SQUAREPUSHER

MUSIC IS ROTTED ONE NOTE (1998, Warp)



 スクエアプッシャーは、ドラムン・ベースのアーティストである。いや、であった。過去形にしたのは、このアルバムでのスクエアプッシャーは、ドラムン・ベースを演っていないのである。スクエアプッシャーはもともと独特の音空間を構築していたアーティストで、『Feed Me Weird Things』『Hard Normal Daddy』など過去の作品では、ブレイク・ビーツに自身がプレイするベースの音を乗せていたのだが、それが嵩じて今回は、すべての生楽器を自分で演奏し、ブレイク・ビーツも最小限にして、ついにはドラムン・ベースのリズム・パターンまで排除してしまったのだった。その結果生まれた音は、70年代前半のクロスオーヴァー・ジャズにサンプリングを噛ませたような、なんとも奇妙なサウンドになっている。4ヒーローやインテンスといったフュージョン寄りのドラムン・ベースを引き合いに出すより、リターン・トゥ・フォーエヴァーやウェザー・リポートの方が共通項が多いと言えるほどジャズ寄りの音である。そんな奇妙にねじくれた音を聞いて感じるのは、もはや属する拠り所から訣別したアーティストの、痛切なまでの漂泊の思いである。(鎌田)
HARD NORMAL DADDY (1997, Warp)



 手抜きと思われちゃうけど、あまりにも的確な表現なので、エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェームスによるスクエアプッシャーの紹介を引用。「彼こそ日常生活の中から発せられる音のほうが、昔ながらの音楽よりもメロディアスであるということを発見した初めての男だ。かつて彼は、アリが砂の上を歩く音をレコーディングしようと試みていたが、今日もそのような実験を繰り返しているだろう」。確かにこれは、「昔ながらのロック」とは全然違う発想で作られた音だ。しかし今までこういう音楽がなかったかというと、そんなことはなくて、実はアフリカや東南アジアの民族音楽のリズムに近づいていっているような気がする。ポリリズムによる精神の昂揚と、陶酔感。それをちょっとジャズの感覚をもって機械いじくって複雑に組み合わせてみた、って感じ。ああ結局人間ってのは帰るべきところに帰っていくんだなあ、などと思ってみたりする。世界の最先端の音楽にして、人間の根元的な「音楽的表現欲」に忠実な作品。めちゃ気持ちいい。(しんかい)


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