare Bacharach

    The Rare Bacharach 1: 53 Elusive Songs and Versions, 1956-1978
    (Raven)



     バ−ト・バカラックの作品集は過去10年間だけを考えても世界中で数えきれないほどの種類がリリースされている。自称“バカラック研究家”という側面を持つ(ことになっている)私も、可能な限り探し出して入手するようにしているが、内容が似通っているものが多いこともあって、なかなかすべてをチェック、という訳にはいかない。

     そんな“バカラックもの”の最新版であるこれは、オーストラリアの通好み再発レーベル、レイヴンからのリリース。ここではタイトル通り彼の比較的珍しい作品にポイントを絞って2枚組53曲を収録している。初CD化かどうかは別として、結構珍しめのヒット曲を幾つか挙げてみると

    Who's Been Sleeping In My Bed? - Linda Scott ('64 POP#100)
    You're Following Me - Perry Como ('61 POP#92)
    Rome Will Never Leave Us - Richard Chamberlain ('64 POP#99)
    Long After Tonight Is All Over - Jimmy Radcliff ('65 UK#40)
    Something Big - Mark Lindsay ('71 AC#36)

     ・・なんて感じ。50年代後半の貴重なサントラ曲から、70年代のMOR系の作品まで。シングルB面曲など、これまで聴いたことのない作品もかなり収録されているので、かなりの“バカラック上級者”でも楽しめるのではないかと思う。実はバカラックがソングライターとしてブレイクしたのは本国よりイギリスが先なので(アメリカでは中ヒットに終わった「The Story Of My Life」が1958年にイギリスで競作合戦となった)クリフ・リチャードやアダム・フェイスなど当時のイギリスのアイドルたちが取り上げていた、現在となっては埋もれた作品をピックアップしてくれているのは嬉しい。

     勿論“基本の”作品集(ヒット曲集)を聴いた上での話ではあるが、コレクションに加えて損のないCDであると思う。タイトルからすると、いずれ第2集もリリースされそうな感じなので、そちらも楽しみに待ちたい。

    曲目等詳細(発売元レーベルのサイト)

    (2003/9/1)