序章

第1章 歴史

第2章 作品紹介(1)

    作品紹介(2)

    作品紹介(3)

第3章 サントラ紹介(1)

    サントラ紹介(2)

    サントラ紹介(3)

    サントラ紹介(4)

    サントラ紹介(5)

    サントラ紹介(6)

    サントラ紹介(7)
第3章 Black Soundtrax(その7)

ここでご紹介した30枚のサントラを元に、誰が何作品に参加しているかを数えてみた。もちろん、ブラック系のサントラはこの他にもいくらでもあるが、少なくともこの30枚で大メジャー作品はすべて網羅している筈なので、割と実態をよく反映した標本抽出になっていると思う。

ブラックサントラ最多参加アーティスト(30枚中)
6枚: Ice Cube
5枚: Aaron Hall, Stanley Clarke
4枚: Dr.Dre, Hi-Five, Public Enemy, Snoop Doggy Dogg, Tony! Toni! Tone!
3枚: 2 Live Crew, Ahmad, Mary J.Blige, Cypress Hill, Ice T, Jewell, Johnny Gill, L.L.Cool J, Brian McKnight, P.M.Dawn, Pete Rock & CL Smooth, Teddy Riley, Scarface, Shanice, Smooth

ということで上位を人気ラッパーが独占して、ヒップホップ人気を裏付ける形となった。その中で注目されるのは、5作品でフィーチャーされているAaron Hall。上位を占めるラッパー達に混じってシンガーとしては一番人気となったわけで、白人マーケットを見ているだけでは伺い知れない彼のR&B市場での圧倒的な人気を表すものだろう。また、それ以上に注目されるのがおなじく5作品でフィーチャーされたStanley Clarkeだ。この人は70年代から活動するジャズ系のミュージシャンで、80年代初頭にはヒット曲を出したりもしているが、それ以降はセッションミュージシャン的な存在のようで、いずれの作品にもいかにも映画音楽風のインストを提供している。この人の作品は他の収録曲とはまったくタイプが異なるということもあって、必ずアルバムの最後に収録されていて、必ずアルバムの冒頭に収録され、アルバム全体の雰囲気を象徴した作品を提供するるIce Cubeとは好対称だ(というか何故かこの2人がペアで起用されることが多い)。
全体的に眺めていると、ほとんどのアーティストが90年代になってから登場してきた若手である。もちろん、現実に彼等は人気があるというのが起用の最大のポイントだろうが、もうひとつ、彼等のギャラが安いというのも、オムニバス形式のサントラでは重要なポイントになっているように思える。若手ヒップホップ系ミュージシャンのギャラの安さは「Newsweek」誌が記事のネタにするぐらい「問題」視されている。とくにIce Cubeなんてのは自身のアルバムをきちんと1年未満の間隔で出しつつも、上掲6曲はすべてアルバム未収録の新曲、という大変な勤勉ぶりで、これで人気があってギャラも安いとくれば、猫も杓子も起用したがるのも無理はない。しかし逆にあまりにも露出しすぎて、「Ice Cubeが参加!」ってのが宣伝文句としてだんだんインパクトが薄くなってきているのも事実だ。それでもレコード会社にしてみれば、また次の人気ラッパー(今ならThe Notorious B.I.G.とかWu-Tang Clan一派とか)を起用すればいいだけの話なのだ。とくに最近はレーベルを横断して「よそ様の」アーティストを起用するのが当り前になっているだけに、レコード会社が自分のところで人気者に育て上げる努力を放棄し、既に人気がある「よそ様の」アーティストに飛びついて絞れるだけ絞りとっておいて、そいつの価値がなくなったらすぐ次のミュージシャンに乗り換えるという「ミュージシャンの使い捨て」が危惧される。ヒップホップはパンクと同じように、音楽を、巨大資本が牛耳る商品市場からストリートへと引き戻して本来あるべき姿に戻す役割を果たしたとされてきた。しかし、その「ストリート性」に商品価値があることが分かってしまった今、ミュージシャンたちがよっぽど自分で気をつけていないと、レコード会社に利用されるだけ利用されて、後になったら「単なる流行りもの」で片付けられることになってしまう。ヒップホップというアメリカ黒人文化の遺産は、ノスタルジアの対象としてしか相手にされないディスコミュージックの二の舞にはならないで欲しいと切に願う。(了)



あとがき

最後に参考文献をリストアップしようと思っていたんですが、あまりにもたくさんあるので、本当に参考にさせていただいたものと、割とみなさんにもお薦めできるようなものだけ選んで載せておきます。

『アメリカが見えてくる - 「事件」と「映画」のなかの文化多元主義』 越智道雄著、サイマル出版、1995
『ハーレム・スピークス - 黒人ゲットーの今を生きる』 辻信一著、新宿書房、1995
『別冊宝島EX 黒人学・入門』 VARIOUS、宝島社、1993
『アリステア・クックのアメリカ史(上・下)』 鈴木健次・櫻井元雄訳、NHKブックス、1994
『黒人の家族と暮らす』 岡田真紀著、草思社、1987
『black music review』 ブルース・インターアクションズ、1995年7月号など
(完)


written by Kazuyuki Shinkai, Oct.1995



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