八亀's Picks - June 2003

6.23 Mrs. Swing - Mildred Bailey
6.23 American Popular Music on Japanese 78 rpm Record 1927-1958
6.16 Baby She's Gone: Ultimate Jack Scott Collection
6.8 Bubblegum Soul: 21 Popcorn Pop-Soul Classics

Mildred Bailey

Mrs. Swing - Mildred Bailey
(Proper)


 音楽的趣向の変化につれてこのところR&R時代以前の音楽を集めたCDの購入比率が増えていて。特に近年はヒットチャートファンも満足できる内容のコンピレーションが各国で続々とリリースされているので、一度買い始めると止まらない。

 今回は1930年代のジャズ・シーンで最も人気のあった女性シンガーの一人“ミセス・スウィング”ミルドレッド・ベイリーのボックスセットをご紹介。20年代後半〜40年代前半にかけて彼女が各社に残した作品100曲を集めたこのボックスは、彼女のキャリアを概観するにもっとも便利な一箱。白人女性シンガーとしてジャズ界でごく初期に成功を収めた一人である彼女の個性的な(ハイトーンな)歌声は、非常に魅力的。曲も後にスタンダードとして多くのアーティストに取り上げられるものが多数含まれているので「ああ、この歌はこんな風に歌われていたのか。」という楽しみ方もできる。

 1920年代の“キング・オブ・ジャズ”ポール・ホワイトマン楽団から夫のレッド・ノーヴォとともに独立した彼女は、夫婦双頭のバンドを結成。と、ここまでは普通のサクセス・ストーリーっぽいのだが、この二人が強かなのはほぼ同じメンバーで一方はベイリーの楽団としてヴォカリオンと、もう一方はノーヴォの楽団としてブランズウィックと契約し、次々と作品をリリースした点。後の時代でいえば「パーラメント」と「ファンカデリック」みたいなことをこの夫婦は1930年代にやっていたのだ。

 ジョエル・ホイットバーンがR&R時代以前のヒット曲をまとめた「POP MEMORIES 1890-1954」によれば、30〜40年代に彼女がボーカルをとったヒット曲は40曲近くにのぼる(別表を参照)のだが、37〜38年にかけては両者の名義のシングルがほぼ一カ月おきに交互にヒットチャートに登場するという凄まじさ。この商売人ぶりはちょっと凄い。そこら辺のシングルヒットのかなりの部分を、レーベルをまたがり、楽団をまたがりカバーしているところが、これまでの“ジャズCD”とこのボックスセットのちょっと違うところ。

 ダンスバンドはシンガーよりもバンドが主役で、シンガーはインストに続いて曲の後半にようやく登場し、1コーラスのみ歌っておしまい。というものが殆どだったこの時代に、彼女がバンドリーダーとして主役を務め(メジャーなバンドで女性がリーダーを務めていたのは、他ではチック・ウェッブのバンドを引き継いだエラ・フィッツジェラルドくらいなものだろう)ヒットを飛ばしている姿は非常に頼もしい。その後この夫婦は1938年に離婚、40年代半ばにはベイリーは健康状態を悪化させ、51年に亡くなるという悲しい結末があるのだが、ビッグバンド時代前期に花開いた華やかな音楽の好サンプルとして、その価値は一聴に値する。値段も手ごろなので(通常の二枚組くらい)彼女の音楽に興味のある人は手に入れてみて損のない一箱だろう。

曲目等詳細(発売元レーベルのサイト)

(2003/6/23)

78rpm

American Popular Music on Japanese 78 rpm Record 1927-1958



 メルマガの「FLASHBACK」で様々な時代のヒットチャートを紹介するにあたって、空いている時間を利用して方々で(主に国会図書館で)当時の音楽に関する文献を調べているのだが、毎度痛感するのが我が国の洋楽に関する資料の不備。歴史的に「後世に残そう」という意図で編まれている文献が殆ど存在しないのだ。

 そんな中、出逢ってしまった凄い一冊がこれ。1927年から1958年にかけて我が国で発売されたアメリカのポピュラー音楽のSPをほぼコンプリートにリストアップしたという、作業にかかる手間を思えば大変なものが埼玉の山田さんという方の手により自費出版された。

