しんかい's Picks - September 2003

August 2003

9.6 Thoia Thoing / R.Kelly (Video Clip)
9.16 Black Wall Street - The C.E.O. Manual / JT The Bigga Figga (Book)



Black Wall Street - The C.E.O. Manual / JT The Bigga Figga (Book)


 JTザ・ビガ・フィガというラッパーをご存じだろうか。いやまあ知らないのが普通なので知らなくていいのだが、実はベイエリアのヒップホップ界ではかなり有名な人で。

まず、我々がなぜ彼を知らないかと言えば、全米規模でのヒットを出したことがないから。チャートでは彼の名前を見ないし、日本の輸入盤ショップにもそう滅多に登場しない。名前もろくに聴いたことがないようなインディレーベルの所属。それじゃあ知ってるわけがない。

でも、ベイエリアでは有名人なのだ。

実は西や南には、自らあえてメジャーレーベルよりもインディを好むラッパーが少なくない。インディだと配給能力とかに限界があるので、世界的ヒットはおろか全米規模でのヒットも諦めざるを得ないのだが、それとトレードオフで手に入るのが“自由”と“高いロイヤリティ”だ。端的に言えば、インディのほうが自分の手取りが多いのだ。メジャーレーベルでは、わずかな“手取り”の中からスタジオ代とか広告宣伝費とかビデオクリップ製作代とかをどんどんしょっぴかれて、例えばア・トライブ・コールド・クエストみたいなこの世界では超メジャーなグループでも、最終的にはメンバー一人あたり数千ドルしか入ってこないらしい。結局彼らはそれだけじゃ食っていけないので、ライヴとか、Tシャツを売ったりとか、ストリートでミックステープを売ったりとかして、生計を立てているのだ(これはメンバー自身が雑誌でこと細かに説明してくれたことがある)。

一方、インディの世界では、確か20万枚だか30万枚売れば、もう1年間暮らすのに充分な収入になるのだそうだ(これも別の雑誌で南のほうの誰かが言っていた)。海の向こうにまで自分の名前が知れ渡ることはないかもしれない。しかし、レーベルにあれやこれやうるさく指示されることなく、自分の好きなように、好きなペースでアルバム出して、地元でさえヒットさせてれば、それだけで食って行ける。それが、“あえてインディを選ぶ”人たちの理屈だ。

その道の先駆者が、JTザ・ビガ・フィガなのである。10年以上、一貫してインディで活動してきた彼は、そういう意味で、ラッパー仲間からリスぺクトされる存在なのである。もちろん音楽的な評価は、それはそれで別にされてるとして。

で、彼が遂にこのほど、そのインディ・ビジネスの極意を公開した。「Black Wall Street - The Next Generation of Independent Billionaires - The C.E.O. Manual」と題されたこの本。最近リリースされたばかりの彼の新作「Project Poetry」(2枚組大作)の裏ジャケに載っている宣伝文を引用しよう。

このマニュアルに載っているのは、例えばこうだーお前の自分のCDを6ドルから8ドルで仕入れてくれる店500店のリスト。アルバムを1000枚自主制作でプレスするのにかかるのは975ドル。それを、20枚仕入れてくれる店を50店見つけるだけで、CDは全部完売、手元には6000〜8000ドルが入ってくる。これを毎月やれば年に72000〜96000ドルだ。インディだから、全部お前の金だ。

そう言われりゃその気になっちゃうよなあ。このマニュアルには他にもビデオ制作スタッフ、グラフィック・デザイナー、レコーディング・スタジオのリストや、マネージャー、弁護士、ウェブ・デザイナーなどなど、とにかく実利的な情報が詰まりまくってるらしい。これはマジで凄い本ではないだろうか。

「買いたきゃここに100ドル送れ」と記されるだけの注文方法はめちゃ不安にさせられるが、公式サイトでは一応web上でオーダーできるようにもなってたりして、まあ大丈夫なのかな。日本人ラッパーでアメリカ進出を目指す君!買ってみない?買ったら見せてね。
(公式サイトへ行くには左上の本の画像をクリック)

