May-Aug, 1993

1993/5/8付 No.7 (初登場) 最高位7位、34週
Pork Soda / Primus
変態ファンク・ロック・バンド、プライマスの初のトップ10ヒット。サンフランシスコ出身、ベーシストのレス・クレイプールが率いるトリオ編成のバンド。これが4作目で、最も実験的なアルバムだとも、彼らのベストアルバムだとも言われる。ぶっとんだファンキーさはフランク・ザッパとも比較され、この年のロラパルーザのヘッドライナーという栄誉も得た。

1993/5/15付 No.3 (初登場) 最高位3位、21週
Porno For Pyros
ジェーンズ・アディクションを解散したペリー・ファレルが結成した、LAをベースとする新バンド。ジェーンズは「Ritual De Lo Habitual」(18位)で成功を収めた矢先の解散だったので本作へのファンの期待は非常に高かった。メタル、ファンク、アート・ロックの混然とした音はジェーンズを基本的に踏襲するものだが、ハードロック的な明解さが後退していることからあまり熱心な支持は得られず短命ヒットに終わった。

1993/5/15付 No.9 (17週目でTop10入り) 最高位8位、71週
It's About Time / SWV
アン・ヴォーグの成功を見て、レコード会社が次々に送り込んできた女性R&Bグループの一つ。とは言え彼女たちも自分たちのスタイルを確立し、本作を300万枚以上売る大ヒットにさせた。アン・ヴォーグとは全然タイプが違い、“軽さ”に味がある彼女たちは「I'm So Into You」(6位)「Weak」(1位)「Anything」(18位)とヒットさせ、極めつけの「Right Here / Human Nature」(2位)でその持ち味を確立させた(「〜Human Nature」はもともとアルバム収録曲のリミックスバージョンだが、再発盤CDには収録されている)。グループ名は“Sisters With Voices”の頭文字。

1993/5/22付 No.7 (初登場) 最高位7位、16週
Down With The King / Run-D.M.C.
2年半ぶりのアルバムだが、前作は酷評された上に売り上げも散々で、まともに売れたのは88年の「Tougher Than Leather」以来5年ぶり。それだけに彼らも自分たちが“キング”なのだと必死にアピールしていた。意外なほどメロウな「Down With The King」(21位)に明らかなように彼らは自分たちのスタイルを変えてまでも生き残りを計っていた。残念ながらそれは成功しなかったばかりか、彼らの“伝説”をも傷つけてしまったようだが。

1993/5/29付 No.5 (初登場) 最高位5位、54週
Tell Me Why / Wynonna
カントリー・シンガーのウィノーナ、前作に続くトップ10入り。フォークやサザン・ロックなど、カントリー以外の要素をどんどん取り入れており、メアリー・チェイピン・カーペンターやソロデビュー前のシェリル・クロウが提供した曲なんてのもある。大ヒットした前作よりもむしろ評価は高い。本作からもカントリーチャートでは4曲のヒットが生まれた。

1993/6/5付 No.1 (初登場) 最高位1位、106週
janet. / Janet Jackson
タイトルを小文字にして、アートワーク全体を女性ファッション雑誌のような柔かく洗練されたムードで包んだ、ジャネットの通算5作目。中身の音もちゃんとそのイメージ通りの作りで、ガチッとしたダンスに走りがちだった音楽性が“人間的”な方向に軌道修正され、兄とは違う道を歩み始めた。洗練されたジャム&ルイスの音作り、ジャネットのカリスマ的な存在感、そしてポピュラリティが一番バランスよく表現された作品だろう。「That's The Way Love Goes」(1位)「If」(4位)「Again」(1位)「Because Of Love」(10位)「Any Time, Any Place」(2位)「You Want This」(8位)と、6曲もトップ10ヒットを生んだ他、最後の2枚のシングルはそれぞれB面曲もヒットした(アルバムには未収録)。また、「Where Are You Now」はシングルカットされなかったものの、エアプレイチャートで最高位30位、超ロングランヒットとなった。
アルバムはこれで3作連続で1位&500万枚突破&100週以上チャートイン。

