Aug 1990 - Jan 1991

1990/8/4付 No.9 (4週目でTop10入り) 最高位5位
Compositions / Anita Baker
R&Bシンガー、アニタ・ベイカーの4作目。ジャズっぽい“オシャレな”R&Bとして、おそらくシャーデーなんかと同じように受け入れられてきた。前々作が500万枚、前作が300万枚というビッグヒットになった勢いもあり、今回も余裕のトップ10ヒットだが、ここからはトップ40ヒットシングルは生まれなかった。そのせいかセールスも前作までに比べれば低調だった。時代がだんだん“オシャレ”な音楽から離れていったせいもあるだろう。もちろんこの人の実力は折り紙付きで、単なるオシャレ系ではないのだが。

1990/8/4付 No.10 (6週目でTop10入り) 最高位1位
Mariah Carey
90年代の幕開けと共に登場したマライア、これがデビュー作。この先10年に渡ってチャートを席巻していくことになる。黒人の実力と、白人のルックスを備えた、マーケティング的な意味でズルいぐらいに完璧な逸材だった。当時活躍していた誰ともキャラがかぶらなかったこともあって彼女は急速に市場に受け入れられ、ここからの4曲のシングル「Vision Of Love」「Love Takes Time」「Someday」「I Don't Wanna Cry」をすべてNo.1に送り込むという大技を披露した。しかしいわば“キャラ勝ち”であり、アルバムとしての質は別に高くない。

1990/8/11付 No.3 (3週目でTop10入り) 最高位2位
Flesh & Blood / Poison
ハードロックバンド、ポイズンの3作目。1stではモトリー・クルーをチープにしただけの安っぽいヘナチョコだと酷評されたが、2ndでそのポップ・センスがクローズアップされ、本作で“なかなかやるじゃん”と思わせた、という感じか。「Unskinny Bop」(3位)「Something To Believe In」(4位)「Life Goes On」(35位)「Ride The Wind」(38位)がヒット。30位台の2曲が順位に見合わない佳曲なのがニクい。

1990/9/1付 No.7 (2週目でTop10入り) 最高位3位
Blaze Of Glory - Young Guns II / Soundtrack (Jon Bon Jovi)
エミリオ・エステヴェズ、キーファー・サザーランドら主演の映画「Young Guns II」サントラであり、ジョン・ボン・ジョヴィの初のソロアルバムでもある。「Blaze Of Glory」(1位)「Miracle」(12位)がヒット。ボンジョヴィとしてやってきたハードロック路線を離れ、ややブルージーでアーシーなロック路線で、後にボンジョヴィが進む方向性を既に本作が垣間見せている。

1990/9/15付 No.6 (3週目でTop10入り) 最高位6位
Graffitti Bridge / Soundtrack (Prince)
プリンスの通算12作目。ちょっと下り坂か?と思わせた「Lovesexy」の売り上げ不振を前作「Batman」サントラの大ヒットで挽回して、今回。この人はいくらB級だと酷評されても自分の映画を作るのが大好きで、これは「Purple Rain」や「Parade」(映画は「Under The Cherry Moon」)に続いてオリジナルアルバム兼サントラ。但しこのアルバムは17曲中7曲がテヴィン・キャンベル、ザ・タイムなど他人名義の曲で、プリンスが曲提供などの形で関わっているとは言え、ちょっと異色の作りだ。「Thieves In The Temple」(6位)とテヴィキャンの「Round & Round」(12位)がヒット。ごく一部で名作だとする声もあるが一般にはファンの間では評判はよくない。但し後の彼のバンドの名前にも使われる「New Power Generation」はかっこいい曲だ。

1990/9/29付 No.7 (3週目でTop10入り) 最高位7位
Empire / Queensryche
クイーンズライチ(と当時の日本盤にはある。当時から“クイーンズライク”が正しいという声はあった)の4作目で、初トップ10作。“最も知的なハードロックバンド”などと呼ばれているが、コンセプト・アルバムである前作「Operation: Mindcrime」でその評価を極めた感があり、続く本作はバラード「Silent Lucidity」(9位)のシングルヒットによって、メインストリームに進出した作品。ハードロックバンドにはありがちな“いつもの自分たちらしくない曲が世間では自分たちの代表曲になってしまった”例。

