May-Aug, 1994

1994/5/7付 No.9 (15週目でTop10入り) 最高位9位、42週
God Shuffled His Feet / Crash Test Dummies
カナダ出身のロックバンドの2作目で、アメリカでは初ヒット。「Mmm Mmm Mmm Mmm」(4位)という人をナメたタイトルの曲でブレイクし、ボーカルがおよそロックらしからぬバリトン・ヴォイスだったので色モノと見なされがちだったが、実は音楽的には非常にマトモで、アコースティックな音使いで芳潤な音を聴かせる、かなり質の高い作品。曲も粒が揃っており、名実ともにこのバンドを代表する一作。プロデュースは、この時期色々面白いバンドを発掘した元トーキング・ヘッズのジェリー・ハリスン。

1994/5/14付 No.5 (初登場) 最高位2位、83週
Read My Mind / Reba McEntire
リバ・マッケンタイアの最大のヒット作であり、内容的にも彼女のベストだと言われる。これで3作連続のトップ10入りで、更に凄いのは5作連続で300万枚以上を売っていること。
カントリーチャートでは「Till You Love Me」「And Still」「The Heart Is A Lonely Hunter」が1位になった他、アルバム10曲中5曲がヒット。主婦の立場で浮気っぽいダンナを叱り飛ばす曲なんてのはいつもと同じだが、エイズを移されてしまったが、当の相手の名前ぐらいしか覚えてない女性を歌った「She Thinks His Name Was John」など、硬派な視点も。

1994/5/28 No.6 (7週目でTop10入り) 最高位1位、44週
The Crow / Soundtrack
ブランドン・リー主演(撮影中に事故死)映画のサントラ。原作は人気コミックだったため実写映画化というだけでも話題性はあったが、そこに主役の謎の死という話題も手伝って映画自体が大ヒット。
ストーン・テンプル・パイロッツ、パンテラ、ナイン・インチ・ネイルズなど、激しめのサウンドの、旬のバンドを集めている。この中にキュアーが混じってたりするのが、いかにもこの時期のアメリカっぽい解釈で面白い。単なる曲の寄せ集めではなく、映画の雰囲気によく合ってるという意味では評判のいい作品。

1994/5/28付 No.9 (初登場) 最高位9位、26週
Swamp Ophelia / Indigo Girls
ジョージア出身の女性フォーク・デュオ、この4作目で初のトップ10入り。2人がそれぞれ曲を書き、自ら歌うというスタイルの2人は社会派として名高く、また、レズビアン・カップルとしても有名。特にヒット曲が生まれたわけでもないこのアルバムでの初ヒットは、これまでの評判の積み重ねによるものだろう。これまでになくロック色の強い音作りで(プロデューサーのピーター・コリンズの影響)、相変わらずエイミーの作品は雰囲気が重い。それを中和するのがエミリーの柔らかい歌声とメロディアスな楽曲。こんな時代にこんな作品がヒットしていたことが奇跡的に思えるほど地味で繊細な作品。

1994/6/4付 No.10 (6週目でTop10入り) 最高位3位、86週
All-4-One
白人/黒人混合の4人組ボーカルグループ。ボーイズIIメン、ジョデシ以降、R&B系のボーカルグループが次々に出てきたが、その中でもいちばんポップ寄りに位置づけられるグループだろう。中庸ポップ路線なのでロックやR&Bのリスナーからは小馬鹿にされがちだが、王道故に商業的にはめっぽう強く、「So Much In Love」(5位、タイムズなどでお馴染みのスタンダード)「I Swear」(1位、ジョン・マイケル・モンゴメリーのカバー)の大ヒットを産み、アルバムも400万枚を売った。

1994/6/11付 No.5 (初登場) 最高位5位、19週
Fruitcakes / Jimmy Buffett
70年代後半のピーク以降、商業的には低迷していたジミー・バフェットが、突然トップ10に返り咲いた復活作。78年の、これまでの唯一のトップ10アルバム以来16年ぶりのトップ10だが、本作の後はトップ10の常連となる。アラバマ育ち、マイアミを拠点とするバフェットは、いかにもマイアミらしい大らかなリゾート風の作風が得意なシンガーソングライター。グレイトフル・デッドやキンクスのカバーさえカリプソ風に味付けされてすっかりリゾート・ミュージックになってしまっている本作への評価は分かれるだろうが、まあたまにこういう音楽が売れるのは健全なことだろう。

1994/6/18付 No.1 (初登場) 最高位1位、62週
Ill Communication / Beastie Boys
なんだかビースティ・ボーイズが妙に“オシャレ”な存在になってしまった。デビュー作以来の1位だが、当時とは全然ウケ方が違う。これはもはやロックでもヒップホップでもなく、クラブ・ミュージックと言えばいいのだろうか。ジャズファンク風からハードロック風まで音の幅は広いが、エフェクトがかかったような曇った音使いが多く、独特の雰囲気。インスト部分が非常に多いのも印象的。流石にジャンル分けの壁が立ちはだかり、ポップ/ロック/R&Bいずれでもラジオでのヒットは難しかった(ロック系で「Sabotage」が小ヒット)。

