八亀's Picks - July 2003

7.12 Blue Winds Only Know - Dick Campbell
7.5 Psychedelic Soul - The Temptations
7.4 High Noon - Frankie Laine
7.4 Tony Perkins

Blue Winds Only Know

Blue Winds Only Know - Dick Campbell
(Rev-Ola)


 ソフトロック系のレアなアルバムを続々と復刻するRev-Olaから、また面白いアルバムが発売された。

Dick Campbell Sings Where It's At このアルバムの主役ディック・キャンベルは、一部ボブ・ディランファンの間では1965年にポール・バターフィールドやマイク・ブルームフィールドといったミュージシャンを起用し、ディランのエレクトリック・サウンドを忠実に再現したアルバム「Dick Campbell Sings Where It's At」を発表した“にせものシンガー”として知られている人(らしい)。その彼が西海岸に渡り、ソングライター/プロデューサーのゲイリー・アッシャーと組んで70年代初頭に録音した作品群(未発表)が30年以上たってCD化されることとなった。

 アッシャーとキャンベルの共同作業といえば、一昨年日本でCD化されたこれまた未発表の「Beyond A Shadow Of Doubt」があったが、これと「Blue Winds 〜」は表裏一体をなす作品であるといえるだろう。アッシャーが主にリードボーカルを務め、カート・ベッチャーとキャンベルがコーラスをつけた「Beyond 〜」に対し、こちらの主役は当然ながらキャンベルで、アッシャーがコーラスに回っている。

 アッシャーとベッチャーが設立し、サジタリアスなどの作品を発表したものの、これといったヒットを生むことなく短命に終わってしまったレコードレーベル「トゥゲザー」からの発売を目論んで録音されたと思われるこのアルバムには、「Where It's At」で聴けるという“ディランっぽさ”を期待するとかなり肩透かしを喰らう繊細なタイプのフォークロックが並んでいる。曲の出来もなかなか粒揃いで、当時発表されていればヒットすることはなかったにしても“幻の名盤”として現在高値で取り引きされていたであろうこと請け合いの内容。これまでに一体何枚出ているのか判らないミレニアム関連の未発表曲集を「またかよ・・。」と愚痴りつつもつい毎回買ってしまうようなタイプの音楽ファンにとっては、また“マスト・バイ”なCDが出てしまった、ということになる。

 なお「Beyond 〜」のCD化に際し多大なる貢献を果たし、このCDでもアッシャーとの友情を熱くライナーノーツで語っているキャンベル氏は、残念ながら昨年亡くなってしまったようだ。いい機会なので当時マーキュリーから発売された「Where It's At」の方も、CD化を望みたいところ。内容も凄く良いそうなので。

「Mercury Records Collection」の松林さん情報(続報)によれば「Dick Campbell Sings Where It's At」は現在オリジナル音源の権利を持つ米ユニヴァーサルから再発専門レーベル、サンデイズドに場所を移してディック・キャンベルの息子、ゲイリー・キャンベルが復刻作業に向けて交渉を進めているそう。CD化が実現次第このコーナーでも紹介したいと思う。

曲目等詳細(発売元レーベルのサイト)

「Mercury Records Collection」Dick Campbellのコーナー

(2003/7/12)

Psychedelic Soul

Psychedelic Soul - The Temptations
(Motown)


 ヒットチャートファンの間には根強い“シングル・バージョン信仰”というものがあって。オリジナルのドーナツ盤と寸分違わぬバージョンのみを「正しい」とし、アルバム・バージョンなど長尺ものは「ダメ」の一言で切り捨ててしまうという。アメリカにはその道の“鬼”のような人がいて、過去のヒット曲が収録されているCD一枚一枚について「これはシングル・バージョン」「これはニセモノ」とバッサバッサと切り捨てていく分厚いガイド本まで出されていたりする。

 確かに60年代のある時期までの音楽の“オリジナル・モノ・シングル・バージョン”にはCDでも太刀打ちできない音質や音圧を誇るものがある。が、それ以降の時代、作品発表のフォーマットがシングルからアルバム中心となってからは、シングル・バージョンがその曲のベストのバージョンであるとは限らないケースが多々ある。

