八亀's Picks - May 2003
(またの名を「Flashback」開設準備室)

5.28 熱狂の仕掛け人 - 湯川れい子:著
5.28 THE LOST '60S RECORDINGS - RICK NELSON etc.
5.17 HARD TO FIND ORCHESTRAL INSTRUMENTALS II
5.17 HARD TO FIND POP INSTRUMENTALS II


熱狂の仕掛け人 - The leaders of the music world -
湯川れい子:著(小学館)


 今は亡き「FM fan」誌に連載されていたインタビュー「音楽ギョーカイを作ったスーパーマンたち」は毎回非常に興味深い内容で、当時できるだけ気をつけて立ち読みするようにしていたが(買えよっ!)、それがようやく単行本化された。

 戦後日本のポップスシーンの興亡をその道の先達たちに、後輩である湯川れい子が話を伺う、という形のこの本は、大半の部分を永島達司(日本のプロモーターの草分け)、渡邊美佐(“ナベプロの女帝”といわれた芸能プロダクションの元締)、草野昌一(「ミュージック・ライフ」編集長、そして漣健児の名で膨大な数の翻訳ポップスを生み出す)、掘威夫(ホリ・プロダクション設立者)の4人の活躍を紹介することに費やされている。

 些細なきっかけで始まった進駐軍相手のアルバイトから、ジャズコン・ブーム、ロカビリー・ブームを経てその後のビートルズ、GSブームまでを仕掛け、大きな成功を収めていった彼らが、ところどころ交互にかかわりを持ちつつ展開されていくエピソードは、一つ一つがやたらと面白く、洋邦問わずポップスに興味のあるものには必読といえる内容になっている。メルマガの「Flashback」で何度か黎明期のJ-POPを取り上げたことがある僕には非常に勉強になることばかりで、ちょっと思いついただけでも

  • 何故エルヴィスは日本に来なかったのか?
  • ビートルズ来日時、何故星加ルミ子だけ独占取材ができたのか?
  • レコード会社の専属作家制度が厳しかった時代に、何故浜口庫之助はフリー作家として「涙くん、さよなら」や「バラが咲いた」を各社に提供できたのか
  •  などといった長年の疑問が次々と氷解してしまった。日本のポピュラー史、音楽の小ネタ本という重宝さもある一方で、闇雲に元気だった時代の日本の空気が感じられるような、そんな本にもなっている。これは勉強になります。有り難いことです。

    (2003/5/28)


    The Lost '60s Recordings -
    Rick Nelson/Jerry Fuller/Glen Campbell/Dave Burgess
    (Varese Vintage)


     1950年代後半から60年代前半にかけて、カリフォルニアのチャレンジ・レコードに残された珍しい音源がCD化された。

     このCDの主な登場人物は、1958年に「Tequila」のナンバー1ヒットを放ったチャンプスのリーダーで、チャレンジ・レコードのスタッフでもあったデイヴ・バージス、チャンプスに一時在籍し、その後ソロ活動の傍らトップ・セッション・ギタリストとして活躍していたグレン・キャンベル、チャレンジ・レコードで自演の作品をリリースしながら、ソングライターとしてリック・ネルソンに「Travelin' Man(61年1位)」「Young World(62年5位)」などを提供していたジェリー・フラー、そして時代のトップアイドル、リック・ネルソンの4人。彼らが様々な形で関わったレコーディング18曲を集めたユニークなアルバムである。

     収録曲で一番レアなのは、4人が覆面グループ、トロフィーズ、フレアズとしてリリースした8曲。ネルソンはベース・パートを歌っていたりして、曲によっては彼だとはっきり判らないものもあるが、これだけのメンバー、更にいえばバックを務めているチャンプスにも後のシールズ&クロフツが在籍しているという“オールスター・キャスト”状態なので、その存在だけでも価値があるというもの。

     他に、後にプロデューサーとしてゲイリー・パケットとユニオン・ギャップやO.C.スミス、スパイラル・ステアケースなどを成功させるジェリー・フラーのマイナーヒット3曲が収録されているのもチャート・ファンには嬉しい(更にいえば、グレン・キャンベルにとって初めてのソロヒット「Turn Around, Look At Me(61年62位)」も収録されている)。リック・ネルソン・マニア、そしてチャンプス・マニア(いるのか?)は是非チェックすべき1枚。

    曲目等詳細(発売元レーベルのサイト)

    (2003/5/28)

