a Album Review 9
FAYE WONG(王菲)

FAYE WONG (光の翼) (2001, EMI)



 自分の名前を冠したアルバムがこれで何作目になるのかも知らない者がレビューを書くのは気が引けるのですが、欧米の音楽ばかり聞いてきた私に新鮮な衝撃をもたらしたアーティストの新作です。TVドラマに出演して日本での知名度も上がってきましたが、彼女の本分は歌手であることが分かる好盤です。中華ポップスにも歌謡曲に通じる世俗性と欧米音楽の影響がありますが、フェイの音楽には大衆消費音楽では片付けられない芸術性を感じました。EMI移籍後は、大雑把に言って、歌謡曲的な聞きやすさの楽曲を万華鏡のように聞かせるアルバムと、雄大なスケールで聞く者を圧倒するコンセプト・アルバムを、交互に発表してきたと思います。今作は前者のはずですが、4曲目あたりから徐々に奥行きが出て来て、後者の趣もあります。日本盤の3曲目と15曲目、4曲目と14曲目は、同じ演奏をバックに北京語と広東語で歌っています。言語の区別がつかない私には、日本盤の構成で聞くと、中盤でディープな音世界を彷徨った後、徐々に現実へ引き戻されるような感覚がありました。(真田)
王菲唱遊 (1999, EMI)



 フェイ・ウォンが結婚を契機に北京に居を移し、ドメスティック・レーベルのシネポリーからEMIに移籍した報を聞いたとき、多くのファンは、『十万回のなぜ』のようなアバンギャルドな路線をさらに大胆に押し進めていくのだろうと期待したにちがいない。ところが、ミニ・アルバムで気を揉ませたあと出された、北京語による移籍第1弾フル・アルバム『フェイ・ウォン』では、せっかくの本人憧れのコクトー・ツインズなどのサポートにもかかわらず、沈んだ暗いサウンドと妙に固い歌い方が耳について、お世辞にもほめられた出来とは言えず、どこかバランスを崩している気味すらあった。それからほぼ1年ぶりのアルバムとなる本作は、香港盤ではボーナス・ディスク付きの2枚組となっている。今回は、豪華なゲストこそないが、ぎこちなかった前作とはうって変わって、歌を引き立てる伸びやかなサウンドに乗せて、その上を彼女のボーカルが気持ち良さそうに流れていく。『十万回のなぜ』のようなバックとボーカルが張り合うような緊張感はないが、サウンドと一体化した穏やかな歌が楽しめる。前作に馴染めなかった人にぜひ。(鎌田)
菲賣品 (1997, Cinepoly)



 90年代全般にわたり香港の音楽シーンに大きな影響を与え続けてきたシンガーの軌跡をまとめた編集盤。97年のEMI移籍以前、シネポリー時代の録音をまとめている。米英のアーティストの中にもファンが多いこのインターナショナルなシンガーに馴染みがないという読者の方でも、94年の映画「重慶森林(恋する惑星)」へ出演し主題歌を歌ったといえばピンとくるだろう。この人は実に多作で89年のデビュー以来すでに10枚以上のアルバムを発表してきているが、多作であると同時に音楽性がアルバム毎に異なるのが特徴。ここに収録された曲でも広東語と国語(北京語)に歌い分けて(北京出身ながら活動の拠点が香港だった)録音された楽曲には、それぞれ言葉の響きに違いが感じられて耳に新鮮。いかにも大陸的な東アジア各地の華人に受けそうなオーケストラをバックにしたバラードを歌う一方、アップテンポのナンバーもこなす。カバーで大ヒットを飛ばしたかと思えば詞を自作する。そのカバーの対象範囲も幼い頃から崇拝していたテレサテンからTori Amosまで、とこれ1枚で菲の非常に多彩で変化に富んだ歌唱が幅広く楽しめる。Chinese Pops入門用に相応しい好盤。(信沢)


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