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NO SECURITY
(1998, Virgin) |

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林家彦六という噺家がいた。三平の父、こぶ平の祖父である。もともと代々の正蔵という芸名を継いでいたのだが、芸術選奨か何か勲章モノの名誉を受けた後、いきなり正蔵の名を返上、一代限りの彦六という名を付けて、下町の長屋住まいのまま生涯を終えた。そんな彦六の有名なエピソードがある。晩年、高座にたった彼は、噺の途中に眠ってしまった。そのとき客は、彼が起きるのをじっと待っていたそうだ。立川談志が羨ましがりそうな話だが、最近のストーンズというのも、彦六と客の関係に似た、阿吽の呼吸から成り立っているような印象を受ける。言い換えれば、自家薬籠の演奏を聴かせる演者と、「ストーンズがそこにいればいい」という客との濃密な関係である。このライヴ盤で聞かれるストーンズは溌剌としている。充実作だった前作よりさらに良い。「Gimme Shelter」はさすがにオリジナルの不気味な不穏さはかけらもないが、その代わりに練れた演奏がある。だが、その一方で、ディレッタントに囲まれた芸能の、一見お断りの居心地悪さをも同時に感じてしまうのである。ロックが始めて体験する“成熟”というこの事態、非常に深いものがある。(鎌田)
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BRIDGES TO BABYLON
(1997, Virgin) |

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Stonesほどのビッグネームとなるとアルバム発売毎にウンチクを傾ける評論家やファンの数は並ではない。つまり、音を聴く以前に彼等から過多な情報が耳に入ってくる。このアルバムについても然り。ゲストプレーヤーやツアー情報の氾濫は毎度のことだし、発売と同時に内容について微に入り細に入り分析がなされた。おわかりであろうか、Sonesはこのように世界中のメディアやファンに丸裸にされることを承知でアルバムを発表するのである。となれば、並大抵の神経の持ち主でない彼等も知名度にものを言わせた安易なアルバム作りを行うわけにもいかないはず。過去の実績によるStonesという記号に惑わされることなかれ。彼等を真正面から受け止めることから逃げてはいけない。今回はKeithのヴォーカル3曲がいずれもアーシィでリラックスしたノリが楽しめることに好印象を持ったが、アルバム全体では印象的に残るギターフレーズが少なかったのが残念である。(信沢)
『フラッシュポイント』以降のストーンズのアルバムは、正直に言うと、「あのストーンズだから」という保留事項を付けなければ評価できないレベルのものであったと思う。とくに『ストリップト』などは、個人的には、そろそろ過去の遺産の縮小再生産モードに入ってきたかと盛り下がってしまった。今回はあまり期待していなかった分、意外なほど良かった。功労者はキース・リチャーズ。アコースティック・ベースを導入して音にスピードをつける一方で、「ユー・ドント・ハヴ・トゥ・ミーン・イット」ではモロにロック・ステディを意識して、中途半端なデジタル・ビートで味付けされたアルバムにアクセントを付けている。だが何よりも良いのが、オリジナル・ヴァージョン最後にある、やはりキースのバラード「ハウ・キャン・アイ・ストップ」。ダルな声でしみじみと「いったん始めてしまったら、どうやって終われるってんだ」と歌うキース。最後にはダメ押しのウェイン・ショーターのサックス、続いてガムラン調のゴングの音。しびれます。これ1曲にこのアルバムの存在価値はあると言っていい。ストーンズ聞いて良かったと思ったのは『スティール・ホィールズ』以来である。(鎌田)
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