1994/6/25付 No.1 (初登場) 最高位1位、64週
Purple / Stone Temple Pilots
ストーン・テンプル・パイロッツの2作目。何と言っても「Interstate Love Song」。アルバム・ロック・チャートで15週1位という、当時歴代最長1位の大ヒット(HOT100エアプレイでも18位)。「Vasoline」も同チャートで1位(HOT100エアプレイで38位)。理屈先行の日本のメディアではニルヴァーナなどのグランジを真似ているだけの“似非グランジ”だとか言われて馬鹿にされていたが、アメリカではもっと素直にメインストリーム・ロック・バンドとして受け入れられ、前作を700万、本作を600万枚売った。
ちなみにジャケや背表紙など、どこにも「Purple」というタイトルは書いてない。たぶんジャケに漢字で「紫」と書いてある(日本人には“業”にしか見えないが)のが由来なのだろう。

1994/6/25付 No.2 (初登場) 最高位2位、53週
Regulate... G Funk Era / Warren G
「Above The Rim」サントラ収録の「Regulate」(2位)の大ヒットでその名を知らしめたロングビーチ出身のラッパー。ドクター・ドレとは血縁関係にあり、実は“G-ファンク”を最初に考案したのはウォーレンGだとの説もある(信憑性は低い)。やはり全体的に「Regulate」風のレイドバックしたゆる〜い雰囲気が全体を貫いている。「Regulate」はR&Bチャートでは7位までしか上がっておらず、実はこのサウンドを支持していたのは圧倒的に白人層だった。「This D.J.」(9位)がヒット。

1994/6/25付 No.7 (初登場) 最高位7位、16週
Walk On / Boston
“8年周期”のボストンの帰還は86年以来。しかし流石にこの時代にボストンってのはオールド・ファンと一部マニアのためのものでしかなく、短命ヒットに終わった。律儀なのか何なのか、次のアルバムは更に8年後の2002年に出ているが、こちらは商業的にはさらに惨敗している(変則的に97年にはベスト盤が出ている)。ここからはアルバム・ロック・チャートで「I Need Your Love」(4位)がヒットしているが、その次のヒット「Walk On Medley」(14位)は異色。アルバムの曲をダイジェストでメドレーにしたもので(ラジオ局用のプロモだと思われる)、こんなのが放送されるってことは一応興味は持たれていたのだろう。

1994/6/25付 No.10 (初登場) 最高位6位、112週
When Love Finds You / Vince Gill
ヴィンス・ギルの最大のヒット作。トップ10入りはこれが2作目。この人はカントリーに分類こそされるがAORシンガーと呼ぶべきで、その柔らかみのある声を活かしたスロー〜ミディアム系が神髄。内容的にはそれだけでなく、いかにもカントリーっぽいアップ系などもあるが、白眉はしっとりとしたスローの「Whenever You Come Around」や「When Love Finds You」などだろう。400万枚を売った本作は内容的にも彼のベストの1枚とされる。

1994/7/2付 No.5 (3週目でTop10入り) 最高位1位、88週
The Lion King / Soundtrack
ディズニー・アニメのサントラ。近年ではディズニー最大のヒットで、10週1位、セールスは1000万枚に達している。映画じたいが大ヒットしたこともあるし、「Can You Feel The Love Tonight」(4位)「Circle Of Life」(18位)(ともにエルトン・ジョン)がヒットしたことも大きく貢献したようだ。エルトンはこの時期は自分のアルバムもどんどんトップ10に送り込めるイケてる時期だったので、両者の相乗効果は大きかった。ところでこの物語、コンセプトは日本の漫画「ジャングル大帝」のパクリだとよく聞いたけど、本当?

1994/7/16付 No.7 (初登場) 最高位5位、69週
Who I Am / Alan Jackson
ジョージア州出身のアラン・ジャクソンの初のトップ10ヒット。とは言えそれはチャートの数字上だけの問題で、これまでに「Don't Rock The Jukebox」(17位、118週、400万枚)や「A Lot About Lovin'」(13位、122週、600万枚)といった大ヒット作を出してきている。このアルバムも400万枚のセールス。
いきなり「Summertime Blues」のカバーで幕をあけるベタな展開に不安になるが、「Gone Country」「Who I Am」など、特にミディアムテンポの曲は佳曲揃いで、非カントリーリスナーにも聴きやすい。

1994/7/16付 No.8 (初登場) 最高位8位、23週
Get Up On It / Keith Sweat
キース・スウェットの4作目。トップ10入りは2枚目。デビュー当初のインパクトが薄れてきてマンネリ気味の、谷間の時期の作品。次作でガンと復活するだけに、尚更谷間感が強い。これまでリリースしたほぼすべてのシングルをR&Bチャートのトップ10に送り込み、8曲のトップ3ヒットを持つ彼が、このアルバムからは「How Do You Like It」(R&B9位)が最大のヒットでは、売れなくても仕方ないだろう。逆に言うとこのアルバムでもトップ10ヒットになってしまう彼のアーティストパワーの凄さは実感できる。

