TRICK DADDY

THUG HOLIDAY  (2002, Slip-N-Slide/Atlantic)
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 2002年のフェイヴァリット・アルバムは?と尋ねられたネリーが、これを挙げていた。私は常々「トリック・ダディ侮るべからず」と説いてきたつもりだが、今回はいよいよトリック・ダディ評価の気運が高まっているようである。アメリカでは各雑誌などでも4つ星ぐらいの評価を得ている。あと一押しだ。  涼しげなアコギのループに乗せてシーローとアウトキャストのビッグ・ボイを迎えた先行シングル「In Da Wind」。これほど完成度の高いヒップホップ・チューンが、今年、他に何曲あっただろう?他にもスカーフェイスなどの大物ゲストを迎えているが、基本的には古い付き合いのレーベルメイト、トレ+6やロック・ロスといった連中との内輪での共演が多い。タイトル曲「Thug Holiday」はタイトルから脳天気なアホっぽい曲を想像するが、実はぽろんぽろんと弾かれるピアノに乗せて笛の音みたいな哀愁漂うキーボードや女性ボーカル(元エクスケイプのラトーシャ)が重なる反則のバラード。マルコム(X)、(ルイス・)ファラカン、ベトナム(戦争)といった言葉がライムに織り交ぜられた、極めて真面目な曲なのだ。トゥ・ショートなんかも同じだが、こういうエロネタ専門と思われてるラッパーも、実はきちんと物を考えていて、アルバム中数曲はそういう思いを披露してたりする。トリック・ダディとしては、エロネタを期待してアルバムを聴いた奴に、何かを考えるきっかけを与えようとしているのだと思うが、逆に我々には“一応マトモなことも考えられる普通の奴なんだ”という安心感を与えてくれる。  ジャケはめちゃめちゃとっつきにくいが、内容的にはとても充実しており、かつ、我々にもわかりやすい。そうそう何年も人気が続くタイプのアーティストではないので、旬のうちに、是非。(しんかい)
THUGS ARE US  (2001, Slip-N-Slide/Atlantic)
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 トリック・ダディがこんなに大物になるとはなあ。2作目「www.thug.com」がロングセラーになり(99年30位)、R&B市場では「Nann」というヒット曲も生まれたので、3作目「Book Of Thugs: Chapter AK, Verse 47」でブレイクするかと思ってたら、案外売れなかった(00年26位)。なーんだ結局色モノの一発屋と思われてるのか、と諦めてたら、4作目の本作でいきなりブレイク(01 年4位!)。しかも2ndシングル「I'm A Thug」で初のトップ40入り。一体何が起きたのか。と言えば、別に何も起きていない。実は、売れるべきものが売れているだけなのだ。過去の作品のレビューで私がさんざん書いてきているように、トリック・ダディは紛れもないアホだが、その音楽性は意外なほど正当派で、非常にしっかりした品質の作品を出している。このアルバムの聴きものも、子供のコーラスを使ってラジオでかけやすかった為にヒットした「I'm A Thug」ではなく、地元の大先輩・KCのファンキーなホーンをサンプリングして独特のマイアミ色を出した1stシングル「Take It To Da House」のほうだ。「Pull Over Remix」や「99 Problems」でも他の南部ラップではなかなか聴けない独特のホーン使いのサウンドが聴け、「For All My Ladies」では従来のマイアミ・ラップの代名詞であったベースの変化型が聴ける。他人のオイシイところだけ真似て高品質の作品を作り、とりあえず名を売った。で、だんだん地元の、自分の独自のサウンドを前面に出していく。狙ってやってるんだとしたらかなりのキレ者だし、意図せずして自然にやっているのなら恐るべき本能だ。(しんかい)
BOOK OF THUGS - CHAPTER AK, VERSE 47  (2000, Slip-N-Slide)
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 前作「www.thug.com」でブレイクしたマイアミのトリック・ダディの3作目。やはりマイアミという土地柄ベースっぽい音作りの曲もあるが、そればっかりというわけでもないので、まあ普通の南部ラップだと思ってよい。ミスティカルなどごく一部を除いては参加ゲストも地元の(全国的には無名な)連中ばかり。しかし、やはり一度全国的に売れたという経験からくる自信なのか、音に漂っていたB級感がどんどん薄れていく。前作もB級っぽさを漂わせつつ質は高い、という作品だったが、今回は音だけ聴いてる分には南部のローカル・インディ・レーベル製作とは思えない手堅い仕上がりだ。特筆すべきはシングルヒットした「Shut Up」。ニューオーリンズあたりのブラスバンドを想わせるブラスの音を全編にサンプリングして、今まで聴いたことのない不思議な曲に仕上がっている。
 しかしインタビューなんかでは超エロエロおやじなのに、やってるのはそういう曲ばかりというわけでもないし、ブックレットの写真のイメージではThugっぽい、ちょっとコワモテな感じで売ろうとしてるようにも取れる。なんか、存在が中途半端だ。レーベルメイトで、ここにもゲスト参加してるトリーナみたいにエロに徹したほうが面白いと思うんだけどなあ。(しんかい)


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