1993/6/5付 No.9 (初登場) 最高位9位、12週
Alive III / Kiss
どんなに作品を重ね、ベテランになっても、やっぱりキッスの代表作は「Alive」(75年9位、彼らの初の大ヒット作となるライヴ盤)。それは本人たちもわかっていて、以後ライヴアルバムには「Alive II」(77年7位)「Alive III」と名前がつけられてきた。チャート集計方法改変により彼らのように固定ファンに支えられ、瞬間的にセールスの伸びるタイプのアーティストが有利になったこともあり、前作に続いて通算6枚目のトップ10入りとなった。

1993/6/12付 No.2 (初登場) 最高位2位、63週
Unplugged ...And Seated / Rod Stewart
クラプトンに次いで、大物ベテランアーティストのキャリアを「Unplugged」が一変させてしまった例。80年代末に商業的にちょっと盛り返していたロッドではあるが、アルバムのトップ3入りは78年以来15年ぶり。しかもここから「Have I Told You Lately」(5位、ヴァン・モリスンのカバー)「Reason To Believe」(19位、71年の自身のヒットの再演)「Having A Party」(36位、サム・クックのカバー)と、カバー曲ばかり3曲もヒットを出してしまった。確かにロッドはアンプラグド企画にハマる声の持ち主で、これは企画の勝利だった。ちょうど番組そのものが盛り上がっていて、アンプラグドそのものがブームだったことにも助けられた。

1993/6/12付 No.7 (初登場) 最高位7位、17週
Sound Of White Noise / Anthrax
91年の集計方法改変以後の典型的なヒット。ニューヨーク出身のスラッシュメタル・バンドで、80年代後半からそのスジでは大物バンドとして知られてきたが、決して一般ウケするような音楽性ではなく、むしろ“子供の教育に悪い音楽”としてやり玉にあげられがちな存在だった。これまでボーカルを務めたジョーイ・ベラドンナが脱退、ジョン・ブッシュに交代しての最初の作品。こういうヴォーカリスト交代劇は古くからのファンを失うケースが多いが、彼らの場合は本作も概ね受け入れられた。商業的には本作を最後に下り坂になるが、2001年の“炭疽菌騒動”の時に少しまた話題になった(バンド名のAnthraxとはずばり炭疽病)。

1993/6/12付 No.10 (初登場) 最高位10位、19週
Kamakiriad / Donald Fagen
元スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲン、10年半ぶりのソロアルバム!しかもバンドメイトだったウォルター・ベッカーがプロデューサーなどとして参加しているため、実質的なスティーリー・ダン再結成!という話題性だけで売れてしまった作品。基本的には完璧主義者の彼らが80年ぐらいまでに出していた作品の路線を踏襲しており、それを期待していたファンの期待には応えた。変なタイトルは日本語の「カマキリ」を語源とする造語。

1993/6/19付 No.8 (初登場) 最高位6位、28週
Never Let Me Go / Luther Vandross
ルーサー・ヴァンドロスの全キャリアの中でもかなり忘れられがちな作品だろう。ここからヒットらしいヒット曲は生まれていないが、前作に続いて余裕のトップ10入り。逆に言えば、もう“ルーサーの新作”というだけで売れてしまうブランドを確立していたということか。しかしこの辺の時期の作品に対するファンの評価は厳しく、80年代の輝きが嘘のようだったとか、単なるカラオケ親爺に成り下がったとか酷評されている。まあ、歌は圧倒的に巧いのだけど。

1993/6/19付 No.10 (24週目でTop10入り) 最高位3位、114週
Core / Stone Temple Pilots
サンディエゴ出身のロックバンドのデビュー作。HOT100ヒットはないが、アルバム・ロック・チャートでは「Plush」(1位)「Creep」(2位)が大ヒットしている。キャッチーで、シンプルによく作り込まれた楽曲で、サウンドは荒い感触のハードなギターサウンドということで、この頃一大勢力となっていた“グランジ”の亜流と勝手に位置づけられ、“似非グランジ”などと馬鹿にされることが多かった。実は以後の多くのロックバンドのお手本となっている重要なバンド。

1993/7/3付 No.9 (2週目でTop10入り) 最高位7位、47週
Last Action Hero / Soundtrack
アーノルド・シュワルツェネッガー主演アクション映画のサントラで、ハードロック〜ヘヴィメタル系の大物が勢揃い。デフ・レパードの「Two Steps Behind」(12位)がヒットした他、アルバム・ロック・チャートではAC/DCの「Big Gun」(1位)、クイーンズライク「Real World」(3位)などがヒットした。他にアリス・イン・チェインズ、アンラックス、メガデス、テスラなどが参加。この頃妙にロック方面からの評価が高まっていたサイプレス・ヒルも参加。