    ORCHESTRAL INSTRUMENTALS II

    HARD TO FIND ORCHESTRAL INSTRUMENTALS II
    (Eric)


     年に1度か2度、思い出したように珍しいオールディーズ音源をCD化するエリック・レコードの「Hard To Find」シリーズ。通算12、13枚目がリリースされた。

     今回のテーマは“インスト・ヒット”。オーケストラ編で初CD化が謳われているのは以下の15曲。

    Theme from 'Ben Casey' / Valjean (1962 #28)
    The Long Ships (Part 1) / Charles Albertine (1964 #112)
    The Day the Rains Came / Raymond Lefevre (1958 #30)
    Beautiful Obsession / Sir Chauncey (1960 #89)
    Theme from 'The Sundowners' / Felix Slatkin (1960 #70)
    Chariot (I Will Follow Him) / Franck Pourcel (1961)
    That's the Way with Love / Piero Soffici (1961 #59)
    Theme from 'A Man and A Woman' (from the Motion Picture Soundtrack) / Francis Lai (1966)
    Moonglow and Theme from 'Picnic' / George Cates (1956 #4)
    Swinging Sweethearts / Ron Goodwin (1957 #52)
    Song for Anna (Chanson D'Anna) (long album version) / Herb Ohta-San (1974 #104)
    Nadia's Theme (The Young & The Restless) / Barry DeVorzon & Perry Botkin, Jr. (1976 #8)
    Danny Boy / Sil Austin (1959 #59)
    Trumpeter's Prayer / (Tutti) Camarata (1957)
    One Moment In Time / Vienna Symphonic Orchestra (VSOP) (1989)

     「初CD化」といっても“アメリカでは”という限定つきで、映画「男と女」のテーマとか「コマネチのテーマ」などは既に日本でCD化されているはずなので、新鮮味はやや薄いが、それ以外はなかなか“Hard To Find”なものが揃っている。

     中でも珍しいのは、ジョージ・ケイツの「ピクニックのテーマ」だろう。競作となったモーリス・ストロス盤がナンバー1になったせいか、これだけのヒットを記録しながらケイツ盤はこれまでCD化されておらず、今回ようやく聴けるようになったのは嬉しい限り。私はこの曲がCDで聴けないばかりにオリジナルシングルを海外から取り寄せてしまったチャートコレクターを知っているが、その方は今頃さぞかし悔しい思いをしていることでしょう。。

     それにしても1950年代の一時期、これだけ多くのヨーロッパのオーケストラがアメリカのヒットチャートに登場しているとは驚き。新発見だった。“Hard To Find”にこだわったせいか、マイナーヒットが多くて「ここら辺まではちょっと。。」という人もいるかも知れないが、純粋にイージーリスニング・アルバムとしても楽しめるのでご一聴をお薦め。なお当然のことながらこのCDには第一集もある。

    曲目等詳細(発売元レーベルのサイト)

    (2003/5/17)

    POP INSTRUMENTALS II

    HARD TO FIND POP INSTRUMENTALS II
    (Eric)


     続いて今度はオーケストラ以外の編成によるインストヒット集。こちらの初CD化は少々少なめの6曲。

    Down Yonder (original version) / Del Wood (1951 #4)
    Armen's Theme / David Seville (1956 #42)
    Sadie's Shawl / Bob Sharples (1956 #52)
    I Want to Be Happy Cha Cha / Enoch Light (1958 #48)
    (Theme from) 'The Dark At the Top of the Stairs' / Ernie Freeman (1960 #70)
    Oh, Mein Papa / Eddie Calvert (1953 #6)

     マイナーヒット、あとR&R時代以前のヒットが多かったりするので、これはよりマニア向けといった感じか。最大の聴きものはデヴィッド・セヴィルの「Armen's Theme」だろう。「Witch Doctor(58年1位)」そしてチップマンクスなどノヴェルティ作品でおなじみの彼が“まともな”音楽をやっていた時代のヒットで、彼の奥さんの名がつけられたこの曲には後に歌詞がつけられ、ボビー・ヴィーによって「Yesterday And You」のタイトルでヒット(63年55位)を記録している。

     他の収録曲はジャケ写のリンク先をご参照のこと。おなじみのヒット曲をまとめて、いい音で、更にステレオで聴けるという意味では、非常に便利な一枚である。当然のことながらこちらも第一集が出ているので、そちらもあわせてお薦め。

    曲目等詳細(発売元レーベルのサイト)

    (2003/5/17)

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