Sep-Dec, 1994

1994/9/3付 No.9 (初登場) 最高位9位、12週
Sleeps WIth Angels / Neil Young & Crazy Horse
この頃“グランジの父”などと言われて妙に再評価熱が高まっていたニール・ヤングの79年以来、15年ぶりのトップ10入り。但しこれの前作「Harvest Moon」が最高位16位ながらロングセラーになっており、こちらのほうが“復活作”としての印象が強い。カート・コバーンの遺書にニール・ヤングの「My My, Hey Hey」からの一節が引用されていたことからニールも意図せずしてその話題に巻き込まれてしまい、直後に出た本作は色んなところでコバーンと結び付ける“解釈”が様々なメディアから与えられた。全体にスローで沈んだ曲調が多く、ニールの身を切るような切々としたボーカルも一層痛々しく響く。「Change Your Mind」は14分超という長尺曲ながらアルバムロックチャートで18位まで上昇した。

1994/9/3付 No.10 (14週目でTop10入り) 最高位4位、101週
Smash / Offspring
メロディック・パンクとか、スケーターズ・ロックとか、ずっと後になってからはエモとか、色んな呼び名が与えられているが、とにかくこの種の音楽をアメリカでメインストリームの存在にまで持ち上げたのはグリーン・デイと、このオフスプリングだ。カリフォルニア出身のバンドの2作目。まだこの時点ではエピタフという(その道では有名ながら)インディの所属で、いかにもパンク・バンド然とした佇まい。モダン・ロック・チャートで「Come Out And Play」(1位)「Self Esteem」(4位)「Gotta Get Away」(6位)と大ヒットを連発。高速なギターリフ主導の作りながら、中近東風のメロディが印象的な「Come Out〜」やどちらかというとハードロックバンドっぽい「Self Esteem」など、この時点で既に“ただのパンクバンドではない”片鱗を見せている。

1994/9/17 No.1 (初登場) 最高位1位、99週
II / Boyz II Men
デビュー作も大きなヒットとなったが、彼らが決定的に大物に昇りつめたのが、「Boomerang」サントラからの「End Of The Road」(13週1位、本作には未収録)と、1200万枚以上の出荷を記録した本作からの「I'll Make Love To You」(12週1位)「On Bended Knee」(6週1位)という3曲の特大ヒット。前2曲がベイビーフェイス、「〜 Knee」がジャム&ルイスの作品といったように、当時全盛の製作陣の強力なバックアップは無敵だった。ただ、それがいずれも王道バラードだったことや、あまりにも売れ過ぎてしまったことから逆にウザがられたり、飽きられるスピードを加速させてしまった。他に「Thank You」(21位)「Water Runs Dry」(2位)がヒット。

1994/9/17付 No.4 (初登場) 最高位4位、33週
The 3 Tenors In Concert 1994 / Carreras, Domingo, Pavarotti
日本では「3大テノール」という呼び方をされる、ホセ・カレーラス、プラシド・ドミンゴ、ルシアノ・パヴァロッティ。いずれも自分名義でアルバムを出したりコンサートをやってきた大物たちが集結した、いわばオールスターキャスト。映画のサントラを除いて、クラシックの作品が全米トップ10にランクされるのは極めて珍しいが、これには90年の「In Concert」(35位)という伏線がある。これがまる2年以上チャートイン、300万枚のセールスという大ヒットとなったことで、その続編である本作が大きなヒットとなった。世界的なトップシンガーながら、内容的にはオペラと呼ぶほど堅苦しいものでもなく、かといってポップ・ミュージックよりは高級な感じがするので、巧く中産階級以上の人々のエリート意識をくすぐって大きな支持に結びついたのだろう。

1994/10/1付 No.1 (初登場) 最高位1位、41週
From The Cradle / Eric Clapton
前作の1000万枚ヒットなどで、すっかりコンサバ親爺として第二の全盛期を迎えていたクラプトン。いかにも彼の趣味の世界っぽい、古いブルーズのカバー集である本作が1位になってしまったのには流石に驚いたが、ここでのクラプトンの活き活きした姿にもまた驚いた。1曲目からぎゅわんぎゅわんとギターが鳴り、クラプトンはガナるように、唸るように歌いまくる。人々の同情を乞うような女々しい姿を見る機会が多かっただけに、彼の“ブルースばか”ぶりは好感を持たれた。「I'm Tore Down」がアルバム・ロック・チャートで5位。
時々本作は“ライヴ盤”として扱われることがあるが、いわゆるライヴではなく、“一発録り(後からスタジオ編集でごまかしたりしてない)”という意味。

1994/10/1付 No.3 (初登場) 最高位3位、38週
Rhythm Of Love / Anita Baker
アニタ・ベイカーの4年ぶり5作目。これで3作連続のトップ5入り。決して“質が低い”と言うほどではないものの、これまでと比べるとどうも印象の薄い作品。「Body And Soul」(36位)がヒット。R&Bチャートでは「I Apologize」(8位)もヒット。やることをやり尽くしてしまったのか、彼女はこれを最後に活動を停止する。

