PEARL JAM

SEATTLE WASHINGTON NOVEMBER 6 2000 (2001, Epic)



 果たして世の中に、このライヴアルバムシリーズを全作品揃えているファンは、どのぐらいいるんだろう。ヨーロッパ公演を集めた第1弾、アメリカ公演を集めた第2弾、全部合わせると70セット余りになる。単純に1セット2000円と考えても14万円程度なので、金額そのものはびっくりするような高額ではない。が、2枚組70セットである。仮に週に1セットずつ聴いていくと、全作品制覇に1年半かかる。
 この、恐るべき圧倒的なボリューム。いっぺんにリリースしたアルバムの枚数とか、海賊版を除く公式なライヴ盤の種類とかでは、たぶんギネス記録だろう。何年か前にアメリカ最大手のチケット業者と全面対決したときも、ビデオクリップ製作を拒否し続けたことも、今回の怒涛のライヴ盤攻勢も、彼らは「なにもそこまで」と思えるぐらい極端にポリシーを貫くバンドだ。
 このライヴは全米ツアーの最終日、地元のシアトル公演。このシリーズは他はすべて2枚組なのに、この公演だけ3枚組という、特別なステージだ。「Dissident」の後のMCで、「one last show, and we never play again」と言ってるところがある。これを、彼らの解散宣言だと受け止める声もあるが、今のところ真偽は定かではない。ただ、公式サイトにも今後のスケジュールは何も記載されていない。
 確かにここまでやれば、「やることはやってしまった」と言われても何も反論できない。怒涛の90年代を駆け抜けたバンドの、集大成。別にこれが彼らのラスト作ではないにしても、実に感慨深い。20世紀は、終わっちゃったんだね。(しんかい)
LIVE ON TWO LEGS (1998, Epic)



 1998年の前作『Yield』のツアーでの録音から構成されたと思われるこのライヴ(詳細のライヴ情報は記載されていない)は、全体実にリラックスしたバンドの状態が如実に伝わってくるような、そんなゆったりした中にも適度の緊張感が感じられる、おさまりどころのいいレコードになっている。演奏曲も、ファーストの「Even Flow」から最新作の「Given To Fly」まで過去の5枚からまんべんなくチョイスされており、さながらベスト・ライヴ的なファンにはたまらない構成だ。体をヘッドフォンに任せながらコンサートをバーチャル体験するのが本作の正しい楽しみ方だが、特に「Better Man」などで観客の歌声と一体になって気持ちよさそうなエディ・ヴェダーの声を聴くにつけ、95年以来果たされていない来日が望まれる。しかしアルバム最後に「ニール・ヤングの曲です」と言ってニール1990年のアルバム『Ragged Glory』収録の「F*ckin' Up」を嬉々として演奏する彼らを聴くと、そこに綿々と過去から脈打つアメリカン・ロックの底流を感じるよなあ。(阿多)    

   パール・ジャムは、そのスケールの大きさが売りのバンドである。すごい名曲を書いてるわけでもないし、気持ちいい音とか、ノリやすい音とか、メンバーがかっこいいとか、そういう要素で支持されているわけではない。どちらかというと暗く、沈みがちな曲が多い彼らだが、そのスケールの大きさで「みんなの歌」に仕立ててしまう。彼らが今までやってきたことは、決して分かりやすいものではない。それでも何百万という支持者たちが熱心に彼らを追いかけたのは、そのカリスマの為せる技なのだろう。「Daughter」なんて決してみんなで合唱するような内容の曲ではない。でも、エディなら許せる。彼はカリスマであり、「我々の側の人」だから。原曲を大きく崩していないから、彼らのことをあまり知らない人でもベスト盤と思って聴ける。一方でライヴならではの臨場感が活かされているのでアルバムを聴き込んでいるファンも新鮮に聴ける。まさにライヴ盤のあるべき姿として、高く評価したい。(しんかい)
YIELD (1998, Epic)



 あら。私はパール・ジャムが好きだった。1stは凄いアルバムだと思うし、2ndも好きだ。しかしその後は、正直、何がいいのやら今一つわからないまま。今回もお付き合いでとりあえず買ったんだけど。いいじゃん。  前2作はなんか薄暗くて混沌として、聴いててもモヤモヤ感ばかりがつのった。もともとスケールのでかいバンドなのに、なんか難しいことばっか考えすぎて袋小路にどんどん入り込んで行くような。もういいや、そろそろ追っかけるのやめようかな、と思ったところで、どこまで続くのかわからない暗くて狭い路地が突然終わって、ぱっと視界が開けた。アルバムジャケに描かれる、地平線までまっすぐに続く一本道が現れた。  明るい感じの曲はあまりない。しかし、明らかにポジティヴな空気が流れる。世間にはカート・コバーンは神様で、パール・ジャムなんて退屈なレトロ・バンドだと言う人は多い。しかし、私は、カートが越えることのできなかったものを、エディ・ヴェダーは越えることが出来たのだと思っている。デカい。久々に感動した。(しんかい)

 「イールド」のパール・ジャムは横浜ベイスターズの佐々木である。そのココロは安定感があるけどスリリング。なんて馬鹿なことも言いたくなるほど今回の新作には「満ち足りた存在感」とでも言うべき雰囲気が漲っている。デビュー当時不幸にして彼らの衝撃を体験できなかった「遅れてきたパール・ジャム・ファン」としては、初期のイメージに囚われすぎないというある意味での距離をもって接してきたため、前作の「No Code」にしても、何か新しいことに手を付けだしたな、という感じは持ったものの一部のファンにあった「もうパールジャムはつまらない」的な感じは持っていなかった。そこに来てこの「イールド」である。このアルバムのいいところは、パール・ジャムがいわゆる「グランジ」のレッテルから完全に解放され、自分の作りたい音、詞をとても満ち足りた精神状態で一曲一曲に作り込んでいながら、曲としてのエッジはしっかり保っているところだ。2曲のシングルをはじめとして、『Pilate』『In Hiding』などルーツ・ロックへの憧憬を見せる佳曲も多く、今年屈指のアルバムだ。(阿多)


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