 そこでテンプテーションズ。モータウンの看板グループとして60年代半ばに数多くのヒットを放った彼らは、68年にリードボーカルのデヴィッド・ラフィンが独立するに伴いイメージチェンジ。スライ・ストーンやジミ・ヘンドリックスらが提唱した新しいタイプのブラック・ミュージックをヒントに、当時の社会状況を反映したメッセージ性の強い作風へと移行し、第2の黄金時代を築いた。

 この2枚組CDに収録されているのは彼らがノーマン・ホイットフィールドのプロデュースのもと1968〜1973年に発表した“サイケデリック・ソウル”なナンバーの数々。それぞれのヒット状況(カバーヒットも含む)と演奏時間を列記すると(字が細かくて申し訳ない)

DISC 1:

  1. Cloud Nine ('68 POP#6/R&B#2) (3:31)
  2. Runaway Child, Running Wild ('69 POP#6/R&B#1) (9:21)
  3. Don't Let The Joneses Get You Down ('69 POP#20/R&B#2) (4:42)
  4. I Can't Get Next To You ('69 POP#1/R&B#1) (2:52)
  5. Message From A Black Man ('70 POP#99/R&B#19 by The Whatnauts & The Whatnauts Band) (6:03)
  6. Slave (7:31)
  7. Psychedelic Shack - (previously unreleased, long version) ('70 POP#7/R&B#2) (6:19)
  8. You Make Your Own Heaven And Hell Right Here On Earth ('71 POP#72/R&B#24 by The Undisputed Truth) (2:45)
  9. Hum Along And Dance ('70 R&B#8) (3:51)
  10. Take A Stroll Thru Your Mind (8:33)
  11. War ('70 POP#1/R&B#3 by Edwin Starr) (3:12)
  12. Friendship Train ('69 POP#17/R&B#2 by Gladys Knight & The Pips) (7:55)
  13. Ball Of Confusion (That's What The World Is Today) ('70 POP#3/R&B#2) (4:08)

DISC 2:

  1. Smiling Faces Sometimes ('71 POP#3/R&B#2 by The Undisputed Truth) (12:40)
  2. Ungena Za Ulimengu (Unite The World) ('70 POP#33/R&B#8) (4:28)
  3. Love Can Be Anything (Can't Nothing Be Love But Love) (9:20)
  4. Take A Look Around ('72 POP#30/R&B#10) (3:09)
  5. Superstar (Remember How You Got Where You Are) ('71 POP#18/R&B#8) (2:54)
  6. Funky Music Sho Nuff Turns Me On ('72 R&B#27) (3:10)
  7. Papa Was A Rollin' Stone ('72 POP#1/R&B#5) (12:01)
  8. Plastic Man ('73 POP#40/R&B#8) (5:57)
  9. Masterpiece ('73 POP#7/R&B#1) (13:49)
  10. Ain't No Justice (6:05)
  11. 1990 (4:04)
 ・・イカレてる。ディスク2なんて特に長尺の3曲だけで約40分!目眩がしそうなくらい、いちいち長い。当時彼らがほぼ半年毎にリリースしていたアルバムはどれも組曲風の構成になっており、長尺曲の主役はテンプスの面々ではなく、モータウン・サウンドを支えたハウスバンド、その名も“ファンク・ブラザーズ”の演奏(インスト)。これはツアーに明け暮れてなかなかデトロイトに戻って来れない彼らのアルバムを、ハイペースで市場に送り出したいというレーベル側の要求と、ホイットフィールドの創作意欲の“利害の一致”の結果なのかも知れないが、当時「これではテンプスではなく“ノーマン・ホイットフィールド・シンガーズ”のアルバムだろ!」と酷評されたこともあったというこれら作品が、現在聴くと非常にファンキーで、麻薬性のある魅力をたたえている。

 ここにあるのはコンパクトに刈り込まれたシングル・バージョンにはない“長尺の美学”。日に日に暑くなるこれからの季節に、脳ミソをトロトロにしながら聴きたいCD。70年代サウンド流行りの昨今のヒップホップを日々追いかけている音楽ファンにとっても、耳馴染みのいい音だと思う(特に今回初出のウルトラ・ファンキーな「Psychedelic Shack」ロング・バージョンがお薦め)。できればホイットフィールドがモータウンに残したテンプス以外のアーティストたちの作品集(勿論ロング・バージョンで!)なんてのも、もう一枚欲しいところだが、それは自分でMDを作ることとしますか。

(2003/7/5)