 リストの対象となっているのは、アメリカのポピュラー音楽、アメリカのアーティストが海外で吹込んだレコード、逆に欧州などのアーティストがアメリカで吹込んだレコード等の日本盤7,000種超。勿論我が国の洋楽シーンを考える上ではラテン音楽やシャンソンなど、決して無視できない分野の音楽がカバーされていないという点でこれは“我が国の洋楽史”とイコールでないが、コンプリートを目指すにあたってこの割り切りは充分納得できるし、そこら辺の分野はまた別にリスト化されるべきであるとも思う(ってもうされてる?)。

 現在調べている分野の関係で、まだ1950年代分しか細かく見れてないが、これだけのリストを作成するのは似たようなことをやっている人間の実感として本当に大変なこと。戦前のものをちらっと見ただけでも、昭和10年代の前半にこれだけの数のアメリカン・ポップスのレコードが発売されているんだー、と、妙に感心してしまったり。エクセルで作成された表をプリントアウトし、それを製本した“だけ”もの(300頁弱)が\7,000で売られているということに「高いー!」と思う人もいるかも知れないが、アナタ、これだけの元資料を国会図書館からコピーしてくるだけで、とてもそんな金額では済まないんだから。更にその後の手間を考えたらなおさら。

 ひとまずこれでこの分野に関しては、誰かがこれ以上苦労をする必要がない、という意味で非常に有り難い一冊。勿論我が国の文化的にも非常に有意義な一冊。実はこれの“ドーナツ盤版”を作れないものかと、ここ何年かシングルコレクターの方にお会いする度に嗾しているのだが、対象が膨大なのと、コレクションがあくまでも個人的なものであることがネックになってなかなか実現しない。いつか有志を集めてリスト化したいんですけどね。この面倒な作業に参加したいという方、是非とも編集部宛ご一報ください。お待ちしています。

 なおこの本を購入するには“山田さん”に直接連絡するのがいいらしいが、さすがにここに電話番号をのせる訳にはいかないので、この本の依託販売を請け負っている神保町の「富士レコード社」のホームページを。こちらにお問い合わせください。

(2003/6/23)

Jack Scott

Baby She's Gone: Ultimate Jack Scott Collection
(Castle)


 50年代後半から60年代前半にかけて20曲近いヒットを放ったR&Rシンガー/ソングライター、ジャック・スコット。この時代を代表するヒットメーカーの一人なのだが、何故かオールディーズファンの間では「彼だけはちょっと苦手・・」という声が多い。何故か。

 彼が得意としたのはカントリー/ロカビリー・サウンドにのったバラード。気が重くなるような低音、そして魅力的とは言いがたいボーカル技量(これがエルヴィスなら相当印象が違っただろう)。。普通のポップスファンにはちょっとキツいシロモノなのだ。なので多くの場合彼のベスト盤を一枚聴いて、そのバラードにすっかり懲りてあとは手を出さない。というパターンで終わる。

 で、ここに登場したのが彼の2枚組50曲入りベスト!これは聴くのに相当苦労しそうだ・・と思ったらさにあらず、ここでは通常のヒット曲集からはオミットさていた彼のもう一つの側面“ロカビリアン(古い言葉!)”の魅力がたっぷり楽しめるのだ。まず彼が全盛期にカールトン、トップ・ランク社に残したヒット曲

My True Love (Carlton 462 '58 POP#3)
Leroy (Carlton 462 '58 POP#11)
With Your Love (Carlton 483 '58 POP#28)
Geraldine (Carlton 483 '58 POP#96)
Goodbye Baby (Carlton 493 '58 POP#8)
Save My Soul (Carlton 493 '58 POP#73)
I Never Felt Like This (Carlton 504 '59 POP#78)
The Way I Walk (Carlton 514 '59 POP#35)
There Comes A Time (Carlton 519 '59 POP#71)
What In The World's Come Over You (Top Rank 2028 '60 POP#5)
Burning Bridges (Top Rank 2041 '60 POP#3)
Oh, Little One (Top Rank 2041 '60 POP#34)
It Only Happened Yesterday (Top Rank 2055 '60 POP#38)
Cool Water (Top Rank 2055 '60 POP#85)
Patsy (Top Rank 2075 '60 POP#65)
Is There Something On Your Mind (Top Rank 2055 '61 POP#89)