1993/7/10付 No.6 (初登場) 最高位3位、43週
It Won't Be The Last / Billy Ray Cyrus
デビュー作である前作が爆発的大ヒットとなったビリー・レイ・サイラスの2作目。なにしろ前作は17週1位で900万枚だから本作を作るプレッシャーは相当なものだったろうが、実は本作は前作よりもいいアルバムだとの声もある好盤。「In The Heart Of A Woman」(カントリー3位)など、カントリーシンガーとしてよりは、シンガーソングライターとして接するべき作品。

1993/7/17付 No.1 (初登場) 最高位1位、49週
Back To Broadway / Barbra Streisand
バーブラ、強い。さすが“国民的シンガー”の呼び名は伊達ではない。通算7作目のNo.1ヒット。前に1位になったのは85年の「The Broadway Album」。その続編となる本作が、再び1位に輝いた。タイトル通りブロードウェイ・ミュージカル作品を歌ったもの。前作ほど評判が高いわけでもなく、バーブラとしては標準的な作品とされる。

1993/7/17付 No.9 (2週目でTop10入り) 最高位1位、79週
Sleepless In Seattle / Soundtrack
この時期のシアトルと言えばニルヴァーナやパール・ジャムの出身地、グランジの聖地としてのみ語られるが、この映画はトム・ハンクスとメグ・ライアンの大人のラヴストーリー。サントラもとっても大人な内容で、これが1位になって400万枚も売れたというのはちょっと俄には信じがたいものがあるだろう。ジャズっぽいボーカル物主体で、ルイ・アームストロング、ナット・キング・コールらのクラシックから若手のハリー・コニックJr.まで。セリーヌ・ディオンとクライヴ・グリフィンの「When I Fall In Love」(23位)がヒット。

1993/7/24付 No.1 (初登場) 最高位1位、40週
Zooropa / U2
これで4作連続1位となるU2。前作で垣間見せたダンス・ポップへのアプローチを本作で一歩押し進め、昔からのファンを戸惑わせた作品。アルバムから1曲もトップ40ヒットシングルが生まれなかったのは83年の「War」以来。モダン・ロック・チャートでは「Numb」(2位)「Lemon」(3位)などがヒット。非常に凝った仕掛けの大掛かりなライヴも話題となった。彼らがかつての“熱血ロック・バンド”から“ポップ・カルチャーのアイコン”へと変貌を遂げ、それが完成されたのがこの時期。

1993/8/7付 No.1 (初登場) 最高位1位、56週
Black Sunday / Cypress Hill
デビュー作「Cypress Hill」が最高位31位ながら89週チャートインとロングセラーになり、本作で大ブレイク。ロサンゼルス出身のラティーノ系ラップグループで、ブックレットでもマリファナ解禁を訴えるなど、マリファナのイメージを常にまとっていた。この頃はまだ目立ってロックっぽい音ではなかったが、ロック界からの評価が高く、共演歴も多い。前作でのゴツゴツと乾いた質感、本作以後のどよ〜んと暗い澱んだ空気を適度に交えつつ、そこそこポップに仕上がった分かりやすい作品。「Insane In The Brain」(19位)がヒット。

1993/8/14付 No.7 (初登場) 最高位6位、41週
Promises And Lies / UB40
ブリティッシュ・レゲエ・バンド、UB40のアメリカでの唯一のトップ10アルバム。バーミンガム出身の8人組。英本国では80年代初頭デビュー以来ずっとコンスタントにヒットを出している。初期は政治的な主張の強い、パンクや本場ジャマイカのレゲエに近いアティチュードの社会的なグループだったが、だんだん普通のポップな曲をやるようになり、この頃はすっかりポップ・レゲエ・バンドとなっていた。エルヴィス・プレスリーのカバー「Can't Help Falling In Love」(1位)が大ヒット。彼らは全曲カバーのアルバムも何枚も出しているが、このアルバムはカバー曲はこれ1曲だけ。

<Previous ▲Index >Next