U2

ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND (2000, Interscope)



 ベテランロックバンドの成熟するパターンというのも千差万別だが、多くのバンドは様々な試行錯誤を繰り返した後、自分の「型」のようなものを確立することにより、自らの過去のフォームとの一種の訣別を果たすことが多い。U2の驚くべき点は、エレクトロやアメリカ南部ソウル、果てはダンスミュージックまで手を出すなど無茶苦茶とも思える多様なフォームを経験後たどり着いたスタイルが、出発点と殆ど変わっていないというところだ。誤解してもらっては困るが、演奏スタイルとかの話ではなく、その呆気にとられるほどのナイーヴさと、問題意識を妥協無しにストレートに表現するスタンスのことを言っている。グラミー3部門を受賞した「Beautiful Day」やかのアウン・サン・スー・イ女史に捧げられた「Walk On」での思わず微笑みを誘うオプティミズム、ストレートすぎて赤面もののセイヴ・ザ・ワールド的メッセージの「Peace On Earth」、自らに言い聞かせるような決意表明ソング「Stuck In A Moment That You Can't Get Out Of」などいずれもボノが自らの思いを裸でぶつけてくる曲でこのアルバムは満たされている。そんなアルバムを届けてくれるU2は今や自分に取って数少ない「信頼できる」バンド。この夏の「Elevation」ツアーの好評ぶりもある意味当然といえるほどの自信も感じられるこのアルバムは全ロックファン必聴です。(阿多)
THE BEST OF 1980-1990 / THE B-SIDES (1998, Island)



 80年代のU2。これが「青春」と同義語だという人は少なくあるまい。情熱を、怒りを、こみ上げる想いをそのまま音にして叩きつけていた初期。『War』でそれを極めると、愛憎半ばするアメリカへの想いと、彼の国の先輩たちの音を取り入れることで表現力をぐっと深化した中期。何とか民衆を支配下に収めようとアイルランドに圧力をかけるイギリス。大弾圧と凶作が重なってどんどん人が死に、とうとう全てを諦め、無一文のまま祖国を捨てた者たち。彼らが目指したのは、アメリカだった。しかし新天地でも彼らは二級市民として扱われ、他のヨーロッパ系移民からの差別を受けた。アメリカ音楽への憧れと、この国が自分の祖父や曾祖父たちの代に対して行ってきたこと。同じく弾圧され、差別される者であった黒人への共感と、憧れ。表現の方法は変わったが、80年代のU2は一途に、自分たちの情熱を表現し、時には戸惑いや迷いも隠さなかった。だから、私たちは、彼らが信頼できた。私はU2のサウンドが好きだったというよりは、彼らの姿勢が好きだった。熱く、頼もしく、今聴いても、胸が熱くなる。(しんかい)
POP (1997, Island)



 U2が「ダンス・グルーヴ」をやる、というコンセプトに随分長い間馴染めずにいた僕が「Discotheque」を聴いて感じたのは今や彼らの音楽規範は、70年代ロック的価値観へのストイシズムではなく、今の音による自分のクリエイティヴィティの刺激なのではないかということであった。ただ本作はそればかりではなく、「The Playboy Mansion」のように従来リスナー向けのお約束のU2節もそこここに用意されている。とすると、彼らの本作での目的は、従来的価値観に訴える強烈な魅力を放つU2サウンドと、「Mofo」のような今日的なサウンドを同時的に内包することだったのではないか。誰もが絶賛するタイプのアルバムでもなければ、耳に聴きやすいだけのアルバムでもないし、シングルカットの3曲が決して出来の良い方とは思えないが故に駄作と見る向きもあろうが、要は各人がそれぞれの価値観に照らして何か満足するものが感じとれれば、本作は伝え手の目的を達したことになるのだろう。(阿多)


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