 これらが当然のことながら全曲聴ける上に、ブレイク前にABCパラマウントからリリースした何枚かのシングル音源(バリバリのピュアロカ(=ピュア・ロカビリー)路線!)、チャートに登場しなかった佳曲、更に63〜64年に在籍したGroove音源(相変わらずロカビリー!)と、ある意味“ロカビリー馬鹿一代”なジャック・スコットの活動の大部分をカバーできる仕組みになっている。彼が登場したのはロカビリーが下火になりつつある時期で、エルヴィスは兵隊に行っちゃうし、他のR&Rスターも死んじゃったり落ち目になったりと散々な状況であったにもかかわらず、スタイルを貫いてヒットを飛ばし続けた彼は、ひょっとしたらもっと見直してやるべきアーティストなのかも知れない。だからといってバラードを聴く時の気の重さはちっとも変わらないが。

 とにかく聴いてみて「ジャック・スコットはやっぱイマイチだね。」とオールディーズ通を気どるもよし、逆にロックンローラーとしての彼のカッコよさにマイるもよし。少なくともピュアロカ派(このサイトを出入りしているとは思えないが・・)は必聴でしょう。なおこのCDではブランクの時期となっている61〜62年は、彼はキャピトル・レコードに所属しており、そこで放ったチャートヒット3曲や日本だけで流行った「クライ・クライ・クライ」が収録されていないのは少々残念。そこら辺はCollectablesから出ているベスト盤で完璧にカバーできる(Top Rank音源がダブるのはご容赦!)ので、併せて聴かれることをお薦め。

曲目等詳細(発売元レーベルのサイト)

(2003/6/16)

Bubblegum Soul

Bubblegum Soul: 21 Popcorn Pop-Soul Classics
(Castle)


 「バブルガム・ソウルって何?」とまずツッコミを一つ・・入れたい。入れたいけど訊くまい。たいていこの手の名前は気分でつけられているものだから。さらに続けて「で、ポップコーンって何?」なんて会話が弾んじゃったら、それこそヤツら(誰?)の思惑通りだし。。

 60年代後半から70年代半ばにかけて、主にイギリスでヒットを記録したポップなR&Bを集めてみました、ってのがこのCDのテーマ。何年か前にアメリカで似たようなテーマの「Soulful Pop」というコンピレーションが出ていたが、これはその改訂版と考えていいかも知れない。全21曲中英米のヒット曲だけを並べてみると

Give Me Just A Little More Time - Chairmen Of The Board ('70 US#3/UK#3)
Where Did Our Love Go? - Donnie Elbert ('71 US#15/UK#8)
Build Me Up Buttercup - The Foundations ('69 US#3/UK#2)
Swing Your Daddy (Part 1) - Jim Gilstrap ('75 US#55/UK#4)
I'm Doin' Fine Now - New York City ('73 US#17/UK#20)
Jack In The Box - The Moments ('77 UK#7)
Sad Sweet Dreamer - Sweet Sensation ('75 US#14/UK#1)
Band Of Gold - Freda Payne ('70 US#3/UK#1)
Highwire - Linda Carr & The Love Squad ('75 UK#15)
Want Ads - The Honey Cone ('71 US#1)
Goodbye (Nothing To Say) - The Javells featuring Nosmo King ('74 UK#26)
Ride A Wild Horse - Dee Clark ('75 UK#16)
Eeny Meeny - The Showstoppers ('68 UK#33)
I've Been Hurt - Bill Deal & The Rhondels ('69 US#35)
Red Red Wine - Jimmy James & The Vagabonds ('68 UK#36)
Melting Pot - Blue Mink ('69 UK#3)
The First Cut Is The Deepest - P.P. Arnold ('67 UK#18)

 普通のR&Bコンピレーションとは随分雰囲気が違うのがわかると思う。中でも収録が嬉しいのが、スイート・センセーションの「Sad Sweet Dreamer」。地味ながら何年もCDで見つけることが出来なかった曲なので、個人的にはこの一曲で購入を決心したようなもの。

 それにしてもイギリスは一貫して“ノーザン・ソウル”というか、ポップなR&Bの人気が高い国で、これが現在のUKソウルの源流(むしろUKのアイドルポップか?)の一つであると考えると、このCDもまた面白い聴き方ができるかも知れない。あと“ビーチ・ミュージック”と呼ばれるタイプのR&Bが好きな方にもお薦め。これからの季節、頻繁にかけたくなるようなポップが詰まったCD。

曲目等詳細(発売元レーベルのサイト)

(2003/6/8)

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