Frankie Laine

High Noon - Frankie Laine
(Proper Pairs)


 これも「R&R時代以前のヒット曲を一曲でも多く聴こう」系のCD。HOT100にも数多くのヒット曲を残している男性シンガー、フランキー・レインの初期の作品を集めたもの。ヨーロッパでは発表から50年を過ぎると作品の使用許諾が大幅にゆるくなるようで(もしかしたら著作権が消滅するのかもしれない)今年でいえば1952年までの作品が大量に、しかも安価にCD化されているのだが、このCDもそのルールに従い、彼がデビューした1947年から52年まで(マーキュリー〜コロムビア時代の初期)の作品50曲が収められている。

 例によってジョエル・ホイットバーンの「POP MEMORIES 1890-1954」からこの時期の彼のヒット曲リストを作成してみたが(別表)、その数なんと38曲。そのうち1947年の「Black And Blue」を除く37曲をこのCDで聴くことが出来るという。素晴らしい。

 彼の芸風を一言でいうと、とにかく男っぽい。その恵まれた体格で力強くスイングする(野球選手みたいな表現だな)ジャズ・ソングから、彼のトレードマークとなったカントリーや西部を舞台にしたポップソング、映画「真昼の決闘」主題歌として知られる「High Noon (Do Not Forsake Me)」まで。ごく初期の録音からは、若さからくる若干の軽さが感じられるが、サービス精神旺盛な彼の歌唱がたっぷり楽しめる内容となっている。更に、この時期に残した女性シンガー(ジョー・スタッフォード、ドリス・デイ)とのデュエット・ヒットまで漏らさず収録されているのだから、これは非常に親切なCDといえるだろう。

 敢えて難点を挙げるとすれば、この時期以降に彼が放ったヒット曲の数がこのCDに収録されている数と同じくらいあるので、この2枚組だけで彼のキャリアをカバーすることは到底出来ない、ということくらいだろうか。そこら辺はあと何年かしたら出るはずの続編に期待するとして(気の短い方はドイツで彼の十数枚組のボックスが発売されているので、そちらをご入手ください)、1950年代前半を代表するヒットメーカーである彼の数多いヒットを手軽に、安価に聴くことのできる点を評価して、今回のお薦めとしたい。

曲目等詳細(発売元レーベルのサイト)

(2003/7/4)

Tony Perkins

Tony Perkins
(Collector's Choice Music)


 アンソニー(=トニー)パーキンスというと、どうしても後の世代の者にとっては“「サイコ」の人”という印象が強いが、それ以前、昭和30年代前半は大変な青春スターだった。以前メルマガで“歌う俳優”である彼のヒット曲を紹介したときにやはり“「サイコ」でお馴染みの・・”と書いてしまったら、彼の音楽をリアルタイムで聴いていた読者の方から「トニパキをそんな風に書かないで!」という強烈なメールが届いたことがあるくらい、熱心なファンは現在も存在する。

 彼の代表曲といえば、なんといっても「Moonlight Swim(「月影の渚」1958年米24位)」ということになるが、これはそれ以前、俳優としても売出し中の1956年にエピック・レコードから発表したアルバムと、シングル音源全19曲を集めたCD。これが非常に初々しい。以前日本でRCAビクター時代のアルバム「From My Heart」がCD化されて、それを聴いたときも彼のなんともいえない初々しさに惹かれたものだったが、ここでの初々しさはそれを上回るもの。“朴訥”といってもいいだろうか、でも非常に丁寧に歌っていて、好感度はますます高い。

 収録曲の殆どはスタンダード。歌声が持つ独特の“ナヨ感”は、女性には放っておけない魅力なのだろう。ボーナスとして収録されているシングル音源の中で聴きものは、彼の主演映画の主題歌で、パット・ブーン盤が日本でもヒットした「Friendly Persuasion(友情ある説得)」のトニパキ・バージョン!これが超朴訥!良き時代のトニパキをこよなく愛する方は、是非ともご一聴いただきたい。ボーカルアルバムとしてもバックのオーケストラが控えめな点と、トニパキのさらなる初々しさで「From My Heart」を上回る出来になっているので“歌う俳優”ものが好きな方は、コレクションに加えるべき一枚。

曲目等詳細(発売元レーベルのサイト)

(2003/7/4)

Back Numbersに戻る