1990/10/6付 No.5 (2週目でTop10入り) 最高位2位
Listen Without Prejudice, Volume 1 / George Michael
ワム!時代からソロデビュー作「Faith」まで、ポップでメインストリームな存在だった彼が、“俺はポップ・アイドルじゃないんだ、アーティストなんだ、偏見なしに見てくれ!”とアピールした勝負作。しかしタイトルでモロに言っちゃってるし、ちょっと“狙い過ぎ”感は否めない。結果として本作で彼のアメリカでは商業的な勢いを失ってしまうが、地味な作りの中に彼のソングライターとしての才能がきちんと反映されていて、私はかなり好きなアルバムだ。名曲「Praying For Time」(1位)、「Freedom '90」(8位)「Waiting For That Day」(27位)がヒット。「Mother's Pride」が素晴らしい。

1990/10/6付 No.9 (6週目でTop10入り) 最高位7位
Ghost / Soundtrack
デミ・ムーア、パトリック・スウェイジ主演映画のサントラ(左のジャケは再発版)。何と言っても「Unchained Melody」。この映画に使われたことで再び命を吹き込まれたライチャス・ブラザーズの名唱が、リバイバルヒット(13位)。レコード会社の変な売り方のせいもあって90年の再録バージョンまでヒットしてしまった(19位)。サントラ自体はこの曲以外は全部オリジナル・スコア。

1990/10/13付 No.7 (3週目でTop10入り) 最高位7位
Cherry Pie / Warrant
ハードロックバンド、ウォーレントの2作目がデビュー作に続いてトップ10入り。「Cherry Pie」(10位)「I Saw Red」(10位)がヒット。ポイズンを筆頭に、この辺のLAハードロックバンド(ポイズンはLAじゃないけど)はとかく軟派だとかアホだとか見下されがちだったが、こいつらはタイトル曲のアホさでそれを極めた。アルバム全体としては前作よりハードでタイトになっているのだが。

1990/10/20付 No.5 (3週目でTop10入り) 最高位5位
X / Inxs
インエクセスの7作目は前作「Kick」に続くトップ10ヒット。「Suicide Blone」(9位)「Disappear」(8位)がヒット。基本的に前作までの焼き直しで、やや手詰り感が見える。この後少しクラブ・サウンド寄りにアプローチし始め、本国オーストラリアやイギリスでは人気が持続するが、アメリカでは本作を最後に下り坂となる。

1990/10/20付 No.6 (3週目でTop10入り) 最高位2位
The Razors Edge / AC/DC
79年のブレイクから82年ぐらいまでは売れまくっていたAC/DCだが、その後は飽きられたのか、チャート的にはやや低迷が続き、本作は81年「For Those About Rock (We Salute You)」以来6作ぶりのトップ10ヒットとなる。ブギをルーツにもつタテノリのロック、ブライアン・ジョンソンの金切り声ボーカル、そして1曲1曲がコンパクトにまとめられた、意外なほどまっとうなポップ・センスは健在。「Moneytalks」(23位)のシングルヒットにも助けられて400万枚を売る大ヒットとなった。

1990/10/20付 No.7 (5週目でTop10入り) 最高位1位
To The Extreme / Vanilla Ice
90年代のヒットチャート最大の問題作。これが16週間1位に居座り、700万枚を売り上げたことでアメリカのヒットチャートに愛想を突かした人は少なくないだろう。
当時22歳、マイアミ出身の白人ラッパー。ハマーに続くラップ・アイドル、しかも今度は白人。東欧〜ロシア系のシャープな顔だちによるアイドル人気。クイーン&デヴィッド・ボウイ「Under Pressure」モロ使いの「Ice Ice Baby」(1位)の大ヒット。このぐらいしか売れた要因は思い付かない。シングルヒットを連発したわけでもないし(後は「Play That Funky Music」4位、同名曲のカバーがヒットしたのみ)、もちろん実力はない。色んな偶然がたまたまタイミングよく重なった結果の、運命の賜なのだろう。
ヴァニラ・アイスはこの人気が持続してるうちにライヴ盤、主演映画&そのサントラを続けざまに出してから案の定消えた。“消える”ことがわかっていて、稼げるうちに稼いでおこうという姿勢は潔かった。

