| IRON FLAG (2001, Loud) |

|
ウータン・クランが音楽シーンに与えるインパクトがみるみる衰えていくのを見てるのは、特に熱心なウータン・ファンではない私でもちょっと心が痛んだ。
一巡目は全員のソロ作がゴールドディスク以上になってたのに、二巡目以降でまともに売れるのはメソッドマンだけ。しかし改めて考えてみると凄いのは、彼らが“流行りの音”になったことは一度もないということだ。衝撃的なデビュー作、商業的なピークとなる2作目。いずれも彼らは独自路線を突き進む異色の存在であり、ヒップホップ・シーンでの流行とは無縁の存在だった。それって、やっぱり強みなのだ。
商業的に下り坂になっても、自分たちの音を貫く。12曲中8曲はRZAのプロデュース。中にはトラックマスターズのプロデュースで、ロナルド・アイズリーを迎えるという意表を突く組み合わせもあるが、ほぼ全編をRZAが敷き詰めるへんなビートが埋め尽くし、8人のMCたちが淡々とマイクリレーしていく(オール・ダーティ・バスタードは不在)。流行り云々ではなく、ただ単純にかっこいい。これだけキャラがはっきりし、スキルもしっかりした連中が集まり、エゴをむき出すことなくチームワークに徹する。「In The Hood」や「Uzi (Pinky Ring)」、タイトル曲あたりで改めてウータンのかっこよさを認識した。スペシャル・サンクス欄の最後で彼ら自身も言っている。 "We ain't goin' nowhere"。彼らは、いつでもここにいる。(しんかい)
|
| THE W (2000, Wu-Tang/Columbia) |

|
いつもの例に倣ってカンフーもののSEとRZAのプロデュースによるタイトで哀愁漂うトラックで幕を開けるウータンの新作。ひたすらストイックなトラックで覆い尽くされ、やや全体的なフォーカスの甘さと冗長さが耳についた前作の『Forever』の後で、しかも軍団一のキレ具合を誇る(笑)ODBが参加していないとあっては、CDに伸びる手がややためらいがちにもなろうというものだが、今回のRZAのトラックメイキングは切れ味もさることながら、出世作の続編的な「Protect Ya Neck (The Jump Off)」や女性ボーカルのリフがいなたい「Gravel Pit」みたいなキャッチーなトラックも織り込まれててただひたすら単調な哀愁トラックでないところが思わぬ収穫。しかもこれまでウーのアルバムではあまりやってなかった他流試合も、メソッド・マンとレッドマンが例のデュオアルバムの流れで絡む「Redbull」、スヌープのヨレたフロウがいい「Conditioner」、レイクウォンとナスの緊張感満点の「Let My Niggas Live」など随所にオールスター戦的なトラックもあり、これまでにない盛りだくさんな充実ぶり。中でも驚いた(けど思わず納得した)のは、レゲエのジュニア・リードとタッグを組んだ2曲。もともと無国籍さと哀愁をモチーフとするウーの相手としてはむちゃくちゃはまり役で、どちらも独特の迫力を感じさせるトラックとなっている。彼らがシーンに衝撃を届けてから早くも8年が経ち、その間ヒップホップ・シーンもノーリミットやキャッシュ・マネーといった違う意味での迫力を持った連中や、最近の南部ラップの一連の台頭ぶりなど、彼らのいる環境も激変している中で、これまでのメンバーのソロ仕事の方向性をふまえた形での今回の作品制作、彼らの立ち位置としてはまずは納得できる内容に仕上がっていると言っていいのでは。問題は次に何をするかだけどさ。(阿多)
|
|
THE SWARM - Wu-Tang Killa Bees (1998, Wu-Tang) |

|
本隊2nd収録の「The Triumph」のビデオクリップの流れを汲んで「蜂」のコンセプトが拡大されて一枚のアルバムとして登場した。人間をアフリカ産の蜂が襲うという寸劇が挟まれ,お得意のサントラ仕立てになっている。本隊からはODBやGZAを除いて殆どが参加していることから,実質的には3作目と呼べるだろう。ただし,近年のWu関連諸作品同様にRZAの関与度はそれほど高くなく,名義上は1/3程のナンバーが彼のプロデュースとなっている。それでも,非RZA製作ながら「Bobby Digital」に収録されても違和感のないキーボード・ループ主体のナンバーが冒頭に配されるなど,RZAの影響力は本作の至るところに見受けられ,Wu-TANG=RZAのサウンドという図式は本作でも揺るぎない。それにしても,こうもRZAクローンが幅を効かせていいものなのだろうか。RZAのトラックがあまりにも独特なだけに完全な模倣でなくても,それらしく聞こえてしまうきらいはあるにせよ,である。RZAと弟子のサウンド製作法伝授の秘訣を尋ねてみたいものである。(信沢)
|