2PAC

UNTIL THE END OF TIME (2001, Amaru/Death Row/Interscope)



 また出たトゥパックの未発表曲集。しかも2枚組だ。まあ同じ曲が複数バージョン入ってたりする、デス・ロウお得意の水増し商売のお陰ではあるのだが。しかしこれはやっぱり単なる未発表音源集には終わらない。SOURCE誌が2001年のベストアルバム10選に選出していたのは、ちょっとやりすぎだと思うが、そんじょそこいらの新譜には太刀打ちできない凄みを、トゥパックは相変わらず漂わせている。没後5年。実は今でも生きてるという噂は絶えず、日本に住んでるという話もある。
 しかし先行シングルがMr.ミスターの「Broken Wings」モロ使いのタイトル曲ってのはいただけなかった。今さらポップ市場に媚びなくたって彼には充分なファンがついてるんだし、ダサい曲を前面に出してトゥパックのイメージに傷をつけるのは、故人に対する冒涜だ。もちろん、他にかっこいい曲がいくらでも収録されている。今までのトゥパック作品が好きなら、本作にも裏切られることはないはずだ。もちろん、死後に勝手に編集して出されたものだと割り切って接すれば、という前提でだけど。
 ところで「Fuck Friendz」の中で"Fuck Jay-Z"と言ってるのだが、トゥパックが亡くなった96年9月の時点ではジェイZなんてデビューアルバムが出て3か月ほどしか経っていない新人。ほんとにこんな奴のことを相手にしてたのか?それともトゥパックは本当にどこかで生きていて、キングを名乗って我が者顔でヒップホップ界を牛耳るジェイZに警告を発しているのか?(しんかい)
GREATEST HITS (1998, Amaru / Death Row)



 トゥパックはなぜこれほどまでに特別な存在なのだろう。
 彼は、あらゆるラッパーを越えて「リアル」だった。「Keep it real」を合い言葉に、ラッパーたちは荒廃したゲットーや、銃や暴力や、金や麻薬や女や車のことを延々とラップし続ける。それだけなのだ。本当にそれが「リアル」なのだろうか?トゥパックはいつも死への恐怖を口にしていたし、不安や自分の弱さを決して隠すことはなかった。ギャングスタ賛歌をやってたかと思えばしっとりと母親への想いを聴かせ、かと思うと「東」のラッパーに物凄い勢いでまくしたて、喧嘩を売るだけのために1曲作ってしまったりする。これが、本当に「リアル」な人間の姿なのではないか?いつもいつも金とセックスと暴力の話題しかないなんて、彼らは「リアルであるふり」をしているだけなのではないか?そして、真にリアルであったからこそ、トゥパックには多くのファンがいて、みんなが一方的にトゥパックのことを友達みたいに思っているのではないか?ジョン・レノンやニルヴァーナなど、人間としての弱さ、内面をさらけだした作品はロック界では高く評価される。だったら、トゥパックも正当に評価しなさい。(しんかい)
R U STILL DOWN? [REMEMBER ME] (1997, Amaru/Jive)



 トゥパックの未発表曲集。正直言ってこれを買うのは「ファンとしての義務」ぐらいにしか考えていなかった。アメリカでも今一つ評判は良くなかった。しかし、これが凄く良いのだ。びっくりした。収録されているのは1st〜3rdソロの時期の作品。「Dear Mama」系のメロウ物や、1st〜2ndの頃の闘志むき出し・怒り爆発型まで、デス・ロウ所属になってつまらなくなってしまう前の「きらりと光るものがある」トゥパックの姿が、ここにある。彼はいつも孤独で、自分のために闘っていた。だから、デス・ロウ帝国の配下に入った彼は、どう振る舞ったらいいのかわかっていなかった。オーナーのスージ・ナイトでさえのらりくらりと身をかわして適当に逃げながらやってたのに、トゥパックは自分の身を守るのと同じ感覚でデス・ロウのための闘いを引きうけてしまった。それが彼を死に至らしめたのだと私は思っている。何をするにも手を抜くということを知らず、一生懸命に生き過ぎた男。そんな彼の、闘いの記録。これはもはや単なる音楽ではない。(しんかい)

 「ホントにおまえどんだけ仕事してたんだよ」と言いたくなるほど後から後から未発表音源が出てくる2Pac。そのためか先のマカヴェリ名義などは玉石混淆の感が否めないが、本作は母親がデス・ロウの音源を買い取って厳選しただけあり(レーベル名も母親の名前)、2枚組ながら迫力とクオリティは高い。タイトに作り込まれたトラックに載せて繰り出される2Pacのフロウはひたすら力強く、『How Do U Want It』の頃のエネルギッシュなパフォーマンスに匹敵する内容で、多くのトラックが最後に近い頃に録音されていたであろうことが推測される。『I Wonder If Heaven Got A Ghetto』のヒップホップバージョンなど、ポスト・プロダクション的な音もあるが、それとて全体の切れ味を損ねていないのは2Pac自身の存在感か。リリックはおなじみのサグ・ライフの虚勢と攻撃に満ちた内容だが、「Me Against The World」でも見られたように、自分のワルさを客観的に描写しながら、その裏にある孤独やサグ・ライフの無情さを淡々と語ることで悲哀を強くにじみ出させているのが印象的。ビギーの遺作でも感じたような無常さが胸に迫る。豪華なゲスト陣や、クオリティが高いが故に、聴けば聴くほど考えさせられてしまう作品だ。(阿多)
THE DON KILLUMINATI THE 7 DAY THEORY (1996, Death Row) - MAKAVELI



 2パックの死後発売された本作の発売背景について、ここらで一発儲けてやろうぜ的な企みを邪推することも出来ないことはないが、これは企画モノではない。前作「All Eyez On Me」において彼はデス・ロウ一派として華々しく再出発を図ろうとした。ハイ・テンションな姿にはようやく見つけた我が家とでも言いたげなそれまでにない嬉々として溌剌した雰囲気があった。でも、それまでに比べれば幸せといえなくもないそんな状況も彼にとっては無理があったのだろう。生前のインタビューでは方向転換を示唆する発言もあったほどだが、結局彼は本作でもサグ・ライフを全うするアウトローを演じている。何もそこまでやらなくてもというほど東をディスる姿勢には父親がわりの仕掛け人シュグ・ナイトの手前引くに引けないという事情があったのだろうか。遺作においてなお建前と本音というダブル・スタンダードに葛藤する姿が見え隠れするのはなんとも痛ましい限りである。(信沢)


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