1994/10/1付 No.8 (29週目でTop10入り) 最高位3位、100週
Tuesday Night Music Club / Sheryl Crow
シェリル・クロウのデビュー作。これまでも裏方ではゴシップも含め大物ミュージシャンと色々交流があり、デビューにあたっても各所からのバックアップがあった。デビュー当初は大きな話題にはならなかったが第2弾シングル「All I Wanna Do」(2位)のヒットと共にアルバムも上昇、最終的には700万枚を売る大ヒットとなった。いかにもアメリカ的なアーシーな匂いのする女性シンガーソングライターが他にいない時期だったこともあり、彼女は早々にステイタスを築いた。他に「Strong Enough」(5位)「Can't Cry Anymore」(36位)がヒット。

1994/10/8付 No.5 (初登場) 最高位5位、37週
Songs / Luther Vandross
ルーサー・ヴァンドロスはこれでオリジナルアルバムは4作連続でトップ10入り。デビュー以来10作すべてがプラチナ・ディスク以上という記録も軽く達成し、商業的には絶好調なのだが、どうも評判は良くない。本作は全曲カバー集。マライア・キャリーをデュエットに迎えた「Endless Love」(2位)や「Killing Me Softly」といった王道ベタベタの曲から「Going In Circles」や「Since You've Been Gone」といった渋い選曲まで、流石に歌は圧倒的に巧い。しかし自ら曲を書ける人が、あまりに工夫のないことをやってしまったということで“カラオケ親爺”と揶揄されたりもした。これはこれでディナーショーのお約束みたいなもんだと割り切れば、そんなに悪い内容でもない。

1994/10/15付 No.1 (初登場) 最高位1位、54週
Monster / R.E.M.
“R.E.M.がロックに戻った”。このアルバム発売当時、どのメディアもそう書いて浮き足立っていた。ここ数作で着実にアメリカのロック・シーンの頂点に立ったR.E.M.だが、だんだんスローな曲が多くなったり、内省的になっていったりして「ロック」からは遠ざかっているように見えた。各曲の輪郭がはっきりし、ギターがラウドな本作はそういう意味で歓迎された。一方でわかりやす過ぎる作りを“売れ線”と否定的に評価する声もある。本作で3作連続のトップ3入り+セールス400万枚以上。「What's The Frequency, Kenneth ?」(21位)「Bang And Blame」(19位)がヒット。

1994/10/15付 No.8 (初登場) 最高位8位、9週
Divine Intervention / Slayer
LA出身のスラッシュメタル・バンド、スレイヤーの6作目。ジャケを見てわかる通り“良識ある人々”からは非常に嫌われていたバンドで、悪魔崇拝とかナチ・シンパだとか色々とレッテルを貼られては叩かれた。
この手のバンドの常として、ファンの間では初期作品ほど人気が高く、本作も固定ファン票による瞬発力で初登場こそ8位と高かったものの、その後わずか9週しかチャートインできなかったことから決して過去作品と比べて商業的に成功したとも言い切れない。

1994/10/15付 No.10 (初登場) 最高位10位、22週
The Concert / Barbra Streisand
国民的な超大物エンターテイナーのバーブラは、実は大勢の前でのライヴ・パフォーマンスは苦手だったらしく、ライヴ活動は盛んではなかった。ニューヨークでのこのライヴは、一般の観客相手の普通のライヴとしては約20年ぶりだったらしい。それだけに幅広い選曲で、彼女のベスト盤としても聴ける。
なおこのアルバム(2枚組)から曲を抜粋したコンパクト版「The Concert - Highlights」も半年後にリリースされ、81位にランクインしている。

1994/10/22付 No.4 (初登場) 最高位4位、23週
Pisces Iscariot / The Smashing Pumpkins
前作での初トップ10入りに続くヒット。ただし本作はシングルB面曲を中心に集めた編集盤であり、それがこれだけの高順位に初登場するのは、いかに彼らへの期待が高まっていたかを感じさせる。もともとスマパンはシングルのカップリング曲などに膨大な新曲を投入するバンドで、後にはそれを特殊ボックスセット形式でリリースしたりしている(「The Aeroplane Flies High」)。時期的には前作の頃の曲が多く、オリジナルアルバムに比べるとアコースティックで地味な曲が多い。フリートウッド・マックのカバー「Landslide」がヒット(HOT100エアプレイ30位)。

1994/10/22付 No.10 (初登場) 最高位10位、40週
Stones In The Road / Mary Chapin Carpenter
女性シンガーソングライター、メアリー・チェイピン・カーペンターの初のトップ10ヒット。前作「Come On, Come On」が最高位31位ながら丸3年近くチャートイン、300万枚以上を売ったのを受けて本作もヒットとなった。一般的にはカントリーに分類される人だが、音の感触はむしろフォーク(・ロック)に近い。しっとりと落ち着いた、繊細な曲の多いアルバム中ではむしろちょっと浮いてるアップテンポの「Shut Up And Kiss Me」がカントリーチャートで1位。

