徹底調査! 同一アーティスト、同時複数ヒット記録の全て

Oct. 2002-May 2003 窪田 弘
5. 複数TOP10

3曲以上TOP40の全ケースをとりあげた前章に続き、本章では複数TOP40の全73ケースを紹介しよう。表5-1が2曲TOP10の68ケース、表5-2が3曲以上TOP10を伴う5ケースである(尚、ケース数の定義は、3曲TOP40での定義と基本同じ)。表5-2は、既に12章で掲載済の4ケースに加え、03/05/31付で達成したばかりの、50 Centの記録まで反映している。「そうそう、そんなこともあった.」と懐かしく思い出されるケースがある反面、リアルタイムで聞いていた曲でも、「え? ほんとにこれ、2曲同時だったっけ?」と意外に感じる組合せもあるのでは?
ディケード別の内訳は、50’s/60’s/70’s/80’s/90’s/00’sが、各々12、15、10、10、16、10ケースと、3曲以上TOP40に比べ、ばらつきが少なく、年1ケースはコンスタントに記録されていた感じ。72〜77年と85〜89年に、約5年ずつブランクがある分、その前後で年2ケースが続いたりもするが。それでは、また時系列にコメントしていこう。

(1) 50’s & 60’s
主な傾向は、以下のように3曲以上TOP40の場合と似ている。当然と言えば当然か….
・両面ヒットによる記録が、大半(全27ケース中、18ケース)。
当時は、人気アーティストのB面曲は、大抵、A面と同時か(但し曲としては別々)、1週遅れでチャートインしていて、B面がTOP10入りさえすれば、自然と複数TOP10になった。また、B面でもTOP10にはいるアーティストということで、やはりElvisとBeatlesの記録が多かった(前者6、後者5で、各々この記録のケース数の1位、2位)。
・64年頃から、短い間隔でのシングルカットによる記録や、別名義のシングルでの記録も登場。
 前者の例がHerman’s Hammits(表5-1のNo.19)、後者の例がSonny(表5-1のNo.20)。

珍しいケースとしては、以下のようなものがある。
・ Elvis Presley: 全盛期には、両面ヒットでなくても、シングル発売の間隔が特に短くなくとも、新曲のTOP10入りまで、前の曲がTOP10内に粘る形でも、何度か記録。(表5-1のNo.2、4や、表5-2のNo.1の後半)
・ Ricky Nelson: 片方の曲が、途中でTOP10外に落ちた後、翌週返咲いてできた、”中断含み”の記録。(表5-1のNo.9)
・ 2組のアーティストが、前述のような両者のデュオなしで、たまたま同じ週に、各々複数TOP10入りした。(表5-1のNo.9、10による59/4/13、表5-1のNo.16と表5-2のNo.2による64/4/25。他、85/4/6-13も。)
・ Diana Ross & SupremesとTemptations: 別名義絡みで、特に珍しいケース。両者のデュオの曲がTOP10入りした時、両者とも、自分たちだけの通常名義の曲も、TOP10入りしていて、両者とも記録達成。(表5-1のNo.23、24)
・ Beatles: 69年11月の、両面ヒット取扱ルールの急な変更に伴い、それまで別々の曲として同時にTOP10入りしていた2曲が、チャート上、1シングルに纏められてしまい、記録が途絶えた。(表5-1のNo.25)

(2) 70’s & 80’s
前述の両面ヒット取扱ルール変更のため、70’s以降、両面ヒット同士での複数TOP10は絶滅したが、総ケース数自体は然程減ってない。では、両面ヒットのかわりに、どんなケースが増えたのか? その辺を中心にまとめてみよう。

<70〜72年>
4ケースとも、John Lennon、Donny Osmond、Cherと、ソロの曲と所属グループの曲が、短い間隔で発売されたケース(表5-1のNo.26〜29)。Donny Osmondが、Osmonds絡みとはいえ、2度も達成していたのは意外。全盛期はそんなに凄かったとは…

<77〜81年>
5年半以上のブランクの後、70’sを代表する5人の歌姫たち(Linda, Olivia, Donna, Diana, Barbra)や、Commodoresといった大御所が、まさに全盛期の代表的なアルバムから、短い間隔(1〜2ヶ月)でシングルを連ね、相次いで達成(表5-1のNo.30〜36)。但し、Donnaが2度達成したうちの片方は、Barbraとのデュエット絡み。とはいえ、Donnaの2度とも、2曲TOP3っていうのはお見事!
一方、John Lennonの70年に次ぐ2度目は、特段短くはない間隔(約3ヶ月)のシングル発売での達成(表5-1のNo.37)。この時期、UKでは、「Imagine」や「Happy Xmas」の再発も加わり、3曲TOP5、4曲TOP20と、さらに凄い状態だった。ご存知のとおり、追悼によるブームでというのが悲しい。
尚、Bee Geesの大記録は、以前の章で既に何度も触れたとおり(表5-2のNo.3)。

<83〜89年>
Michael、Prince、Madonnaといった、80’sの覇者たちも、短い間隔のシングルカットで相次いで達成(表5-1のNo.38〜42)。但し、PrinceとMadonnaは映画絡み、またMichaelが2度達成したうちの片方は、Paulとのデュエット絡み。
変り種は、BruceのUSA for Africa絡みでの達成(表5-1のNo.43)。USA for Africaには、当時の代表的なポップ・アーティストが多数参加していたが、同時期に自分のシングルも出したアーティストは、意外やBruceだけのようで。
そして、Bruceの記録から4年半以上のブランクの後、4章でも触れたとおり、NKOTBが、80年代唯一のB面単独のTOP10ヒット「Didn’t I」のお陰で記録達成し、前述のような錚錚たる顔ぶれに続き、達成アーティストとして名を連ねた(表5-1のNo.44)。