(2003/9/16)



問題のケリー氏


Thoia Thoing / R.Kelly (Video Clip)



 いやーまったくアメリカ人ってやつは(笑)。たとえばチャイニーズ・レストランとか、寿司バーとか、彼らも断片的に東アジアの文化に触れる機会はあるだろう。都市によってはチャイナ・タウンがあるだろうし。しかし、概して彼らのアジア観ってのはいいかげんなもんで。

ただ、我々も笑ってばかりはいられない。イランとイラクとクウェートのそれぞれの国の民俗衣装の特徴なんて普通の日本人には誰も答えられないだろうし、文字だけをぱっと見て、それがどの国の言葉かなんてわからないだろう。
そう思えば、まあ、笑って許してあげればいいのかな、と。

で、最近登場した日本文化大勘違いビデオが、勘違い大魔王のR.ケリー。いいじゃないですか、彼らしくて。
もともとこの「Thoia Thoing」というタイトルを聴いた時になんちゅうふざけた曲だと思ったんだけど、曲も最近の「Snake」とかの路線でついでに作ったような曲だし、なぜこの曲で日本がテーマになるのかよくわからんが、とにかくこのビデオが凄いのだ。

まず曲の冒頭がケータイの着信画面。こんなそっけない画面は今どきの日本の携帯にはあまりないと思うのだが、「外からかかってきた電話」「ロバートのケリー」という文字がいきなり泣かせる。
日章旗を背景にぐるぐる回しながら踊りまくるR.ケリー。胸には「ヒューストン」。いいのかこれで!!なんかもうこの絵はマスターPみたいだぞ。
日の丸をやたらとあしらった会場でファッションショーを見学するR.ケリー。でも服もモデルも全然日本人じゃないぞ。
これは「くのいち」のイメージなのだろうか。国籍不明な人々が広い和室でくねくねと踊る。後ろで白い柔道着みたいのを着てうろうろ歩いてるのがR.ケリー。
なんだよ国籍めちゃくちゃじゃんかよ、と思ってるとシーンが切り替わって、まともな絵が登場。お、よしよしこれは日本の絵だ。衣装はちょっと怪しいが、まあ勘弁してやろう。
しかし...
なぜかここに檜の風呂のようなものがあり、和服姿の女性2人が静々と近づいてきてさっと前をはだけると...真っ赤なビキニ(苦笑)。
ああ、とうとうヌンチャクが登場。胸には「シカゴ」。北斎の「神奈川沖」を背景に...
得意げにぶんぶん振り回す。練習したんだろうなあ。
きっつい人たちが謎の踊りを披露。これが典型的な日本人だと思われてるんじゃないだろうな。困るぞ。
よくわからない屏風絵の前で、今度は刀の達人が登場。びゅんびゅん刀を振り回すが、CGで腕を3本も4本も出してるのが面白い。しかしこれって中国じゃ...
結局いつもと同じようにライヴで盛り上がるのだが、なぜか後方の壁には猫の漫画と、「百円」の文字が...
突然「戦い」とキャプションが出て、戦いが始まる。R.ケリーは審判で、その前で2人が戦うのはもちろんカンフー(笑)。マトリックス(1作目)でキアヌとローレンスが戦うシーンを真似てるんだろう。
最後はちゃんと急須でお茶をついて、乾杯。ってなんじゃそりゃ。
しかし最後の最後でまたコケさせる。笛を吹く謎の女、お茶でくつろぐR.ケリー、そして「ケツハツキナ」。はて。マドンナもベスト盤に「モヂジラミミヂ」とかいう謎のカタカナを出していたが。ケツハツキナ。「ケツは尽きな」か?「ケツは突きな」か?(笑)

【完】

 
(2003/9/6)


August 2003


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