1990/10/27付 No.8 (3週目でTop10入り) 最高位7位
Family Style / The Vaughan Brothers
ヴォーン・ブラザーズとは、スティービー・レイ・ヴォーンと、兄のジミー・ヴォーン。ダブル・トラブルという自分のバンドを率いてやってきたスティービーと、ファビュラス・サンダーバーズの一員であるジミーの初共演アルバムだが、このアルバムが発売される2ヵ月前、90年8月27日にスティービーはヘリコプター事故で他界しており、これが“遺作”でもある。これが彼にとって最大のヒットとなったのは皮肉だが、彼の死後も続々と未発表音源がリリースされ、それがいちいちヒットしているのが彼の人気が本物だったことを証明していて何より。
もともとブルーズ系作品としては“大ヒット”と言っていい30位台のヒットをコンスタントに出していたスティービー。一時はドラッグ問題もあったがそれを克服して89年に「In Step」という名作を出し、復活をアピールしたばかりのところだった。

1990/11/10付 No.9 (2週目でTop10入り) 最高位6位
Recycler / ZZ Top
泥臭いブギ・バンドが突然メインストリームに躍り出て、これで3作連続トップ10ヒットとなるテキサスの大ベテラン、ZZトップ。ただ、ここからは前2作のようにヒットシングルが生まれなかったためか、ヒットの規模は小さく、以後どんどん商業的な勢いは失われて行く。内容的にも前2作の焼き直し感が強すぎるのは否定できない。

1990/11/17付 No.8 (3週目でTop10入り) 最高位4位
The Rhythm Of The Saints / Paul Simon
圧倒的に“メロディ”の人たちだったサイモン&ガーファンクル解散後、ポール・サイモンは“リズム”の人になった。民族音楽のリズムに取り憑かれ、前作で南アフリカのミュージシャンを起用して大成功を収めた彼は、今度はブラジル音楽に取り組んだ。民族音楽に全面的に取り組み、それが売れてしまった例というのは特にアメリカでは非常に珍しいことなので、それだけでも彼の功績は讃えられるべきだろう。一方で“音楽による植民地主義”との批判があったのも、また事実。

1990/11/24付 No.8 (7週目でTop10入り) 最高位6位
Some People's Lives / Bette Midler
「From A Distance」。この1曲に尽きる。女優としても表現力に定評のある人だけに、シンガーとしても本当に素晴らしい実力の持ち主だ。そんな彼女が“いい曲”に出会えた時に起きるマジックが79年の「The Rose」であり、前作からの「Wind Beneath My Wings」であり、「From A Distance」だ。
前作「Beaches」に続くトップ10入り。大人が安心して聴けるAORシンガーとしての地位を確立していた時期だけに、1年半を越えるチャートイン期間に細く長く売れ続けている。

1990/12/1付 No.5 (2週目でTop10入り) 最高位3位
I'm Your Baby Tonight / Whitney Houston
ホイットニーの3作目。最高位3位で400万枚を売る、充分なヒットだが、デビュー作が14週1位で1200万枚、2作目が11週1位で900万枚では歩が悪い。本作は商業的な失敗作とされ、路線変更を強いられることになる。しかしそれが功を奏し、次作「The Bodyguard」の大成功と、超大物スターへのステップアップにつながることになる。
これまで素直なバラードと“よい子”なポップス中心だった彼女がちょっとストリート感覚を取り入れてみました、というのがジャケからも伺える。内容的には当時のトッププロデューサーであるベイビーフェースを大きくフィーチャーし、「I'm Your Baby Tonight」(1位)「All The Man That I Need」(1位)「Miracle」(9位)「My Name Is Not Susan」(20位)のヒットを生んだ。「〜Susan」はアホなテーマで何か笑える。

1990/12/15付 No.5 (3週目でTop10入り) 最高位2位
The Immaculate Collection / Madonna
マドンナの初めてのベスト盤。何しろヒット曲の多い人だけに「Causing A Commotion」(2位)「Dress You Up」(5位)「True Blue」(3位)「Who's That Girl」(1位)といった大ヒット曲でさえ抜け落ちてしまっているのが残念だが、逆に言えば収録されている曲はそれだけ厳選された文句無しのヒット曲集。新曲として収録された「Justify My Love」(1位)「Rescue Me」(9位)もヒットしたが、何となくこの後に驀進し始めるエロ路線を嫌な意味で予感させる曲だった。

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