(3) 90’s
周知のとおり、91年11月のチャートルール改正以降、各曲のチャート内滞在週数が、格段に増えた。それに加え上位初登場曲も増え、一昔前は極めて珍しかったTOP10内初登場、さらにNo.1初登場までもが、95年からは日常茶飯事と化した。その結果、然程短い間隔のシングルカットでなくても、次のヒットが上位にはいってくるまで、前の曲が上位に残っていることが、珍しくなくなり、複数TOP10も自然と起きやすくなり、実際90’sは、歴代最多の16ケースを誇るディケードとなった (丸々10年の集計ではない50’sや00’sとは、同列には比べられないものの…)。
それでは、今回はその辺を浮き彫りにするため、前の曲と次の曲とのチャート登場日の間隔(≒シングルカットの間隔)の長短で16ケースを分類して、コメントしてみよう。

<間隔が8週以下>
Hammer、Whitney、Bryan、Puffy、Faith Evansの5ケースが該当する。2ヶ月以下だから、短い間隔のシングルカットといって差し支えないだろう。これらのうち、先の3ケースは、80’sまでもよくあった映画絡みで、後の2ケースは、これも90’s以降のチャートの特徴である、featuringクレジット絡みだ。以下、個々の曲で特筆すべきことを記す。
・Whitney: 2週連続”3曲TOP11”と、ほんとうに惜しい記録を残している。「I Have Nothing」の登場がもう1週早ければ、3曲TOP10も狙えたところ(表5-1のNo.46)。
・Bryan: 50’sのRicky Nelson同様、”中断含み”の記録だが、この中断がなんと4週間、即ち4週空けてTOP10に返咲くチャートアクションというのが、これまたいかにも90’sらしい(表5-1のNo.50)。
・Puffy: 1章のNellyの記録でもふれたが、彼はこの時、1・2位独占とBack-To-Back No.1の合せ技という、その時点で過去Beatlesしか例がない快挙を、成し遂げた(その後、JaとNellyが続いた)。また2曲TOP10の10週連続は、3曲以上TOP10含みのケースを除けば、これまた歴代最長の快挙(表5-1のNo.57)。リアルタイムで聞いていながら、当時、これ程の記録ずくめと全く実感しなかったのは、featuringクレジットでの客演だったからか?

<間隔が9週以上>
Mariah(4ケース)、Ace Of Base(2ケース)、Boyz II Men、TLC、Usher、SWV、Monicaの11ケースが該当し、さらにそのうち14週以上が7ケースを占める。つまり、以前のケースで最長間隔だったElvisの12週が、ボコボコ抜かれたというわけ。特に、最長のUsherは22週(表5-1のNo.58)。80’s以前で22週もあいたら、前の曲なんてHOT100からすら影も形も消えているところ、それがまだTOP10内にいるのが、いかにも90’s。以下、個々の曲で特筆すべきことを記す。
・Mariah: 大抵の記録で90年代のトップに君臨するMariahが、この記録でも、Elvis、Beatlesに次ぐ4回と健闘した(表5-1のNo.48、49、55、56)。アルバムからの2ndシングルが、1stシングルと共にTOP10に名を連ねた後、10週以上空けてから、今度は3rdシングルともTOP10揃い踏み。しかも、これを「Music Box」、「Fantasy」とアルバム2枚続けてやってのけたのが凄い。この頃の彼女は、ほんと向かうところ敵なしだった。
・Ace Of Base: 前述のMariahと同様、2ndシングルが、1stシングル、3rdシングル各々との組合せで記録達成(表5-1のNo.51、52)。その間の空きが15週、即ち2ndシングルは、優に15週以上TOP10に居座っていたことに。
・Boyz II Men: Back-To-Back No.1という、その時点で過去Beatlesしか例がない快挙を達成(表5-1のNo.53)。前の曲が14週連続No1という特大ヒットなのに加え、次の曲も14位初登場、翌週3位というスピード出世だった。Babyfaceの作品から、Jam & Lewisの作品へのNo.1リレーという点も、興味深い。

(4) 00’s
  3年ちょっとで早10ケースと、超量産ペースになったこのディケード。言うまでもなく、01年末から約1年間の、Ja 、Ashanti、Nelly、Usherらの快進撃によるところが大きい。彼らについては、1章等でふれたので、詳述は割愛するが、この記録に関する傾向としては、シングルカットの間隔が90’sよりわりと短めなのと、複数TOP10の続く期間が10週前後とかなり長い点が、共通していそうである(表5-1のNo.64〜67、表5-2のNo.4)。
一方、シングルカットの間隔がかなり長い(14週以上)ケースは、00年のSantanaとDestiny’s Child以来、途絶えたが、そのSantanaのケースは、前の曲と次の曲で間隔が何と28週(半年以上!)も空いており、先述のUsherの22週を抜き、現時点(03/05/31)で歴代最長となっている(表5-1のNo.61)。
最後に、現時点で最新のケースは、3曲TOP40同様、50 Centが、先述のとおり、何と3曲TOP10まで記録し、Elvis、Beatles、Bee Gees、Ashantiに並んで名を残すことになった。(表5-2のNo.5)


to be continued...

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