R.E.M.

REVEAL (2001, Warner Bros.)



 前作『Up』で見せてくれた、ほのかに梅の香が漂うような優しい佇まいを持った楽曲群が、今回はさらに薫り高く咲き誇っている桜の花のように聴く者の感性に訴えてくる、そんなイメージを思わず頭に浮かべてしまう。そして今回そうしたイメージをさらに掻き立てる役割を果たしているのが音の処理だ。これまでのR.E.M.のアルバムでも『New Adventures In Hi-Fi』あたりからボーカルやバックの楽器の音処理にそれまで以上に細かい手を加えて、映画のサントラのような趣を持った音を作ってきているが、今回はそれに更に手が加わって、フィル・スペクターやブライアン・ウィルソンなどの作品を思わせるような分厚いながらも腹にもたれない昇華されたポップさみたいな音表現に成功している。そう、そういえば前作『Up』でもその気配はあったが、いくつかの曲のメロディや、全面的にストリングを使った楽曲のアレンジなど、実にブライアン・ウィルソンあたりに通じるものを強く感じるのも今回のアルバムの特徴。初期のR.E.M.が好きだという向きには「何か普通のポップになりすぎたのでは」という批判もあろうが、これだけ重厚なアレンジを施しながら、聴いた感じや曲の構成などはとことんシンプルな楽曲群はなかなか作れないものだ。このアルバムを聴いていると、スキンヘッドにしたり政治的活動に没頭したりしてきたマイケル・スタイプの今目指していることは、いかに余計な言葉や音を排して完全なポップ・ソングを作るかということにあるような気がしてきた。そういえば「Pop Song 89」という曲もあったな。(阿多)
UP (1998, Warner Bros.)



 それまでもそういう傾向はあったが、『Automatic For The People』ぐらいから彼らの楽曲の世界は一気に「わびさび」の方向性へと加速度を増して進んでいるように思う。爺臭いという意味ではない。詞的にはより内省的で人間としての意味や求めるべきものといった極めて哲学的なテーマを意識して取り上げる傾向が増えているし、音的にも余分なアレンジや楽器の音を重ねるようなことはせず、ある種ミニマリスティック・ポップに近い手法を感じさせる作りの曲が増えていると言うことだ。しかし彼らの素晴らしいところは、それらが全く陰鬱にならず、むしろ詞の内容とはある時は裏腹に極めてオプティミスティックな響きを決して失わないこと。今回もそれは同様で、ブライアン・ウィルソンを彷彿させる「 At My Most Beautiful」や、「Walk Unafraid」「Daysleeper」など、マイケル・スタイプのソングライターとしての実力に改めて感じ入る曲が全体のトーンを支配している。清冽で、ほのかに希望を感じさせる、初春の梅の花を思わせるようなたたずまいのアルバムだ。(阿多)
NEW ADVENTURES IN HI-FI (1996, Warner Bros.)



[editor's choice !] 驚いた。私は今までR.E.M.というバンドに何の思い入れもなかった。凡百のバンドではないことは認めてはいたものの、一度も「好き」になったことはなかった。このアルバムを買ったのも、気紛れでしかなかった。家のステレオで何度か聴いて、お、今回はなかなかいいな、と思った(とか言って過去の作品をマトモに聴いてたわけじゃないんだけど)。ある朝の通勤電車の中でディスクマンでこれを聴いていた。3曲目「New Test Leper」が流れ出したところで、不覚にも目頭が熱くなった。大きい。参った。さっそく帰ってから野坂に電話し、旧作を借りることにした。
 しかし旧作群も確かにいいんだが、これと同じような感動は得られなかった。この違いは、U2の「The Joshua Tree」が彼等の他の作品とは違う広がりを持っているのと似ているような気がする。ツアー先の全米各地で録音されたというこの作品は、大地の揺るぎなさ、広がり、大きさ、不変性を見事に伝えている。決して雄弁にではなく、静かに、しかし力強く。一見地味にしか見えないジャケット及びブックレットのアートワークも、見事にこの空気を伝えている。果てしなく広がる地平線に向かってまっすぐに伸びるハイウェイをかっ飛ばしながら、こういう音楽を聴きたい。カントリーやVan Halenばっかりが、「アメリカらしい」音ではない。うきうきと楽しくなるような音ではないけど、人生にはそれよりもっと豊かな、何かがある。(真貝)

[editor's choice !] 解散説などどこ吹く風、昨年80億円という記録破りの契約金で契約更改した彼等、まだまだ当分R.E.M.の時代は続きそうだ。何といっても、デビューから17年、10枚目のアルバムでありながら、タイトルに「新たな冒険」とうたい、それを実践できるバンドが他にあるだろうか。常に新鮮さを失わず、何かに駆り立てられるかのように前進を続ける、このアルバムはそんなバンドの生命力の強靭さを物語っている。本作は「MONSTER」ツアーのサウンドチェックを利用して録音された。久々の、そして長期にわたるワールド・ツアー、しかもその途中でメンバーの3人までが病に倒れるという過酷な状況、しかしここにはそんな逆境を微塵も感じさせない躍動感が息づいている。普通サウンドチェックといえば単調で退屈な作業になりがちなものだ。が、彼等はそれを毎回新曲をプレイし完成させていくプロセスにすることで、クリエイティヴな空間、何よりまず自分達が音楽を楽しめる場へと変えてしまった。だからこそここで聴ける音は非常に生々しく耳を捕えるのだ。ラフでむきだしのサウンド、曲毎に表情を変えるマイケル・スタイプのヴォーカル、ヘッドフォンでしかも大音量で聴けば、そのすき間だらけの乾いた音のむこうに新たな活力を得たたくましいバンドの姿が浮かび上がる。楽曲的には極めて地味だが、走り続ける彼等の集大成であると同時に一つのターニング・ポイントとして重要な位置を占める傑作であることは間違いない。(野坂)


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