何年か前にラテンのスターたちが次々に英語作品を出して、どんどんアメリカ市場でブレイクしていったのは、結局一過性のブームで終わった感がある。ただ、流石だなあと思うのは、みんなちゃんと元の鞘に収まって、スペイン語作品を堅調に出し、それが支持されているところだ。
すっかり印象の薄くなってしまったリッキー・マーティンだって、今年出した新作がラテン・チャートではシングル「Tal Vez」が年間1位、アルバムが年間2位という特大ヒットで、実は大活躍していた。
アメリカ在住者のスペイン語人口は増加する一方だろうし、将来的にはもうちょっとスペイン語作品が全米チャートに占める割合は高くなるんだろうが、今はとにかくきわめてわずかな例外を除けば、英語で歌わなければ全米チャートに登場することはできない。
プエルトリコのリキマ、スペインのエンリケ・イグレシアス、コロンビアのシャキーラ、メキシコのタリア。みんな、スペイン語を母国語とする国の、(アメリカ人から見れば)ガイジンである。まあプエルトリコは微妙としても。彼らはアメリカで売れなくても、母国を始めとするラテン市場に一歩戻れば、相変わらずのトップスターだ。アメリカで惨敗しても日本における地位には何も影響しなかった松田聖子のようなものだろう。
ところが、中にはアメリカ人のラテン・スターもいる。
マーク・アンソニー。彼はニューヨーク出身だ。同じくラテン系のサファイアのデビューに力を貸したり、メヌードのバックボーカルをやったりと、その活動基盤は当初からずっとラテン・マーケットだ。彼の場合も地元の強い支持基盤があり、「ニューヨーク・タイムズ」紙は特に彼をサルサのキングと呼んだり、ニューヨークでもっとも影響力のある10人に選んだりと、相当肩入れしている。
さて、そのマーク・アンソニーのベスト盤が今年発売されていたことはほとんど知る人がいないだろう。
何年か前にスペイン語作品のベスト盤が出ていたが、あれの出し直しのようなもので、ここ数年の作品は網羅されていない。正直、普通なら食指の動くようなものではない。ところが、これが、例のアレなんですよ。ボーナスDVD付き。
日本でビデオクリップを見るのがもっとも難しいジャンルはカントリーとラテンだと思うのだが、とにかくマーク・アンソニーのスペイン語作品のビデオクリップなんてここ以外でお目にかかる機会はあるまい。しかもここに収録されているような初期作品ともなればなおさら。
いちおうどれも1990年代以降の作品なのでこれほど画質が悪いのは不思議だが、とにかく家庭のビデオデッキで3倍て録画したのを元にしたんじゃないかという画質のやつも中にはあるのだが。
この人は踊って見せたりするわけでもないんだけど、流石に映画や舞台の経験もあるだけあって身のこなしがしなやかで実にかっこいい。
ビデオクリップ云々以前にまず、この人は英語作品なんかよりスペイン語のサルサ作品のほうが遙かに素晴らしい、という大前提があるのだけど、それはこのベスト盤であわせて体験してもらうとして。