1994/7/30付 No.2 (初登場) 最高位2位、38週
Voodoo Lounge / Rolling Stones
80年代後半以降は、新作を出す→凄い規模のワールド・ツアー→その模様をライヴ盤として出す、というサイクルで、新作を出すのに最低3年はかかってしまうストーンズ。今回は約5年ぶりの新作とあって期待感は高く、2位という大ヒットとなった。これで、32作めのトップ10入り。デビュー作を除けば、これまで30年間でオリジナルアルバムは一度もトップ5入りを逃していないという偉大すぎる記録を更新。冷たい反応を示すかと思われたイギリスでも1位になった。「Love Is Strong」「You Got Me Rocking」(ともにアルバム・ロック・チャート2位)などロック系ではちゃんとラジオ・ヒットも記録。

1994/7/30付 No.7 (2週目でTop10入り) 最高位2位、94週
Forrest Gump / Soundtrack
ちょっと反則気味のサントラ。2枚組の全曲が60年代前後の大ヒット曲ばかりで、新曲はオリジナル・スコア1曲のみ。もちろんこれは映画の内容にあわせてのことで、収録曲はどれも当時の社会、流行、風俗を象徴する曲ばかり。言い換えれば、ごく一般の人にしてみれば“懐かしい曲がいっぱい入ったお得なコンピ”で、マニアにしてみれば“ありふれたベタな曲ばかり、全部既に持ってる”てなことになるだろう。まる2年近くチャートインして600万セットの売り上げってのはいくら何でも売れ過ぎだとは思うが。

1994/8/6付 No.5 (初登場) 最高位5位、14週
We Come Strapped / MC Eiht featuring CMW
これまではコンプトンズ・モスト・ウォンテッドという名前のグループとして活動してきたが、ここでグループ名を短縮した上に中心メンバーのMCエイトを前面に出して名義変更。晴れて初のトップ10ヒットとなった。まあ、これは一連の西海岸ラップブームに便乗してのことで、名義を変えた効果とも言い切れないが、MCエイトが前年映画「Menace II Society」に出演して知名度を高めたことと無関係ではないだろう。名前の通りLA、コンプトン出身のラップグループ。MCエイトは「じや〜」がキメ言葉。かっこいいのかどうかわからないが妙に連発する。メロディアスなベース主導のゆるい曲が多い、いかにも西な音。

1994/8/6付 No.8 (初登場) 最高位8位、30週
It Takes A Thief / Coolio
LAはコンプトン出身、クーリオのソロデビュー作。ラップ経歴は非常に長いが、薬関係で服役していたりで遅咲きだった。わかりやすい大ネタの多用や、ちょっとお笑い系のキャラなどで日本でも人気が高かった。アメリカ本国でも、物騒なギャングスタ・ラップが全盛のこの時期に、何も考えずに楽しめる数少ないパーティラップということで需要が高かった。レイクサイドの同名曲をそのまんま使った「Fantastic Voyage」(3位)がヒット。

1994/8/13付 No.10 (38週目でTop10入り) 最高位7位、104週
Candlebox
シアトル出身のロックバンド、メジャーデビュー作。発売から長〜い時間をかけてブレイクするという、ロックバンドにありがちなパターン。93年から94年にかけてロック系ラジオでは大ヒットを連発し、「You」(アルバムロック6位)「Far Behind」(同4位、HOT100で18位)「Cover Me」(同8位)はそれぞれ長期ランクインの大ヒットとなった。やや暗いがサビメロが覚えやすくキャッチーな作りで、しかもギターががーんと入って盛り上がるタイプの曲が多い。この時期のシアトル出身のバンドというと何でもグランジという括りに入れられがちで、確かにこのバンドもあの辺に通じる独特の暗さはあるのだが、むしろハードロックの流れに位置づけるべきだろう。

1994/8/27付 No.8 (27週目でTop10入り) 最高位2位、113週
Dookie / Green Day
後に多くのバンドが登場するきっかけを作った、アメリカにおけるメロディック・パンクの先駆者。日本やイギリスでは珍しいタイプのバンドではなく、むしろ馴染みのある音だが、アメリカではこのタイプのバンドがこれほど売れるのは初めてのことだった。カリフォルニア州バークレイ出身の3人組で、インディで2枚アルバムを出して、本作でメジャーデビュー。モダンロック・チャートでは「Longview」(1位)「Basket Case」(1位)「Welcome To Paradaise」(7位)「When I Come Around」(1位)「She」(5位)と大ヒットを連発。HOT100エアプレイ・チャートでも順に36位、26位、56位、6位、41位のヒットになっているが、当時のチャート集計基準上、HOT100チャートには1曲も登場しなかった。

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