LUCINDA WILLIAMS

WORLD WITHOUT TEARS (2003, Lost Highway)



 前作『Essence』でバッキングにプロデュースにいい仕事をしていたチャーリー・セクストンは今回は何故か入っておらず、前作のアコースティックを全面に押し出した作風から今回はややエレクトリックなビートを中心にした曲が増えており、全体のアルバムのオファーする感触はかなり異なったものになっている。エレクトリックといっても、シェリル・クロウみたいな「Real Live Bleeding Fingers And Broken Guitar Strings」みたいなギターロックっぽい曲とかブルースロックを気取った「Atonement」とかの出来はまあ普通でどうと言うこともない。むしろ冒頭の「Fruits Of My Labor」とか愛人に普通にあたしを愛してよ、と語る「Righteously」とか、小児虐待を受けて育った愛人を支えようとする「Sweet Side」といった曲のように、リンク・レイとかライ・クーダーとかああいう南部のバーでリヴァーヴを聴かしたセミアコを奏でているギタリストをバックにルシンダがいつものけだるい声で決してバラ色ではない愛人との関係とか感情の起伏とか自分の信念とかいったことを淡々と歌う、という曲の方がやはりヴィヴィッドにイメージが沸き上がってくる分、出来がいい。やはりこの人はこのスタイルが自分の表現に最適だと言うことを知っているし、そのスタイルを使って自分を表現することについて作品を重ねる毎に長けて来ていると思う。アルバムジャケもいつものように控えめながら聞き手のイメジャリーを刺激するビジュアルでコーディネイトされている。感触は前2作とちょっと違うが、全般経験豊富な職人の仕事を見るかのような手応えを感じる小品だ。(阿多)
ESSENCE (2001, Lost Highway)



 一曲目の「Lonely Girl」のイントロのギターの音色からして参った。ふくよかである。弦の一音が浸み通るように腹に響く。ふとライ・クーダーを思い出す。余計な音は一切鳴っていない中、ルシンダの半ばかすれたそれでいて不思議な色香を感じさせる歌声が訥々と「ひとりぼっちの女の子」「重たい毛布」「かわいい髪型」といったフレーズだけを延々と繰り返す。イメージが沸き上がる。こんな感じでアルバム全体を聴くにつけ、抑え気味のルシンダの歌声とミニマリスティックとも思える程スカスカの音が不思議に反応し合って豊かな音像を作り上げ、様々な形で愛する人への想いを語るルシンダの言葉がふつふつとイメージを掻き立てるのに驚かされる。愛する人に触れる風に、雨に、太陽の光に思いを馳せる「I Envy The Wind」や愛する人との触れあいを待ちこがれるタイトル曲等々。9/11以降全く異なる重みを持ったに違いない、神への従順を誓う「Get Right With God」にしてもしかり。今回もグラミー各賞にノミネートされているが、そんなこととは全く関係のないところで、ルシンダと彼女をひたすらかっちりとサポートするミュージシャンシップを堪能できる一枚だ。ディランの最新作でも良い仕事をしていたチャーリー・セクストンの控えめでいて効果的なバッキングプレー、コーラスそしてプロデュースもこのアルバムを締まったものにしている上で貢献度は大きい。(阿多)

 このアルバムをかけている間、時は、ゆっくりと流れる。
夏の終り。まだまだ陽はギンギンに差してて、蝉がミンミンとうるさくて、黙って座ってるだけでも汗がじわっとにじんでくるんだけど、時々すっと通り抜ける風が妙に涼しくて、ふっと見上げると空にはいわし雲が出てたりする。夏が、終わっちゃう。毎年のことだし、当たり前のことなのに、儚く、切ない気分になってしまう。そんな音。
 極めてシンプルな言葉で、言葉少なに、見事に情景を描写する詩は、ボブ・ディランも賞賛する。土と草の匂いが漂い、太陽の光が降り注いでくる。目を閉じると、情景が自然と浮かんでくる。これが、生きた音楽だからだ。
 評論家筋で絶賛された前作「Car Wheels On A Gravel Road」はややロック色があり、シェリル・クロウなんかに近い音だったが、本作ではぐーっとアコースティックに、地味になった。プロデュースは、ルシンダ本人と、チャーリー・セクストン。チャリ坊、立派に成長したなあ。凄いぞ(←年上だけど)。
 前作で素晴らしいソングライターであることは認識したが、シンガーとして、アーティストとして、ジョニ・ミッチェルに比すべき疑う余地のない天才だと、本作で確信した。2001年の「Blue」。歴史に残すべき傑作。(しんかい)
CAR WHEELS ON A GRAVEL ROAD (1998, Mercury)



 私はシェリル・クロウが好きではない。いやいやこれはルシンダ・ウィリアムスのレビューなんだけど。シェリル・クロウが最初に有名になったのは「マイケル・ジャクソンの新恋人?」という報道によってだった。彼女がプロデビューしたのはドン・ヘンリーが奨めたからだった。有名になってからはクラプトンらと次々に恋仲になり、常にオトコ絡みの話題を提供し続ける。そしてあの甘ったれた歌い方。くー、(以下略)。ルシンダのアルバムを聴いて、シェリル・クロウが好きな人なんか一発で気に入るだろうと思った。田舎の土の匂いのする、大らかなアメリカン・ロック。但しこの人は媚びていない。20年のキャリアで6枚しかアルバムを出していない頑固者。素朴だけどキリッとした歌声とルックスは、毅然として美しい。曲の出来もとてもいいし、この「雰囲気」は、ちょっとやそっと真似てみたところで出せるものではない。どういうわけか店ではカントリーのコーナーに置いてあるけど、カントリーと聞いて聴く気の萎える人も、その反対の人も、誤解なきように。(しんかい)


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