1994/10/29付 No.9 (2週目でTop10入り) 最高位6位、90週
No Need To Argue / The Cranberries
アイルランド出身のクランベリーズ、2作目で初のトップ10入り。前作(18位)も大ヒットだったが、本作は700万枚を売る彼らにとって最大のヒット。ヘヴィな曲から可愛らしいポップな曲まで音楽的には“普通のロック”だが、ボーカルのドロレス・オリオーダンの個性が非常に強く、聴き手の好き嫌いもはっきり分かれるだろう。彼女の態度の大きさや歌詞の稚拙さなどから、とくにイギリスではプレスから非常に叩かれたバンドが、アメリカでは王道ロックバンドとして受け入れられ、「Zonbie」(モダンロック1位、HOT100エアプレイ22位)、「Ode To My Family」(エアプレイ39位)がヒット。

1994/11/5付 No.1 (初登場) 最高位1位、34週
Murder Was The Case / Soundtrack
スヌープ・ドギー・ドッグのデビュー作に収録されていた「Murder Was The Case」のアイデアを膨らませて、自ら監督になって映画化してしまう...なんてことをできたのは、当時全盛を誇り、“ギャングスタ・ラップ”時代を築いたドクター・ドレならでは。しかしこのサントラの鍵を握るのはむしろダット・ニガ・ダズ(ダズ・ディリンジャー)とDJクイック。大きなヒット曲は生まれていないが、ドレだけでなく西海岸ラップ全体に勢いがあった頃の空気が封じ込められている。ソウル・スピリット溢れるジュエル(あの白人ではない)「Woman To Woman」のような素晴らしい歌モノも収録。

1994/11/5付 No.2 (初登場) 最高位2位、32週
The Diary / Scarface
前作に続くトップ10入り、ゲットー・ボーイズのスカーフェイスの通算3作目のソロ。サウンド的には西海岸ラップに近いが、“死”や“精神”を直視したディープな歌詞を、ドスの効いたフロウで聴かせるスタイルはスカーフェイスならでは。そんな彼のスタイルが凝縮された「I Seen A Man Die (aka I Never Seen A Man Cry)」がヒット(37位)。ジャケは安っぽいが、クオリティは高い。

1994/11/5付 No.3 (初登場) 最高位3位、19週
Promised Land / Queensryche
ハードロックファンだけでなく、一般にも名が知られる存在へとブレイクした前作から4年ぶりの新作。期待が高かったこともあり、チャート順位上は彼らの最大のヒットとなった。アルバム・ロック・チャートで「I Am I」(8位)「Bridge」(6位)とヒットが生まれたものの前作ほどの息の長いヒットにはならなかった。

1994/11/5付 No.8 (初登場) 最高位8位、50週
Cross Road / Bon Jovi
ボンジョヴィ初のベスト盤。これで4作連続のトップ10入り。80年代後半の爆発的な売れ方に比べるとちょっと落ち目感が漂っていたここ数年。“グランジ”の登場以降、彼らのような王道ハードロック・バンドは時代遅れの恥ずかしい存在と見下されがちな、逆境の時代だった。一方で、彼らは単なる“産業ロック”ではなく、その真摯で一途な姿勢を肯定的に評価する動きもあり、イギリスではむしろこの辺の時期からが商業的な全盛期となる。新曲「Always」(4位)「Someday I'll Be Saturday Night」(イギリスで7位)の出来もいい。アメリカ人より先に彼らを発掘したことを、我々日本人は誇っていい。但しこれはベスト盤としては今いちで、大事な曲がボコボコ抜けている。中でも「Born To Be My Baby」(3位)未収録はイタい。

1994/11/12付 No.3 (初登場) 最高位3位、48週
Bedtime Stories / Madonna
前作でエロ路線を爆走、いくら何でもそりゃやり過ぎだろ、というところまで行ってしまったマドンナ。本作ではぐっと落ち着いて、製作陣にもベイビーフェイスやダラス・オースティンといった、マドンナとの顔合わせは新鮮ではあるけど、言ってみれば“ありふれた”人選だった。そういう意味でマドンナにとんがったところを期待する人には期待外れの作品だったろうが、「Take A Bow」(7週1位)などで“普通のファン”を呼び戻した意義は大きかった。他に「Secret」(3位)がヒット。オリジナルアルバムとしてはデビュー以来の7作連続トップ10入り。サントラやコンピを含むトップ10入りはこれで9作目。

1994/11/12付 No.8 (初登場) 最高位8位、114週
Greatest Hits / Bob Seger & The Silver Bullet Band
69年デビューのボブ・シーガーの初のベスト盤。これで8作連続のトップ10入り。なにしろ対象となる期間・曲数ともに膨大なので、あれも抜けてるこれも抜けてる、と非常に食い足りない思いをさせられるベスト盤だが、これが2003年時点でも彼の唯一のベスト盤で他に選択肢がないので、ずっと売れ続けている。ブックレット内にはボブを筆頭にバンドメンバーたちも、自分の子供の写真を大フィーチャー。ああ、アメリカ人だなあ、と思うと同時に、これが90年代になってから彼らが次第に音楽シーンから遠ざかっていった理由なのかな、と思わされる。

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